農業所得の確定申告|青色申告と白色申告どちらにすべき?

農業者は、自分で確定申告を行わなければなりません。自営業者の確定申告には大きく分けて青色申告と白色がありますが、農家の場合はどちらを選ぶべきなのでしょうか。青色申告と白色申告の違いや提出書類、それぞれの特徴について解説します。


青色申告 確定申告書

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個人の農家は自営業者のため、給与所得者とは異なり毎年2月中旬から3月中旬にかけて税務署で確定申告を行う必要があります。自営業者の確定申告には大きく分けて2種類の方式があり、それぞれ白色申告・青色申告と呼ばれます。

一般的に、白色申告は簡単で青色申告は難しいというイメージを持たれがちです。しかし、青色申告は何かとメリットが多く、農家でも青色申告を選択している人が多くいます。初めての確定申告は、青色と白色どちらで行うべきなのでしょうか。ここでは、青色申告と白色申告の違いや、確定申告に必要な書類などについて解説します。

青色申告と白色申告の違い

確定申告のやり方が分からず困っている人
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はじめに、青色申告と白色申告の違いについてみていきましょう。

青色申告とは

青色申告とは、日々の取引を決められた帳簿に記載して正しい申告を行うことで、さまざまな税制優遇を受けられる確定申告の方式です。青色申告を行えるのは、事業所得、不動産所得、山林所得がある方です。農業の所得は事業所得ですから、農業をして所得を得ていれば青色申告を行えます。

青色申告が難しいと思われているのは、簿記の知識が必要になる複式簿記で仕訳帳を作るなど、白色申告よりも行うべきことが多々あるためです。また、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などに取引を記載し、それらの帳簿は原則として7年間保管する必要があります。

青色申告のメリット

帳簿付けや税金の計算に時間がかかる青色申告ですが、白色申告とは異なるメリットがあります。
確定申告を青色申告にすることで、基礎控除38万円に加え65万円を課税所得から差し引ける特別控除を受けられます。もし赤字になってしまった場合でも、翌年に赤字を繰り越して翌年の利益から差し引ける、損益通算があるのも利点です。
また、青色申告では世帯主以外の家族への給与を「専従者給与」として経費にできます。

青色申告は2種類ある

さらに青色申告には、所得控除が10万円のものと65万円のものがあります。この違いは記帳方法で、控除が10万円なら簡易簿記、65万円の場合は複式簿記の記帳が義務付けられています。所得控除が10万円の青色申告は、確定申告の方法が白色申告とほとんど変わりません。

白色申告とは

白色申告は、青色申告の申請書を提出していない個人事業主が行う確定申告です。白色申告でも、各種帳簿への記帳と保存が義務付けられていることから、帳簿付けという点では青色申告と手間は同じです。白色申告は青色申告のような控除や税制上のメリットがないことから、一定以上の収入がある農家や、家族も農業を行っている農家は青色申告を選択することで税負担を軽減できる可能性があります。

青色申告を行うためには

所得税の青色申告承認申請書
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さまざまなメリットがある青色申告を行うためには、税務署での手続きが必要です。

事前に承認申請書を提出

青色申告を行うためには、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この書類を提出しなければ、青色申告は行えません。この書類には提出期限があり、青色申告をしようとする年の3月15日までと定められています。
3月15日を過ぎて申請を行うと、その年は白色申告に、青色申告は翌年からの適用となります。

所得税の青色申告承認申請書に記入する項目は

所得税の青色申告承認申請書には、氏名や生年月日のほかに、事業所のある場所、所得の種類、事業を開始した年月日など13の項目について記載を行います。もしわからないことがあれば、所轄の税務署で職員にたずねながら記入しましょう。

まだ開業届を出していない場合

開業届は原則として、開業から1カ月以内に行います。農業を始めているのにまだ開業届を出していない方は、税務署で開業届を提出しましょう。青色申告承認申請書は、開業届から2カ月以内に提出します。開業届の手続きと同時に行うことも可能です。
所得税の青色申告承認申請書は、税務署で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからもダウンロードできます。

国税庁「所得税の青色申告承認申請書」

青色申告に必要な書類と申告の手順

確定申告の必要書類
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所得税の青色申告承認申請書を提出したら、確定申告の時期までに青色申告の準備を行いましょう。毎日の帳簿付けは難しくとも、1カ月に1度帳簿付けの時間をとっておけば確定申告の時期に慌てることもありません。

