バイオスティミュラントとは①種類、効果、メリットや課題について解説

バイオスティミュラントとは、農薬でも肥料でもない植物本来の力を引き出す農業技術・製品の新カテゴリーです。世界的に市場規模は拡大を続け、日本でも2018年に農業資材の製造企業などによりバイオスティミュラント協議会が設立されました。今注目のバイオスティミュラントについて解説します。


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バイオスティミュラントは、植物本来の力を引き出す農業技術・資材の新カテゴリーです。ヨーロッパなどを中心に、市場規模は世界的に拡大し続けています。ここでは、バイオスティミュラントが植物へ与える作用と効果、種類、メリット、また今後の課題についても説明します。

バイオスティミュラントの概要

バイオスティミュラント
図:AGRI PICK編集部(監修:日本バイオスティミュラント協議会)
今話題のバイオスティミュラントとは、どのようなものでしょうか。また、国内におけるバイオスティミュラントの位置付けも確認しましょう。

バイオスティミュラントとは

バイオスティミュラント(Biostimulant)は、農薬でも肥料でもない新しい農業資材のカテゴリーです。日本の農業現場では、バイオスティミュラントという概念ではなかったものの、古来、海藻などを活用した資材や、ぼかし肥料などが活用されています。今、注目を浴びているバイオスティミュラントは、気候や土壌の状態による植物のダメージを軽減し、植物や自然環境が本来持つ力を最大限に引き出すことを目的とした新しい農業資材です。

バイオスティミュラント関連法規

法律面において、国内ではバイオスティミュラントは農薬取締法、肥料取締法、地力促進法のいずれにも当てはまりません。ただし、バイオスティミュラント資材と肥料成分の混合製品は、機能性肥料として肥料取締法に基づいて管理・販売されています。

バイオスティミュラントの作用

バイオスティミュラント
図:AGRI PICK編集部(監修:日本バイオスティミュラント協議会)
次に、バイオスティミュラントの作用を説明します。
植物は、品種ごとに最大の収量が決まっています。これが「植物が本来持っている力」といわれるものです。その植物の力を最大限に引き出すために、植物栄養である肥料を施用します。
しかし実際には、植物はさまざまな「生物的ストレス」と「非生物的ストレス」を受けることにより、本来の力を最大限発揮できず、収量は減少してしまいます。

生物的ストレスには農薬で対応

生物的ストレスとは、発芽時、育苗時、開花時、結実時、収穫直前など植物の生育過程における害虫や病気、また雑草などによるストレスのことをいいます。この生物的ストレスを軽減するために、農薬が使われています。

非生物的ストレスにはバイオスティミュラントで対応

一方で非生物的ストレスとは、近年の極端な高温や低温による障害や、塩害、霜害、干害、また雹や風による物理的な被害や活性酸素によるダメージ、農薬の薬害によるストレスのことを指します。バイオスティミュラントは、この非生物的ストレスへの抵抗性を高め、収量の増加や農産物の品質を向上させます。

バイオスティミュラントの効果

トマトの苗
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では、バイオスティミュラントが植物本来の力を引き出すことで、どのような効果が得られるのでしょうか。


1. 根環境の改善

バイオスティミュラントは、土壌の物理化学的性質を高め、地力の向上にも貢献します。その結果、根圏環境の改善や根量の増加・根の活性向上などの効果が期待でき、肥料の栄養素を効率よく取り込めます。

2. 糖度や色など品質向上

また、活性酸素の抑制や光合成の促進、開花・着果の促進など、いわゆる生育促進作用にも働きかけます。さらに、生育植物の蒸散や浸透圧の調節などの水バランスを調整する働きもあります。そのため、糖度や色などの品質向上の効果も期待できます

