コキアは土壌をあまり選ばず、比較的病害虫の被害も少ない丈夫な植物なので、ガーデニングを始めたばかりの方にもおすすめです。今回はコキアに適した環境や水やりなどの日頃のお手入れ方法、そのほかにも気を付けたい病害虫や、紅葉を楽しんだ後のコキアを使ったミニほうきの作り方を紹介します。
コキアについて
コキアは主にヨーロッパを始めとする北半球で栽培されており、日本には約1000年以上前に中国から伝わったといわれています。枯れたコキアの枝を刈り取って、ホウキに利用していたことから「ほうき草」という別名もあります。
かわいらしいモコモコとしたコキアの草姿は、沢山の細い茎葉から形成されています。花も咲きますが、1〜2mmくらいの小さな花なので目立たず、茎葉の紅葉の方が有名です。
砂質のやせた土壌でも育つ丈夫な植物で、日本のどの地方でも育てることができます。公園などで見かけるコキアは、観賞用の品種がほとんどですが、これとは別に実を食用にする品種もあります。
植物名 | コキア |
別名 | ほうき草 |
和名 | 箒木(ほうきぎ) |
学名 | Kochia scoparia |
英名 | Summer cypress , Burning bush |
科名 | ヒユ科(旧アカザ科) |
属名 | ホウキギ属 |
原産地 | 西アジア、中央アジア |
コキアの品種
観賞用と食用のコキアの違いを紹介します。観賞用コキア
観賞用のコキアは、モコモコとした卵型の草姿をしています。最低気温が15〜20℃を下回る9月ごろから、黄緑色の茎葉の紅葉が始まります。
食用コキア
観賞用のコキアと比べると、草姿は円柱型になります。秋に紅葉することはなく「トンブリ」というプチプチとした食感の実をつけます。
トンブリは「畑のキャビア」と呼ばれる秋田県の名産品です。加工するまでに、茹でてから水洗いを数回繰り返して実の薄皮をむくため手間がかかり、工場で加工されるまでは一部の家庭でしか食べられない希少な食材でした。
コキアを育てる前に
暑さに強く、寒さには弱いので、気温が下がると種を残して枯れる一年草です。コキアを育てる環境
生育適温は20〜35℃日当たりが悪い場所では、枝も葉の数もボリュームの少ない株になってしまいます。日当たりや風通しの良い環境で育てましょう。
コキアの種
発芽適温は23〜28℃位種まきの時期
15℃以上を保てる環境ならば種をまくことができますが、一般的には4月中旬〜5月中旬ごろが種まきの適期です。特に屋外の地植え栽培の種まきは、霜が降りる心配が無くなってから行いましょう。
株を小さく育てたい場合
種まきの時期を遅らせると、コキアの株を小さめに育てることができます。
ただし、天候によっては種まきが遅過ぎると、葉が茂る前に紅葉が始まってしまうこともあるので、遅くても8月中旬ごろまでには種まきを済ませましょう。
コキアの苗の選び方
きれいな黄緑色の茎葉で、株元がしっかりした苗がおすすめです。苗の植え付け時期
5〜6月ごろが適期です。コキアの鉢植え栽培
コキアは根が良く張り、草丈も1mほどになる植物なので、鉢の大きさは8〜10号(直径24〜30cm)位のものを用意しましょう。準備するもの
コキアはやせた土地でも育つ丈夫な植物なので、土質は選びません。種まき
コキアの種はとても小さな種です。移植によって根を傷付けられることに弱いので、育てる場所に直にまくのがおすすめです。
種まきの手順
1箇所に3〜4粒、5mmほど覆土して水をたっぷり与えます。種をまいてから2週間は水を切らさないように管理します。
何株か一緒に育てたいときは約20cm間隔をあけて種をまきます。
間引き
本葉が2〜3枚になったら、徒長していない真っ直ぐ伸びたものを残して、ほかの芽は間引きます。苗の植え付け
移植によって根を傷付けられることが苦手なので、ポリポットから取り出す際には丁寧に扱いましょう。苗の植え付け手順
種まきと同じように土を敷き詰めたら、苗の肩が土の表面と同じくらい、もしくは少し出るくらいの高さに植え付けましょう。根と土が密着するように、しっかりと用土を入れて手で軽く押さえたら、水をたっぷりと与えます。
コキアの地植え栽培
コキアを大きく育てるなら地植え栽培が適しています。腐葉土など有機質堆肥が多い土壌では旺盛に育ち、反対に砂質の土壌では小さめに育ちます。
種まき
コキアは根を傷付けられることに弱いため移植が苦手です。育てる場所に直に種をまくのが良いでしょう。一度に多くの株を育てたい場合は、セルトレイや育苗ポットなどで育苗してから植え付けると生長が整います。
種まきの手順
1箇所に種を3〜4粒まいて、5mmほど土を被せて水を与えます。種まきした後約2週間ほどは乾燥させないように管理します。間引き
本葉が2〜3枚になったら、鉢植えと同じように茎がしっかり伸びた芽を残してほかの芽は間引きます。苗の植え付け
コキアの根を傷付けないように注意しましょう。苗の植え付け手順
鉢植えと同じように、苗の肩は土の表面と同じくらい、もしくは少し出るくらいの高さに植え付けます。苗の周りをしっかり抑えて、土と根を密着させてから、水をたっぷり与えます。コキアの日頃の管理
コキアは植え付け前後の初期の生育が順調だと、草丈も大きく育ち、鮮やかに紅葉します。コキアの水やり
過剰な多湿、乾燥にならないように注意しましょう。鉢植えの水やり
土の表面が乾いてから、たっぷり与えます。夏場の水やりは、朝の涼しい時間帯に行いましょう。鉢植えの水やりは水を与えるだけじゃない!