確定申告時の提出書類

青色申告で提出する書類は、確定申告書と青色申告決算書です。これらの書類のほかに、控除できる医療費があれば医療費の領収書、経費の領収書、寄付金控除の証明書、各種保険料の控除証明書、住宅ローン控除を受ける場合には住宅借入金の控除関係書類も必要になります。
国民年金や国民健康保険を口座振替にしていない方は、これらの領収書も用意しておきましょう。書類は税務署で用意されている添付書類台紙に貼り付け、申告書とともに提出します。

確定申告に必要な帳簿

「青色申告とは」でも説明した通り、確定申告には必要な帳簿があります。
帳簿 内容
現金出納帳 事業用の現金の動きを記帳する。事業用の銀行口座で売り上げ管理を行っている場合は口座ごとの預金出納帳も必要
売掛帳・買掛帳 掛け売り・掛け買いがある場合に記帳。作物の掛け売り、肥料や種子などの掛け買いなど
経費帳 事業にかかった経費を領収書と突き合わせながら記帳する
固定資産台帳 固定資産用の帳簿。資産ごとに記帳する
仕訳帳 複式簿記のルールに沿って、発生日順に勘定科目を借方・貸方に仕分けする帳簿。最大65万円の所得控除を受けるために必要
総勘定元帳 すべての取引を勘定科目別に整理・計算して記帳する。最大65万円の所得控除を受けるために必要
このように、日々の取引をさまざまな帳簿で管理しますが、確定申告の際にこれらの帳簿の提出は求められません。

会計ソフトを使うと便利

これらの帳簿付けを、すべてアナログ・手作業で行うのは難しいものです。効率的に帳簿付けを行い、確定申告にかかる作業を軽減したいのなら、会計ソフトを活用しましょう。農家が使いやすい会計ソフトは多数あります。
会計ソフトを利用することで、収支計算が楽になりお金の流れが簡単に可視化できるのもメリットです。毎月のお金の流れを把握して、経営に活かしましょう。


確定申告書と青色決算書の作り方

計算機と収支グラフ
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確定申告の際、領収書や各種控除証明書はそのまま添付するだけですが、確定申告書と青色申告決算書は自分で作成し提出する必要があります。

税務署で確定申告を行う場合

所轄の税務署に行き、確定申告を行う専用のパソコンから確定申告を行うことができます。税務署の確定申告書作成会場で、所得や各種控除など、求められる内容をパソコンに入力していけば、簡単に決算書と確定申告書が作成できます。
当日会場で計算が合わずに提出できない、時間がかかり過ぎてしまったということがないように、帳簿の整合性をチェックしてから会場に向かいましょう。わからないことがあれば、すぐに職員に確認できるのがメリットです。

ネットから確定申告を行う場合

国税庁のウェブサイトから確定申告を行うこともできます。
国税庁 確定申告書等作成コーナー
決算書と確定申告書を作成したあとは、プリントアウトしてその書類を税務署に提出しするか、e-Taxでそのままネット上から申告を行うかのどちらかが選べます。e-Taxの場合には、マイナンバーカードの電子証明書を読み込むICカードリーダライタが必要です。確定申告のために税務署に足を運ぶのが難しい方、効率的に確定申告を行いたい方に向いています。

会計ソフトを使う場合

会計ソフトを導入している場合は、会計ソフトを使って確定申告に必要な書類を用意できます。日々使い慣れているソフトなら、必要書類を用意するストレスも軽減できそうです。減価償却費などの複雑な計算も簡単に行えます。
ソフトによっては、データをそのまま電子申告に利用することもできます。もちろん、印刷しての提出も可能です。会計ソフトで一元管理をしたい方におすすめです。

青色申告が断然お得!一定以上の農業収入が見込めるのなら青色申告にしよう

確定申告を青色申告で行うことで、基礎控除38万円に加え65万円の所得控除を受けられます。もし赤字になってしまった場合でも、翌年に赤字を繰り越して翌年の利益を損益通算できます。
また、青色申告ならば、世帯主以外で農業を手伝っている家族への給与を専従者給与として経費にできるのもメリットです。面倒そうな複式簿記の帳簿や確定申告も、会計ソフトを使えば簡単に行えます。青色申告で税制優遇をうけつつ、健全な経営を目指しましょう。

 

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高橋 みゆき

北海道在住のフリーライター。北海道の畑作農家に生まれ、高校卒業後に農業協同組合に入組。JAでは貯金共済課の共済係として、窓口にて主に組合員の生命保険・損害保険の取り扱いをしていました。退組後、2013年まで酪農業に従事。現在はスマート農業に興味津々。テクノロジーを活用した農業についてお伝えしていければと思います。