異業種からの農業参入を考える上で大きな支えになるのが、連携企業によるコントラクター事業です。農業におけるコントラクターとはどのような取り組みなのでしょうか。大分県での事例を紹介します。
コントラクター事業で地域の農業を支える
大分県では県内外からの異業種農業参入や県外の農業法人誘致に積極的に取り組み、参入相談から栽培開始までワンストップでの支援体制を構築しています。さらに、参入した企業が農業総合企業コントラクター事業を開始し、事業の計画段階から実際の農業経営に至るまで、経験豊富な地元企業と伴走しながらサポートを受けられるのも魅力です。コントラクターとは
コントラクターは、農業の専門技術を有し、高性能農業機械で農作業を請け負ってくれる専門家のことをいいます。新規参入の企業や農家がコントラクターを活用することで、農業機械をはじめとする設備投資や人件費などのコストを削減でき、農業経営の早期安定化にもつながります。大分県豊後大野市のシセイ・アグリ株式会社では、20haの農地で白ネギの周年栽培を手がけるとともに、その経験と実績を生かして白ネギ栽培でのコントラクター事業を展開しています。代表取締役社長の衛藤 勲さんにコントラクターについて話を聞きました。
シセイ・アグリ株式会社の概要
シセイ・アグリ株式会社(旧 衛藤産業)
所在地:大分県豊後大野市
設立:1977年
事業内容:環境・有機質資材事業、アグリマネジメント事業、農業(白ネギ20ha、甘藷2.5ha、サトイモ2.5ha)
Webサイト:シセイ・アグリ株式会社
白ネギの周年栽培とコントラクターで地域農業に貢献
シセイ・アグリは、堆肥製造や自動車整備業、産業廃棄物収集運搬業のほか、20年前に本格的に農業へ参入し、2021年の売上額は1億円を超えています。3年前からは地域の農業をより発展させるため、コントラクター事業もスタート。創業から46期目を迎えた2022年は農業事業元年と位置づけ、堆肥製造部門をクローズして白ネギの周年栽培に特化した企業として新たなスタートを切りました。衛藤 勲社長
2022年現在、コントラクターには委託法人が1社、実証を含めて3軒の農家が参加しています。コントラクターを活用すると、資金、販路、モノづくりの技術やそれにともなう設備投資などの農業の課題を解決できます。参入企業が、一番早く事業を黒字化(収益化)するためのクリティカルパスがコントラクターであると捉えています。
コントラクターで、モノができる土台を提供する
シセイ・アグリが実践するコントラクターは、あらゆる農作業を受託するだけでなく、参入企業に寄り添いながら、安定的な農業経営のための計画や提案も行います。衛藤 勲社長
コントラクターというと「委託した農作業を、最新の大きな機械を使って効率的に行ってもらう」というのが見た目にはわかりやすいですが、本質としては「どういう経営を一緒に作り上げていくか」ということが大切なんです。参入企業と相談しながら、農業経営の進め方やベースの考え方を組み立てていくイメージです。
大分県HPで参入事例をもっと見る
大分県での白ネギ栽培で3年後の売上1億円を目指すために
農業へ参入した企業の売上目標金額は2,000万円では低すぎる
大分県で農業参入し、シセイ・アグリのコントラクターを活用する場合、衛藤社長は年間売上金額5,000万円を目指すところからスタートすることが望ましいと言います。衛藤 勲社長
現在、日本の農業では、年間売上金額5,000万円以上というのがGDPの8割を占めています。コントラクターを活用する場合は、最初5〜6haの農地で売上金額5,000万円を目標にして、順調に拡大できれば3年で1億円も目指せますよ。
異業種参入には周年栽培可能な白ネギが適している
年間売上5,000万円を実現するためには、栽培品目の選定も重要なカギを握ります。温暖な気候の大分県では、白ネギの周年栽培が可能で、雇用を守りながら安定的な農業経営を行うには最適の品目といえます。衛藤 勲社長
