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ここでは、そもそも機能性表示食品とは何か、また生産者が機能性表示食品として販売するにはどうしたらいいのかを解説します。
機能性表示食品とは|野菜や果物も対象
機能性表示食品とはどういったものなのでしょうか。制度が始まった経緯と、人気の理由を解説します。機能性表示食品とは
科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、事業者から消費者庁に届け出された食品を機能性表示食品といいます。「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、健康の維持及び増進に役立つ成分の機能性を表示することができる食品です。
野菜や果物といった生鮮食品についても、販売前に食品の安全性と機能性に関する科学的根拠といった必要な事項を消費者庁長官へ届け出ることにより、健康効果や機能性を表示することができます。
機能性表示食品の対象は”健康な人”
機能性表示食品は、原則として、健康な人(生活習慣病などに罹患する前の人、または境界線上の人)の健康維持、増進に関する表現を認めています。病気の治療や予防を目的としたり、疾病(りかん)リスクを低減する表示をすることはできません。また未成年者、妊産婦および授乳婦は対象となりません。
機能性表示食品が生まれた背景
機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていました。さらに、機能性をわかりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、2015年4月に、新しく「機能性表示食品」制度がはじまりました。
特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品の違い
トクホは、表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可し、公正マークが付きます。
一方機能性表示食品は、販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出されたもので、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。
機能性表示食品が広まった理由
2015年に機能性表示食品制度が誕生してから、わずか6年ほどで機能性表示食品は4,000件に達しました。健康食品では以前は特定保健用食品(トクホ)が主流でしたが、トクホは消費者庁での審査のために人を対象とした臨床試験(ヒト試験)が必要となるなど、事業者にとって膨大な労力が必要となるため、近年は機能性表示食品の届出の方が増加傾向にあります。
メリットと現状|野菜や果物の機能性表示食品の届出
野菜や果物で機能性表示食品の制度を利用することで、販促やブランディング面でのメリットが期待できます。機能性表示食品を野菜や果物で届出するメリット
パッケージに健康増進効果を記載できる
現在の食品表示法では、明確に健康増進効果をうたう言葉をパッケージに載せることは禁止されています。しかし、機能性表示食品の届出を行えば、パッケージに機能性表示食品と健康維持・増進効果を記載することができます。
バイヤーに興味をもってもらえたり、機能性を明示することで消費者も手に取りやすくなったりし、単価のアップも期待できます。
他の産地の野菜や果物との差別化
生鮮食品で機能性表示食品を取得する際には、品種ごとではなく商品名(ブランド名)で登録します。そのため、同じ品種を販売する他産地との差別化を図ることができます。野菜や果物の機能性表示食品が増加
機能性食品の検索システムには、全体でおよそ4,000件の機能性表示食品が登録されており、そのうちおよそ100件が、生鮮食品で届出されています(2021年5月時点)。野菜や果物での機能性表示食品の届出数は年々増加しており、2020年には39件が受理されています。※参考:消費者庁機能性表示食品の届出情報検索
野菜や果物の機能性表示食品の例
以下にあげる例のほか、もやしで大豆イソフラボン、ケールでGABAやルテイン、ブロッコリーでスルフォラファングルコシノレートなどの機能性関与成分名で届出がされています。機能性関与成分とは、科学的根拠にもとづいて、健康の維持及び増進に関与する成分のことです。
温州みかん|βークリプトキサンチン
有田みかんや三ケ日みかんなどの商品名で、β-クリプトキサンチンに関する機能性表示食品の届出がされています。β-クリプトキサンチンは骨代謝のはたらきを助けることにより、骨の健康に役立つことが報告されています。
りんご|リンゴ由来プロシアニジン
りんごのふじや王林など一部の商品名で、リンゴ由来プロシアニジンに関する機能性表示食品の届出がされています。リンゴ由来プロシアニジンには、内臓脂肪を減らす機能があることが報告されています。
トマト|GABA・リコピン
トマトでは、⾷品会社などが栽培する品種が届出されています。機能性関与成分名はGABAやリコピンで、GABAには血圧が高めの方の血圧を下げる機能があることが、リコピンには血中LDLコレステロールを低下させる機能があることが報告されています。機能性表示食品の届出方法|野菜や果物ならではの注意点も
消費者庁への届出が必要
機能性表示食品は、販売の60日前までに安全性や機能性などの根拠、実際に販売するパッケージに表示する「表示内容」を含めた製品情報を、消費者庁長官に届出し、受理される必要があります。機能性表示食品の届出事項
機能性表示食品の届出をするためには、以下のような内容の書類が必要になります。・表示の内容
・食品関連事業者に関する基本情報
・安全性の根拠に関する情報
・機能性の根拠に関する情報
・生産・製造及び品質の管理に関する情報
・健康被害の情報収集体制
・その他必要な事項
野菜や果物の届出にあたっての課題
生鮮食品で機能性表示食品を取得するには、「機能性関与成分の科学的根拠を証明すること」「機能性関与成分の含有量を担保すること」の2つが大きな課題になります。機能性関与成分の科学的根拠を証明する
機能性成分の科学的根拠を証明するためには、2つの方法があります。1つ目は、「研究レビュー(システマティックレビュー)」という形で、国内外の論文などの学術情報をまとめて、科学的根拠として届出を行う方法です。2つ目は、「ヒト臨床試験」といい、製品を摂取した人間の血液検査などを通して効果を評価する方法です。しかしヒト臨床試験はコストと時間がかかるため、機能性表示食品の届出では一般的に「研究レビュー」で科学的根拠を届出しています。機能性関与成分の含有量の担保
野菜や果物で機能性表示食品の届出をするためには、機能性に関与する成分が、常に届出した一定値以上に達していなければいけません。栽培圃場や、季節などの影響による、機能性関与成分の変動を確認する必要があります。
専門家の助けを借りましょう
科学的根拠の証明や、栽培方法の確立は、専門的な技術力が必要となるため、個人では難しい部分です。
農業普及センターや大学などの学術機関、食品企業などの研究機関に協力してもらいましょう。
また、農林水産省では、生鮮食品における機能性表示食品の取り組みを促進するため、品目ごとの相談窓口を設置しています。
出典:農林水産省「生鮮食品の機能性表示食品の相談窓口」
機能性表示食品として野菜や果物を栽培するには
前述の通り、野菜や果物で機能性表示食品の届出をするためには、機能性関与成分が、常に届出た一定値以上をになっている必要があります。届出をする農協や営農組合などの栽培組織全体で、数値が一定以上になるような品種を選定したり、栽培方法を確立したりします。
高機能性野菜を利用
機能性表示食品の人気も相まって、特定の保健機能成分を高めた高機能野菜の品種改良が進んでいます。栽培方法にブレがあっても、もともと機能性を高めた品種であれば、安定的な供給が可能です。
機能性表示食品で野菜や果物に高付加価値をつけよう
機能性表示食品として届け出ることで、いつも栽培している野菜や果物に高付加価値をつけ、単価アップを狙えます。機能性表示食品は大企業でなくても届出をすることができます。個人の農家では難しくとも、農協や営農団体、地域の学術機関を巻き込んで、ぜひ地域の野菜で取得し機能性食品でブランド力を高めましょう。