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アデニウムの育て方|多肉植物研究家が「オベスム」「アラビカム」など代表種の特徴や元気がない時の対処法について解説


アデニウムは肥大した幹や根をもつコーデックスと呼ばれるグループの多肉植物で、その個性的な樹形から非常に人気があります。樹形のおもしろさに加えて花も魅力的で、別名「砂漠の薔薇」とも呼ばれています。この記事では、アデニウムの育て方や基本種の特徴などをご紹介します。

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Shabomaniac! 監修者

園芸家

Shabomaniac!

幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む

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kiko

出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、コロナ禍をきっかけに観葉植物の魅力にハマる。現在はフローリスト&グリーンコーディネーターとして勤務する傍らWebライターとしても活動中。家の中をジャングルにするのが夢です。…続きを読む

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大きく太る幹や根の形がユニークで見る人を楽しませてくれるアデニウム。樹形だけでなく花も美しく、赤やピンクの立派な花を咲かせることから「砂漠のバラ」とも呼ばれています。この記事では、多肉植物の栽培に詳しいベテラン園芸家監修のもと、アデニウムの基本的な育て方から元気がない時の対処法、人気種の特徴などを解説します。

アデニウムの特徴

 
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タイ・ソコトラナム
アデニウムは熱帯アフリカの乾燥地帯に分布するキョウチクトウ科のコーデックスです。日光を遮るものが少ない開けた場所に生えており、高温乾燥の過酷な環境に適応するために塊茎や塊根に水分を蓄える性質を持っています。すべての種の樹液に毒があり、原産地のアフリカでは古くから狩猟用の毒矢などに利用されてきました。

アデニウムは主にアフリカ大陸などに自生する原種と、タイなどで改良された盆栽向けの園芸種や花ものとに大別されます。多肉植物の愛好家が好むものの多くは原種で、塊茎や塊根の形、樹高などのバリエーションが豊富です。原種の花も園芸種に劣らず華やかで見応えがあり、満開時には人目を惹きつけます。葉には皮革のような艶があり、樹形のおもしろさや花の美しさともあいまって非常に鑑賞価値が高い植物です。

原種

アデニウム属の原種としては以下の6種が知られています。
  • ボヘミアナム(Adenium boehmianum)
  • ドファレンセ(Adenium dhofarense)
  • ムルチフローラム(Adenium multiflorum)
  • オベスム(Adenium obesum)
  • オレイフォリウム(Adenium oleifolium)
  • スワジカム(Adenium swazicum)
そのうち栽培されているもののほとんどがオベスムで、人気種のアラビカム、ソマレンセ、ソコトラナムなどはいずれもオベスムの亜種として記載されましたが、現在ではシノニム(同物異名)とされています。とはいえ、観賞上は顕著な違いが見出せるので、園芸的視点から今も亜種名が活用されています。

タイ産の園芸種

タイ産アデニウムの園芸種
写真提供:Shabomaniac!/オベスム
アデニウムは育てやすく花つきもよいため、タイを中心に育種が盛んに行われており、膨大な数の園芸種が普及しています。ほとんどはオベスムがベースですが、いろいろな種が交配されて雑種化しているため、学名で区別するのはほぼ不可能です。異種との掛け合わせによって八重咲きや色変わり、斑入りなど原種にはない特徴をもつさまざまな園芸種が生み出され、熱帯圏の国々では鉢植えのほかにも生垣や庭植え用の植物として使われています。

園芸種の中にもアラビカムやソコトラナムという名前が付けられた種が存在しますが、これらは原種とは異なります。交配種の中から原種と似た雰囲気の個体が出現した時に、現地の業者が愛称として同じ名前を冠して販売しているものです。以前は園芸種と原種が混同されて流通していましたが、現在はタイ・ソコトラナムやタイ・アラビカムといったように両者を区別して販売されており、近年は日本へも多く輸入されてきています。