3. 収量の増加

さらに、植物の代謝効率の向上や、環境面の非生物的ストレスを減少させられるため、収量が増加するといわれています。

バイオスティミュラントの種類

バイオスティミュラント資材の原料にも使われるサトウキビ
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バイオスティミュラントには、どのような種類があるのでしょうか。
バイオスティミュラント資材には、土壌散布用だけでなく、葉面散布用の製品もあります。また分類に関しても、研究者によって有効成分、資材の起源別、機能など分類方法が異なります。ここでは、2018年に農業資材の製造企業などによって設立された「日本バイオスティミュラント協議会」が掲載する資材の起源別による分類を紹介します。

・腐植質、有機酸資材(腐植酸/フルボ酸)
・海藻および海藻抽出物、多糖類
・アミノ酸およびペプチド資材
・微量ミネラル、ビタミン
・微生物資材(トリコデルマ菌、菌根菌、酵母、枯草菌、根粒菌など)
・その他(動植物由来機能性成分、微生物代謝物、微生物活性化資材など)

バイオスティミュラントを使用するメリット

課題解決にバイオスティミュラント
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それでは、なぜバイオスティミュラントは注目を集めているのでしょうか。バイオスティミュラントを使用するメリットから考えましょう。

少ない労力で高い収量を目指せる

バイオスティミュラントは、少ない労働力で、高い収量を目指す手法の一つです。現在日本では、農家の高齢化や担い手不足が深刻ですが、今後はいっそう少ない労力で、収量の向上を目指すことが必要になります。そうなると、従来よりも効率的で高い収量を確保できる技術が今後ますます求められるでしょう。

ヨーロッパバイオスティミュラント協議会により、バイオスティミュラント利用時の栄養素利用効率は未使用時との比較で5〜25%増、また収量も5〜10%増加すると報告されています。

気候変動による環境の変化に対応できる

また、環境の変化による非生物的ストレスへの抵抗力を増強できることもメリットです。気候変動による平均気温の上昇も深刻で、作物の適作地は日々変化しています。記録的な高温や、日照不足など気象環境による作物の収量は低下しているため、バイオスティミュラントは課題解決に一役買うでしょう。

バイオスティミュラントの課題

バイオスティミュラントには課題も
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しかし、バイオスティミュラントには現段階ではまだ課題も残されており、これらを解決していく必要があります。

バイオスティミュラント単体の効果が見えにくい

まず、バイオスティミュラントはほかの資材と組み合わせて使用するため、単体の効果測定が困難で、農家がバイオスティミュラントを使用するときに、効果がわかりにくいことが課題です。

作用機能が完全には解明されていない

次に、バイオスティミュラントが作物にどのように機能するか、完全に解明されていないことから、散布タイミングや希釈濃度、散布量が合っておらず、効果が発揮されない場合があります。
今後、バイオスティミュラント製品の作用メカニズムが解明され、資材の選定や散布のタイミングの理解が深まると、バイオスティミュラント技術の進歩は飛躍的に向上するでしょう。

現場のニーズに合った製品が不十分

また現状では、対象作物の生育ステージや、圃場環境、品種や作型など現場のニーズに合ったバイオスティミュラント製品の品揃えが十分ではありません。今後は、ラインアップが増加していくことが望まれます。

品質の均一化、安定化が求められる

現時点では、品質の均一化や安定化が見えにくい資材ではありますが、日本バイオスティミュラント協議会により、バイオスティミュラント製品の品質の均一化・安定化が進められています。

既存技術と組み合わせて相乗効果を狙おう

タマネギ
出典:Pixabay
バイオスティミュラントは、環境ストレスから植物を守る新しい農業資材カテゴリーです。ただし、バイオスティミュラントのみで大きな成果を求めるのではなく、既存の土作り、肥料、農薬、適切な水管理や環境の制御と組み合わせて、収量の増加や、作物の品質向上を目指していくことが大切です

バイオスティミュラント資材の特徴や使用法、効果については、下記で詳しくご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。



参考:日本バイオスティミュラント協議会
European Biostimulants Industry Council

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紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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