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【最終回】笑顔あふれる農業の未来|農家ライターが出会った農家のひきこもごも


果樹園三代目の農家ライター森田優子さん。20年勤務した小売業界で販売士・バイヤー・マネージャー・スーパーバイザーの経験と食農連携コーディネイターとしての活動から、『ながさき食べる通信』の取材を通して感じた農家や農業の「生の声」を鋭い視点で切り取りお届けします。 最終回となる今回は、度重なる経済変動の中で再評価される農業という生き方、そして、地域における期待される役割をお伝えします。

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森田優子

果樹園三代目、『ながさき食べる通信』発行人・編集長・ライター、食農連携コーディネーター。地元の農業衰退を目にし、地域課題を解決したい! と「ながさき食べる通信」をはじめる。20年の小売業勤務で販売士、バイヤー、マネージャー、スーパーバイザーを歴任し、その経験を活かし、生産の現場の課題解決に走り回っている。シューフィッター、トータルカラリスト、パーソナルカラリストの資格を持つ。…続きを読む

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れんこん農家取材中の筆者

写真提供:森田優子
笑顔あふれる農業の未来。果樹園三代目の農家ライター森田優子が、20年勤務した小売業界での経験と農食連携コーディネイターとしての活動から、『ながさき食べる通信』の取材を通して感じた農家や農業の「生の声」を独自の視点で切り取りお届けします。

最終回となる今回は農業の再評価と魅力、農業の地域における役割をお伝えします。

見直される「生き方としての農業」

農場のある風景
写真撮影:森田優子
第3回で、大学に行って会社に就職して給料をもらうサラリーマンになるのが当たり前だったという「サラリーマン至上主義」というワードを使いました。サラリーマンはもちろんのこと、お店屋さんや漁師や農家、多くの家庭で子どもに対して、その価値観を当てはめていたのではないかと思います。しかし、度重なる経済変動により、人びとは価値観の変化を否が応でも迫られました。

サラリーマンでいられない!?

約20年間の高度経済成長期に生まれた子どもたちは、1991年のバブル経済の崩壊があってもなお、「サラリーマン至上主義」に囚われたまま社会に出て行ったのではないでしょうか。しかし、回復基調にあった経済は2008年のリーマンショックにより状況が悪化しました。会社が倒産したり、リストラに遭ったり、さらには、過重労働やハラスメントなど、サラリーマンとして働きにくい環境になっていきました。その中で人びとは生き方を模索しはじめました。

ゆっくりと生きたい

バブル崩壊後に、生き方を見直す人が増える中で、「スローライフ」の考え方が広まっていきました。スローライフは、1980年代後半、イタリアでのマクドナルド出店を機に、伝統的な食文化を評価するスローフード運動が起こり、やがて食文化のみでなく、生活様式全般やまちづくりを見直す動きから生まれた言葉でした。

豊かな暮らしとは?

スローライフからつながる考え方として、1990年代半ばごろから塩見直紀氏が提唱してきた「半農半X」というライフスタイルがあります。半分は農のある暮らしをしながら、半分は自分が大切だと思うこと、大好きな仕事をすることで、精神的に満たされるという暮らしです。その著書は「サラリーマン」以外の生き方を提示するものと捉えられ、多くの人たちから共感を得ました。かくいう私もその一人でした。

田舎へ行こう!

2011年に発生した東日本大震災、そして、2020年からのコロナ禍でスローライフや半農半Xという生き方は人びとへ急速に浸透しています。実際に、収入が減少しても心豊かな暮らしをしたいという都市部の20〜40代の中には、地方へ移住し、農とともに歩んでいる人が出てきています。

農業は自然との協同作業

お茶農家
写真提供:森田優子
なぜ、心豊かな暮らしに農業は必要なのでしょうか?そもそも農業はその土地と気候が育む自然を生業とします。私は、その自然とともに生きていくスタンスを農家から教えてもらいました。

自然によりそう生き方

いろいろな取材先での楽しみは自然と農業が織りなす風景です。息をのむ美しさには胸を打たれます。しかし、時として厳しさを見せる自然には怖れを感じます。そんな自然と対話をしながら作業をする農家の姿、そして、紡ぎだされる言葉に心を動かされます。

茶畑のように明るく広い心で

コロナ禍になったはじめのころ、私が一番危惧していたのは農家への取材ができなくなることでした。幸いなことに、その時取材を申し入れたお茶農家は躊躇(ちゅうちょ)なく受け入れてくれました。新芽が萌えるお茶畑にどれだけ心が癒されたことでしょう。この時に取材できたからこそ、今、続けられていると感謝の気持ちでいっぱいです。

農家は自然と会話ができる!?

どの農家さんも作物と話ができることに感心するのですが、特にレンコン農家には驚きました。レンコンは泥の中で4節ほどつながっているので、ひとつ見えても、その先が見えないのです。レンコンの特性を理解した長年の経験で手掘りし、節を折ることなく引き上げる姿は魔術師のようでした。

「仕方がない」という諦め

人との作業でミスが起こると、その「人のせい」にしてしまいがちです。でも、自然が相手の場合は、強風で収穫目前の果樹が落下したり、病害虫がまん延したり、人為を超えた仕業なので誰のせいにもできません。「仕方がない」と思えば、原因を把握して対策が取れます。時には栽培する作物自体を変えることさえあります。この「仕方がない」という諦めは多くの農家が持っているように思えます。しかし、諦めて終わりではなく、すぐに次の行動に移るための思考スイッチではないでしょうか。

地域における農家の役割

農村の景色
写真提供:森田優子
自然とともに生きる農家は地域づくりのキーマンです。そこに外からくる人びとが、農業も含めたその地域の良さや価値を再認識させてくれることがあります。農家は外部からの評価を上手に地域とブレンドし、内外者を有機的に連携させることができる力を持っています。この力は地域の見直しと活性化、発展が期待されます。農家は地域(ふるさと)の風景と環境を守っていること、地域資源となる産物を生み出していること、地域活性を担っていること、農業者としてだけではなく地域人として誇りを持ち歩む先に、明るい未来があると信じています。

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