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- 株式会社クリアー 代表取締役
東 直斗(ひがし なおと)西研究所公認MGインストラクター。 和歌山県田辺市出身。ソフト開発会社でエンジニアとして勤務の後、(株)藤原農機(現:GROWLAND)にて、農機具の仕入販売に加えて修理やEC・物流運営・宅配レンタル事業の開発など経営幹部として経験し、グループ企業として株式会社クリアーを設立。 「経営者の家庭教師」として、会計や経営の知識に加えて地方ビジネスの知見、DXやデータ分析の知恵、豊富な実務経験を活かして各地で個別企業支援を行う。…続きを読む
売上が極端に少ないわけでもない。従業員も毎日働いてくれている。社長自身も朝から晩まで動いている。
それなのに、通帳を見るとなかなかキャッシュが増えていかない。
こんなとき僕が確認するのは、売上だけではありません。
「毎月、人にいくらお金が出ていっているのか」
そして、
「その人たちの仕事を作るために、仕事そのものを増やしていないか」
というところです。
今回お伝えしたいのは、人を減らしましょうという話ではありません。
農園が得られる利益の範囲で回せるように、作るものと仕事を絞る。
これができると、忙しさに追われる経営から抜け出し、結果としてお金も残りやすくなります。
実際、ある農園では、以前は7人ほどで回していた仕事が、今では4人で回るようになりました。
そして変わったのは、数字だけではありませんでした。
何年か前より、なぜかキャッシュが増えていた農園
ある農園を支援していたときのことです。
その農園の数字を見ながら、ふと気づきました。
「何年か前と比べて、キャッシュに余裕が出てきているな」と。
売上は増えていないのに、人件費が少なくなっていた
特別にものすごく売上が増えたわけではありません。
では、何が変わったのか。
以前の状態と比べてみると、毎月かかっている人件費が少なくなっていました。
社長には「雇用を作りたい」という強い想いがあった
実はこの農園の社長には、「雇用を作りたい」という強い想いがありました。
僕は、この考え自体が悪いとはまったく思っていません。
人を雇い、仕事を作る。
経営者として、とても大切なことだと思います。
ただ、その想いが強いからこそ、当時は少し人を抱えすぎている状態になっていました。
「みんなの仕事を作らないと」が仕事を増やしていた
人を雇えば、毎月給料を払います。
すると社長としては当然、
「せっかく来てもらっているんだから、みんなの仕事を作らないと」
と考えます。
少量多品目で、仕事の種類を増やしていた
そこで、その農園では少量多品目でいろいろなものを作ったり、仕事の種類を増やしたりしていました。
人件費という毎月出ていくお金をカバーするために、売上を作ろうとしていたんです。
仕事を増やすほど、現場は複雑になる
でも、ここに難しいところがあります。
仕事を増やせば増やすほど、現場は複雑になります。
- 今日はこの作物。
- 次は別の作物。
- その後はまた違う作業。
- さらに別の出荷準備。
一人の人がいろいろな仕事を行ったり来たりするようになると、本人はずっと動いているのに、農園全体では思ったほど仕事が進まないことがあります。
マルチタスクが増えすぎるんですよね。
人が増え、仕事が増え、さらに忙しくなる循環
そして仕事の種類が増えると、
「人が足りない」
となる。
だから、さらに人が欲しくなる。
人が増えると、また人件費が増える。
その人件費を払うために、さらに仕事を増やさないといけなくなる。
こうして、
- 人を抱える
- 仕事を増やす
- 現場が複雑になる
- 人手が足りなくなる
- さらに忙しくなる
という循環ができてしまいます。
まさに「貧乏暇なし」の状態です。
7人でやっていた仕事が、4人で回るようになった
僕がこの農園の支援をするようになってから、たまたま人が減るタイミングがありました。
以前は7人ほどで仕事を回していたのですが、人が減った後にやったのは、
「残った4人で、今まで通り全部やろう」
ではありませんでした。
それをやれば、現場は間違いなく苦しくなります。
作る作物と仕事の種類を減らした
そこで、作る作物や仕事の種類自体を減らしていきました。
- 「これは本当に続ける必要があるのか」
- 「この仕事は利益につながっているのか」
