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ギムノカリキウムの育て方|「緋牡丹錦」や「新天地」などの人気種や、早く生長させるコツなどを多肉植物・サボテン研究家が解説


サボテン科の中でも特に種類が豊富なギムノカリキウム。「緋牡丹」や「緋花玉」といった普及種はホームセンターや花屋さんでも入手しやすく、身近に楽しむことができます。育種がさかんに行われているのも特徴で、自分好みの株を作り出したり、魅力的な園芸種をコレクションしたりする楽しみがあります。この記事では「早く生長させるコツは?」「斑入り種の栽培で気を付けることは?」など、よくある疑問への回答も含め、ギムノカリキウムの育て方をご紹介します。

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Shabomaniac! 監修者

園芸家

Shabomaniac!

幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む

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kiko

出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、現在はWebライターとして活動中。多肉植物・観葉植物の魅力にはまり、鉢が増えていく日々。…続きを読む

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ギムノカリキウム

出典:Flickr(Photo by Maja Dumat
南米原産のサボテン・ギムノカリキウムは、非常に種類が多く、球体の色や形、刺の大きさや太さもさまざまです。「海王丸」や「天平丸」「光琳玉」といった種は日本でも古くから親しまれており、鮮やかな斑入りの「緋牡丹」はホームセンターでもよく売られています。この記事では、多肉植物・サボテン研究家の監修のもと、ギムノカリキウムの特徴や人気種、育て方をご紹介します。

ギムノカリキウムの特徴

ギムノカリキウム
出典:Flickr(Photo by Daniel Sebastián Cueto)/緋牡丹
ギムノカリキウムは、主に南米・アンデス山脈の東側を原産地とする多数の種を含む大家族のサボテンです。草陰に自生し、艶のある肌と触っても痛くない刺を特徴とする種や、アンデス山麓の荒野に自生し、太く大きな刺を突き立てる勇壮な姿の種など、非常にバラエティに富んでいます。

アンデスの東側は、西側に比べると適度に雨が降るなど気候が比較的に穏やかです。そのため日本の環境にもなじみやすく、古くから園芸植物として親しまれてきました。また、異種間交雑が割と簡単にできるため、雑種の中から魅力的なものを選び、自分好みの株を生み出していくのも楽しみ方のひとつです。斑入り種が出現しやすいのも特徴で、球体全体が鮮やかな赤や黄色に染まる「緋牡丹」などが特に有名です。

ギムノカリキウムの自生地

ギムノカリキウム
出典:Flickr(Photo by Andrés el Groso
標高2,000〜2,500mの高地に生えているものは、強い紫外線の降り注ぐ中を耐えて生きているため光を好みますが、蒸し暑さは苦手です。一方で標高の低い平地の草むらや、木立の下に生えているものもあり、これらは高温多湿の日本の夏にも適応しますが、強い日射に当たると日焼けしてしまいます。分布域が広く、種類も非常に多いため、栽培環境も自生地の環境に合わせてあげることが大切です。

ギムノカリキウムの花

ギムノカリキウムの花
写真提供:Shabomaniac!/羅星丸の花
見た目だけではなかなかほかのサボテンとの区別が困難ですが、蕾(つぼみ)や花を見れば判別が付きます。刺も毛もなく、鱗片のみに覆われた花筒(はなづつ)は全種共通です。Gymnocalyciumという学名はラテン語で「剥き出しの萼(がく)」を意味しています。

ギムノカリキウムの入手方法・価格

普及種の「緋牡丹」や「緋花玉」などは、ホームセンターや町の花屋さんで購入できます。価格も数百円と値ごろです。園芸的に価値の高い選抜個体は、数万円以上することもあります。

ギムノカリキウムの基本情報

ギムノカリキウム
出典:Flickr(Photo by Resenter1
分類 サボテン科ギムノカリキウム属
原産地 アルゼンチン、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイ

生育型

春秋型。一般的に春から秋に生長し、冬に休眠します。

栽培適温

0℃くらいまで耐えられるものや10℃は保ちたいものなど種にもよりますが、できれば最低5℃以上をキープしましょう。サボテン科の中では比較的に暑さ・寒さに強い方です。

生長速度

普通

ギムノカリキウムの人気種

ここからはギムノカリキウム属の人気種を紹介していきます。それぞれの栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど栽培難易度が低くなります。

海王丸(Gymnocalycium cv. ‘Kaiomaru’)

ギムノカリキウム・海王丸
出典:Flickr(Photo by 冻豆腐
栽培難易度☆☆
天平丸や光琳玉と並ぶ、古典的なギムノカリキウムです。つやつやの肌と優美な球体、肌に密着したクモのような刺が見所です。デヌダツムをベースに日本で交配された園芸種で、刺の付き方や形が整っているもの目指して育種が進んできました。
Shabomaniac!さん
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昭和40〜50年ごろまではサボテンの中でもベスト5に入るほどの人気種でした。現在は改良が行き着くところまで行ってしまった感があり、これ以上いいものを作るのが難しくなっていることから、かつてほどの人気はないようです。

怪竜丸(Gymnocalycium bodenbenderianum)

 
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栽培難易度☆☆
バッテリーと似て非常に平べったく、さびた鉄のような肌色が特徴で、渋い風情が魅力です。まれに斑入りの個体も出現しますが、もともとの色素が濃いためか、斑の部分は黄色ではなくオレンジや赤になります。

新天地(Gymnocalycium saglionis)

ギムノカリキウム・新天地
写真提供:Shabomaniac!
栽培難易度☆☆
アルゼンチンの北西部が原産。同属の中では一番の大型種で、最大で直径30〜40cmまで大きくなります。球体は無数のイボ状の稜(りょう)に分かれ、全体に刺を生やします。花は白から薄いピンク色で、生育期の間に何度か開花します。比較的に丈夫で生長も早い方です。
Shabomaniac!さん
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おもしろいことに株の大きさに反して種が非常に小さく、吹けば飛んでしまうくらいです。斑入り種の「新天地錦」も戦前から人気があり、昔はサボテン好きの温室を訪ねると必ず一鉢は新天地錦を見かけたものです。

翠晃冠(Gymnocalycium anisitsii)

ギムノカリキウム・翠晃冠
出典:PIXTA
栽培難易度☆☆
刺は細く繊細で、牡丹玉と同じく標高の低い木立の中などに生えているため、日射が強過ぎると焼けてしまいます。斑入りの「翠晃冠錦」も人気です。

天平丸(Gymnocalycium spegazzinii)

ギムノカリキウム・天平丸
写真提供:Shabomaniac!
栽培難易度☆☆☆
標高が高く日差しの強いところに生えており、産地ごとに刺の太さや色、カーブの仕方、生え方などに微妙な違いがあります。愛好家の間では好みの個体を求めて選抜育種が行われ、コレクションの対象になっています。見かけ上の違いからA型、B型などと分けて楽しんでいる人もいますが、これは生物学上の分類に対応するものではなく、あくまで園芸的な区分けです。近縁の光琳玉が荒々しい刺を持ち味とするのに対し、天平丸は球体に沿って整然と伸びる端正な刺が魅力です。

光琳玉(Gymnocalycium spegazzinii ssp. cardenasianum)

ギムノカリキウム・光琳玉
出典:Flickr(Photo by Resenter1
栽培難易度☆☆☆
天平丸の亜種に位置付けられているギムノカリキウムです。象牙色の刺を誇らしげに伸ばす豪壮な種で、その美しさから非常に人気があります。自生地は天平丸と同様、アンデス山麓の標高が高く、強い日差しが照り付ける地域です。選抜育種によって魅力的な刺をもつ種が生み出されていますが、野生種の中にも素晴らしい刺をもつものがあります。

バッテリー(Gymnocalycium vatteri)