鉢底から流れるくらい水をたっぷり与えることは、水分補給以外にも良いことがあります。
それは土中の空気の入れ替えです。
土の中にも酸素が存在しています。私たちの部屋でも時々空気の入れ替えが必要なように、植物も時々空気の入れ替えが必要です。
鉢底から流れてくるくらい水をたっぷり与えることで、土中の水分とともに空気を入れ替え、土中の状態を良く保ちましょう。
地植えの水やり
基本的には降雨で十分ですが、1週間以上雨が降らず過剰な乾燥状態が続く場合は適宜水を与えましょう。コキアの肥料
鉢植えと地植えでは肥料のタイミングが異なります。鉢植えの肥料
6〜8月の間に1〜2度ほど緩効性肥料を与えます。生育の状態を観察しながら、草勢が落ちている際は、速効性のある液肥で対応します。地植えの肥料
地植えで育てている場合は、ほとんど肥料を施す必要はありません。そのまま育てても1m位まで育ちますが、より大きく育てたい場合は、6〜7月の生長期に1度緩効性肥料を施しますが、草丈が大きくなることで強風によって倒れやすくなるので注意が必要です。コキアの病害虫
以下のような病害虫に注意しましょう。病気
風通しが悪いとうどんこ病を発症する場合があります。密植しないように株同士の間隔をあけて育てましょう。害虫
葉が若くて柔らかいころは、ヨトウムシやネキリムシの食害にあったり、新芽にアブラムシが付くことがあります。コキアは剪定要らず!
コキアは自然な丸い草姿に育つので、剪定は枝が飛び出た部分を切り取るくらいで整った草姿を保ちます。コキアの楽しみ方
葉色の紅葉を楽しんだ後にも、コキアには「ほうき」を作る楽しみが残っています。コキアの紅葉を楽しむ
一面に広がるコキアが有名な茨城県の国営ひたち海浜公園では、夏から秋の間コキアの色の移り変わりを楽しむことができます。ほかにも北海道では国営滝野すずらん丘陸公園、宮城県の国営みちのく杜の湖畔公園、千葉県の東京ドイツ村、滋賀県の箱館山コキアパーク、福岡県の国営公園海の中道海浜公園など全国各地でコキアを楽しめる場所があります。
種を採取する
紅葉が終わって葉が茶色くカサカサに枯れるころに、株元から切り取って振り落とすだけで種を採取することができます。枝を少しずつ切り分けて、空のバケツに突っ込んで振り落としたり、大きな紙を広げた上で振り落としても良いでしょう。こぼれた種から、翌年芽が出ることもあります。
ほうきを作る
種を取り終わった枝を束ねてコキアのほうきを作ることができます。ナチュラルなインテリア雑貨としてお部屋におしゃれに飾りましょう。
コキアのほうきの作り方
1. 刈りとったコキアの枝を1週間ほど干します。このとき、紅葉した枝は日に当たると茶色に退色する。2. 細かい枝をブラシまたは手(軍手をすると痛くない)ですいて落とす。
3. 飛び出た枝を切り揃え、根元を麻ひもやタコ糸などでしっかりと束ねて持ち手を作る。
4. 麻ひもの上からお好みでリボンや太めのひもを巻いて仕上げる。
▼竹で作るほうきのことならこちらをご覧ください。
コキアを育てよう
コキアの爽やかな黄緑色の茎葉が、ふわふわと風に揺れる様子は、なんだか穏やかな気持ちにさせてくれます。秋が近付くにつれて徐々に赤く紅葉する様は、季節の移り変わりを教えてくれます。昔から枯れたコキアをほうきにして、翌年にはこぼれ種から芽吹いたコキアの葉色を楽しみ、冬が近づくころに再び新しいほうきを作る。そんな生活をしていたのかもしれませんね。
一面の紅葉したコキアも魅力的ですが、ガーデニングの草花として育てると花後の楽しみも倍増する「コキア」を皆さんも育ててみませんか。