究極のシャインマスカットの見分け方とは?|ぶどうの匠2人による夢の対談が実現!【後編】

シャインマスカットの見分け方、選び方のコツをプロの生産者が伝授!おいしい食べ方や保存方法をはじめ、皮ごと食べて農薬は大丈夫?など、シャインマスカットに関する疑問に答えるQ&Aや春にもおいしい旬の味が楽しめるニュージーランドでのぶどう栽培についてもご紹介します。


シャインマスカットのおいしいシーズン到来!その魅力を余すことなく知っていただき、ほんとうにおいしいシャインマスカットを選ぶための方法やおいしい食べ方をご紹介。林ぶどう研究所×葡萄専心対談、後編をお届けします。

本物のシャインマスカットを食べてほしい

葡萄専心
提供:葡萄専心
林ぶどう研究所×葡萄専心対談の前編では、シャインマスカットの産地や旬の時期についてお話を伺いました。種もなく、皮ごと食べられる手軽さも人気を呼んでいますが「なぜ皮ごと食べてもおいしいのか」ということについても、生産者としての見解を語っていただいています。



今回は、おいしいシャインマスカットの見分け方、選び方について教えていただきます。

教えてくれたのは

林ぶどう研究所

林慎悟さんプロフィール
林ぶどう研究所 代表、育種家、ぶどう生産者
岡山市で100年続く農家の4代目。100種類以上のぶどうを栽培しながら、15年以上にわたりぶどうの品種改良にも取り組む。2014年には、10年にわたる研究の結果「マスカットジパング」の開発に成功した。

樋口哲也さんプロフィール
農業生産法人 葡萄専心株式会社 代表取締役社長
山梨県笛吹市のぶどう農家に生まれる。1998年、父の引退を機に家業を継ぎぶどう栽培の道へ。2015年にはニュージーランドでのぶどう栽培に着手し、日本とニュージーランドの2拠点生産を実践。2019年から季節が真逆の北半球(日本)と南半球(ニュージーランド)で日本品種の高品質な生食用ぶどうを生産し、通年で“旬のぶどう”を世界へ販売する、三井不動産発のベンチャー企業「株式会社GREENCOLLAR(グリーンカラー)」に生産指導責任者として参画。若い世代の就農支援にも積極的に取り組んでいる。

ナビゲーターは、農業ライターとして全国各地の生産農家や飲食関連企業を取材し、 野菜ソムリエプロとして活動する細川理恵がつとめます。

シャインマスカットの見分け方、選び方のコツは?

林ぶどう研究所
提供・林ぶどう研究所
シャインマスカットを購入する際には、どんなものを選べばいいのでしょうか?簡単に見分けられるコツはあるのか、気になるところです。

色で見分ける|黄色みがかったものは完熟に近い

出典:山梨県総合理工学研究機構開発のカラーチャートをAgripickにて抜粋・編集
ーーおいしいシャインマスカットを選ぶために、色や見た目で判断することはできますか。
樋口さん
樋口さん
シャインマスカットの熟度の目安となる5段階のカラーチャートがあるのですが、3以上の黄色みがかったものは、糖度が18度を超え(※1)、かつ熟している可能性が高く、それ未満のものは未熟な場合が多いです。色を見ただけですべて判断できるわけではないですが、比較的失敗は少ないと思います。後でお話ししますが、糖度の高さだけではなく、実は「糖度の質」が重要になってきます。


ーー青々としたものが何となくよいような気がして、知識がないと中々黄色味がかったものは手に取りにくいですよね。
樋口さん
樋口さん
かつて私も、もう少し緑色のぶどうを作ってくださいといわれたんですよ。でもおいしいぶどうを提供するならそれは無理だといって、取引をお断りしました。

林さん
林さん
光を適正に当てて、ぶどうの光合成を促しながら生育を進めていくと、緑色から黄色く着色していくイメージです。黒や赤のぶどうが緑色から変化していくのと同じ過程だと思います。それが進んでいない状態のものは、いいものかどうかで考えたら、おのずと答えは出てくる気がします。

※1「山梨県総合理工学研究機構(山梨県果樹試験場、山梨県工業技術センター)」
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/kankyo/gijyutu/pdf/kanto2016_08_yamanashi_shinemuscat.pdf

糖度より重要なもの

樋口さん
樋口さん
ただ、糖度が18度を超えたからといって本当の甘さが引き出されているかというと、実は違うのです。ぶどうの甘さには大きく”ブドウ糖”と”果糖”があって、同じ糖分でも甘味の感じ方は果糖の方がずっと甘く感じる(※2)のです。栽培の過程でしっかりと光を当てて成熟させていくことで、ブドウ糖から果糖に変わっていく(※3)と考えていて、果糖に変わってからの糖度18度というのは、ほんとうに甘いんです。大切なのは、ただ糖度が高いかではなく果糖に変化している状態で収穫されたものかどうか、ということです。だから、うちでは完熟にこだわっているんです。

※2 吉積智司・伊藤汎・国分哲郎 (1986). 甘味の系譜とその科学. pp.162, 230, 光琳(株), 東京.
※3 Shiraishi, M. (2000). Comparison in Changes in Sugars, Organic Acids and Amino Acids duringBerry Ripening of Sucrose- and Hexose-Accumulating Grape Cultivars. Japan. Soc.Hort. Sci. 69(2): 141-148
参考資料:石川県農林総合研究センター農業試験場研究報告 31:17~27(2015)

香りにも注目!

