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タケイファーム流・農作業の時短と効率化!アイディア農業で収益もUP!!


【連載】タケイファームから学ぶ時短と収益UPを目指すヒント|第11回は武井流農作業の時短・効率化!アイディア農業で収益もUP!! 1人都市型農業の成功事例として注目を浴びるタケイファームが、新規就農者や現状を打破したいと考える方へ、農作業の時短・効率化から新たなアイディアを生み出して収益を上げる方法をお伝えします。

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YumiYamashita

作家・コラムニスト 身体と社会との関わりに関心を持ち、五感、食、日本文化、ヒット商品などをテーマに取材。新聞、月刊誌、週刊誌、大手ニュースサイトにて時事問題からテレビドラマまで幅広く執筆。…続きを読む

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タケイファーム

撮影:AGRI PICK編集部

全12回の連載もラスト直前!いよいよ本丸の「タケイファームから学ぶ時短と収益UP」に斬り込みます。 武井敏信さんの考える「楽して時短・効率化」のノウハウとは?

長い期間、繰り返し収穫できる、収穫出荷しやすい野菜選びがカギ

タケイファーム、武井さん

撮影:AGRI PICK編集部

武井さんが農業に費やす時間は、1日平均6時間。朝から晩まで畑に張り付くような忙しい日は、年にたった10日程度しかありません。 まさしく時短農家のパイオニアともいえるタケイファームは、面倒なことをできるだけしない農業を基本にしています。 面倒なことはしないと聞くと「さぼっているのか?」「手を抜いているのでは?」などと誤解する人もいるかもしれません。 しかし、武井さんは胸を張って「うちの野菜は品質の高い最高の野菜だと自負しています」と言います。 タケイファームでは高い品質を保ったそのうえで、「面倒なことをできるだけしない」というポリシーを貫いているのです。

「一人で農業をしているので、可能な限り無駄は省き時間を短くして、作業を効率化しなくてはならないのです。 その中で、気付いたことがあるんです。農業の一般常識とか農業の教科書に書いてあることの中には、実はやらなくていいことがいっぱいある、ということです。」

面倒なことはできるだけしない

面倒なことをできるだけしない農業とは、具体的にどんな方法なのでしょうか?  

通常、畑に畝を立てて作物の種をまき、育てて、収穫後出荷します。そして、栽培が終わった畑を片付けて、次の作物を育てるための畝を作り、また別の作物の種をまいて育てる、という繰り返しになります。

長い期間、繰り返し収穫できる野菜を育てる

タケイファームではできる限り長い期間、繰り返し収穫できる野菜を育てたいと考えています。

「一つの苗から何度も収穫することができれば、畑にかかる畝作りなどの手間は各段に少なくなるため、農作業の効率がとても良くなります。 例えばカーボロネロやプチヴェールなどは、9月に植え付けて11月から収穫をはじめ、その後(収穫する規格を変えて)4月ごろまで繰り返し出荷できる非常に効率の良い野菜です。」

また、タケイファームの代表的な品目であるアーティチョークは、一度植えたら7年間は収穫可能なので、一つの苗が数年に渡って収穫できます。 つまり、タケイファームでは栽培する野菜の種類を決めるときに、収穫期間が長くて繰り返し収穫できるかどうかを一つの基準として選択している、ということが効率化のポイントなのです。

収穫・出荷しやすい野菜を選ぶ

収穫作業に対しても時短・効率化の方法がないか常に考えています。

「カーボロネロ、プチヴェール、アスパラ、フィレンツェナスといった野菜は、カットしたらそのまま出荷でき時短につながります。農業の仕事は種をまくことだけではありません。収穫にかかる時間や手間、出荷のこと、片付けることまでイメージしながら、作る種類を決めていくのがコツです。」

栽培の教科書はいらない!?種まき時短術

タケイファーム、教科書

出典:Pixabay

武井さんの口癖は「栽培の教科書に載っていることはやらない」です。 例えば、種まきの方法について説明箇所を見てみると、畝は幅何cm、高さ何cm、何条植え、株間は何cmなどと細かく記述してあるものが多いはずです。

「その通りにやらなくたって、ちゃんと育つ野菜も多いものです。教科書通りの生真面目な農作業に無駄がなかったのか、今一度自身の農作業について必要なことを考えてみるのも大切です。」

武井さんの種まき時短術の極意!