- 「4人で無理なく回すなら、何をやめるべきか」
そうやって、一つずつ整理していったんです。
仕事そのものを減らしたから、4人で回せた
その結果、以前は7人ほど必要だった仕事が、4人で回せるようになりました。
これは単純に、
「7人分の仕事を4人に押しつけた」
という話ではありません。
仕事そのものを減らしたから、4人で回せるようになった。
ここがものすごく大事です。
キャッシュが増えた理由は「人を減らしたから」だけではない
ここだけを見ると、
「やっぱり人を減らせばお金が残るんでしょ」
と思うかもしれません。
でも、僕が伝えたいのはそこではありません。
今いる人数で回せるように、仕事の方を作り直した
人が減った後も、以前と同じ仕事量を残していたら、おそらく現場はもっと疲弊していました。
大事なのは、
「今いる人数で回せる経営に、仕事の方を作り直した」
ということです。
- 作物を減らす。
- 仕事を減らす。
- マルチタスクを減らす。
- 限られた人数でも、無理なく回せる状態にする。
利益の範囲で組み直したから、お金が残り始めた
その結果として、毎月出ていく人件費が減り、キャッシュが残り始めました。
つまり、
「人が減ったからお金が増えた」のではなく、「利益の範囲で回せる仕事と人員に組み直したから、お金が増えた」
ということなんです。
最初は、従業員さんにも不満があった
もちろん、最初からすべてがうまくいったわけではありません。
やり方を変えると、現場から不満が出ることもある
仕事のやり方を変えたり、今までやっていた仕事を減らしたりすると、従業員さんから不満が出ることもありました。
今まで当たり前にやっていたことが変わるわけですから、それは当然だと思います。
経営者が、
「こっちの方が効率がいいから」
と思っていても、現場で働く人にとっては、
「なんで変えるの?」
「今までのやり方でいいんじゃない?」
という気持ちもあります。
経営に余裕が出ると、従業員さんの表情が明るくなった
でも、経営に少しずつ余裕が出てくると、僕が見ていて明らかに変わったことがありました。
従業員さんたちの表情が明るくなってきたんです。
これって、すごく大事なことだと思っています。
お金を残すのは、社長だけのためではない
会社にお金の余裕がないと、社長も余裕がありません。
社長に余裕がないと、その空気は現場にも伝わります。
「売上を上げないと」
「もっと仕事をしないと」
「これもやらないと」
そんな状態では、みんなが常に追われます。
逆に、会社にお金が残り始めると、経営者にも余白ができます。
すると、現場の空気も少しずつ変わってくるんですよね。
だから「お金を残す」というのは、社長だけのためではありません。
従業員さんが安心して働ける会社を作るためにも、経営に余裕を持つことは必要なんです。
農業経営では「毎月出ていく人件費」を必ず見る
人を雇っている農園では、人件費は毎月出ていく大きなお金の一つです。
人件費は「毎月、ほぼ必ず出ていくお金」
会計上の細かな区分は別として、経営者としては「毎月、ほぼ必ず出ていくお金」として見ておいた方がいいと僕は思っています。
機械なら、買わない年もあります。
修理代も毎月同じ金額が出ていくわけではありません。
でも従業員を雇っていれば、基本的には毎月給料を払います。
だからこそ僕は、人件費を見るときに、
「この人数を抱えるために、必要以上に仕事を増やしていないか?」
までセットで見てほしいんです。
採算の低い仕事を増やすと、忙しさだけが増える
人件費を払うために売上を作る。
もちろん、それ自体は間違いではありません。
ただ、売上を増やすために採算の低い仕事までどんどん増やしてしまうと、忙しさだけが増えて、お金は残らないことがあります。
以前の記事でも書きましたが、経営では「売上をいくら作るか」だけではなく、最終的にいくら利益が残るかから考えることが大切です。
あわせて読みたい:
脱・売上至上主義。農業経営は「利益」から考える
マルチタスクを増やすほど、現場には余裕がなくなる
僕が農機具屋にいた頃から、たくさんの農家さんの現場を見てきました。
そこで感じるのは、忙しい農園ほど必ずしも儲かっているわけではない、ということです。
むしろ、
- 「あれもやる」
- 「これもやる」
- 「せっかくだから、これも売る」
