目次
ここでは、日本バイオスティミュラント協議会が提唱した分類をもとに、具体的なバイオスティミュラント製品の紹介と、その特徴や使い方、また効果についても説明します。
腐植質資材・有機酸資材で物理的、化学的に土壌改良を促進
腐植質とは、動植物の死骸が土壌中で長期にわたり分解や合成を繰り返してできたものです。腐植質のうち、酸性でアルカリに溶けて、酸に溶けないものを「フミン酸(腐植酸)」、アルカリにも酸にも溶けるものを「フルボ酸(有機酸の一つ)」と分類されます。腐植質資材・有機酸資材の効果
これらの資材は、物理的に土をやわらかくして、通気性、保水性を高める効果や、土壌中の栄養成分を保持する化学的な土壌改良効果もあるといわれています。また、腐植質を含む土壌は、微生物が増殖し、根圏環境の改善や根量の増加など根に活力を与えるとされています。腐植質・有機酸製品と特徴
腐植質資材と有機質資材のバイオスティミュラント資材の製品例と、その特徴を説明します。グルタフミン®(ライフイン株式会社)
ライフイン株式会社の「グルタフミン®」は、アミノ酸と腐植酸を含有する液体肥料として登録されているバイオスティミュラント資材です。ニトロ腐植酸(硝酸または硝酸および硫酸で分解処理した腐植酸)は、土壌の団粒化を促進し、物理性の向上にも役立ち、育苗時の根張りの向上や、移植時の活着を促進します。使用方法は、点滴灌水または所定の倍率で希釈し、葉面散布してください。そのほか、腐植酸を7%含む液状「恵土リキッド」の取り扱いもあります。
海藻類資材で、植物を高温や乾燥ストレスから守る
海藻および海藻抽出物、多糖類には、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの微量要素が豊富に含まれており、日本でも、古来より田畑で土作りのために海藻類が使われてきました。バイオスティミュラント資材としての海藻や海藻抽出液は、ヨーロッパに生息するアルギニンなどアミノ酸やアラギン酸、多糖類などを含む「アスコフィラム・ノドサム」という海藻や、植物の病害への抵抗性を強化するといわれているラミナランを含む「ラミナリア・ディジタータ」という海藻が利用されることが多いです。海藻類資材の効果
海藻資材に含まれるアミノ酸や多糖類は、植物体内の浸透圧や蒸散の量の調整を保つ作用があるため、高温や乾燥によるストレスを軽減できるといわれています。まだ解明されていない点も多いですが、今後注目の資材の一つです。海藻類製品と特徴
海藻抽出物資材の具体的な製品例と、その特徴を説明します。タフプラントカラー、タフプラントチャージ(アリスタライフサイエンス株式会社)
アリスタライフサイエンス株式会社の「タフプラント®チャージ」、「タフプラント®カラー」は、海藻「アスコフィラム・ノドサム」の抽出エキスを原料にした果樹用の葉面散布肥料です。リンゴの場合は、玉伸びの促進、樹勢の回復を目的に、幼果期から果実肥大期の間「タフプラント®チャージ」を使用します。その後、着色期に「タフプラント®カラー」を使用し、着色を早期化、また着色ぞろいを促します。
オウトウの場合は、開花後からの「タフプラント®チャージ」の使用で、着色促進や果実の品質向上に有用です。
さらに同社は、2021年春にバイオスティミュラント資材の海藻抽出物入り肥料「ルーター®」を発売予定です。育苗期や定植後の生育初期に使用すると、コマツナやホウレンソウの収量アップが見込める試験結果も出ています。
アミノ酸・ペプチド資材で、悪天候でも光合成を促進
アミノ酸資材の原料は、サトウキビやトウモロコシなどの副産物として得られるグルタミン酸や、魚介類の発酵過程で得られる副産物などさまざまです。また、タンパク質の加水分解や、コンブなどからアミノ酸を抽出するなど製造工程も異なります。植物の根から吸収されたチッ素成分は、光合成によって植物の体内でグルタミン酸が生成され、それからおよそ20種類のアミノ酸に変化します。さまざまな経路を経てタンパク質が作られ、植物の生育に利用されています。これには相当なエネルギーを要するため、光合成が促進されない曇天の日が続く場合は、グルタミン酸も、当然タンパク質も十分に作られず、生育不良となってしまいます。アミノ酸資材は、タンパク質が生成される前に、アミノ酸やグルタミン酸を与えることで、そのエネルギーを節約でき植物の生育を促します。
アミノ酸、ペプチド資材を利用する効果
