新しい収入保険がスタート!攻めの農業をサポート

2019年1月からスタートした収入保険。農家の収入補償といえば、これまでは農業共済制度が主でした。新しい収入保険と農業共済制度との違い、新しい収入保険のメリット・デメリットなども併せて解説します。


じゃがいもと計算機

出典:Pixabay
2019年1月から、農家向けの収入保険制度が新しく始まりました。経営努力だけでは避けられない、自然災害や農産物の価格低下で収入が減ってしまった場合、その一部が補償される保険です。
どのような農産物でも対象になるという、新しい収入保険はどのような制度なのでしょうか。これまでの農業共済制度との違いや収入保険の特徴をご紹介します。

2019年1月にスタートした収入保険

倒れた作物
出典:写真AC
従来の農業共済制度は、自然災害による収量減少が保険金支払いの要件でした。また、対象となる品目も限定的で、実際には農家の経営や収入を完全にはカバーできていませんでした。
日本全体で農業を成長産業とするために、もっと自由に経営できるようなバックアップが必要であることをふまえ、農林水産省の主導で2019年1月から新しくスタートしたのが、今回の収入保険です。
収益性の高い作物を作りたかったけれど、野菜価格安定制度やナラシ対策の対象ではないからと諦めていた方も、新しい収入保険なら補償の対象になります。

保険期間

個人の場合、1月1日から12月31日までの1年間です。

共済制度・類似制度とどこが違う?

従来の共済制度との違いは、対象品目の多さにあります。保険の対象となるのは、農業者が生産し、販売している農産物の販売収入全体です。キノコやタケノコ、山菜、ハチミツも自分で栽培・飼養管理しているものについては収入保険の対象です。
ただし、肉用牛肥育経営安定特別対策事業(マルキン)などの対象品目になっている肉用牛、肉用子牛、肉豚、鶏卵は収入保険の対象外です。

保険に加入できるのは、青色申告を行っていて、かつ経営管理を適切に行っている農家(個人・法人どちらも対象)に限られます。白色申告の農家は対象外になる点に注意しましょう。
また、新しい収入保険に加入する場合には、従来の農業共済制度には加入できません。

補助金も場合によっては対象収入に

収入保険に加入する際に、もう一点気を付けたいことがあります。収入保険の補償対象となる収入には、販売収入と一体的に取り扱われている補助金も対象になります。例えば、畑作物の直接支払い交付金、甘味資源作物交付金などは収入の対象です。しかし、これらの交付金が収穫年の翌年に支払われる場合には、翌年の収入金額に含まれます。

保険金が支払われる基準

リンゴとお金
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この収入保険では、保険方式から支払われる保険金と、農業者が積み立てた資金から補填される特約補てん金の2種類が支払われます。支払われる額は加入者の状況によって異なります。

例)補償限度を90%に設定した場合
保険期間の収入が基準収入の9割を下回ったとき、下回った額の9割が補填されます。
基準収入が1,000万円で、実際の収入が3割落ちの700万円しかなかったときには、180万円が補填され、基準収入の8割以上の収入が確保できるようになっています。


保険料は加入者によって異なる

隣り合って座る男女
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収入保険が従来の共済制度やその他の制度と大きく異なり、さまざまなメリットがあることがわかりました。そこで気になるのが保険料や保険金額です。

支払は保険方式と積立方式の2種類

収入が落ち込んでしまったときに補償を受け取るためには、保険料と積立金、さらには事務費を農業共済組合連合会に支払う必要があります。保険料は毎年の掛け捨てになりますが、積立金は経営者自身の積立金になります。また、保険料・事務費の50%と積立金の75%は国からの補助が受けられます。

保険料は、危険段階別保険料率、基準収入、補償限度額、支払率によって異なるため、一律いくらとはいえません。危険段階別保険料率は、自動車保険の等級制度に似ています。加入初年度は0から始まり、保険金の受け取りがなければ毎年1段階ずつ区分が下がり、保険料率も比例して下がります。保険金の受け取りがあった場合には段階が上がりますが、年最大3区分までが引き上げの限度です。

基準収入は、加入申請を行った年までの過去5年の農業収入金額と、保険期間中に見込まれる収入金額を考慮して設定されます。
保険方式 計算式
保険料 基準収入×補償限度(0.8が上限)×支払率(0.9が上限)×保険料率 (国の補助後1.08%)
積立金 基準収入×積立幅(1割)×支払い率(0.9が上限)×4分の1
保険料は全国農業共済組合連合会のサイトからシミュレーションできます。
参考:http://nosai-zenkokuren.or.jp/insurance.html

農林水産省のモデルケースでは、基準収入が1,000万円で補償限度を90%、支払い率90%を設定した農家の場合、1年目は掛け捨て分の保険料が7万8,000円、積立金が22万5,000円、事務費が2万2,000円で負担額の合計は32万5,000円になるとのことです。

収入保険のデメリットは

メリット・デメリット
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農家のための収入保険は、思わぬ災害によって収入が落ち込んでしまったときや、思ったよりも売り上げが伸びずに収入が減ってしまったときに役立ちます。なるべくリスクなく新しい事業・作物に挑戦したい方にとってもうれしい保険です。
しかし、収入保険は万能ではありません。加入を検討しているのなら、デメリットについても理解しておきましょう。

生産コスト高による所得減少には対応していない

この収入保険では、売上の減少による収入は補償されますが、原油高騰や資材高騰による生産コスト上昇からくる所得の減少は補償されません。

農作業日誌が必要

不正受給を防止するために、農作業日誌の作成・保存が義務付けられています。農作物の種類ごとに作付け、施肥、収穫などを記入しなければならず、多品目栽培かつ作付面積の広い農家には大変な作業になるでしょう。

気軽に導入できて作業内容なども管理しやすい営農管理サービスを使うと便利です。

確定申告は青色申告のみ

前述の通り、確定申告を青色申告で行っている農家しか収入保険に加入できません。2015年の段階では、青色申告を行っているのは販売農家133万戸のうち42万戸のみです。現在白色申告で収入保険に加入したい方は、青色申告に変える必要があります。

青色申告に変える場合、当該年の3月15日までに税務署に承認申請書を提出しないといけません。詳細はこちら。

災害などで損害を受けてもすぐに支払われるわけではない

収入保険は1年間の総収入がマイナスだった場合に保険金が受け取れる保険のため、台風や洪水などで被害を受けて「すぐにお金が欲しい」と思っても、保険金は青色申告が終了した後、3月以降の受け取りになります。

経営・収入が安定している農家には向かない

ハウス内で栽培されている作物
出典:写真AC
毎年一定の収入が得られる農家や、天候などにほとんど左右されない状況で作物を栽培している農家にとっては、保険料を支払うだけで保険金を受け取る機会が少ないというデメリットがあります。

収入保険の加入に迷ったら

これから新しい作物の栽培にチャレンジしたい方、リスクの大きな作物を栽培して収入が安定していない方にとっては、経営の大きな助けになるかもしれません。新しい収入保険に加入するべきか否か、迷ったときには近隣の農業共済組合に相談してみましょう。保険料のシミュレーションも行ってもらえるはずです。

農業共済組合の相談窓口:全国農業共済組合連合会 相談窓口

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高橋 みゆき

北海道在住のフリーライター。北海道の畑作農家に生まれ、高校卒業後に農業協同組合に入組。JAでは貯金共済課の共済係として、窓口にて主に組合員の生命保険・損害保険の取り扱いをしていました。退組後、2013年まで酪農業に従事。現在はスマート農業に興味津々。テクノロジーを活用した農業についてお伝えしていければと思います。