 
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栽培難易度☆☆
株姿は扁平(へんぺい)で、直径が10cm程度に育っても高さは3〜4cm程度にしかなりません。太く短い刺を球体に沿って生やします。園芸改良している人も多く、サボテンの中では名脇役といったところ。春秋の壺(つぼ)という和名が付いていますが、その名で呼ぶ人は少数です。

緋花玉(Gymnocalycium baldianum)

ギムノカリキウム・緋花玉
出典:Flickr(Photo by Wilferd Duckitt
栽培難易度☆☆
濁った白や薄いピンク、緑っぽい色が多いギムノカリキウムの花の中で、鮮やかな赤色の花を咲かせるのが特徴です。花以外にあまり目立った特徴はありませんが、栽培しやすく、花屋さんなどでも購入できるので広く普及しています。

牡丹玉(Gymnocalycium mihanovichii)

ギムノカリキウム・牡丹玉
出典:PIXTA
栽培難易度☆☆
牡丹玉系ギムノカリキウムは分類が変転してややこしく、かつては白い花を咲かせるものをfriedrichii(牡丹玉)、friedrichiiによく似ていますが緑の花を咲かせるものはmihanovichii(瑞雲丸)とするのが一般的でした。現在、friedrichiiはmihanovichiiのシノニム(同物異名)として統合され、mihanovichiiだけが残った形です。日本生まれの緋牡丹や緋牡丹錦の元親は、おそらく白花系のfriedrichiiをルーツとする交雑種と想像されます。写真の株は、日本で古くから牡丹玉と呼ばれてきた白花タイプです。

緋牡丹(Gymnocalycium cv. ‘Hibotan’)

ギムノカリキウム・緋牡丹
出典:PIXTA
全体が斑入りになってしまった牡丹玉を柱サボテンの台木に接ぎ木したもの。園芸店などでよく見かける、緑色の柱サボテンの上に赤や黄色の丸いサボテンがのったものがそれです。一般的に接ぎ木しているサボテンは、ある程度大きく育った段階で台木を短く詰めたり、本体から発根させますが、緋牡丹に限っては本体の葉緑素がゼロなので自根はできません。神奈川県藤沢市にあるサボテン・多肉植物の専門業者・紅波園が作出した園芸種ですが、現在では世界中で栽培されています。

緋牡丹錦(Gymnocalycium cv. ‘Hibotan-nishiki’ )

ギムノカリキウム・緋牡丹錦
写真提供:Shabomaniac!
緋牡丹錦も緋牡丹と同じく牡丹玉の斑入り種ですが、緋牡丹と違って肌の一部に葉緑素をもっているので、ゆっくりではあるものの自力で生長でき、自根が可能です。鮮やかな赤やオレンジの斑が美しく、ときには紫に見えるものもあります。

LB2178(Gymnocalycium mihanovichii LB2178)

SNSをきっかけに最近になって急に注目を浴びるようになった牡丹玉の1タイプです。刃物のように薄い稜と、肋骨状(ろっこつじょう)の筋模様が目立つ特異な姿で、これまで知られていた牡丹玉とは一線を画しています。新種ではなく、パラグアイのアグアドゥルセ(Agua Dulce)という特定の産地で発見された牡丹玉で、「LB2178」とは、ギムノカリキウムの研究家として著名なLudwig Bercht氏が付けたフィールドナンバーです。牡丹玉といえば、かつては緋牡丹錦の斑抜けのような扱いでしたが、このタイプの登場によって状況が一変しました。

フィールドナンバー
植物の個体群を研究者や業者が採取地ごとに整理して割り振った番号。記載種の産地ごとの違いを管理するためのもので、未命名の新発見種にも付与される。フィールドナンバーのついている植物であれば、だいたい検索エンジンでその植物のルーツを知ることができる。


ギムノカリキウムの育て方

ギムノカリキウム
写真提供:Shabomaniac!/チャコエンセ(Gymnocalycium chacoense)