アデニウムの自生地

アデニウム・ソコトラナム
出典:Flickr(Photo by Valerian Guillot
アデニウムの中でもオベスムの分布範囲は広大です。マリやセネガルといったアフリカ大陸の中部から、スーダン、ソマリア、エチオピア、ケニアといった東部まで、熱帯アフリカのほぼ全域に及び、さらにイエメン、オマーン、サウジアラビアなどのアラビア半島にまで広がっています。その中でソコトラ島に生えているものはソコトラナム、ソマリアに生えているのはソマレンセなど、顕著な特徴をもつものには亜種名が与えられています。

アデニウムの花

アデニウムの花
写真提供:Shabomaniac!
花は星形で、一斉にまとまって開花すると開花前とは全く異なる植物のように見えます。色は総じて派手で、赤、ピンク、紫、赤と白のバイカラーなど種によってさまざまです。開花時期は休眠を終えて新葉が出る直前ごろ、葉と同じ時期に開花するものもあります。

アデニウムの入手方法・価格

原種は手に入りにくく、10万円以上する種もあります。市場にはほとんど出回らないため、ネットオークションなどで探すとよいでしょう。タイから輸入されてきた園芸種や花もののオベスムなどは花屋さんなどでも購入でき、安ければ数百〜数千円で入手可能です。

アデニウムの基本情報

アデニウム・オベスムの葉
写真提供:Shabomaniac!
分類 キョウチクトウ科アデニウム属
原産地 熱帯アフリカ全域、アラビア半島

生育型

夏型

耐暑性

高い

耐寒性

とても低い

生長速度

栽培環境や種類による

関東近郊であれば実生から開花まで5〜10年程度です。年中温暖な気候であれば生長も早い一方、生育期が夏だけに限定される環境では生長速度もぐっと落ちます。また、園芸種は比較的早く生長しますが、原種のソコトラナムやムルチフローラムなどは開花までに長い年月が必要です。

アデニウムの基本種

ここからはアデニウム属の基本種を紹介していきます。それぞれの栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど栽培難易度が低くなります。

ボヘミアナム(Adenium boehmianum)

栽培難易度☆☆☆
ナミビア南部、アンゴラ南部、ボツワナの標高900〜1,200mの乾燥した岩場に生え、自生地では高さ1.5mまで生長します。幹は白っぽい灰色、葉はこの属の中では最大で表面が皮革のように艶やかな質感が特徴です。花は淡いピンクや藤色で、夏の終わりから初冬にかけて開花します。生長がとても遅いため、栽培はあまり一般的ではありません。

ドファレンセ(Adenium dhofarense)

栽培難易度☆☆☆
矮性(わいせい)のバオバブのような見た目で、この属の中ではもっとも形のいいコーデックスのひとつです。自生地では長い枝が地面に触れたところから根を張り、新しい株を形成する性質があります。花は非常に小さく、色はピンクで、葉を生やす直前に開花します。

ムルチフローラム(Adenium multiflorum)

栽培難易度☆☆☆
南アフリカ、スワジランド東部、モザンビーク、ジンバブエ、マラウイ、ザンビアなどが原産で、海抜1,200mまでの砂浜や岩場、平地などに自生しています。樹高は低くがっしりとして、花は白や淡いピンクが多く、いずれも大きくて派手です。ちなみにmultiflorumにはラテン語で「多くの花」という意味があります。オベスムよりも生長が遅いため、そこまで盛んには栽培されていないようです。

オベスム(Adenium obesum)

アデニウム・ソコトラナム
出典:Flickr(Photo by Valerian Guillot
栽培難易度☆☆☆
タンザニアやエチオピア、ソマリア、アラビア半島、ソコトラ半島が原産。アデニウムの原種の中でもっとも多様な種で、いくつもの亜種が存在します。濃いピンク色の美しい花を咲かせることから「砂漠のバラ(Desert rose)」という愛称でも呼ばれています。塊茎植物として人気のパキポディウム属と近縁ですが、花はアデニウムの方が華やかです。茎は膨らんだ基部から頂部に向かって細くなり、枝分かれします。ボトル状の詰まった株姿のものから、ほっそりしたもの、茎ではなく根が太るものまで、いろいろな形態のオベスムがあります。

