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ライター - 紀平 真理子
オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。
食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
農業専門誌など、他メディアでも執筆中。…続きを読む

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農林漁業セーフティネット資金とは、農業者が近年頻発する気象による自然災害により影響を受けてしまったときや、予期せぬ経営環境の変化に伴い経営が悪化してしまった場合に、復旧や運転資金として借入できる資金です。また、新型コロナウイルス感染症によって経営に影響を受けた方への特例措置も講じられています。
農林漁業セーフティネット資金の基本要綱|長期的かつ低金利で利用できる

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農林漁業セーフティネット資金は、認定農業者だけではなく主業農家でも利用できる融資制度です。主に、災害や行政指導、経営環境の変化による経営の悪化など一時的な影響への緊急対策として、長期的に低金利で利用できます。ここでは、主に農業従事者の利用要件について説明します。
利用できる人
資金融資を受けるための条件は以下の通りです。
・農業経営改善計画を作成して市町村長の認定を受けた
認定農業者 ・市町村から青年等就農計画の認定を受けた
認定新規就農者 ・農業所得が総所得の過半を占める、または農業粗収益が200万円以上の個人
・農業売上高が総売上高の過半を占める、または農業売上高が1,000万円以上の法人
認定農業者についてはこちらで解説
利用要件
農林漁業セーフティーネット資金の対象は、以下のいずれかの状況に置かれている場合です。
災害
具体例)
台風、冷害、干ばつ、土砂崩壊、地震、雪害などの災害
行政指導
具体例)
BSEや鳥インフルエンザなどの発生に伴う家畜の殺処分や、畜産物の移動制限
社会的または経済的環境の変化による経営悪化
具体例)
1. 最近の決算期の粗収益が前年比10%減少している
2. 最近の決算期の所得率または純利益が前年より悪化している
3. 最近の決算期の所得の赤字幅が前年より縮小しているものの、依然として赤字が生じている
4. 前期の決算期で所得に赤字が生じ、最近の決算では所得が黒字化したが、今期と合わせてた2期合計で赤字である
5. 前期の決算期で所得に赤字が生じ、最近の決算では所得が黒字化したが、債務償還可能年数が20年以上である
6. 売掛金など債権の回収条件、買掛金など債務の支払条件その他の取引条件の悪化が生じている
7. 一時的な農産物価格の低下や、資材価格の高騰などにより経営に著しい支障をきたしている
※農林水産省が指定した事象に限る
8. 取引先金融機関の業務停止命令や、貸し渋りなどの影響を受け、資金調達に支障をきたしている
9. 取引先の倒産により、農産物販売や資材の仕入れなどに支障をきたしている
参考:
株式会社 日本政策金融公庫返済期間は10年以内
返済期間は10年以内で、そのうち据置期間は3年以内です。
借入限度額
借入限度額は600万円です。簿記記帳を行なっており、特に必要と認められる場合に限り特認となり、その場合は、年間経営費などの6/12以内です。
借入金利(年)
令和2年11月6日時点の年利は、0.16〜0.24%です。
新型コロナウイルス感染症で経営が困難な場合も利用可能

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新型コロナウイルス感染症により、農業経営に影響が生じた場合にも農林漁業セーフティネット資金を利用できます。返済期間の延長、借入限度額の増額、実質無利子期間の設定、実質無利子・無担保での借入などの特例措置が講じられています。
利用できる人
資金融資を受けるための条件は以下のうち、新型コロナウイルス感染症により資金繰りに著しい支障をきたしている方です。
・農業経営改善計画を作成して市町村長の認定を受けた
認定農業者 ・市町村から青年等就農計画の認定を受けた
認定新規就農者 ・
主業農業者 ・
集落営農組織など返済期間は15年以内
返済期間は15年以内で、そのうち据置期間は3年以内です。
借入限度額
借入限度額は1,200万円です。ただし、簿記記帳を行なっている場合は、年間経営費または粗利益の12/12に相当する額のいずれか低い額の借入ができます。
借入金利(年)|利子助成により5年間は実質無利子
年利は0.16〜0.20%です(令和2年6月18日現在)ただし、
利子助成により貸付当初5年間は実質無利子で借入ができます。
担保・保証人
実質無担保、無利子で借入ができます。
農林漁業セーフティネット資金の借入について相談したい時は

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借入を希望する場合は、最寄りの
日本政策金融公庫支店やJA、銀行、各市町村、普及指導センターなど窓口にお問い合わせください(必要書類についても同様)。災害関連で借入を希望する場合は、市町村長が証明した書類の添付も必要です。
予期せぬ事態で経営が困難になった時は検討しよう

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農業経営には、予期せぬ事態が起こり得ます。予期せぬ事態とは、自然災害だけではなく、一時的な農産物の価格低下や取引先の倒産、また昨今の新型コロナウイルス感染症による経営の悪化などさまざまな要因が考えられます。このような原因で、一時的に経営が困難になってしまった場合には、一人で悩まず、農林漁業セーフティネット資金の活用なども検討しましょう。