これまでの「ハッピーファミリーファーマー日記」
首都圏に帰れなくなっちゃった女子大生
新型コロナウイルスの感染拡大やそれによる休校等で若者たちが帰省し、農村の平均年齢が下がっているかも!?と感じている今日この頃。帰省や出張による感染拡大も懸念されていますが、帰省と出張は全く意味が違うと思います。3密の可能性が都市よりずっと低い農村地帯。帰る理由やツテがあるなら、早めに判断し、長期滞在のつもりで人口密度の低い農村に移った人に対しては、「グッドチョイス」と私は言いたい。批判もあるかもですが、終息の見通しが立たない中、若者たちが不安な気持ちで狭い部屋に引きこもるよりは、ずっと良いのではないかと思うからです。
授業はオンラインで
そんなことを思っていたら、春休みを利用して九州に来たところ、首都圏の事態が一気に深刻化したため帰らない方がいいかも、ということになった現役女子大生が、ツテを通じて我が家に流れ着いてきました。ひとまず様子をみよう、ということで受け入れたのですが、「授業はオンラインで受けられるようにするから、感染リスクの少ない南阿蘇にしばらく滞在させてもらえないか」という打診が、担当教授からきたのは到着の数日後。おっしゃる通りだと思ったので「わかりました」と返事をしました。
牛とハーブに興味があるという学生さんたちを連れて、オープンしたばかりのハーブガーデンへ行き、ちょっとしたパニック気味だった彼女たちに、摘みたてのハーブで入れたハーブティーをごちそうしました。
猫の手も借りたい農繁期
折しも農繁期。田植えシーズンは猫の手も借りたいぐらいなので、助かる以外の何ものでもありません。いち早くオンラインで受講できる体制を整えたのが、慶応大学と三重大学。三重大学、やるなぁ。学生さんにとってはインターン(今回は農業)をしながらオンラインで授業も受けられるわけで、これはもしかして、コロナショックによるアップデート事例になるのかも!?なんて思っている次第です。休校以来、すっかり勉強する習慣がなくなっている我が家の息子たちにとっても、「場所が変わっても勉強はできる」という姿勢を見せることができるかな、と期待しているところです。
よその子が「ただいま」と帰って来る家
ところで我が家には、普段から「ただいま~」と言って帰ってきてくれる子たちがたくさんいます。生まれた時から知っている近所の子たちもいれば、都会や外国から来る子もいて、その声を聞く度にジワ~っとうれしい気持ちになります。私の両親は東京出身で、「田舎のおじいちゃん、おばあちゃん」という存在がなかったので、夏休みなどに「田舎」に行く友人たちをうらやましく思っていたからです。田舎のない子たちが「帰ってこれる場所」になれたらいいな、と常々思って早18年。ひょんなことから娘がまた2人増えたので、「ただいま」と帰って来てくれる子が増えそうです。新型コロナウイルスは早く終息して欲しいけど、こんな思いがけない贈り物が届いたのはラッキーでした。
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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」