ケニア産のオベスム(Adenium obesum)

アデニウム・ケニア
写真提供:Shabomaniac!
栽培難易度☆☆☆
自生地の土壌が赤土のためか、同じオベスムでもケニア産のものは根や幹の表皮がオレンジ色をしているのが特徴です。水をかけると次第に土の色が流れ落ち、緑がかった本来の色が出てきます。地上部はブッシュ状に育ち、地中の根が肥大する塊根型が多く見られます。写真の個体も丸く膨らんだ部分は本来は地中にある塊根です。葉はソマレンセなどに比べて幅広でワックスを塗ったような艶があります。

オベスムの亜種

アラビカム(Adenium obesum ‘Arabicum’)

 
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栽培難易度☆☆☆
サウジアラビアやイエメンなどアラビア半島が原産で、花崗岩(かこうがん)や崖に挟まれた乾燥した環境で自生しています。オベスムによく似ていますが、塊茎が横に広がりやすく、ずんぐりとした球状や円錐形(えんすいけい)に発達します。表皮の色は灰色がかった緑、茶、黒などです。栽培されているほとんどの種が雑種で、原種のアラビカムはごくわずかしか出回っていません。スーパードワーフというアラビカムを小型にした園芸種も人気です。

ソコトラナム(Adenium obesum ‘Socotranum’)

ソコトラナム・ボトルツリー
出典:Flickr(Photo by Valerian Guillot
栽培難易度☆☆☆
アラビア半島の南、イエメンに近いインド洋に位置するソコトラ島固有のアデニウム。ボトルツリーとも呼ばれ、幹の基部が膨らみ、高さ4mまで生長する巨大な種です。ソコトラ島では野生植物の採取が禁じられているため栽培数も限られますが、稀に栽培中の株を受粉させた種子が出回ることがあります。生長期が短く、苗木が鑑賞できるサイズに育つまで何十年もかかることから希少価値が高く、コレクターの間では非常に人気があります。

ソマレンセ(Adenium obesum ‘Somalense’)

 
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栽培難易度☆☆☆
ソマリア南部、ケニア、タンザニアなどが原産。株姿も花もオベスムとよく似ていますが、識別ポイントとしては披針形(ひんしけい)の細長い葉、白っぽい主葉脈、花びらの基部にある蜜標(昆虫に蜜のありかを教えるための斑点のこと)などが挙げられます。本種もブッシュ状に育ち、根が太るタイプが大半です。

オレイフォリウム(Adenium oleifolium)

栽培難易度☆☆☆
ボツワナ南東部や南アフリカを原産とし、石灰岩や砂質の土壌に自生する比較的小型のアデニウムです。自生地では塊茎の大半が地中に埋まっており、そこから地上に枝を伸ばします。葉は細長く、枝の先端に密集します。花も小ぶりで、色はピンクや赤などです。

スワジカム(Adenium swazicum)

 
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栽培難易度☆☆☆
南アフリカ東部、スワジランド、モザンビークの砂浜の汽水地帯に自生するアデニウムです。オレイフォリウムと同じく塊茎は地中に埋もれて灰色っぽく、茎の先端付近から細い枝を形成して細長い葉をつけます。花の色は淡いピンクから濃いピンク、紫までさまざまです。オベスムに次ぐ人気があり、交配種の親としてよく利用されています。

