ここでは、長芋の栄養成分や効能効果とともに、すりおろして食べるとろろの栄養や「とろろ納豆」、冷凍保存の方法、長芋を使った簡単おいしい養生ごはんを紹介します。
長芋の栄養成分と効能効果|カロリーや炭水化物、糖質量
長芋はヤマノイモ科の芋類の総称のこと。長芋には体内の余分な塩分を排出する働きがあるとされる「カリウム」や糖質のエネルギー代謝を助けるといわれる「ビタミンB群」のほか、たんぱく質や食物繊維なども豊富に含まれています。長芋100gあたりのカロリーは64kcal、炭水化物は13.9gです。糖質量はさつまいもやじゃがいもなどに比べて少ないです(※1)。また、デンプンの分解酵素「ジアスターゼ」もたくさん含有しています。ジアスターゼは「アミラーゼ」とも呼ばれ、消化を助ける働きが期待されています(※2)。別名「山のウナギ」といわれる長芋は、精力を付ける食材としても古くから親しまれてきました。薬膳では「山薬」とも呼ばれ、胃腸を丈夫にする働きが期待できます。
※1 参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020版(八訂)」
※2 参考:日本食糧新聞「波動を高める生活学:長芋」
加熱しても、長芋の栄養は変わらない!?
長芋は生でも加熱してもおいしく食べられる食材ですが、加熱すると栄養はどう変化するのでしょうか。ジアスターゼは熱に弱く、その効果が少なくなります。(参考:日本農芸化学会誌「アミラーゼの変性に影響する物質に関する研究」)加熱することで独特のネバネバ感がなくなり、もっちりとした食感に変化します。栄養は減ってしまうものの、すべての栄養がなくなるわけではありません。加熱調理は長芋の食感が苦手な人にもおすすめの食べ方です。また、食感が変化するため、生の場合に比べて量が食べやすくなります。
「焼く」と「蒸す」はどちらが正解?
一口に加熱調理といっても、焼く・蒸す・炒める・煮るなどいろいろな方法があります。たとえば、長芋を焼くのと蒸すのでは、食感や風味が異なります。切り方や加熱時間、油を使うのか使わないのかによっても、味わいが少しずつ変化します。我が家では、香ばしくシャキシャキに仕上げたいときには焼いて、もっちりとホクホクにしたいときには蒸すようにしています。胃腸が疲れているときなどには、長芋をすりおろしたものを器などに入れて蒸して、ポン酢をかけて食べることも多いです。作りたい料理のイメージに合わせて、加熱の方法を使い分けてみてはいかがでしょうか。
血糖値の急上昇を抑える!?「とろろ」の栄養と食べ方
長芋はアクが少ないため、そのまますりおろして「とろろ」として食べることができます。ジアスターゼが消化を助けてくれるため、生で食べても胃腸に負担がありません。また、ごはんの上にととろをかけた「とろろごはん」は、血糖値の急上昇を抑えるという意味でも有効な組み合わせといわれています(※3)。とろろにだしを加えてのばして「とろろ汁」にしたり、わさびや梅の香りを加えたりするなど、アレンジして食べるのもおすすめです。※3 参考:科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)「食事のGlycemic Indexと生活習慣病一次予防」
簡単でおいしい「とろろ納豆」もおすすめ
ネバネバ食材を組み合わせた「とろろ納豆」は、相性抜群です。材料を用意すればボウルなどで混ぜ合わせるだけで、簡単に作ることができます。口当たりがよくて食べやすいので、胃腸がつかれ気味のときにもぴったり。ごはんや麺類などの上にのせて食べるのもおすすめです。〈分量の目安〉2人分
・納豆 1パック
・長芋(すりおろしたもの)100g
・しょうゆ 小さじ1~1.5
・酢 少々
・ねぎや青のり(お好みで)少々
長芋は冷凍保存もOK!
長芋は切り口から傷みやすく、時間の経過とともに栄養や風味が損なわれてしまいます。カットした場合は、冷蔵保存で1週間程度で食べ切るのが基本です。すぐに食べない場合には、冷凍保存するようにしましょう。〈冷凍保存の基本の手順〉
1. その後に使う料理のイメージに合わせて、「すりおろす」「カットする」などの下処理をする。
2. 変色を防ぐため酢水にさらし、しっかりと水気を切る(すりおろした場合は、酢を少量加えておく)。
3.1回分ずつに分けて保存用ポリ袋に入れ、空気が入らないように封を閉じる。
長芋は妊婦が食べても大丈夫?
