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農業で働くということ|脱・東京!北海道でメロン農家になりたい夫婦の農業研修記 最終回


2年間の農業研修を終え、春から新規就農者として独立します。これまでの研修の内容を振り返りながら、農業で働くことについて改めて考えます。

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小林麻衣子

北海道在住のライター。農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して移住。現在は農家見習い兼ライターとして活動中。…続きを読む

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メロンの苗

撮影:小林麻衣子
新規就農をめざして東京から北海道にIターンした夫婦が、農業経験なし、土地なし、人脈なしの状態から研修をスタートし独立するまでの道のりをつづります。

前回の記事はこちら。
長かった冬もようやく終わりを告げ、北海道に春がやってきました。道路脇に残った残雪は日に日に小さくなり、空にはきれいなV字を描きながら渡り鳥が飛んでいきます。まだ朝晩の冷え込みは厳しいですが、だんだんと暖かくなってくる日差しを感じると、思い切り体を動かしたいような、そんな気持ちになります。

2021年の春から始まった農業研修は今年の3月で終了し、4月から新規就農者として独立します。今回はこれまでの道のりを振り返りつつ、農業で働くということについて改めて考えてみます。

2年かけてたどり着いたスタートライン

春先の北海道
撮影:小林麻衣子
きっかけは2020年春。コロナ禍のなか、都会で働くことに閉塞感を感じるようになりました。そこで「自分たちがやりたいことをする人生にしたい」と、就農を本気で考えるようになりました。


その年に開催された「新・農業人フェア」で安平町と出会い、秋には移住と就農を決意しました。家族の説得や会社の退職手続きなどを経て、2021年3月に安平町に移住。一年目は指導農家の元で研修を行い、メロン栽培の基礎をしっかりと学びました。そして二年目の2022年には、町の所有する研修用の農場でメロン栽培に挑戦。なんとか自分たちの手で初めてメロンを収穫することができました。

研修を始めたときには、ぼんやりとしたものだった就農への道筋が、2年の研修を経てようやく形になってきました。

北海道の大自然の中で働く

雪解けと長靴
撮影:小林麻衣子
この2年間で一番大きく変わったのは、働く環境です。通勤ラッシュの満員電車に揺られながら会社に向かい、空調の効いた室内でデスクに座って働いていたのが、今では晴れの日も雨の日も畑で作業をしています。真冬は長靴の底から痛いほどの寒さを感じながら、夏のハウスでは照りつける太陽の暑さの中で汗を流しながら体を動かす日々です。
体力的にはとてもハードですが、朝焼けに染まる空を横目に畑に車を走らせたり、鳥の鳴き声を聴いたりしながら仕事ができるのは、農業の魅力ではないでしょうか。おかげで二人とも顔が日焼けでずいぶんと黒くなりました(笑)。

家族経営のメリットとデメリット

子どもの足
撮影:筆者の友人
家族で過ごす時間が増えたことも、大きな変化です。もともと、農業を始めたいと考えるようになった理由の一つに、家族で仕事ができるという点がありました。雇用就農ではなく独立就農を目指したのも、そのためです。

一方で、家にいても仕事に行っても夫婦で顔を合わせるわけですから、仕事で意見の食い違いやけんかなどがあると、仕事にも家庭にも影響します。他人なら冷静に仕事ができても、家族だからこそ余計に腹が立ってしまうこともあります。当然のことですが、仕事と生活が密接につながっているのは、メリットでもありデメリットでもあるのです。

そこで、仕事と生活をしっかりと分ける仕組みとして、「家族経営協定」があります。
農林水産省によると…

家族経営協定とは、家族農業経営にたずさわる各世帯員が、意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、家族みんなが働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話し合いに基づき取り決めるものです。

つまり、仕事と生活の境目が曖昧なため、就業条件などが曖昧になりがちなので、きちんと書面で取り決めをしましょう、というもの。

私たちも就農の前にこの協定を結び、夫が農場運営を担当し、私は農作業+経理、家事育児、という分担をすることにしました。仕事と生活が一体だからこそ、バランスをとるのが難しいですが、その都度夫婦で話し合いながら進めていきたいです。


農業を始めるのに、あればあるほど良いものとは!?

麦稈ロール
撮影:小林麻衣子
資金や経営計画、正しい栽培技術など、新規就農にはさまざまなものが必要です。その中でも私が一番大切だと思うのは「体力」です。
農業はしばしば「きつい・汚い・危険」の頭文字をとった「3K」の産業といわれることがあります。研修を始める前は、農業の肉体的なきつさは、なんとか乗り切れるだろうと思っていました。2人とも学生時代から運動をしてきたので体力にはそれなりの自信がありましたし、20代という若さがあれば、問題ないと思っていたのです。

もちろん、ひと昔前の農作業に比べれば、トラクターなどの農業機械を使って楽に仕事ができるようになりました。それでも重たいビニールを持ち上げたり、荷物を運んだりするのには、当然力がいります。また、ハウスの中の高温もじわじわと体力を削っていきます。
農家にとっては当たり前のことかもしれませんが、研修を始める前に想像していたよりも、肉体的なきつさがはるかに大きかったです。もちろん体力が全てではありませんが、体力とそれに伴う気力があれば、大概のことはなんとかなるのではないかと思います。

失敗を積み重ねながら一歩ずつ

蕗の薹
撮影:小林麻衣子
畑仕事をする上で大前提となる体力。そこに知識や技術があって初めて農業が成り立ちます。研修で基本は教えてもらったものの、新米の私たちにとって農作業は小さな挑戦と失敗の連続です。
たとえば雨がたくさん降った日の翌日。ハウスまわりの作業をしようと、軽トラで畑に入ると、タイヤが泥の中に沈んで出られなくなってしまったことがありました。トラクターでなんとか引っ張り出して、事なきを得ましたが、どれくらい土が濡れていたら車が入れないのか、という基本的なことを身をもって学びました。

こうした地道な(?)失敗を積み重ねながら、一歩ずつ進んでいる毎日です。そして、これからが新規就農の本当の勝負どころです。今回で連載は最終回となりますが、引き続き私たちを応援してくださると嬉しいです。

また、安平町での新規就農に興味が出てきた!という方は、安平町農業担い手育成協議会のウェブサイトをご覧ください。それでは、またどこかでお会いしましょう!

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小林さんコラムバナー脱・東京!北海道でメロン農家になりたい夫婦の農業研修記

小林麻衣子プロフィール
神奈川県出身、北海道在住。大学卒業後、農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して夫婦で北海道安平町に移住。2021年4月からメロン農家見習いとして農業研修に励むかたわら、ライターとしても活動中。

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