植物が弱っているときや、悪天候で光合成が行えないなど生育不全が起こった場合にアミノ酸資材を施用すると、光合成の促進、開花・着果促進など生育を促す効果があります。また、エネルギーを節約できると、糖の分解も起こりにくく、糖度が上がるなど品質向上のメリットも期待できます。アミノ酸、ペプチド資材の製品と使い方
アミノ酸資材は原料や製造工程もさまざまなため、数多くのバイオスティミュラント製品がありますが、具体的な製品例を取り上げて、その特徴を説明します。Tecamin Max(味の素株式会社)
味の素株式会社の「Tecamin Max」は、グルタミン酸を主に含むアミノ酸葉面散布剤です。野菜類、果樹など幅広く使用できます。うま味調味料の原料である粗糖、糖蜜、デンプン、アンモニア、ミネラルなどを発酵する過程で得られる発酵液から作られています。施用すると、葉面からグルタミン酸を取り込み、効率よく植物の生育に利用されます。曇天時の生育不良の改善はもちろんのこと、晴天時にはタンパク質生成のために必要なエネルギーが節約できるので、果実などの品質向上や収量アップも期待できます。
アミハート®️(味の素株式会社)
「アミハート®️」は、土壌散布用のバイオスティミュラント資材です。うまみ成分のイノシン酸(核酸)が根毛を増加させ、主根、側根の生育も促進されるため、土壌中の栄養素が効率よく吸収されます。東京大学の研究で、トマト栽培ではアミハート®️を散布した土壌で、リン酸の吸収効率がいいことが報告されています。
微量ミネラル、ビタミンで、植物の生育に不可欠な微量要素を補う
微量ミネラルすなわちモリブデン、銅、マンガン、ホウ素、亜鉛などの微量要素は、植物の生育には不可欠です。これらは、従来より普通肥料として取り扱われていますが、バイオスティミュラントとしても考えられています。微量要素は、もともと土壌に含まれている成分ではありますが、土を使わない養液栽培や、土壌分析の結果によって不足していることが判明した場合は、積極的に施用しましょう。微量ミネラル、ビタミンを利用する効果
微量ミネラル、ビタミンは、植物の合成に必要なタンパク質の原料であるため植物の生育に不可欠です。また、土壌中の微生物は微量要素を取り込み、物質の合成や代謝を行なっているため、微生物の活性にも有用です。微量ミネラル、ビタミンの製品と使い方
微量ミネラル資材の具体的な製品例と、その特徴を説明します。こめ専科 (株式会社 安藤通商)
株式会社 安藤通商が提供する水稲用バイオスティミュラント資材「こめ専科」は、土壌菌(乳酸菌・酵母菌)のほかに、マグネシウム、カルシウム、マンガン、カリウム、ホウ素など60〜80種の微量要素などのミネラルを含有しています。土の団粒化の促進と、土壌の通気性、保湿性そして保肥力を高めます。
微生物資材で豊かな土を作る
微生物資材は、その名の通り微生物を施用する製品です。この資材の中で、特にトリコデルマ菌、菌根菌、酵母、枯草菌、根粒菌などが有用土壌微生物と考えられています。微生物資材を利用する効果
植物の根に共生する土壌微生物は、植物の生育を促進させます。微生物資材は、拮抗作用により有害微生物を抑制したり、根に活力を与えたりすることで、地力を向上させる効果が期待されています。また、リン酸は土壌中に固定化される傾向がありますが、アーバスキュラー菌根菌は、植物が吸収できるように変換する効果があるといわれています。
微生物資材は植物の生育にどのように関与しているか、まだ解明されていないことが多々ありますが、少しずつそのメカニズムもわかってきています。
微生物資材の製品と使い方
微生物資材のうち菌根菌の具体的な製品例と、その特徴を説明します。トリコデソイル(アリスタライフサイエンス株式会社)
アリスタライフサイエンス株式会社の「トリコデソイル®」は、対象作物や施用時期を選ばず使用できる有用微生物「トリコデルマ菌」を含む微生物資材です。栽培期間を通じて、細根の発生を促し、根張りを強化することで植物の健全な生育をサポートします。
植物にとっての善玉菌である「トリコデルマ菌」を根の表面で増殖させることにより、ピシウム菌、リゾクトニア菌、フザリウム菌などの悪玉菌の棲みにくい環境を作ることができます。土壌消毒後の使用が特に有効です。
栽培環境や使用方法に適したバイオスティミュラント資材を選ぼう
バイオスティミュラント資材は、原料だけでなく、製造工程もそれぞれ異なります。また、使用できる作物や使用方法も一律ではなく、期待できる効果もさまざまです。製品の特徴を理解したうえで、栽培環境や使用条件に適した資材を選び、効果的に活用しましょう。
参考:日本バイオスティミュラント協議会