シャインマスカットは、マスカット・オブ・アレキサンドリアにもルーツをもっているぶどうです。際立つ甘さが話題になることが多いですが、マスカット本来の香りにも着目してほしいとおふたりは語ります。
林さん
林さん
マスカット系のぶどうといいつつも、血筋はそれほど濃いわけではないので、その特性をうまく引き出せすのは難しいのだと思います。
どうしても見栄えの良さに特化して、香りや果糖、さらに言えばうま味の部分を再現できていないものが非常に多いですね。
樋口さん
樋口さん
香りって大事だよね。少なくとも「マスカット」と名乗っている以上、その香りがしないのはもったいないですよ。せっかくあんな優秀な香りを引き継いでいるんですから。
林さん
林さん
樋口さんが香りにこだわっているところはすごいなと思います。生産者の中でそこにポイントを置いている人にはあまり出会うことはないのですが、僕もシャインマスカットで重要なのは香りだと思っているんです。マスカットの上品な香りをきれいに引き出すことができれば、他のぶどうと一線を画することができますよね。

ただ、見た目だけで香りを判断するのは難しいので、最終的にはほんとうにこだわっている作り手から購入するのがいちばんですよ

生産者おすすめ!シャインマスカットのおいしい食べ方

シャインマスカット
出典:PIXTA
ーーおふたりはシャインマスカットを食べる時に、どのように食べていらっしゃいますか?おすすめの食べ方があれば教えてください。
林さん
林さん
僕はそのまま常温で食べるのがおいしいと思います。冷やすと味や香りがぼやけるような気がして。これは僕のこだわりです。温度が高すぎるのもおいしくないんですよ。果実が30度ぐらいになってしまっていると、味がおかしくなってしまいます。

樋口さん
樋口さん
私は採れたてのぶどうを、食べる15分ぐらい前に氷水で皮だけさっと冷やして食べます。表面は冷えているけれど、中身は常温のまま。保存のために冷蔵庫に入れるのはいいですが、冷やし過ぎるのはダメですよ。15〜20度ぐらいで食べるのがいちばんおいしいです。

ここが知りたい!ぶどうの匠が答えるシャインマスカットQ&A

シャインマスカット
出典:写真AC
シャインマスカットは種がなく、皮もそのまま全部食べられるのが特長ですが、農薬などを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。生産者の林さん、樋口さんに聞いてみました。

Q1.皮ごと食べられるといいますが、農薬は大丈夫ですか?

林さん
林さん
日本では農薬に関する使用基準はとても厳しいです。農薬は、使う人がどういう意識をもってどんな使い方をしているかが問題であって、適正基準を正しく守っていれば、問題ありません。

僕たちのようにこだわりをもってぶどうと向き合っている生産者は、基準をしっかり守り、皮ごと食べてもらっても大丈夫なものを出荷しています。だからこそ、信頼できる生産者を選ぶことが大切なんです。
樋口さん
樋口さん
確かに日本の農薬の使用基準は厳しいですよ。たとえば、ぶどうなら出荷の60日前以降は使用してはいけない、と決められているものは、きっちりとそのルールを守っています。ケミカルなものがすべて悪いというのではなく、科学的に安全だと検証されているものを適正に使い、きちんと管理することで、安心が担保されていると考えています。

Q2.実に白い粉がついていますが、あれは何ですか?

樋口さん
樋口さん
白い粉のようなものは「ブルーム」と言って、健康なぶどうであればあるほどのっています。ぶどう自ら病気を寄せ付けないように作り出しているもので、人間には害はありませんので、食べても問題ありません。
林さん
林さん
鮮度の高い健康なぶどうを見分ける基準になると言われるんですが、ブルームがないからダメかというと、そんなこともありません。あくまで判断材料のひとつだということです。

Q3.どれくらいの期間、保存が可能ですか?

樋口さん
樋口さん
保存する時はビニール袋に入れて密閉しておくと、冷蔵庫で1カ月程度は大丈夫です。私はそのままの形で置いておく方がいいと思っていますが、林君は保存に対して何かこだわりがありますか?
林さん
林さん
僕は粒を枝から外した方がいいと思っていて、引っこ抜くのではなく小さい軸を残した状態で保存するのがおすすめです。大きい軸が付いていると、多少の水分の移動があるので、外してしまった方がいいですね。
ただ、引き抜いてしまうとそこから酸化して傷んでしまうので、はさみで切った方がいいです。果肉が出ない状態がおすすめです。
果実も呼吸していて、常温に置いておくと傷むのも早いですし、呼吸させないことが大切です。

ニュージーランドでのぶどう栽培に夢をのせて

葡萄専心
提供:葡萄専心
今回は、東西のぶどうの匠からシャインマスカットについて、生産者の視点からその魅力を教えていただきました。樋口さんが生産指導責任者として参画している、日本とニュージーランド二拠点でぶどうを通年生産し・世界へ向けて販売する三井不動産グループ発のベンチャー企業「株式会社GREENCOLLAR(グリーンカラー)」。



樋口さんとの対談では、ニュージーランドでのぶどう栽培についてのお話を聞かせていただくのが楽しみだったという林さん。現地へ今すぐにでも行ってみたくなるような、生産者にとってうらやましいほどの環境が整うニュージーランドのぶどう栽培の実際とは?