長芋は、妊娠中の女性が食べても問題ありません。むくみ予防の効果が期待できる「カリウム」や便秘予防にも大切とされる「食物繊維」が豊富に含まれており、妊婦にもおすすめの食材といえるでしょう。ちなみに私自身の妊婦経験では、食欲のないときに「とろろそば」を作ってよく食べていました。妊娠中は味覚や体調がデリケートになりやすいものですが、食生活に無理のない程度で取り入れてみてはいかがでしょうか。長芋を使った、簡単おいしい養生ごはん
長芋はすりおろして食べる方法がよく知られていますが、切り方を変えたり加熱調理したりしても、おいしく食べられます。また、すりおろした長芋を生地に混ぜて料理やお菓子づくりをするのもおすすめです。ここでは、長芋を使った簡単おいしい養生ごはんを紹介しましょう。長芋のソテー
長芋の加熱料理のなかで、まず試していただきたいのがソテーです。ホクホクとした独特の食感が、クセになる一品です。子どもにも食べやすく、大人の酒の肴(さかな)にもよく合います。お好みで、仕上げに青のりやしょうゆなどを少量加えてもおいしいですよ。〈材料〉2人分
・長芋 200g程度
・オリーブオイルなどお好みの油 小さじ1~2
・自然塩 ふたつまみ
作り方
1. 長芋はよく洗い、皮付きのまま食べやすい大きさ(スティック状)に切る。2. フライパンに油を入れて熱し、1の長芋を入れて、焦げないように転がしながら炒める。
3. 香ばしい焼き色が付いたら、塩を振ってできあがり。
長芋と鶏肉の養生スープ
長芋と骨付きの鶏肉を組み合わせたスープは、寒い時期におすすめのメニューです。酒やショウガ、ニンニク、もち米などを加えてじっくりと煮て作ります。薬膳では体を温めるとされる食材がたっぷり使われており、韓国の伝統料理「参鶏湯(サムゲタン)」にも似た雰囲気のスープです。私はこれを食べると全身がポカポカと温まります。お好みで、みそや唐辛子などをトッピングして味の変化を楽しむのもおすすめです。〈分量の目安〉2~3人分
・鶏手羽先肉(手羽元肉でもOK) 4本
・長芋 100g
・もち米 大さじ2
・ショウガ・ニンニク 各1片
・ナツメやクコの実(あれば) 適量
・酒 大さじ2
・自然塩 小さじ1/2
・水 2カップ
長芋のぬか漬け、浅漬け
長芋は、ぬか漬けや浅漬けにするのもよく合います。我が家ではぬか漬けを一年中作っていますが、秋から冬にかけては長芋のぬか漬けをよく作ります。通常のぬか漬けと同様に、ぬか床に入れて待つだけで完成!ぬか漬けや浅漬けは、生の長芋ならではのシャキシャキとした食感が楽しめます。長芋の和えもの
長芋を生で食べるなら、和え物に使うのもおすすめです。短冊状に切った長芋をポン酢などお好みの調味料で和えます。わかめやのりなどの海藻類を加えてボリュームアップしたり、わさびや梅などの香りを添えたりするのもよく合います。酒の肴や箸休めにもぴったりの一品です。長芋入りお好み焼き、チヂミ
長芋をすりおろしたものをお好み焼きやチヂミなどの生地に適量加えると、もっちりとした食感に仕上がります。写真は、刻んだキャベツとニラにすりおろした長芋と溶き卵を加えたものを香ばしく焼いた一品。長芋の割合を増やすと、小麦粉などを使わなくても上手に焼き上げられますよ。長芋のグラタン、シチュー
すりおろした長芋は、豆乳などで伸ばしてホワイトソース代わりに使うのもおすすめです。写真のグラタンは、ニンジンやキノコなどを炒めたものの上に、すりおろした長芋と豆乳を混ぜて白みそで味付けしたホワイトソースを加え、オーブンで焼いたもの。小麦粉と牛乳を使用する一般的なホワイトソースと比べて、あっさりとしたヘルシーな仕上がりです。長芋入り蒸しパン、パンケーキ
すりおろした長芋を加熱すると、モチモチとした食感が生まれます。これを活用して、蒸しパンやパンケーキの生地に長芋を混ぜるのもよく合います。写真は、長芋と黒豆の米粉蒸しパンです。冷めてもしっとりとした味わいが楽しめます。長芋をおいしく食べて、健やかに過ごそう
古くから滋養のある食材として親しまれてきた長芋には、カリウムやビタミンB群のほか、ジアスターゼと呼ばれる消化酵素なども豊富に含まれています。生でそのまま食べるだけでなく加熱調理にも向いていることがわかりました。今回紹介した食べ方を参考に、いろいろな料理に活用してみてはいかがでしょうか。長芋をおいしく味わって、健やかに過ごせますように。長芋の栽培方法についてはこちら
長芋は家庭菜園でも手軽に栽培できます。栽培方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。(※栽培記事が完成したら、リンクを挿入してください)