「時短を可能にするオクラの種まきのコツを紹介します。 まず、姿勢はできるだけ屈まない。腰のあたりからオクラの種を畑に落として、足で土をかけていきます。これだと腰痛にならず、種まきの速度も上がるんです。無理な姿勢を続けて腰を痛めてしまえば、結果的に作業の効率は落ちますから。」

オクラ栽培の教科書に書いてある方法とは違う「足で土をかぶせる」という動作は、ある意味雑な作業といえるのかもしれないし、農業の常識では考えられない方法かもしれません。 しかし、武井さんの言うように「効率」という視点から眺めたらどうでしょう。これまでの栽培の常識の方がくせ者とも。

「手間ひまかける」ことが収益に結びついているか

「『うちの野菜は手間ひまをかけて育てています』という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。いわば農家の常套句(じょうとうく)です。しかし、ただ手間ひまをかければ良い野菜ができる、というものでもありません。必要のない作業はやらなくもいいのです。」

もし、手間ひまをかけてもかけなくても、さほど味が違わなかったら? あるいは、手間ひまかけても安い値段でしか販売できていないとしたら? 手間と時間をかけた分、コストと時間の無駄に直結してしまいます。

「本当に自分が納得できる味や値段で販売できているのか、農家はまずコストと収益について現実を見つめることが大切です。」

▼タケイファームの価値観についてはこちらをご覧ください。

規格サイズや横並びの意識を捨てると時短・効率化につながる

マイクロサイズの野菜、タケイファーム連載

写真提供:タケイファーム

凝り固まった従来通りの認識や、決められたサイズに合わせて野菜を収穫するという考え方、隣の農家がやっているといった横並びの意識なども、効率化の面から考えてみれば「くせ者」の一つかもしれません。

複数の「商品」を見出す

レストランのお皿を観察していると、美しくて食べることもできる「飾り野菜」という商品があることに気付きます。農業の教科書には書いていない規格外の商品ですが、ちょっと発想を転換すれば、既存の野菜の中に新たな価値を発見することができます。 タケイファームでは、通常ならオクラを収穫するために必要な蕾(つぼみ)や、商品価値のない葱坊主(ねぎぼうず)など、新しい商品とその価値を生み出してきました。これも時短・効率化の一つです。一つの野菜を育てて、タイプの違う複数の商品がそこから生まれてくるとなれば、収益力もぐんと増すことになります。

マイクロサイズの野菜は時短と効率化に優れている!

規格外という観点から、タケイファームがレストランに卸すマイクロ(極小)サイズの野菜について考えてみましょう。 従来の農業の流通から考えてみれば、マイクロサイズの野菜は「規格外」です。極端に小さい野菜は出荷できません。しかし、タケイファームではマイクロサイズの野菜は、稼ぎ頭の優等生です。

「サイズは非常に小さいけれど香りは強くて、形もインパクトがある。それぞれの風味がしっかり感じられるトッピング素材として、マイクロサイズの野菜は大変優れていました。 栽培という視点からみても、種をまいて芽が出てから2週間程度で出荷できるので時短が可能、そのうえ栽培に必要な面積も小さくて済むので効率が良い理想的な商品と言えます。」

必ず品質にはこだわる

例えば、タケイファームのスペシャリテの一つでもあるスプラウトは、水耕栽培ではなく、あえて「土」で栽培しています。

「スプラウトというと水耕栽培が一般的ですが、水っぽい味になってしまうために、あえて土で栽培することにこだわっています。小さくても、しっかりとした風味を持たせるための工夫です。」

大葉も春菊も、みんなその味をよく知っているけれど、マイクロサイズにすると、あまりに極小でいつも食べている野菜とは気付かず、口に入れてなじみ深い味にびっくりするお客さんが続出しているそうです。 そのうえ美しい飾り野菜として活用できるから、商品価値が高いのです。まさしく時短・効率化の優等生です。