世界に通じる日本の栽培技術

樋口さん
樋口さん
日本の農業では大規模経営って基本的に無理じゃないですか。でも、経営規模が小さくても、こんないい農業技術をもった日本の生産者って、逆に世界に対する武器になるって思っているんです。こんな繊細な味、どこの国にも作れないですよ。

なぜそれがいえるのかというと、ニュージーランド国内販売用としてこちらで流通しているバッファローとニューヨークマスカットを作っているんです。それを食べたニュージーランドの人たちが、「これほんとにバッファローなの?ニューヨークマスカットなの?」と驚きます。つまり、日本の生産方法がどれだけ優れているか、ということなんですよ。
林さん
林さん
実は僕も冬場の生産をなんとか海外でできないかなと考えていたんです。日本は降雨が多いですし、梅雨もあるのでそもそもぶどう栽培には厳しい環境です。たまたまオーストラリアやニュージーランド、あとはチリにも可能性がないかと思って調べていました。
でも、メイド・イン・ジャパンって日本で作らなきゃいけないのかとも思ったりしていたんです。樋口さんを見ていると、日本以外の環境の整った場所で、日本の「メイド・イン・ジャパン」を生産するって、すごくいい考えだな、と強く感じました。
樋口さん
樋口さん
私はね、「メイド・バイ・ジャパニーズ」っていっています。ニュージーランドで作ったものを日本で最初に売った時にも、ニュージーランド産ではなく、日本人が作ったものだということをアピールしたんですよ。


今後はGREENCOLLAR(グリーンカラー)を通じて、樋口さんのような匠の技術を持った生産者の作る「メイド・バイ・ジャパニーズ」のぶどうが、日本でぶどうの収穫ができない2月から4月の”裏”の季節にも食べられるなんて、本当に楽しみですね。

日本品質の生食用ぶどうの可能性

樋口さん
樋口さん
ニュージーランドといえばワイン生産国ですが、生食用のぶどうが非常に少ないんです。私がこちらに来る前には(私が知る限り)生産者が7名しかいませんでした。それも専業ではなくて、ワイン用のぶどうを作るかたわらで生食用を少し作っている程度でした。
これなら、生産面でイニシアティブを握れると思ったんですよね。もちろん生産適地かどうかが重要だったけれど、生食用の基準は全部「私」基準で決められるのが、今後の強みになると思いました。
ニュージーランドで作ったら、きっと味が違うんだろうな、と思ったんですけれど、日本のシェフたちにこちらで作った巨峰を送ったら、すごく味が深いといってくれました。バイオレットキングもきれいに色がのるし、先端割れも少ない上に甘味と酸味とコクが断然深いんですよね。これは日照時間の差だと思いますね。

新規就農にもおすすめ!日本とニュージーランドのデュアルライフを実現

株式会社GREENCOLLAR(グリーンカラー)はこの事業を通して樋口さんのようなハイレベルな生産者の技術の承継・革新を通じて、後継者不足など、農業分野における社会課題を解決したいと考えています。
林さん
林さん
お話を聞いて、僕もニュージーランドに行ってぶどうを作ってみたいなぁと思いました。
樋口さん
樋口さん
林君みたいな若い世代を巻き込みたいんですよ。露地栽培でやるという自分の栽培ポリシーを絶対曲げずに冬場の収入を確保するためにはこのスタイルしかなかったのと、新規就農者の技術の習得のためのスキルアップにも役立つと思ったからです。

新しく就農する人たちは、いろんな作業を覚えても、冬の間に栽培ができず、春からまた始めると半分ぐらい忘れてしまいます。でも、冬の間、ニュージーランドで栽培経験を積むと、2年で5年生以上の技術力を身につけることも可能なんです。技術の習得が早ければ、その分収入も早く安定します。

おいしいシャインマスカットをしっかり選んで食べよう

シャインマスカット
出典:写真AC
今回、東西のぶどうの匠のおふたりがおすすめする、おいしいシャインマスカットの見分け方や選び方を教えていただき、自分にとって究極の一房を見つけてみたいという思いが湧いてきました。そんな珠玉のシャインマスカットに出会うためには、信頼できる「作り手」との出会いが何よりも大切なのかもしれません。

究極の一房は、ぜひこちらから探してみてください。
林ぶどう研究所
農業生産法人 葡萄専心株式会社

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細川理恵
細川理恵

広告制作会社のコピーライター、旅行関連情報ツールの編集ディレクターを経て独立。全国各地の農園、食品関連企業を中心に取材・執筆を行う農業ライター、日本野菜ソムリエ協会認定野菜ソムリエプロ、AGRI PICK WEB編集ディレクターとして活動中。

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