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日本独特の香りを追求する小川香料株式会社のレモン栽培への道|大分県が企業の農業参入を全力でサポート


大分県では、市町村やJAなどの関係機関や県庁関係各課が連携し、農業参入相談から栽培開始までワンストップ体制でのサポートを行っています。2018年8月、新規事業として大分県佐伯市でレモン栽培をスタートさせた小川香料株式会社に、異業種からの農業参入を決断した経緯、今後のビジョンについて伺いました。
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細川理恵

広告制作会社のコピーライター、旅行関連情報ツールの編集ディレクターを経て独立。全国各地の農園、食品関連企業を中心に取材・執筆を行う農業ライター、日本野菜ソムリエ協会認定野菜ソムリエプロ、AGRI PICK エディターとして活動中。…続きを読む


小川香料_社員2名

撮影:はちどりphoto(小川香料おおいた佐伯農場株式会社のレモンほ場(左)代表の上野氏(右)辻氏)
1893年創業の小川香料株式会社は、各種香料の開発、製造、販売を手掛ける総合香料メーカーです。同社では、国産原料の調達を目標に、2018年8月、新規事業として大分県佐伯市でレモン栽培をスタートさせました。
農業分野への新規参入にあたり、独自の支援制度を持つ大分県のサポートが大きな原動力になったと言います。代表取締役社長 小川 裕さんに、異業種からの農業参入を決断した経緯、今後のビジョンについて伺いました。

総合香料メーカーが国産原料にこだわり農業参入を決意

小川香料_小川社長
撮影:大分県(小川香料株式会社代表取締役社長の小川氏)

小川香料株式会社の概要

小川香料株式会社
所在地:東京都中央区
設立:1893年
連結売上高:396億円(2021年12月期)
従業員数:連結:1,076名(2021年12月末時点)
Webサイト:https://www.ogawa.net/

日本独特の香りを届けるために

小川香料が製造している香料は、食品や香粧品などの最終消費財に広く使用されています。同社では、創業当初から香料の原料を海外から輸入してきました。台湾や上海ではプランテーションで香料の原料となる植物を栽培していた歴史があります。日本では、北海道でシソを栽培して精油を抽出するなど、日本独自の香りを生み出してきた実績があります。

香料を通じて社会に貢献する中で、次第に日本の自然や伝統、文化といった独自の魅力を再認識し「日本独特の香りを世界中の人々に伝えたい」という思いが強くなっていったという小川社長。
小川 裕社長
小川 裕社長
日本独特の香りをお客様に訴求して販売力を上げるために、原料を海外から輸入するのではなく、原料そのものを作り、独自の国産原料で香りを作り込んでいけたら、私たちの強みになると考えました。そして、強みそのものがSDGsへとつながっていくのではないか、という気付きもあり、農業参入を模索し始めました。

「自社の強みを生かせる品目×地域」を探す

小川香料が本格的に農業への新規参入を決意した背景には、自社製品の原料調達という明確な理由がありました。しかし、最初から栽培品目を限定していたわけではありませんでした。
小川 裕社長
小川 裕社長
農業を始めるあたり、品目ありきではなく「自社の強みを生かせる品目×地域」はどこなのかというかけ算で考えました。製造拠点の岡山工場からのアクセスのよさなど、立地条件も考慮しながら、2017年ごろから手当り次第に場所を探し始めました。

大分県での農業参入に魅力を感じたポイントとは

小川香料_レモン
撮影:はちどりphoto
いくつかの自治体を比較検討していく中で、候補地が絞られていきました。物流を考えた上での立地条件や自治体からのサポートのレベル感、その地域に自社の強みを生かせる品目があるかなど、重要なポイントを総合的に判断していったと言います。

大分の栽培品目「マリンレモン」に着目

大分県は温暖な気候で、柑橘類の栽培が盛んに行われています。柑橘の香りは世界中で親しまれていて、中でもレモンは主力原料のひとつです。レモンは、寒さに弱く栽培地域が限定されますが、大分県には「マリンレモン」の栽培実績があり、候補地選びのポイントになりました。
小川 裕社長
小川 裕社長
私たちはフレッシュレモンの独特の風味、強烈に匂うだけでなく芯の太い香り作りを得意としてきました。フレッシュさと力強さを感じられる大分県のマリンレモンには、大きな可能性を感じました。

行政の中に企業誘致の部署があり、チームでのサポート体制が充実

大分県では、農林水産部 新規就業・経営体支援課 企業参入支援班(専任スタッフ4名)と県地方機関、企業参入担当(1名)、さらに市町村やJAなどの関係機関や県庁関係各課が連携し、参入相談から栽培開始までワンストップ体制でのサポートを行っています。
小川 裕社長
小川 裕社長
大分県と佐伯市が連動してきめ細やかなサポートが受けられるのも魅力でしたし、何よりもスタッフの情熱が伝わってきましたね。また、JAグループとも連携でき、農業のプロからさまざまなアドバイスを受けられたので、円滑なスタートを切ることができました。

農地のあっせんや大規模造成事業の推進

大分県では、農地のあっせんや土地の集約にも尽力しています。小川香料が新規参入を検討していたタイミングで、佐伯市のみかん畑の荒廃地で農地の集約化が進められていました。集約後の農地で新たな担い手を探していたこともあり、8haのまとまった農地を確保することができました。基盤整備では土壌改良が施され、鳥獣害対策なども行われるなど、サポートも万全でした。

おんせん県おおいたで農業参入しませんか

農業参入に必要な準備やサポート、利用した補助金は?

