庭にあると秋が楽しみになる柿の木。育て方のコツはこちら。
柿酢とは?
「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざもあるほど栄養価が高く、民間療法などでは、柿は実だけでなく葉やヘタも余すところなく使われてきました。そんな栄養豊富な柿を発酵させて作ったものが「柿酢」。りんご酢などの果実酢と同様に甘味がありフルーティーで使いやすいのが特徴です。市販品もありますが、材料が手に入れば家庭でも比較的簡単に作れるため、手作りする方も多いようです。
今回は、私自身が携わった2019年の「おばあちゃんの知恵から学ぼう。食から始まるシンプル暮らし術(なごや環境大学共育ゼミナール)」での経験をもとに、柿酢づくりについてご紹介したいと思います。
手軽にできるりんご酢の作り方はこちら。
柿酢の作り方
柿酢の作り方としては、「柿を発酵させて作るもの」と「酢のなかに柿を漬け込むもの」の大きく2種類があります。今回は、より本格的な風味が味わえる前者の作り方をご紹介します。〈材料〉
・柿(※) 瓶に入れた時にすき間ができる量
・消毒した透明な保存瓶(果実酒づくり用のものなど)
・ザルまたは目の粗い布巾
柿は甘柿だけでなく、渋柿でも作ることができます。完熟しているものの方が発酵しやすいですが、青くて固いものでも大丈夫です。
作り方
1.茎やヘタなどは切り落として、発酵しやすいように果実をつぶし、透明な保存瓶に押し込むように入れる(完熟したものは手でつぶすこともできるが、固い柿の場合はトンカチなどで叩くようにする)。2.空気を通すために、瓶の上に布などを置き、ひもで結んで瓶に固定する。そのまま涼しい場所に置いて室内で発酵させる(密閉すると瓶のなかでガスが充満し、ふたが飛ぶ場合があるので注意!)。
3.小さな泡が出てきたら、発酵が始まったサイン。2~3日ごとに、清潔な箸を使って全体を混ぜる。
4.発酵が完了したかどうかの目安は、混ぜても泡が出ないこと。柿の種類や状態によっても異なるが、1カ月程度で完成する。
5.浮いている固形物を、ザルや目の粗い布巾などで濾す(時間がかかるので、気長に待ってくださいね)。
ポイント・注意
・発酵を促進させるためにイースト菌を加えて仕込む方法もありますが、「柿を瓶に入れて寝かせる」だけでも完成します。・できあがった柿酢は、発酵を止めるために熱を加える場合もあります。容器などに移した柿酢を蒸し器に入れて、10分以上加熱します。この工程はお好みで行ってください。
柿酢のカビ、大丈夫?
常温で発酵させるため、カビが生える場合もあります。青~黒色、赤色などのカビが生えてしまった場合は、処分するようにしてください。固形物が浮いたままだとカビが生えやすいので、混ぜる際によく観察するようにしてくださいね。表面にできる白い膜は、カビではない可能性が高いです。この場合は、そのまま発酵を続けても大丈夫です。また、柿酢が完成に近づくとゼリー状のものができる場合もありますが、こちらもカビではありません。見分けるのが難しく心配な場合には、安全のために処分することをおすすめします。
柿酢の効果と副作用
柿酢には、「カリウム」が豊富に含まれています。米酢や黒酢などと比べてもその含有量は格段に多く、注目されています。このほか、疲労回復や風邪予防への効果が期待される「ビタミンC」や、抗酸化作用や美肌効果が期待される「ポリフェノール」なども含まれています。身体を若々しく健やかに保つのにも欠かせない柿酢ですが、酸が強いため、そのまま飲むと逆に内臓を痛めてしまう可能性もあり、注意が必要です。水などの液体で割ったり、はちみつなどの甘味を加えたりしていただくようにしてください。
柿酢の飲み方
柿酢を使ったサワードリンク
柿酢が完成したら、まずは「水割り」か「お湯割り」でシンプルに味わってみましょう。私もよく飲みますが、これをいただくと身体がすっきりするように感じます。〈材料〉1人分
・柿酢 大さじ1/2
・水(またはお湯)カップ1(200㏄)
・はちみつ(お好みで)大さじ1/2
・すだちや柚子、レモンなどの柑橘類(お好みで)少々
作り方
コップに全ての材料を入れて、よく混ぜる。ポイント
酸っぱい味が好きな方は、柿酢を「大さじ1」に増量してください。柿酢を使ったおすすめ料理
「柿酢を仕込んだけれど、使い方がわからず困っている」という声も時々聞きますが、柿酢は、ほかのお酢と同様にいろいろな料理に使うことができます。独特のフルーティーな香りがあるため、肉や魚の臭みを消したい時はもちろん、爽やかな一品に仕上げたい時にも役立ちます。紅白なます
おせち料理の一品「紅白なます」は、大根とにんじんを千切りにして、甘酢に漬けた酢の物のこと。一般的なレシピでは砂糖をたっぷり使うことも多いですが、甘さと香りがある柿酢を使えば砂糖の量を大幅に減らすことができます。酢飯
ちらし寿司などの酢飯を作る時にも、柿酢を使ってみましょう。酢のツンとした香りが苦手な方や、子どもにも食べやすい味に仕上がります。紅白なますと同様に、砂糖の量を減らしてもおいしくいただけます。魚や肉などのマリネ料理
魚や肉などのソテーや揚げ物に刻んだ野菜を加えて、柿酢を使ったマリネにします。柿酢の爽やかな香りは、玉ねぎやセロリなどの香味野菜との相性も良いので、ぜひたっぷりと加えてください。時間が経つほどに味が染み込むので、まとめて作っておけば忙しい時にも助かります。スパイスやハーブを使った料理
マリネのところでも少し書きましたが、柿酢は香りの良い食材にもよく合います。写真は、茹でた菜の花とじゃがいもを「マスタード+オリーブオイル+柿酢+塩」で和えたサラダです。マスタードなどの洋のスパイスやハーブなどにもぜひ使ってみてくださいね。果物のゼリーやデザート
隠し味として、果物のゼリーに少しだけ加えるのもおすすめです。酸味が加わることで、素材の甘味が引き立ちます。そのほか、旬の果物を使ったコンポートなどのデザートに少量使うのもよく合います。自家製柿酢で、我が家ならではの味を食卓に
柿を瓶に詰めて寝かせるだけで作れる柿酢。生の柿と同じく栄養がたっぷりと含まれ、先人の知恵が凝縮された保存食のひとつです。穀物酢や米酢などと同様に、いろいろな料理に使えます。さらに「自分で手作りした」ということで愛着が湧きますし、家族で季節の食材について話すことで子どもの「食育」にもつながります。シンプルな作り方ですが、材料や発酵させる時期・場所などの違いによって、同じように作っても少しずつ違う味わいになるのも手作りならではの面白さです。そして、手作りの柿酢を眺めながら「どんな料理に使おうかな」と考えるのも楽しいものです。ぜひ我が家ならではの味を探してみてくださいね。