水やり

春の桜が咲くころから梅雨入りまでは1週間に1回、梅雨入り後は間隔を少しあけ、生育が鈍る夏場は2〜3週間に1回くらいのペースで水やりします。9〜10月上旬くらいまでは週1程度に戻し、冬場は霜が降りるぎりぎりのところで水を切ります。水やりのペースはあくまで栽培環境と種によるので、植物のコンディションに合わせて調整しましょう。

日当たり・置き場所

強い日射を好む天平丸や光琳玉は、遮光は少なめで、よく日の当たる場所に置きます。牡丹玉や翠晃冠、海王丸など、もともと直射日光があまり当たらない場所に自生しているものは50%程度の遮光が必要です。

用土・肥料

一般的な多肉植物・サボテン用の用土と肥料を使用します。割と丈夫なので、土はあまり選びません。
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ギムノカリキウムの植え付け・植え替え

ギムノカリキウム
写真提供:Shabomaniac!/Gymnocalycium mihanovichii(かつて瑞雲丸と呼ばれた緑花タイプ)
植え付け・植え替えともに生育期の早い段階で行いましょう。何年も植え替えずにいると根詰まりを起こして水や養分の吸収が悪くなります。基本的に年に1回、少なくとも2〜3年に1回は植え替えが必要です。

多肉植物の植え替えはこちらで詳しく解説


ギムノカリキウムの殖やし方

ギムノカリキウム
写真提供:Shabomaniac! /パルブルム(Gymnocalysium parvulum)
実生で殖やすのが一般的です。子株が吹いていればそれをかき取って発根させ、新しい土に植えて育てることもできます。

ギムノカリキウムの病気・害虫

ギムノカリキウム
出典:PIXTA/緋花玉
比較的に丈夫ですが、サボテンに共通するカイガラムシの被害には注意しましょう。

ギムノカリキウムのQ&A

ギムノカリキウム
写真提供:Shabomaniac!/天平丸(Gymnocalyium spegazzinii)

早く生長させるコツは?

Shabomaniac!さん
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ギムノカリキウムのうち、刺が弱く肌がみずみずしいタイプの種は、比較的湿潤な地域の灌木(かんぼく)の下などに生えています。ですので、蒸し暑くて人が過ごしにくい環境の方が元気に育ちます。屋内管理だと十分に温度が上がりません。ビニールハウスや温室を用意し、春先でも昼間の気温を30℃まで上げられるのが理想的です。さらに、毎日水をまいて湿度を高く保つと、早く生長して肌もつやつやになります。ただ、ギムノカリキウムの中でも刺の強いタイプは真逆の環境に自生しているので、蒸し作りには適していません。

植え替え後、水を吸わない

Shabomaniac!さん
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生長する時期としない時期があり、植物が休んでいる時期に水をやっても吸水できず根腐れしてしまいます。生育期であっても、根が傷んでいる場合は根が整って水を吸い始めるまでに2週間くらいはかかります。植え替えに慣れている場合はすぐに水やりしても構いませんが、そうでなければ植え替え後、1週間程度待ってから水をやった方が安全です。

花が開ききらない

Shabomaniac!さん
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ギムノカリキウムには、花が半開程度にしか咲かない種もあります。それ以外の原因として考えられるのは日射不足です。サボテンには晴れの日に直射日光を浴びないと花弁がしっかり開かないものが多くあります。刺でつっかかって開かないこともありますが、これは仕方がありません。

斑入り種の栽培で気を付けることは?

Shabomaniac!さん
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斑入り種は葉緑素がまったくないか、あるいは少ししかないので、普通の植物よりも光合成を行う能力が低く、斑の面積が多いほど植物としての性質は弱くなります。直射日光で日焼けしやすいので、ほかの植物よりも注意深く、労りながら育ててあげましょう。

ギムノカリキウムを育ててみよう

ギムノカリキウム
出典:Flickr(Photo by Resenter1
サボテンの中でもポピュラーなギムノカリキウム。色鮮やかな緋牡丹などは、ホームセンターや園芸店で多く出回っており、価格も安いので初めての人でもトライしやすいでしょう。慣れてきたらぜひ育種にも取り組んでみてくださいね。

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