横並びの意識は時短・効率化にとっては邪魔なだけ

その季節に初めて出回る旬の野菜の初物の、さらに早い先がけ「はしり物」は、消費者にとても喜ばれます。 しかし、「はしり物はやりません」と武井さんは宣言しています。

「早い時期に出荷する旬野菜というのは、確かに消費者には喜ばれますが、栽培という視点から見れば、本来の温度よりも低い環境で育てなければならず、特殊な栽培条件が必要になります。そのため資材を購入してマルチを張るなど、コストや手間がかかります。しかし、出荷時期を少し早めたからといって、何倍もの価格で売れるわけではない。 つまり、人よりも早く出荷するという達成感があっても『商品』としてどうなのでしょうか。だから、タケイファームでは『はしり物』の野菜はやりません。」

野菜の出荷時期一つをとってみても、効率や生産性と無関係ではありません。「今の流行だから」「隣の農家がやっているから」という横並びの意識は、時短・効率化にとって邪魔になります。

出荷時にロスを出さない工夫

マルシェ、タケイファーム連載

写真提供:タケイファーム

廃棄を極力出さない出荷体制も、タケイファームの特徴です。 しかし、かつてマルシェで野菜を売っていたときはそうはいきませんでした。

「例えば土曜日に一気に収穫し夜中の12時まで袋詰め作業をして、売れるかどうかはわからないけれど翌日のマルシェに並べ、売れ残ってロスが出る経験をしてきました。そのロスをいかに減らすことができるか。 タケイファームでは今、出荷に関する4つのルールを決めています。それによって、極力廃棄を少なくできています。」

▼タケイファームの出荷の4つのルールはこちらをご覧ください。

レストラン卸においてお任せのスタイルをとると、収穫内容や収穫数はタケイファーム側でコントロールできます。必要な数だけを収穫して出荷するので、無駄を廃する経営が可能になるのです。

「僕は収穫したら売り切ることを基本にしています。レストランを販路に野菜の種類はお任せいただく基本の出荷スタイルは、ロスが非常に少なくて済む理想的なシステムだと思っています。」

作業のしやすさをデザインする

収穫後の出荷作業も、さまざまな時短・効率化が可能です。

「僕は立って作業をしています。というのも、作業台の高さ一つで体への負担が軽くなるので、結果として作業効率が上がることもたくさんあるのです。日常の中で習慣化されてしまった農作業の中に、まだまだ時短と効率化のヒントは見つかるはずです。 例えば、野菜のパッケージングのときに活用しているのが、ケーキを焼くときなどに使うクッキングシートです。ツルツルして摩擦がないため、シートで野菜をくるんで袋へするりと滑り込ませることができます。たくさん袋詰めをするとなると、スムーズな作業はトータルでかなりの時間を短縮可能です。」

クッキングシートを使うというちょっとした工夫でも、積もり積もれば全体としてかなりの時短・効率化につながります。少しの工夫によって時短・効率化ができる対象はたくさんあり、その解決のヒントはあちこちに転がっています。

時短・効率化は農業を楽しくさせる!

「今まで1日に10時間も畑で仕事をしてきた農家が、1日6時間で仕事を終えてみる。そういう可能性について考えてみてください。 新たに生まれた時間を別のことに活用してみるんです。 レストランに行ったり、人と会ったり、人気の野菜は何か、新しい野菜の使われ方は何なのかといった観察に使ってみると良いですよ。 次にどんな野菜を作ったらいいのか、新しいアイディアを得る大切な時間になるはずです。」

次回はいよいよ最終回。これまでの振り返りとタケイファームのこれからについて考えます。 「タケイファームから学ぶ時短と収益UPを目指すヒント」バックナンバーはこちらから。  

お詫び:イベント「都市型農業の成功者に聞く!営業しないレストラン取引の極意」中止のご連絡 この度の台風被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧をお祈り申し上げます。 11月22日(金)に予定しておりましたイベント「都市型農業の成功者に聞く!営業しないレストラン取引の極意」ですが、この度の台風による被害状況を考慮し、誠に勝手ながら中止させていただくことといたしました。 楽しみにしてくださっていた皆様には、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。 ご理解のほど、何卒よろしくお願いいたします。 AGRI PICK スタッフ一同

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