と仕事を増やし続けた結果、みんなが忙しいのに利益が残らない農園もあります。
仕事の種類が多いと、小さなロスが積み重なる
特に仕事の種類が多いと、
- 道具を準備する。
- 場所を移動する。
- 作業内容を確認する。
- 途中までやっていた仕事を思い出す。
こうした小さなロスが積み重なります。
「この仕事をやらなくて済まないか」と考える
だから農業経営を楽にするには、
「もっとたくさん仕事をこなすにはどうするか」
だけではなく、
「そもそも、この仕事をやらなくて済まないか」
と考えることが大切です。
機械を入れても仕事の流れそのものが変わっていなければ、期待したほど楽にならないことがあります。
これは以前の記事でも詳しく書いています。
あわせて読みたい:
機械投資をしても農業が楽にならない理由。まず業務フローを見直そう
「雇用を作る」と「仕事を増やす」は同じではない
今回の農園の話で、僕が一番大事だと思っているのはここです。
採算の合わない仕事では、雇用を守れない
雇用を守りたいから、仕事を増やす。
一見すると正しいように見えます。
でも、採算の合わない仕事を増やして経営そのものが苦しくなってしまえば、長期的には雇用を守ることもできません。
だから、
「人がいるから仕事を作る」
のではなく、
「利益を生み出せる仕事を決め、その仕事を無理なく回せる人数を考える」
という順番に変える必要があります。
これは、人を数字として見るという話ではありません。
むしろ逆です。
従業員さんに長く安心して働いてもらいたいのであれば、会社側にお金が残る状態を作らないといけません。
「お金はいくら残っているのか」を一緒に考える
僕自身も会社を経営しているので、「年末越せるかな……」という感覚はよく分かります。
お金がない状態では、経営者も余裕がありません。
余裕がないと、判断も短期的になります。
だから僕が経営支援で一番大事にしているのは、難しい経営理論より、
「結局、お金はいくら残っているのか」
そして、
「どうしたら残せるのか」
を一緒に考えることなんです。
SEをしていた頃から、僕は複雑なものを分解して考えるのが好きでした。
農園経営も同じです。
仕事、人、作物、売上、利益を一度バラバラにして、「本当に必要なものは何か」を整理していく。
すると、意外と「やらなくてもいい仕事」が見えてきます。
明日から、まず「やめられる仕事」を一つ探してみてください
今回の記事を読んで、
「うちも仕事を増やしすぎているかもしれない」
と思った方は、いきなり大きく経営を変える必要はありません。
今やっている仕事を、紙に全部書き出す
まず、今やっている仕事を紙に全部書き出してみてください。
- 作っている作物。
- 出荷先ごとの作業。
- 日々の管理作業。
- 従業員さんにお願いしている仕事。
そして一つずつ、
- 「これは本当に利益につながっているか?」
- 「これをやめたら何が困るのか?」
- 「この仕事を続けるために、人を増やそうとしていないか?」
と考えてみてください。
その中から、一つだけ「やめられるかもしれない仕事」を見つける。
まずはそこからで十分です。
「何をやらないか」を決める
仕事を増やすことは簡単です。
でも、経営を良くするのは、案外「何をやらないか」を決めることだったりします。
あなたの農園では、人がいるから仕事を増やしていないでしょうか。
忙しさを維持するために、新しい仕事を作っていないでしょうか。
たくさん働くことと、お金が増えることは同じではありません。
- やることを集中する。
- そこで得られる利益の範囲で回せる人数にする。
- その人数で無理なく回せる仕組みを作る。
そうすると、お金だけでなく、経営者にも従業員さんにも少しずつ余裕が生まれてきます。
僕が今回の農園を見ていて一番うれしかったのは、キャッシュが増えたことだけではありません。
経営に余裕が出て、そこで働くみんなの表情が明るくなったことです。
お金を残すことは、数字だけの話ではありません。
会社で働く人たちが、安心して仕事を続けていくための土台でもあるんです。
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株式会社クリアー 代表・東直斗が、あなたの農園の数字と向き合います。
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