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地産地消で成功するには?農家のメリット・デメリットから考える


農家が地産地消に取り組むには、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。メリット・デメリットや成功事例とともに、どうすれば地産地消をうまく取り入れられるのかを解説します。

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小林麻衣子

北海道在住のライター。農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して移住。現在は農家見習い兼ライターとして活動中。…続きを読む

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農業をしている女性

出典:写真AC
生産者から消費者まで幅広く浸透している「地産地消」という言葉。食料自給率の向上や農業の活性化などさまざまなメリットがありますが、生産者にとっては課題もあります。地産地消に取り組むためにはどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。デメリットや成功事例とともに解説します。

地産地消とは|意味や目的を解説

直売
出典:写真AC
地産地消とは、農林水産省によると「地域で生産された農林水産物を地域で消費しようとする取組」などの意味があります。1980年代から使われるようになった言葉で、2001年に国内初のBSE(牛海綿状脳症)が発生したことを契機に、食の安全・安心に対する消費者のニーズが高まるなかで広く浸透するようになりました。地産地消は食料自給率の向上に加えて、生産者と消費者の結びつきを強めたり、地域の活性化や流通コストを削減したりすることを目的としています。

地産地消は法律に定められている!?

分厚い本
出典:写真AC
2010年12月に公布・施行された「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」通称「六次産業化・地産地消法」では、地域の農林水産物の利用を推進することが定められています。この法律をもとに、都道府県や市町村などでは地域の農林水産物の活用計画を策定しています。代表的な取り組みは、直売所での農林水産物の販売や加工品の開発、学校給食や社員食堂での地場産農林水産物の利用などです。

6次産業化についてはこちらの記事で解説しています。

地産地消のメリット、デメリット

メリット
出典:写真AC
地産地消に取り組むことは、市場流通と比較して生産者や消費者にとってどんなメリットがあるのでしょうか?


生産者のメリット

販売方法を工夫すれば、売上げアップにも!

・流通経費を節減できるため、収益性の向上が期待できる
・直接販売する場合は、少量品や不揃い品や規格外品も販売可能となる
・地域の消費者ニーズを的確にとらえた効率的な生産を行うことができる
消費者の反応や評価が直接届き、品質改善や顧客サービスの向上につながる

消費者のメリット

生産者から直接購入するため、安全・安心

・流通経費が削減されるため、比較的安価に購入できる
・身近な場所から新鮮な農産物を得ることができる
・生産状況などを生産者から直接確認でき、安心感が得られる
食と農について理解を深める機会が得られる

「SDGs」につながる社会的なメリットも

生産者や消費者にとってのメリットだけでなく、社会全体にも好影響をもたらすことが期待できます。

・食料自給率の向上につながる
・都市と農山漁村の交流が生まれる
・流通コスト削減のため、環境への負荷が低減される
・地域の連帯感が強まる
・農業技術や農地を保全、継承することができる

これは、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標SDGs(エス・ディー・ジーズ)」の目標達成にもつながります。環境への負荷の低減は目標13の「気候変動に具体的な対策を」に、農地の保全は目標15の「陸の豊かさも守ろう」に貢献してるといえるのです。

地産地消のデメリット

デメリット
出典:写真AC
地産地消にはさまざまなメリットが考えられますが、生産者にとっては課題もあります。

・生産だけでなく、出荷・販売活動をするための追加コストが発生する
・地産地消の商品が必ずしも売れるわけではない
・消費者のニーズの把握、販売、品質・在庫管理などの経営管理能力が求められる

直売所などでは、地場農林水産物の品目数や参加農家の確保、購入者の伸び悩みなどが課題となっています。野菜販売などでは、消費者から品質についてクレームが生じることも。また、学校給食へ出荷するには一定の量が必要となるため、地場産農林水産物の量の確保が課題です。

生産者は、こうした出荷・販売の労働力やコストに見合った収益性が得られるかどうか考えた上で、地産地消に取り組まなくてはなりません。

地産地消への取り組み|成功事例

子どもの農業体験
出典:写真AC
地産地消の取り組みは、学校給食や直売所、加工品作りなどさまざまな形があります。全国各地で取り組まれている活動の中から成功事例を紹介します。

「ふるさと給食」で小学生など学生たちに地域の食を伝える

北海道足寄町の小中学校、高等学校では、2017年度から学校給食に地場産食材を活用。食材を地元生産者と直接取引することで、新鮮かつ低価格の仕入れを実現しています。栄養教諭や調理員が生産者の圃場(ほじょう)で収穫作業を手伝うなど、盛んに交流。また地元食材を使った体験学習など、生産者と子どもたちとの交流の場を作るほか、給食だよりや給食センターのウェブサイトで食材の調理過程や生産者の紹介をすることで、幅広く情報発信しています。

参考:農林水産省「学校給食の取組」

農林水産省による「地産地消等優良活動」

農林水産省では、全国各地で地産地消に取り組む団体の中から、特に優れた活動をしている団体を「地産地消等優良活動」として表彰しています。ここでは令和2年度の表彰者の中から、2つの成功事例を紹介します。

【農事組合法人八幡営農組合】日本初の純国産パスタで地域の雇用を創出

兵庫県加古川市の農事組合法人八幡営農組合では、デュラム小麦品種「セトデュール」を栽培し、地域の製麺工場で加工。小麦の栽培から製麺までを加古川市で行った地域ブランド「加古川パスタ」を生産しています。加古川パスタは地元レストランなどで販売されているほか、給食用パスタとしても出荷。小麦の生産体制の確立と地域雇用を創出しています。


【株式会社敷農村農吉】住民有志が中心となり「農」を取り入れた保育所を運営

広島県庄原市の株式会社敷信村農吉(しのうむらのうきち)では、「農」を取り入れた公設民営の保育所を運営。給食には地場産米を100%使用するほか、地元農家が生産した野菜をできるだけ活用しています。さらに、野菜の卸・販売、ナチュラルチーズの製造・販売などを手掛け、地域を巻き込んだ食育に取り組んでいます。

参考:農林水産省「令和2年度地産地消等優良活動表彰の受賞者の発表」

地産地消を推進する国の制度も活用できる

田園風景
出典:写真AC
地産地消を推進するため、国では毎年予算を設けてさまざまな支援策を講じています。こうした国の補助金を上手に活用してみるのもよいでしょう。

食料産業・6次産業化交付金

地域資源を活用した新商品の開発や販路開拓などの取り組み、加工・販売施設などの整備、新たな高付加価値商品等の創出・事業化に必要な技術実証、マーケティングなどを支援する制度。令和3年度の予算は18億9,400万円。

地域食農連携プロジェクト(LFP)推進事業

地域の農林水産物が地域産業の中で有効活用されるように、地域の食と農に関する多様な関係者が参画した地域食農連携プロジェクト(LFP)を構築し、地域の関係者が自発的に企画・実行する持続的なビジネスの創出を支援する制度。コーディネーター派遣や、プロジェクトに対するクラウドファンディングを活用したスタートアップ支援などを行う。令和3年度の予算は2億2,200万円。
農林水産省「6次産業化に関する予算等について」

地産地消を上手に取り入れよう

農家の男性
出典:写真AC
地産地消に取り組むことは、農家にとって収益性を向上させるだけでなく、地域全体の活性化にもつながります。消費者のニーズを把握するのはもちろん、必要なコストや課題を検討し、できることから取り入れてみてはいかがでしょうか?

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