今回もオランダネタです。オランダは、就業者一人あたりの労働生産性が高く、農業分野でも「生産性」や「効率化」がキーワードになっています。友人たちからは、「休憩時間に10分のnap(うたた寝)をすると、その後効率的に働けるので、napしろ!」と何回か勧められたこともあります。そんなオランダ生産者の効率的な休憩時間の過ごし方(!?)にせまります!オランダに農業視察へ行くときにも参考になるかも?
取材で訪れると「Koffie of thee?」
AGRI PICKのおしゃれじゃないサステナブル日記や、農業経営者のオランダ通信の中に、実は何度もこっそりと「オランダの休憩ではコーヒーは2杯」の話を忍び込ませています。これに気づいていた人はどれくらいいたのか定かではないですが、帰国後5年経過した今だからこそ、ついに「コーヒー2杯」の真実に真正面から迫ることができそうです。取材で生産者を訪問するや否や「Koffie of thee?(コーヒー?紅茶?)」と聞かれ、同時に農作業の休憩時間に入ります。視察や取材に慣れていない人の場合は、そう言いながらコーヒーマシーンに手がかかっているので、日本人の私は「koffie, alstublieft(コーヒーをお願いします)」と下手なオランダ語で答えるのです。
コーヒーと一緒に出てくるシェアおやつ
少し待つと、コーヒーのいいにおいがしてきます。コーヒーと同時に、おやつを一つ(クッキー1枚とか)が一緒に手渡されます。大きなカンに入っているところから、直接一つだけ取ってと言われることも。「一個しかだめ!」とたしなめられたことはないですが、一つだけという雰囲気です。空気を読む私は、やはり日本人気質です。絶妙なおかわりのタイミング
取材をしながらコーヒーを愉(たの)しんで、ちょうどなくなったころに2杯目のオファーが入ります。こうなるともう言われるがまま、2杯目に突入です。この取材スタイルに慣れてからは、コーヒーを飲まずに取材先を訪れて、1日のコーヒー摂取量を調整するスキルを身につけました。コーヒーの終わりが取材の終わり
2杯目のコーヒーがなくなると、取材終了の空気が漂います。3杯目のオファーもありません。蛍の光のメロディが耳元で流れる、そんな雰囲気です。聞きたいことがある場合は、コーヒー2杯を飲みきる前に聞きましょう。答えてはくれますが、蛍の光が流れながらの回答です。一度、取材相手に「休憩時間にはコーヒーを2杯飲むの?」と聞いたことがあります。その答えは、「休憩は午前と午後の2回で、それぞれコーヒー2杯とおやつだから」でした。習慣なのでしょう。
オランダ生産者に休憩について聞いてみた
実際に、休憩時間に何を食べて、何を飲むの?と改めてオランダの生産者に数名ですが聞いてみました。「9時にコーヒー2杯とパン1枚で、15時にコーヒー2杯とクッキー1枚!」
「休憩中にはコーヒー2杯。おやつは食べない。」
「普段はおやつは食べず、週末にはいつもポテトチップスを食べるよ。」
特筆すべきは、飲みものや食べものが年間通して同じ!無駄がない!お客さんが来ても特別なものを用意せず、同じ!オランダでは、「コーヒーの人、紅茶の人、カプチーノの人」と分類されることもよくあります。気分で変えることは許されるのでしょうか。そして、やはり…コーヒー2杯は決まっているのでしょう(笑)。
【番外編】日本の農家にも休憩中の飲食について聞いてみた
日本の生産者にも、おやつと飲み物について聞いてみました。コーヒーの人もいれば、麦茶、緑茶、水、炭酸水などさまざま。同じ人でも冬はコーヒー、夏はお茶など季節によって変えているという声や、その日の気分で変えるという声もありました。おやつは食べないという声が圧倒的に多いですね!畑からつまみ食い、夕食までもたずにチキン、ちょっと菓子パンなどで小腹を満たすという話も。日本は食が豊かな国なんだと心底思いました。決まった曜日や時間に決まったものを摂取し、効率的に休憩時間を過ごすオランダと、季節や気分に応じて食べものや飲みものを変えて、食を楽しむ日本の対比がいいですね。「麦茶」や「トウモロコシ」などの言葉から、高温多湿な日本の夏を想起させます。どちらが優れているというわけではないですが、「効率」と「豊かさ」の共存は課題かもしれません。
追伸:「世界または日本の農家の休憩」というテーマで、誰か写真集を一緒に作りませんか。
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紀平真理子(きひらまりこ)プロフィール
1985年生まれ。大学ではスペイン・ラテンアメリカ哲学を専攻し、卒業後はコンタクトレンズメーカーにて国内、海外営業に携わる。2011年にオランダ アムステルダムに移住したことをきっかけに、農業界に足を踏み入れる。2013年より雑誌『農業経営者』、ジャガイモ専門誌『ポテカル』にて執筆を開始。『AGRI FACT』編集。取材活動と並行してオランダの大学院にて農村開発(農村部におけるコミュニケーション・イノベーション)を専攻し、修士号取得。2016年に帰国したのち、静岡県浜松市を拠点にmaru communicateを立ち上げ、農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートなどを行う。食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫 農業経営アドバイザー試験合格。著書『FOOD&BABY世界の赤ちゃんとたべもの』
趣味は大相撲観戦と音楽。行ってみたい国はアルゼンチン、ブータン、ルワンダ、南アフリカ。
ウェブサイト:maru communicate