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いざ!脱炭素チャレンジカップ2020の表彰式へ
パンデミック(世界的流行)の準備に入るべき、という深刻な事態にまで進んでいる新型肺炎。「NPO法人田舎のヒロインズ」でエントリーしていた「脱炭素チャレンジカップ」という表彰事業に、ファイナリストに選ばれたものの人混みに行くのが怖過ぎて、一時は棄権しようかとも思いましたが、結果はなんとグランプリ!今回は、うれしさ半分、怖さ半分という複雑な思いだった東京での出来事と、「NPO法人田舎のヒロインズ」について。
自分たちでできることから
2月19日に都内で開催された「脱炭素チャレンジカップ2020」という表彰事業は、地球温暖化防止全国ネットなどがつくる実行委員会が主催するもので、去年までは「低炭素杯」という名前だったのを、10年目の今年から目標を上げて、「脱炭素チャレンジカップ」という名前に変わったのだそうです。全国から180を超える応募があり、「NPO法人田舎のヒロインズ」を含む28団体が、ファイナリストとして最終選考に臨みました。素晴らしい活動をしている団体ばかりで、審査員の皆さんは大変だったと思います。
察するに、農業という生きていく上で絶対に必要な職業に就いている女性たちが、地球温暖化防止のために「自分たちでできることから」取り組み始めている、という姿勢を評価していただいたのでしょう。恐縮ですがうれしいです。
NPO法人田舎のヒロインズとは
グランプリを受賞した「NPO法人田舎のヒロインズ」という団体は、女性農家を中心とした全国組織。といっても、会員の人数は100人ちょっとの小さな団体なんですが、歴史は長いんです。前身である「田舎のヒロインわくわくネットワーク」が設立されたのは、もう20年以上も前のこと。当時はまだ珍しかった農家レストランや農家民宿、農産物の加工、産直などに果敢に取り組む「時代を切り拓く女性農家たち」が、全国ネットワークを自ら作ったのです。
数年に1度全国集会を開いて夢を語り合ったり、持ち回りで農業体験の受入れをしたりなどしていましたが、会員の高齢化で活動が徐々にトーンダウン。2002年にドイツ留学から帰国して、就農当初から「持続可能な社会には絶対に農家という存在が必要!」と発信をしていた私に、代表を引き受けてくれないかという打診が最初に来たのは、就農して間もないころでした。
役員全員を40代以下の女性農家にバトンタッチ
まだまったく農家としての実績がなかったので一旦お断りし、再度オファーをいただいたのが10年後の2012年。まずは私が理事として役員に加わり、2年後の2014年に、役員全員を40代以下の女性農家にバトンタッチという、世にも潔い世代交代を果たしました。名称も「NPO法人田舎のヒロインズ」に改めて、”ネットワークからアクションへ”をモットーに再スタートを切ったのです。記者会見
余談ですが、女性農家の団体の世代交代という、世の中的にはたいした出来事ではないそのニュースに、図々しくもプレスリリースなるものまで出したのですが、記者会見の会場だったのが何を隠そうアグリコネクトさん。そう、このウェブサイト「AGRI PICK」を運営している会社です。新橋のオフィスに10社20名以上のメディアや関係者が集まり、珍しいところではジャパンタイムズが英語で掲載して下さいました。
農家が食べ物もエネルギーもつくる
世代交代をしてまず取り組んだのは、「持続可能な社会に向けて農家が食べ物もエネルギーもつくる」こと。再生可能なエネルギーに関する勉強会や視察旅行も開催しましたが、子育て世代の農家女性が家をあけるのはなかなか難しいので、作業をしながら学べるよう、Podcastで聴けるオンライン講座をつくったりもしました。
熊本地震を経て、できる事からカタチに
そして2016年、熊本地震が発災。コメも野菜も山菜もタマゴもあって、水源がいくつも近くにある南阿蘇村で、農家の持つ「生きる力」を改めて実感しました。それをきっかけに、中古の太陽光パネルと中古の車のバッテリーで停電時でも事務所の電気が点くようにしたり、バイオディーゼルという使用済みの天ぷら油からできた燃料をトラクターで使ったりと、「できる事から」カタチにし始めました。そんな思いを『耕す女(ひと)』という書籍にもまとめました。
ウイルスも怖いですが…
とはいえ、やっとスタート地点に立ったというのが正直なところ。同じ想いを持つ仲間を増やしたり、温暖化ガスの削減量を増やしたり、それらの取り組みが単なる「活動」ではなく、農家の収入源やコスト削減につなげていけるよう、受賞を励みに精進していきたいと思います。
今回のような「都市封鎖」とか「世界的な流行」とかの事態になると、ウイルスも怖いですが、輸入ストップで食べ物が足りなくなるのも怖い。何せ食料自給率が40%(※編集部注:2018年度カロリーベース総合食料自給率37%)の国ですから。
都内でのイベント参加からまだ2週間経っていないので、感染の可能性がゼロではありませんが、健康な成人は重症化しにくいようですので、日常に戻って農業に精を出したいと思います。事態が更に深刻化したときに、少しでも多くの皆さんに食糧をお届けできるように。
週間連載のコラムも掲載中!
【週間連載】家族経営農家の日常を配信「ハッピーファミリーファーマー日記」【毎月更新!】月間連載アーカイブ「農業なくして持続可能な社会なし」
大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務めるほか、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
ブログ「o2farm’s blog」