これまでの「ハッピーファミリーファーマー日記」
リトルファーマーズの誕生!
私が子どもたちを「リトルファーマーズ(小さい農家たち)」と呼んでいる、という話は最初に書きました。結婚してもなかなか子宝に恵まれなかった私たち夫婦でしたが、南阿蘇で就農してから3年目に双子の男児を授かりました。それまでは国内外を行ったり来たりしていましたから、ようやく腰を落ち着けたことで神様が授けて下さったのでしょう。
後継者がいないことを最も憂いていた義理の祖父が存命中に出産できたのは何よりでした。義祖父が植えたという大きなスギを2本、山から切り出してきて、鯉のぼりを立てました。
農作業は、男児の遊び心をくすぐるものばかり
私が彼らを「リトルファーマーズ」と呼ぶようになったのは、歩き始めて間もないころから彼らが親の農作業を手伝いたがったからです。都会で育った私とは対照的に、歩き出したときから凸凹道で育った彼らは、じきにあぜ道でダッシュするようになりました。そんな環境で育っているので、とにかく体感が抜群。彼らにとって、田んぼで作業している親の姿は、「泥遊び」しているようにしか見えなかったのでしょう。まともに言葉が話せるようになる前から「僕もやりたい」という意思表示をしていた気がします。
苗を作るための床土(とこつち)、種籾(たねもみ)、田植え機、アイガモ、取っても取っても生えてくる雑草、コンバイン…どれをとっても男心をくすぐるものばかり。子どもたちが「お手伝い」を始めると、作業効率がグンと下がるのですが、あまりに楽しそうなのでついやるがままにさせて、夫をヤキモキさせていたものです。
14歳で10年のキャリア
そんな彼らが14歳の誕生日を迎えました。今ではトラクターの運転はもちろん、私よりも力がありますので、30キロ入りの米袋を運ぶときにも大活躍。去年の田植えを手伝ってくれた彼らに「要領いいじゃん」と言ったら、「何年やってると思ってんの!?」と言い返されました。確かに10年ものキャリアを持っていますからね。足手まといになりながらも、幼少期から農作業をやらせておいて良かったと改めて思ったものです。毎年、誕生日には、近くのいちご園でいちごをたくさん摘んできてケーキを焼きます。南阿蘇産のいちごと卵、そして我が家の米粉を使った手作りケーキ。田舎あるあるで高校から家を出るであろう彼らの誕生日を、こんな風に祝うことができるのももう後1回ぐらいかも、と思いながら、身長を超された息子たちの健やかな成長を祈りながらお祝いしました。
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大津 愛梨(おおつ えり)プロフィール
1974年ドイツ生まれ東京育ち。慶応大学環境情報学部卒業後、熊本出身の夫と結婚し、共にミュンヘン工科大学で修士号取得。2003年より夫の郷里である南阿蘇で農業後継者として就農し、有機肥料を使った無農薬・減農薬の米を栽培し、全国の一般家庭に産直販売している。
女性農家を中心としたNPO法人田舎のヒロインズ理事長を務める他、里山エナジー株式会社の代表取締役社長、一般社団法人GIAHSライフ阿蘇の理事長などを兼任。日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」やオーライニッポン「ライフスタイル賞」のほか、2017年には国連の機関(FAO)から「模範農業者賞」を受賞した。農業、農村の価値や魅力について発信を続けている4児の母。
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