アデニウムの育て方

アデニウム・オベスム
出典:Flickr(Photo by Tatters ✾
アデニウムは本来は丈夫な植物で、熱帯圏では路地にも植えられています。日本も一年中真夏のような環境が作れれば栽培は簡単です。熱帯原産の植物なので生長がもっとも旺盛なのは夏。日本だと1日の最高温度が30℃近くなる5月下旬ころからが生育期の本番で、9月には休眠に入ります。気温が高ければ4〜10月まで活動することもあります。

水やり

生長期の夏場はたっぷり水やりします。葉が落ち始めたら休眠に入るので水を切るか、ごく少量のみを与えます。休眠中に水をやり過ぎると腐ることがあるので注意しましょう。自生地は雨期にまとまった雨が降る場所なので、栽培下でも気温が高い時期には外に出して雨ざらしにした方が調子がよくなる場合があります。

日当たり・置き場所

砂漠や乾燥した場所の岩場に生えているため、年間を通して直射日光が当たる風通しの良い場所で管理します。

温度

暑さに強い一方、寒さにはとにかく弱い植物です。霜に当てないようにして、冬も10〜25℃を保ちましょう。
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自生地では乾期に休眠する程度で、寒さが休眠を引き起こすことは基本的にありません。そのため日本の冬を経験すること自体がアデニウムにとっては大きなストレスとなり、元気に育てられるかどうかは温度管理にかかっています。低温を避けるだけなく日射と高温も必要なので、屋内の日当たりが悪い玄関などに置いていると暖まらず腐りやすくなります。ベランダに簡易温室を設置する程度では温度が維持できないので、暖房の効いた室内に移すか、加温設備などを整備して人工的に暖かい環境を用意してあげてください。

用土・肥料

水はけの良い多肉植物用の培養土を使用。肥料を好むので、生長期に液肥や緩効性の化成肥料を適量与えます。

アデニウムの植え付け・植え替え

 
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植え付け・植え替えは5〜9月の生長期が適期です。種によっては生長が早く肥料もよく吸収するため、2年に1回は植え替えましょう。


アデニウムの剪定・切り戻し

 
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※上記の写真に関して枝が短いのは、切り戻しによるものではなくタイプが持つ特徴によるものです
枝が長く伸びるので、必要に応じて剪定して形を整えます。剪定した枝は挿し木にして殖やすのもおすすめです。

アデニウムの殖やし方

 
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挿し木や実生が一般的です。どちらの方法でも簡単に生長しますし、冬も暖かい環境が用意できれば丈夫で長く育てることができます。

アデニウムの病気・害虫

カイガラムシ
出典:PIXTA
稀にカイガラムシがつくことがありますが、樹液に毒があるので基本的に虫による食害には強い方です。

アデニウムについてのQ&A

 
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塊根・塊茎を太らせるには

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塊根・塊茎の太りやすさは繁殖方法によって変わってきます。挿し木で育てた株はなかなか太らないため、大きくしたい場合には実生株から育てるのがおすすめです。

花が咲かない

Shabomaniac!さん
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生長期に勢いをつけてやるだけの水やりが十分ではなかったか、温度が足りなかった可能性があります。

塊根がぶよぶよに

Shabomaniac!さん
Shabomaniac!さん
過湿などが原因で腐ってしまった塊根・塊茎は元に戻りません。腐っていない部分の枝を切り取り、挿し木で生き延びさせましょう。アデニウムは水分含有量が多く、塊根や塊茎が一部でも腐るとあっという間に腐りが進行してしまいます。気温の低い時に水をやり過ぎないよう注意が必要です。また、水を切っている冬場は塊根や塊茎が柔らかくなりますが、生長期になって水やりを通常のペースに戻せば元のように膨らむので心配いりません。

アデニウムを育ててみよう

アデニウム・オベスム
写真提供:Shabomaniac!
冬に十分な温度を確保することさえできれば、アデニウムの栽培は割と簡単です。ただし寒さには極端に弱いため、冬に何日か家をあける際には暖房を入れたままにするなど、寒さにさらさないよう注意して育ててあげてくださいね。

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