夏から秋、そして冬へと向かう時期は、大地の様子も刻々と変わっていくとともに農作業も大詰めに入り、それと同時に収穫を喜ぶ季節であることを、秋の節気は教えてくれます。
※旧暦とは1872年12月3日を1873年1月1日とした新暦(グレゴリオ暦)以前に使用されていた、月の満ち欠けと太陽の動きから作られた太陰太陽暦。
2021年秋の二十四節気一覧と読み方
秋の二十四節気を紹介します。季節 | 二十四節気 | 新暦日付 |
秋 | 立秋(りっしゅう) | 8月7日 |
処暑(しょしょ) | 8月23日 | |
白露(はくろ) | 9月7日 | |
秋分(しゅうぶん) | 9月23日 | |
寒露(かんろ) | 10月8日 | |
霜降(そうこう) | 10月23日 |
▼一年分の二十四節気一覧はこちらをご覧ください。
秋の二十四節気
植物が栄えていた暑い夏を過ぎた秋の二十四節気は、涼しさや実りを感じさせる言葉に溢れています。▼夏の二十四節気はこちらをご覧ください。
秋へ向かう立秋
まだまだ夏真っ盛りと思える8月上旬ですが、二十四節気では立秋を迎えています。朝夕には、ときおり涼しい風が吹きはじめ、ふと秋のことを考えるころ、年半ばのご挨拶として送られる暑中見舞いも、ここからは残暑見舞いに。
白菜など9月に苗の定植を行う野菜は、このころから種まきをして育苗を始めます。
気候の変わり始め処暑
初夏に植えた稲が実り、綿も花が開き、果樹は梨やブドウが収穫のときを迎えます。暑さが落ち着いて気候が変わり始めるころなので、台風や暴風による被害が心配される時期でもあります。
秋分
夏に日照りをもたらしてくれた太陽も身を潜めていき、昼と夜の長さが同じになる日です。このころから徐々に夜が長くなっていきます。
お彼岸
秋分の日を中心とした前後3日間(合計7日間)は秋のお彼岸で、ご先祖様を敬う日です(春分の日を中心とした前後3日間は春のお彼岸)。秋に収穫された小豆を粒あんにして作られたのが「おはぎ」、冬を越えて固くなった小豆をこしあんにして作られたのが「ぼた餅」といわれています。
諸説ありますが、それぞれ秋の萩(はぎ)、春の牡丹(ぼたん)によせた呼び名になりました。
田の神様に感謝
春にお迎えして稲の生育を見守ってくれた田の神様が山へ帰る日ともいわれ、稲を実らせてくれたことに感謝をして歌や舞を奉納するお祭りが開かれる地域もあります。熊本県阿蘇神社では9月25日に「田実祭(たのみさい)」が開かれます。その年最初に収穫されたお米が供えられ、流鏑馬(やぶさめ)や相撲が奉納される例大祭です。
肌寒さを感じる寒露
朝晩の冷え込みは、肌寒さを感じるようになり、草木に結ぶ露も冷たく感じられるころ。稲刈り作業も落ち着いてくる時期なので、収穫を祝うお祭りが各地で催されます。
各地の秋の祭り
収穫を祝って、さまざまなお祭りが各地で開かれます。三重県伊勢神宮では、1年間のうちでもっとも大切にされている「神嘗祭(かんなめさい)」が3日間にわたり開かれます。御神楽(みかぐら)や、その年に初めて収穫したお米、海産物、農作物などを奉納し、神様へ感謝を伝える儀式などが行われます。
番外編:芋煮会
秋に旬を迎える里芋をふんだんに使った鍋を親しい人とシェアする芋煮会。里芋は保存しておくことが難しいことから、農繁期を終えた農家の交流の場で活用されたことが始まりといわれています。
農業に関係の深い秋の雑節
二十四節気は、古来中国から渡ってきました。日本の気候に合わせて設けられた節目、それが雑節です。その中から、秋の農作業の目安になる雑節を紹介します。二百十日と二百二十日
立春から数えて210日目と220日目(2020年は8月31日と9月10日)のことをさします。この二百十日と二百二十日は、昔から暴風や台風による被害で米が不作になることが多かった日です。江戸時代の暦学者・渋川春海(しぶかわ しゅんかい/はるみ)が、農業における注意すべき日として「二百十日」を貞享暦(じょうきょうれき)に記載したことからこの雑節が広まりました。
※貞享暦…渋川春海がまとめた、初めての日本独自の暦。
風を鎮めるお祭り
伝統的なお祭りには、豊作への祈りが込められたものが数多くあり、稲の収穫を迎えるこの時期は、台風や暴風の被害がないように祈りを捧げる祭りを行う地域があります。富山県八尾町「越中八尾 おわら風の盆」など、土地によって伝統や個性はさまざまです。
番外編:中秋の名月
1年の中でも特に美しい月を見ることができる日で、平安時代では宮中で月を愛でる行事でした。そこから、だんだん武士や庶民へと広まり、団子や収穫した作物が供えられはじめ、収穫祭のような意味を持ちました。現在の中秋の名月といえばお団子を食べる日というイメージですが、農家にとって二百十日と二百二十日を過ぎたこのころ、作物の稔りに感謝し、一年の農作業に安堵する気持ちを込めて月を眺めていたのかもしれません。
農業に関係の深い秋の七十二侯
二十四節気は1年を24等分の節気で表したものですが、1年を72等分にした七十二候もあります。それぞれの節目が俳句の一語のように記されています。綿柎開(わたのはなしべひらく)
綿の実を包んでいたガクが開き、ふわふわの白い綿花が顔を出して、綿が収穫期を迎える時期です。この白い綿花が糸となるのですが、繊維として紡がれるまでには、綿花の中に包まれている種を取り出し、綿毛だけを綿打ちしてほぐしたものから、地道に糸を紡いでいくという長い工程があります。
日常生活に欠かせないおなじみの素材ですが、これだけ手間をかけた品ですから、より大切に扱いたいという気持ちがあふれます。
禾乃登(こくものすなわちみのる)
田んぼの稲が実り、その重さで穂先が垂れてくるころです。ここで使われている「禾」は「のぎ」と読み、夏の二十四節気に出てきた「芒種(ぼうしゅ)」の「芒(のぎ)」と同じ意味合いを持ちます。
稲などの穀物の穂先に生えている毛のことをさし、これを持つ穀物の総称として節気の言葉に使われています。
涼しさを感じる秋の二十四節気
「立秋」や「処暑」「寒露」などの節気は、夏の暑さから徐々に涼しい秋の気配、冬に繋がる霜が降りてくるような気候を読み取ることができます。そして、二十四節気や七十二侯、雑節は、農作物にとって大切な日光や気温など気候の変化も教えてくれます。
皆さんの家庭菜園の目安にも二十四節気を活用してみてはいかがですか。
▼農業と二十四節気のことならこちらもご覧ください。
参考文献:白井 明大(著)有賀 一広(イラスト)(2012)『日本の七十二候を楽しむ-旧暦のある暮らし-』東邦出版
本間美加子(著)井上文香(イラスト)(2019)『日本の365日を愛おしむ-毎日が輝く生活歴-』東邦出版
久保田豊和(著)市川興一(イラスト)(2016)『新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵-畑仕事の十二ヶ月』家の光協会