今回は、ヨーロッパでカット野菜が一般化している中で起きている「芯つきレタスのプレミア化現象」について、日本のこれからを含めて占います。
ヨーロッパの飲食店では芯つきレタスが流行?
今回は、レタスについてのお話です。先日、スペイン在住者から、「最近、スペインのレストランでは、レタスを芯がついた状態のまま半分または4等分にカットして、ドレッシングをかけて出すのが流行っている」と聞きました。また、オランダ在住者からもベルギーのおしゃれなレストランで、玉レタス半分を丸焼きにしてソースをかけたものを食べたと報告を受けました。その時はよく意味がわからず、「ふーん、それが流行なんだ」程度に考えていました。
イギリス人料理研究家のコメントにハッとする
そんな話を頭の片隅に置きつつも、のんきに生活していたある日、イギリス人料理研究家が旅をしてその土地からインスパイアされた料理を作る番組の中のあるフレーズが耳に入りました。「私、芯つきレタスってだーいすき。だって、カットサラダとは違うんだもん」
このフレーズが聞こえた瞬間、私の脳裏にはっきりとオランダのホウレンソウが浮かび上がりました。
オランダのホウレンソウを思い出す
オランダ在住時、スーパーマーケットで購入できるホウレンソウは、細い茎のついた丸い緑の葉っぱのものしかありませんでした。写真のようなホウレンソウが露地で栽培され、葉と茎が機械でガンガン収穫され、これがパック詰めで販売されています。いわゆるサラダホウレンソウなのか、味は濃くなくサラダで食べられる品種かつ販売方法です。もちろん、茎もなければ、根元に土がはさまっていることもない、葉っぱだけのホウレンソウです。移住後何年か経ってから、「ワイルドホウレンソウ」なるものをスーパーマーケットで取り扱うと聞いたときには、小躍りしたのですが、ふたを開けると(袋を破ると)、葉っぱは日本のホウレンソウに少し近づいたものの、やっぱり茎はない!
「私が食べたいのは、茎だ!」
マーケットに足を運ぶと、オランダの生産者が芯つき&土つきの日本に近い見た目と味のホウレンソウを販売していたので、“たまの贅沢”としてホウレンソウの茎を購入するためにマーケットに通いました。「茎」を失うまでは茎を求めていたことに気がつかないものです。根元に土がついていて、土を落とすのに躍起になる感じでさえ愛おしかったです。
芯つきレタスを求めてさまよう日が来るのか?
話をレタスに戻します。オランダだけでなく、スペイン、イギリス、ベルギーでも簡単に調理できるカット野菜は、需要が増えており、スーパーでも主流になっているのではないでしょうか。また、植物工場など安定供給ができる栽培方法が増えることで、自然と玉つきレタスより、リーフレタスの供給量も増えるでしょう。そうなると、芯つきのレタスはレストランで食べる特別なものになってもおかしくありません。オランダでホウレンソウの茎を求め歩いていたように。何十年かあとに、日本でもレタスの芯を求めてさまよっているかもしれません。
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毎週水曜日更新おしゃれじゃないサステナブル日記
紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate