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農業研修を始める前に知っておきたいこととは?|脱・東京!北海道でメロン農家になりたい夫婦の農業研修記 No.9


北海道に移住して2年目の冬は、来年の就農に向けた準備期間に入ります。これまでの研修を振り返りながら、これから農業研修を始めてみたい人に向けて、研修前に知っておきたいことを紹介します。

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小林麻衣子

北海道在住のライター。農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して移住。現在は農家見習い兼ライターとして活動中。…続きを読む

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網走の流氷

撮影:小林麻衣子
新規就農をめざして東京から北海道にIターンした夫婦が、農業経験なし、土地なし、人脈なしの状態から研修をスタートし独立するまでの道のりをつづります。

前回の記事はコチラ。
移住して2回目の冬がやってきました。メロンの収穫シーズンは終わり、これから冬の間は来年の就農に向けた準備期間に入ります。この2年間、農業研修を受けたことで就農への道筋のイメージは固まってきました。一方で研修前と今とでは農業をとりまく環境や社会情勢も大きく変わってきています。
今回は、これまでの研修期間を振り返りながら、これから農業研修を始めてみたい人に向けて、研修前に知っておきたいことを紹介します。

大きく変わった農業情勢

畑と白鳥
撮影:小林麻衣子
まず変わったこととして真っ先に思い浮かぶのは世界情勢の変化です。2022年2月に開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、今なお続いています。農業研修を始める前には「戦争」という言葉が身近に感じられる日が来るとは全く予想ができませんでした。それが遠く離れた日本に住む私たちの生活に大きな影響を与えるということも。

農業生産資材の高騰

世界情勢の変化は、食料品や日用品、電気やガソリンの価格高騰を招き、私たちの生活に大きな影響を与えています。農業も例外ではなく、肥料や農薬、ハウスのビニールやパイプなど、農産物の生産に必要なものの多くが今までにないほど値上がりしています。これから経営を始めるには、正直、大変な時期を選んでしまったなと思っています。

新規就農支援制度の変化

国内に目を向けると、2022年度から農水省の新規就農支援制度が刷新されました。これまでの農業次世代人材投資資金から「新規就農者総合対策(就農準備資金・経営開始資金)」と制度名が変わり、支援制度の仕組みも変更されています。とくに独立就農をする場合、機械や施設の導入費用を支援する制度が新たに創設されました。詳しくは農水省のウェブサイト「就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)」を確認してみてください。
国や自治体による支援制度を利用して就農を考えている人も多いと思いますが、こうした制度変更が何年かおきにあるので、注意しておくと良いでしょう。

研修を始める前に知っておきたいこととは!?

野菜の販売
撮影:小林麻衣子
幸い、私たちは自治体や研修先などのサポートもあって、なんとか就農に漕ぎ着けそうです。しかし中には研修を経て、就農場所を再検討するケースもあります。私たちと同じように農業未経験から新規就農を目指しているYさん夫婦に話を聞きました。

Yさん夫妻は、東海地方にある地元にUターンし、ブルーベリーを生産する農業法人で働きながら2年間研修を受けました。当初はそのまま地元で新規就農することを考えていましたが、販路の確保などが難しく、就農場所を見直すことに。現在は地元だけでなく、ほかの地域にも行き先を広げて就農場所を探していると言います。

Uターンを検討している人こそ、ほかの地域との比較を

Uターンし就農を考えていたYさんは、地元の自治体の農業研修生の受け入れ制度を知り、すぐに移住し研修をスタートしました。そのため、自治体によってサポート体制が異なることや、その地域の生産者の雰囲気をあまり知らないまま研修をスタートしてしまったと言います。
「地元だからこそ、もっと詳しく話を聞けばよかったと思います。今考えると、現地に行ってみて、自分たちと同じように新規就農した人に話を聞いた方が絶対にいいですね。雰囲気もわかりますし」
とYさん。もしUターンなどで就農場所を一つにしぼっていても、ほかの自治体と比較することで、その地域の特徴が見えてくると言います。また、コロナ禍で移住先の人とオンラインで話をする機会も増えていますが、必ず現地に行って地元の人の話を聞いてから研修先を決めるのが良いでしょう。

農家の働き方はさまざま

農家は農繁期にバリバリ働いて、農閑期にゆっくり休む――。そんなイメージを持っている人も多いかもしれませんが、働き方は人によって本当にさまざまです。Yさんも農繁期と農閑期でメリハリをつけて働きたいと考えていましたが、ブルーベリーの場合、一年を通して農作業があるため、研修前に想像していた働き方とは違った、と振り返ります。地域や栽培品目、作型によって、年間のスケジュールは大きく異なります。こうした働く環境もイメージしておくと良いでしょう。

また、未経験から農業について学びたいと思った場合、研修機関で研修を受ける方法もありますが、Yさんのように農業法人に就職して働きながら研修を受けることもできます。自分たちの目指す方向性にあった研修方法を選ぶのがお勧めです。

「場所」にこだわって働く農業という仕事

赤ちゃんと葉っぱ
撮影:小林麻衣子
農業を始めるには周囲の環境はもちろん重要ですが、大切なのは、どんな「場所」で始めるかだと思います。
ここ数年でリモートワークが普及したことで、「場所にとらわれない働き方」が当たり前になってきました。好きな場所で自由に働く、という言葉を聞くと、なんだか格好いい働き方のような気もしてきます。

一方、農業は畑で農産物を生産するので、その場所から離れることができません。そういう意味では、時代と逆行する働き方かもしれません。

しかし、場所にこだわって働くことは、自分の「居場所」を作ることだと思うのです。私は農業を始めるために仕事を辞めましたが、決して前の会社や仕事が嫌いだったのではありません。むしろ仕事は刺激的でしたし、会社に行くのがすごく楽しみでした。しかし、在宅勤務で東京の家に籠るようになると、会社という居場所はあっても、自分が暮らしている町には、友達や知り合いも少なく、せっかく住んでいる町なのに居場所がないなと思うようになりました。

いろいろな場所を自由に飛び回る仕事も格好いいですが、せっかくなら自分たちが暮らす場所に根付いた仕事がしたいと考えるようになったのです。さらに、家族といっしょにできる生業がしたい。そう考えた結果、農業を始めたいと思うようになりました。

2年間の研修を経て、少しずつですが、安平町にも自分たちの居場所ができてきました。来年からはいよいよ経営がスタートします。これから農業が上手くいくのかどうか、社会がどうなっていくのかを予測するのは、正直難しいです。壁が出てきたらその都度、乗り越えていくしかないのだとも思います。不安の種は尽きませんが、期待する気持ちもあります。引き続きそんな私たちを見守ってください。それでは、また来年にお会いしましょう!

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小林さんコラムバナー脱・東京!北海道でメロン農家になりたい夫婦の農業研修記

小林麻衣子プロフィール
神奈川県出身、北海道在住。大学卒業後、農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して夫婦で北海道安平町に移住。2021年4月からメロン農家見習いとして農業研修に励むかたわら、ライターとしても活動中。

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