型にはまらないためのSDGsとは?|おしゃれじゃないサステナブル日記No.34

【連載】農業・食コミュニケーターとして活動する 紀平真理子さんの「農業と環境」をテーマにしたコラム「おしゃれじゃないサステナブル日記」。 第34回は「型にはまらないためのSDGsとは?」近ごろよく耳にする機会が増えたSDGsについて、筆者がオランダで学んだ講義をもとに、その本質を考察していきます。


畑でSDGs

写真提供:maru communicate 紀平真理子
前回は「ボランティアを労働力としてカウントした農業経営が成り立つ条件は?(No.33)」で、オランダのボランティア事情にふれました。


今回は、ついにSDGs(持続可能な開発目標)に足を踏み入れます。タイトルにサステナブルとついているのに、SDGsに言及しないのは不自然だと思っていましたが、複雑だし、きちんと伝わるか不安で気が進みませんでした。

なぜ決意できたかというと、2015年に参加したオランダのエラスムス大学でのマックス・ハーフェラール特別講義「MDGs(ミレニアム開発目標)を振り返り、これからのSDGsに向けて」を聴講したときのレポートが出てきたため。これをもとに回想し、現在のSDGsに言及します。

フェアトレード認証のマックス・ハーフェラール財団によるSDGs講義

SDGsオランダ
写真提供:maru communicate 紀平真理子
「マックス・ハーフェラール特別講義」について説明すると、書籍『マックス・ハーフェラール』は、著者のムルタトゥーリが、19世紀のオランダ領東インド植民地における実態を告発した小説です。「あれ?マックス・ハーフェラールに聞き覚えがある」と思う人もいるかもしれません。そうです、かの有名な世界初のフェアトレード認証のマックス・ハーフェラール財団は、この小説のタイトルに由来しています。

 グローバル・サウスの労働環境改善のためのフェアトレード認証

フェアトレード
出典:Pixabay
マックス・ハーフェラール財団のラベルは、1988年に設立以来、主にグローバル・サウスでのコーヒー、果物、カカオ、ワイン、綿花の生産者や貿易業者の労働条件を改善するための取り組みを消費者に伝えるために使用されてきました。グローバル・サウスとは、発展途上国と同義といったら支障があるかもしれませんが、該当地域や国は基本的に同じです。オランダの学生時代の教授から口を酸っぱくして「発展途上国ではなく、グローバル・サウスと言うように」と指導を受けていたので、グローバル・サウスと表記します。

オランダのロッテルダムにあるエラスムス大学では、2006年より定期的にマックス・ハーフェラール特別講義と題し、サステナビリティをテーマにさまざまな講義を実施しています。

マルチアクターによるマルチパースペクティブへ

SDGs講義
写真提供:Tashi
特別講義の中では、終始MDGsを振り返り、SDGsへの移行に伴い、変化しなくてはいけない点について述べられていました。

・ネガティブな枠組みから、ポジティブな枠組みへ
・政府などのモノアプローチ(ひとつのアプローチ)から、政府+企業+市民マルチアクターアプローチ(さまざまな当事者からのアプローチ)へ
・グローバル・サウスの特別な問題から、普遍的な問題へ

印象に残った言葉は、「私たちの問題として考えてください」です。

そのとき、SDGsとは、行政と企業と市民というマルチアクター(さまざまな当事者)がマルチパースペクティブ (さまざまな視点)で現状をとらえ、ものごとを考えることという説明を受けて、「お!おもしろそう」と感じたことを鮮明に覚えています。さらに、こちらを立てたらあちらが立たずのようなジレンマが楽しめたり、考えが堂々巡りになるのもSDGsの魅力だと思った記憶があります。なので、型にはまらないためのSDGsに、はまりにいっているケースを見ると、不思議な気持ちになります。

堂々巡りで小さな選択を積み上げるのがSDGsのおもしろさ?

自由なSDGs
写真提供:maru communicate 紀平真理子
達成目標などいろいろ事情はあると思いますが、私のような市民レベルでは、SDGsの以下の点に関心を抱いています。

SDGsという物差しで眺めてみたら、今まで普通にやっていたことが実現できていたのでこの仕組みは大事だったと気がつくとか、もう一歩先を考慮して、一緒に働く人ややり方を少し変えてみようかなとか。なんとなく、皆が考えるきっかけになるところです。

思考の起点が同じでも、矢印の先や帰結はそれぞれがまったく違っていいと思います。これこそがマルチパースペクティブではないでしょうか。

世界から飢餓をなくしたい(目標2:飢餓をゼロに)
→食料を確保するためには、化学肥料や化学農薬などの技術も必要?(目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう)
→もし使用をやめたら、グローバル・サウスでは草むしりなど安い労働力として雇われる人は出てこない?(目標10:人や国の不平等をなくそう)
→使い過ぎると環境にはどう影響するんだろう?(目標15:陸の豊かさも守ろう)
→グローバル・サウスでは、そもそも農業資材の使用基準が整備されている?(目標12:つくる責任つかう責任)
→基準があったとしても、識字や数字を把握できる教育を受けられているのかな?(目標4:質の高い教育をみんなに)

このような感じで、考え出すと堂々巡りになり、これらを一つずつ調べていくほどに、何が正解なのかわからなくなります(笑)。でも、それぞれのアクターが考え続けることこそがSDGsだし、消費者としても悩み迷いながら、自分が何を大事にしたいか考えて小さな選択を積み重ねていくことが大切ではないかと思っています。SDGsのこれとこれを実現していますよ、SDGsのこの項目を満たしているからいい製品・会社ですよというだけで終わったらもったいない!

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おしゃれじゃないサステナブル日記

紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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