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【連載第8回】農村の魅力を今こそ発信!|農業なくして持続可能な社会なし


農業や農村の日々を、現地に来てもらわずに伝える「オンラインファームツアー」という活動を始めた大津愛梨さん。でも本当に農業の魅力を伝えたいのは女性農家!? 熊本の農家の日々を、子育てや家族の話を中心に、世界で注目を浴びる“SDGs”も絡めた連載。

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大津 愛梨

慶応大学環境情報学部卒業後、夫と共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里の南阿蘇で農業後継者として就農、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培している。女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長、里山エナジー(株)の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。農業、農村の価値や魅力について発信を続ける4児の母。…続きを読む

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みかんを収穫する女性農家

提供:O2Farm
九州のほぼど真ん中、熊本県南阿蘇村という場所で米農家をしているO2Farm(オーツーファーム)のEriこと大津えりと申します。「農業者こそ“SDGs(持続可能な開発目標)”を達成するための立役者!」という視点で連載をしています。

月間連載アーカイブはこちら

【毎月更新!】農業なくして持続可能な社会なし

「農と郷(ごう)」と書いて、”Not to go キャンペーン”

田舎のヒロインズ オンラインファームツアー
提供:NPO法人田舎のヒロインズ
少し前からの「Go to トラベルキャンペーン」で地方にも人が増え始めていますが、南阿蘇に限らず、農村地帯は人口密度が低く超高齢社会。ウイルスに感染すると、重症化する可能性が高い場所でもあります。
そんなわけで、「今、農村に来るのはちょっと待って」というメッセージを込めた活動を、私が6年前から代表を務めているNPO法人田舎のヒロインズの女性農家仲間たちと始めました。

その活動とは、全国のメンバーが、それぞれの農業現場をスマホ片手にライブ配信する、「オンラインファームツアー」です!別名、“Not to go キャンペーン”。「農と郷(ごう)」という意味も含めてみました。

これまでに、熊本県南阿蘇村のO2Farm、北海道士別市のイナゾーファームから谷えみちゃん、長野県軽井沢町の大塚なほ子ちゃんがツアーを実施。
高性能のカメラではなくスマホで撮影しているので、手振れあり雑音あり&うまいガイドもできないですが、私たち女性農家の想いや夢を語りながら周る農村ツアーは割と好評で、南阿蘇から配信した初回のツアーは2,000回近くも視聴されました。

こんなことなら、もっと早くやっておけばよかった!

ミニトマトを収穫する女性農家
提供:NPO法人田舎のヒロインズ
ライブ配信をやってみて思ったんですが、もっと練習して構成もしっかり作れたら、農村の美しさや現状を知ってもらういいツールになりそう!ということ。

そもそも農村って車がないと行きにくいし、知人がいないとなかなか行かない。でも、農業の生産現場がどんなところかを皆に知ってもらいたいし、豊かな生態系や元気な子どもたちを育んでいることも伝えたい。
そのための農業現場のライブ配信は、機材や技術やお金がいるわけでもないので、新型コロナウイルスが終息しても取り組むべき「情報発信」の在り方だと感じました。

案ずるより産むが易し、ってやつですかね。もっと早く思いついていれば良かった(笑)。改善点はいろいろありますが、今後にご期待ください♪

共感者の訪問は、ソーシャルディスタンスを取ったうえで歓迎!

かつおぶしを削る女性
提供:O2Farm
そうはいっても、例年の比ではありませんが、なんだかんだ来客は絶えないO2Farm。そういうときは、しっかりソーシャルディスタンスを取ったうえで、心から歓迎します。

スケジュールや家族の都合上で訪れる方たちは、国内からだけではありません。阿蘇に留学中のオーストリア人、ご主人が熊本出身だというタイ人、高校から日本に留学しているという台湾人の大学生など、なかなか多様な面々。

皆さん、異口同音に「なんでお宅にはこんなに海外から人が来るんですか?」と聞いてきますが、「それはあなた方が来る理由と一緒でしょ」と言いつつ、正直いって本当のことは私にもわかりません。
でも理由の1つに、“持続可能な社会を目指して農業をする”という志に共感してくれている、というがあると思うので、そんな方々がたくさん来てくれることに日々感謝しています。

泥だらけのインタビュアーさん

農道で笑う女性3人
提供:O2Farm
農業現場からの継続的な情報発信というのは、本当に大事なことだと思っています。こうやって自ら文章を書いて情報発信も続けていますが、取材依頼がある時はできる限りお引き受けするようにしています。ただ、芸能人でもないのでギャラは出ないし、農作業や育児で忙しいのに軽く2時間ぐらいは時間を取られるので、割に合うどころじゃありません。

最近は取材の依頼を受けると、「農作業を手伝ってくれるなら」という逆リクエストを出しています。ギャラが出ないのはわかっているうえでのダメ元の吹っ掛けなんですが、断られたことはありません(笑)。「わーい、ヤッター!」と、内心ほくそ笑んでいます。
先日はウェブマガジンの取材を受けたのですが、しっかり作業もしてくれたことがわかるほど、インタビュアーさんの服は汚れていました。ありがたいことです。

伝えたいことがあるのは、消費者よりも同業者

女性農家談義
提供:O2Farm
農業の大切さや魅力を消費者の皆さんに伝える、というのはもちろん大切なことなんですが、ここ数年はむしろ女性農家に伝えたいことがいっぱい。

父親の働く姿を、子どもたちが日常的に見ることができる幸せ。
自分たちが作ったものが食卓にのり、ごはんを家族で一緒に食べられることのありがたさ。
農業を続けることで果たしている数え切れない役割。


そういった、農村で子育てすることの幸せや、私たちがこうして農業に従事していることの意義を、女性農家自身にもっと自覚してもらえたら、と思うからです。

わからないことだらけだから、共有&発信したい

こう書くとおこがましい感じがしますが、私は非農家から「農家の嫁」になったことで、知らなかった農業の世界に入り込みました。もともと農業をしている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、農業に関係なく育ってきた人にとっては、わからないことだらけなんです。
「農業なくして持続可能な社会なし」というメッセージの発信は、農業者自身がそんな「特異性」を認識することから始まるような気がしています。

そんなわけで、南阿蘇の女性農家を集めて「子育て談義」なるものを開催しました。いやぁ、盛り上がったのなんの。女子会ってあんまり得意じゃないんですが、夫との作業分担や子育て中の楽しみや苦しみなど、たくさん共感しあえて楽しかったです♪

週間連載のコラムも掲載中!

【週間連載】家族経営農家の日常を配信「ハッピーファミリーファーマー日記」
【毎月更新!】月間連載アーカイブ「農業なくして持続可能な社会なし」

大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」

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