園芸家
Shabomaniac!幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む
クマラの特徴
もともとは500種以上が知られているアロエ属に含まれていましたが、大家族だったために2014年に分類が再編され、従来のアロエ属から「アリスタロエ属」「アロイアムペロス属」「アロイデンドロン属」「アロエ属」「クマラ属」「ゴニアロエ属」の6つに振り分けられました。クマラ属はハオルシア属に近いグループとされており、今のところクマラ属に分類されているのは「プリカティリス」と「ハエマンティフォリア」の2種です。そのためクマラという名前の認知度はあまり高くなく、上記の2種は今でもアロエとして扱われていることもあります。たいていのアロエがロゼット状に葉を広げるのに対し、クマラの葉はクジャクの尾羽のように対生し、扇状に展開していくのが特徴です。クマラの自生地
クマラは、南アフリカ西ケープ州西部にあるテーブルマウンテンの固有種です。プリカティリスとハエマンティフォリアは近縁で、互いに近い場所で自生しています。ハエマンティフォリアの自生地はプリカティリスよりも標高が高く、雨がよく降り湿度も高く、時には雪も降る山の上の斜面のようなところです。一方、プリカティリスは山の麓の方で、乾燥した場所に生えています。クマラの価格・入手のしやすさ
プリカティリスは数千円で、園芸店などで購入できます。ハエマンティフォリアも小さい苗であれば数千円ですが、滅多に市場に出回らないため入手が困難です。クマラの花
プリカティリス、ハエマンティフォリアとも、もともと属していたアロエ属に似たオレンジ色のつり鐘状の花を咲かせます。クマラの基本情報
分類 | ツルボラン科(ユリ科)クマラ属 |
原産地 | 南アフリカ・西ケープ州 |
生育型
プリカティリス
春秋型ハエマンティフォリア
秋春型Shabomaniac!さん
秋春型といっても厳冬期は動きが止まります。また、北海道のような寒冷地であれば夏でも成長を続けます。
栽培適温
プリカティリス
夏場は35℃くらいまでは耐えられます。冬は霜が降りない程度の温度、3〜5℃を保ちましょう。ハエマンティフォリア
関東地方であれば戸外でも冬越しできるほど寒さには強い方です。夏の高温多湿に弱く、35℃を超える日々が続くと枯れてしまいます。栽培難易度
普通〜難しい成長速度
遅めクマラの人気種
ここからはクマラ属のプリカティリスとハエマンティフォリアについて、それぞれの特徴を紹介していきます。栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど栽培難易度が低くなります。ハエマンティフォリア(Kumara haemanthifolia)
栽培難易度 | ☆☆☆☆☆ |
ある程度大きくなった株は、アロエらしいつり鐘状のオレンジ色の花を咲かせますが、栽培下での花付きはあまりよくありません。高温多湿と乾燥に弱く、成長も遅いため、その栽培の難しさと端正な姿から長らく貴品とされてきました。なかなか市場に出回ることもなく、有名な一方で育てている人は少数です。なお、学名には「ハエマンサス(ヒガンバナ科の球根植物)のような葉」という意味があります。
自生地は標高500〜1,700mのテーブルマウンテンの湿っぽい岩場です。冬の降水量は1,000〜2,000mm程度と日本と比べて非常に多く、雪に覆われることもあり、山の湧水や雨水が常に根方を流れている冷涼な環境です。近くには景勝地の滝があり、夏場も濃い霧や雲がかかって湿度が高く、高温にはなりません。暑さと乾燥に弱いのはそのためです。
プリカティリス(Kumara plicatilis)
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栽培難易度 | ☆☆☆ |
Shabomaniac!さん
プリカティリスはハエマンティフォリアと比較するとずっと育てやすい植物です。本種の魅力は立ち上がる樹形なので、園芸では幹を盆栽状に仕立てて楽しみます。コンパクトに育てるコツは、鉢のサイズを大きくし過ぎず、頻回に植え替えをしないことです。意図的に生育を抑制することで盆栽作りができます。反対に成長を早めたい場合、温室やハウス内に地植えすれば、みるみる大きくなります。
クマラの育て方
もともと生えている場所が異なるプリカティリスとハエマンティフォリアは、それぞれが好む環境や活動する時期にも違いがあります。特にハエマンティフォリアの自生地は特殊な環境なので、元気に育てていくにはコツが必要です。ここからは、季節ごとの水やり方法や日射の管理方法、肥料の与え方など、クマラの育て方を解説していきます。水やり
プリカティリスは春から秋にかけてよく動きますが、夏場は成長が鈍るのであまり水をやり過ぎないようにし、冬は休眠に入るので水やりは控えめにします。。ハエマンティフォリアの日本での生育期は3〜5月、10〜12月です。この時期は水を切らないようにしましょう。夏場に水やりをした後で30℃くらいまで気温が上昇すると、鉢の中が蒸れて植物が腐ってしまいます。かといって水やりを控えると根が枯れてしまうので、とにかく風通しを確保することが大切です。梅雨の後半から残暑のころまでは元気がなくなり、根がダメになったり外葉が枯れ込んだりしますが、秋になると新しい根を出します。1〜2月の寒さが厳しい時期は再び成長が止まるので、水やりは控えめにしましょう。
Shabomaniac!
ハエマンティフォリアは非常に高温多湿に弱いので、冷蔵庫の中で育てている人もいるくらいです。ただ、そこまでしなくとも東京あたりの気候であれば育てられます。
日当たり・置き場所
基本的にはプリカティリスもハエマンティフォリアも光を好むので日当たりのよい場所で管理します。ハエマンティフォリアは暑さに弱いため、温室で管理するのであれば一番風通しがよく涼しいところに置き、50%程度の遮光をかけて暑くなり過ぎないようにします。冬場は長いこと寒さにさらされると葉先が傷むため、東北や北海道などの寒冷地では戸外での冬越しは難しいでしょう。用土・肥料
プリカティリスは一般的なサボテン用の土でOKです。ハエマンティフォリアは比較的に酸性の土を好みます。肥料は用土に混ぜると根が傷みやすいので、液肥を灌水時に与えます。あまり濃度が濃くても根を傷めることがあるので、適切な希釈率を守ることが大切です。Shabomaniac!
ハエマンティフォリアを水苔で植える人もいますが、私はうまくいかなかったので今は鹿沼土を使用しています。肥料は灌水2回に対し1回くらいのペースでハイポネックスを与えています。肥料を与える頻度は多肉植物としてはけっこう多めですが順調です。
クマラの植え付け・植え替え
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鉢内で根がいっぱいになってきたら植え替えます。できれば1年に1回、少なくとも2〜3年に1回は植え替えましょう。