この記事では、都道府県別の生産量や年別の推移を紹介しつつ、生産量を増やす栽培のポイント、メリットやデメリットをわかりやすく解説します。生産量アップと「おいしさ」を兼ね備えて、増収を目指しましょう!
都道府県別の生産量ランキングと年別推移
令和元年産の都道府県別生産量ランキングと過去10年間の年別生産量の推移を紹介します!自分の収量と比較して、自分の取り組みを振り返るきっかけにしてみるのもいいかもしれません。2019年産の都道府県別生産量ランキング TOP10
収穫量(生産量)の上位10位は下表の通りです。上位3道県が全体の20%ほどを占めます。10aあたりの反収を見ると1位は山形県で、飼料用米等も含まれるため一概に比較はできませんが、627kgの収量があります。作付け面積の総数に対する主食用の割合が90%を超える北海道でも571kgの収量がありました。都道府県 | 収穫量(t) | うち主食用(t) | 面積(ha) | 反収(kg/10a) |
新潟県 | 646,100 | 578,900 | 119,200 | 542 |
北海道 | 588,100 | 553,900 | 103,000 | 571 |
秋田県 | 526,800 | 449,400 | 87,800 | 600 |
山形県 | 404,400 | 356,800 | 64,500 | 627 |
宮城県 | 376,900 | 357,000 | 68,400 | 551 |
福島県 | 368,500 | 338,200 | 65,800 | 560 |
茨城県 | 344,200 | 334,700 | 68,300 | 504 |
栃木県 | 311,400 | 288,800 | 59,200 | 526 |
千葉県 | 289,000 | 277,100 | 56,000 | 516 |
岩手県 | 279,800 | 267,600 | 50,500 | 554 |
年別生産量の推移
年別の生産量の推移は下表の通りです。日本の水田面積は合計150万haほどで、毎年800万t近い生産量があります。近年、高齢化や後継者不足などにより作付け面積は年々減少しています。それと比例し、生産量もここ10年間で70万tほど減っています。作付けされているお米は飼料用米が増加しており、主食用は減少傾向にあります。品種改良や生産技術の向上により10aあたりの収量は増えています。産年 | 収穫量(万t) | 反収(kg/10a) |
2019年 | 776 | 528 |
2018年 | 778 | 529 |
2017年 | 782 | 534 |
2016年 | 804 | 544 |
2015年 | 798 | 531 |
2014年 | 843 | 536 |
2013年 | 860 | 539 |
2012年 | 851 | 540 |
2011年 | 839 | 533 |
2010年 | 847 | 522 |
生産量アップにはずせない5つのポイント!
生産量ランキングから目標にするべき生産量が見えてきたら、次は実践です!生産量を向上させるためには、土壌や稲の状態を丁寧に観察し、いかにその状態に合わせた栽培ができるかに尽きます。ここでは基礎的なポイントから特に大切なポイントを5点ご紹介します。
土壌診断|リン酸とケイ酸を要チェック!
まずは土壌の状態を診断し、栽培に適した土を目指しましょう。診断結果の中で特に着目するポイントは「リン酸」と「ケイ酸」の数値です。リン酸が少ない場合は、分げつや穂数が少なくなる可能性が高まります。また、ケイ酸が少ない場合は、光合成をする力が低下し、高温が続く年には乳白粒が多くなる傾向があり、病害虫に対する抵抗性も低くなります。
同じ地域でも圃場の場所や水域によって土壌状態が異なる可能性があるため、圃場や区域毎に診断することをおすすめします。
深耕(しんこう)|しっかり耕して収量減の対策
通常の耕運よりも深めに耕す深耕は、減収の原因にもなりかねない「倒伏」を防ぐために有効な手段です。前作の収穫後に15cm程度の深さでしっかりと秋耕を実施しましょう。深耕して根張りをよくすることで、根域を広げ根張りがよくなり、倒伏を防ぎ、登熟の向上にもつながります。
深耕をする際は、土層を反転させずに耕すサブソイラや土壌を破砕し反転させるボトムプラウなど、さまざまな機械があるので土壌の状態に合わせて選択しましょう。
水管理|田植え後と中干し後の水管理は要注意!
適切な水管理を実施することで、根や穂の生育を促進させる効果があります。特に大切なのが田植え後と中干し後の水管理です。田植え後は水温を高めます。根の活着と生育を促進させるために、通常は3cm程度の浅水管理を実施し、低温時には6cm程度の深水にして保温します。
中干し後は入水を止めて、田面が乾く前に再び水を入れる「間断かん水」をします。「間断かん水」によって、水と酸素がしっかりと供給されて幼穂と根の発達が促進します。
穂肥(ほごえ)|窒素を追加して収量アップへ
籾を充実させるために行う追肥を穂肥といい、出穂前20日前後に葉色を確認しながら施用のタイミングを判断します。このときに窒素を補給することで、稲の光合成能力を高め、収量を増やす効果があります。施肥量は一般的に窒素成分で1〜3kgですが、品種や環境に応じ適切な量が異なるので施用前に確認が必要です。
適期収穫|刈り遅れ厳禁!一瞬のタイミングを見逃さない
適期での収穫時期を逃して刈り遅れてしまった場合は、胴割粒や白未熟粒が発生するため、品質や生産量の低下につながります。積算温度や稲の黄化率をみながら適切な時期に収穫ができるようスケジュールを調整しましょう。また、収穫後の籾の過乾燥も胴割れの原因となるため、収穫時期と合わせて注意が必要です。
さらに生産量を増やす秘訣は品種選びにあり!
栽培する品種の選び方は生産量を増やすうえでも重要です。いくら他県で実績がある品種だとしても自分の地域の環境に合わなければ意味がありません。自分が栽培する地域の環境にあった品種を選びましょう。生産量を増やす手段として、多収米の品種を栽培に挑戦してみてもいいかもしれません。近年では品種改良により食味品質も向上してきています。「つきあかり」や「あきだわら」など品質に定評がある品種もあります。
多収米についてはこちらの記事をご覧ください。
生産量を増やすメリットとデメリット
生産量の増加は良い印象がありますが、一概にそうとは言い切れません。メリットとデメリットを見比べてみましょう。メリット|生産量アップ=販売量&増収につながる可能性も
生産量を増やすメリットとして、単純に販売量を増やせる可能性が出てきます。例えば、今までは中小の取引先を専門にしていた場合でも、生産量が増加してまとまった収量が見込めれば大口の取引先と交渉できる材料になります。もし交渉がうまくいって販売先が増えれば、自ずと増収につながります。デメリット|生産量がアップしても求められるのは「おいしさ」
いくら生産量にこだわっても実際にお米を食べる消費者が求めるものは「おいしさ」です。質よりも量を無理に追い求めることで、お米の食味という重要なポイントを見落とすことにもつながりかねません。過剰な施肥などにより生産量を増やし、一時的に収益が上がったとしても、おいしくないお米を買い続ける人はいません。結果的に大切な販売先の信頼を失なってしまうかもしれません。また生産量が増えることで作業量も増える可能性があることは考慮する必要があります。作業量の増加に伴って機器の購入や人件費の増加など経費が増え、結果的に経営を圧迫することも考えられます。