小川香料_社員2名
撮影:はちどりphoto
小川香料は2018年8月に現地法人を立ち上げ、2021年3月よりレモンの苗木の定植を始めました。2022年3月には8ha 4,000本の定植を終え、本格的に栽培がスタートしました。

事業を展開する上で、いくつかの補助事業を利用しています。補助事業の選定には県やJA全農おおいたのアドバイスを受けました。国や県の補助事業の中から補助率などを見極め、最適な補助事業を複数組み合わせて利用したそうです。

利用した補助事業
■農地耕作条件改善事業
■農地中間管理機構関連農地整備事業
■産地生産基盤パワーアップ事業
■果樹経営支援対策事業
■次代へ繋ぐ園芸産地整備事業(旧:活力あふれる園芸産地整備事業)(大分県)
■企業等農業参入推進事業(大分県)


人材の確保|県やJA全農おおいたから紹介された2名を採用

農業への新規参入にあたり、人材の確保も重要です。小川香料ではJA全農おおいたの紹介で農場長を1名採用したほか、県の紹介で農業大学校出身者1名を迎えました。農場長は地元の建設会社経営の実績もあり、地域との連携をはかる上でも心強い存在です。

栽培サポートや講習会で技術を習得

大分県では、約200名の普及指導員が栽培技術、農業経営をバックアップしています。小川香料では普及指導員、佐伯市農政課、JAなど関係機関の担当者が週に1回ほ場を訪れ、苗や病害虫のチェックなど技術サポートが頻繁に行われているほか、講習会などにも参加して、栽培技術を学ぶことができます。

おんせん県おおいたで農業参入しませんか

農業参入後の課題と経営ビジョン

小川香料_レモンの葉
撮影:はちどりphoto

収益化は長期的ビジョンで。まずは地域に貢献する企業でありたい

レモンの苗木の定植から、実際に果実が収穫できるようになるまでに約3年。収益化するまでには数年かかる見通しですが、もともと香料の研究開発には多くの時間を要するといいます。そのため小川香料では、長期的ビジョンで経営計画を策定しています。収益化はもちろん重要なミッションですが、小川社長は、まず地域に貢献したいと話します。
小川 裕社長
小川 裕社長
農業参入への目的は、自社の原料調達が第一ですが、地元では「産地として地域の農業を盛り上げていく」ことが期待されています。まずは、企業としてしっかりと地域に貢献していきたいと考えています。

小川香料では、これまでにも自社施設で高校生の農業研修や香料の授業などを行い、交流をはかってきた実績があり、大分県でも同様に若い世代との交流を深めていきたいと考えているそうです。

最盛期には50〜60人の働き手が必要

現在、小川香料おおいた佐伯農場では従業員3名で作業を行っていますが、8haのほ場を管理していくためには、今後大勢の人員を確保していく必要があります。
小川 裕社長
小川 裕社長
最盛期の11〜4月で50〜60名ほどの人員が必要になりそうです。社員の活用や地域の人を雇用していくことはもちろん、農業労働力支援を行っているJAグループの株式会社菜果野アグリ、社会福祉協議会との連携も考えています。

自社栽培による原料調達から香料の製造販売まで一貫した生産体制を確立

これまで、香料の原料調達はおもに海外からの輸入でまかなっていた小川香料にとって、「自社で原料のもとになる農産物を栽培し、製造販売までを一貫して行うことにも大きな意味がある」と、小川社長は話します。
小川 裕社長
小川 裕社長
農場の開園時には、多くの社員が自ら名乗りを上げて、手伝いに参加しました。ふだんは開発や製造、営業に携わる社員が、栽培から製造販売まで一貫して行う生産体制について知り、ノウハウや体験を積み重ねていく。自分たちも事業に関わっているという実感を持てるようになる、そんな複合的な効果も非常に大きいですね。

大分県への農業参入についてのお問い合わせ

大分県では2007〜2022年3月末までの累計で338社の農業参入を受け入れてきた実績があり、県外企業の成功事例も数多く存在しています。参入相談から農地の確保・集約、経営計画の作成など、栽培開始までトータル的にサポートが受けられます。大分県での農業参入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

大分県への農業参入の手順(参考:企業の農業参入ガイドブック)
1)参入相談(参入目的や目標を具体化)
2)農地の確保(候補地を選定し、農地中間管理事業を活用)
3)経営計画の作成(売上目標、初期投資額、必要な人材の確保、収支の数値化)
4)施設整備(農業用ハウスや農業機械など設備投資への準備)
5)栽培技術の習得(誰が、どこで、どのように習得するかを明確にする)
6)栽培開始(営農後の想定外のトラブルに備えて相談先を確保し、地域との連携を深める)


大分県農林水産部

新規就業・経営体支援課 企業参入支援班
〒870-8501
大分県大分市大手町3丁目1番1号 (大分県庁舎本館9階)
電話:097-506-3780大分県 農業参入相談窓口

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