短期集中で労働力が必要な品目を選ぶと、働き手が減っている現状に加えて農業の求人が難しい地域であればなおさら「どうやって人を確保するの?」という問題が出てきます。白ネギなら周年栽培できるので、年間を通して雇用できるのが経営の強みになります。
堆肥製造技術や肥培管理技術でバックアップ
さらに、大分県では「ねぎ産出額100億円プロジェクト」を展開しており、白ネギの新規栽培者などの機械導入を支援するとともに、大規模経営体による技術指導なども実施されるなど、新規参入者にとって白ネギ栽培にチャレンジしやすい環境が整っています。衛藤 勲社長
大分県の白ネギの収益目標は、反収2t(1kg350円)で1反あたり70万円。シセイ・アグリのビジネスモデルでは、さらにその上を目指します。平均反収2.5t、ピーク時には3.5tまで持っていきたいですね。3tを超えるためのポイントは、土作りや追肥などの肥培管理です。
堆肥製造に長年携わってきたシセイ・アグリは、肥培管理も得意とするところです。コントラクターを活用する参入企業は、シセイ・アグリの栽培技術や知見を享受できるのもメリットのひとつです。
大分県HPで参入事例をもっと見る
「農業ゼネコン」として、新規参入企業をサポート
衛藤社長は、今後、大分県で農業参入した企業などと連携して「農業ゼネコン」を形成したいと考えています。それぞれの強みを生かして統合的に管理を行いながら細部にわたって分業することで、大きなプロジェクトにもチャレンジしていきたいと話します。衛藤 勲社長
これからの農業は、ほ場で栽培ノウハウを積み上げて行くのではなく、技術をパッケージ化して、事業をスタートさせたらきちんと収益化させるモデルが必要です。それぞれに作業をアウトソーシングしながら、全員がもうかる仕組みを作り上げていきたいです。産地全体として農業経営体が減ったときには、地域の農家を取りまとめて大きなプロジェクトに関わることが大切です。
今後は、自然災害のリスクに備えて、全国規模での販売ネットワーク整備も視野に入れたいという衛藤社長。モノづくりから販売までトータルに連携し合う「農業ゼネコン」を構築し、農業参入をめざす企業をサポートしていく考えです。
大分県でのコントラクター活用事例はこちらをチェック
大分県への農業参入についてのお問い合わせ
異業種から農業に参入して事業をスタートする場合、これまでに培ってきた自社のノウハウや経験が生かせず、経営の黒字化を実現するまでに試行錯誤を重ねる企業も少なくありません。大分県では、異業種からの農業参入や県外の農業法人の誘致を歓迎しています。農林水産部 新規就業・経営体支援課 企業参入支援班(専任スタッフ4名)と県地方機関企業参入担当(1名)による万全のサポート体制を構築。さらに、市町村やJAなどの関係機関や県庁関係各課が連携し、参入相談から栽培開始までワンストップ体制での積極的な支援体制を構築しています。シセイ・アグリをはじめとする県内企業コントラクターを活用した農業参入についても相談できます。
大分県への農業参入の手順(参考:企業の農業参入ガイドブック)
1)参入相談(参入目的や目標を具体化)が受けられる
2)農地の確保(候補地を選定し、農地中間管理事業を活用)
3)経営計画の作成(売上目標、初期投資額、必要な人材の確保、収支の数値化)
4)施設整備(農業用ハウスや農業機械など設備投資への準備)
5)栽培技術の習得(誰が、どこで、どのように習得するかを明確にする)
6)栽培開始(営農後の想定外のトラブルに備えて相談先を確保し、地域との連携を深める)
大分県農林水産部
新規就業・経営体支援課 企業参入支援班〒870-8501
大分県大分市大手町3丁目1番1号 (大分県庁舎本館9階)
電話:097-506-3780大分県 農業参入相談窓口
Sponsored by 大分県