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農業インターンシップとは?
「農業インターンシップ」は、農業を仕事にしたいと考えている人が、実際の農業の現場で就業体験できる制度です。農業法人などの経営者や従業員の人たちと一緒に働き、農業の実際の仕事について知ることができます。仕事の体験を通して、自分が農業に適性があるかを感じることができ、進路について考える機会となります。観音山フルーツガーデンで農業インターンシップを体験中の森利口さんに聞く
農業インターンシップにはいろいろな受入先や作業内容がありますが、具体的なイメージを持つには、体験者に感想を聞くのが確実です。実際にインターンシップを体験中の方にお話を伺いました!教えてくれたのは
新潟県出身の森利口陸人(もりぐちりくと)さん。2020年4月から和歌山県紀の川市の有限会社柑香園 観音山フルーツガーデンでインターンシップをしています。高校2年生の終わりに農業を志す
森利口さんが農業を仕事にしようと考えたのは高校2年生の終わりごろ、進路を決めるタイミングでした。進路の候補には保育士もあり、最後まで悩んだとのことですが、最終的に農業を志しました。森利口陸人さん
祖父が佐渡で北限のミカンを栽培していて、農業の後継者になりたいと思ったことが一つの理由です。もう一つは頑張ったら頑張った分だけ稼げるというのが面白いな、と。ビジネスとしての可能性を感じました。
地元の新潟を出て、和歌山県の農業大学校に入学
高校卒業後、和歌山県の農業大学校に進学した森利口さん。柑橘の栽培をやりたいという気持ちから、ミカンといえば、収穫量が全国1位の和歌山と考えて、インターネットで検索して進学を決めました。農業大学校では果樹コースを専攻。実習では梅、スモモ、モモ、ナシ、柿、ミカンなど幅広い果樹の栽培を学びました。森利口陸人さん
農業大学校で一番よかったことは、同じ目標をもった同年代の仲間ができたことです。また、学校では6月から2月までずっと収穫作業があり、責任者の方から「食べてみてもいいよ」と言われて自分が育てた果物を収穫してすぐに食べられたことがうれしかったです。一方で大変だったのは資格を取得することでした。特に農業技術検定2級に合格するための勉強は、仲間と支えあいながら頑張りました。
インターンシップ先との出会いは、農業大学校の就職ガイダンス
森利口さんが農業大学校1年生の3月に、学校で就職ガイダンスが開かれました。ガイダンスで観音山フルーツガーデンの会長さんと話をすると、「5月の連休に遊びにおいで」とのお誘いがあり、一度訪れたあと、アルバイトとして働かせてもらうことになりました。親から、農家として自分で営農する前に一度は農業法人などに勤めるように勧められていたこともあり、農業大学校卒業後、インターンシップをすることになりました。森利口陸人さん
就職ガイダンスにはほかの法人も来ていましたが、観音山フルーツガーデン以外は考えていませんでした。一農家としては経営規模が大きく、法人化されていることや、売り方や販路が多様でいろいろなことを学べるところに魅力を感じました。
パーラーでの接客やパフェづくりの仕事
観音山フルーツガーデンでの森利口さんの仕事内容は、農園に併設されているフルーツパーラーでの接客やパフェづくり。パフェの盛り付けなど、大変なことも多いですが、社員やパートの人たちに教えてもらいながら仕事を習得しています。本来であれば、東京への営業などに同行したりする予定もあったそうですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、延期となっているのだそうです。森利口陸人さん
パーラーはお客様が増えていて、観音山フルーツガーデンでも一番将来性のある部署です。今回のインターンシップでは、経営や販売などのビジネスを主に学びたいので、とても勉強になっています。
たくさんの人に出会えた
森利口さんはこのインターンシップを通して、たくさんの人に出会えたことが一番よかったといいます。森利口陸人さん
観音山フルーツガーデンには従業員もたくさんいますし、いろいろな人に出会えました。例えば観音山フルーツガーデンの直売所に生産物を売り込みにくる農家の人など、自分から行動する熱意のある人たちとの出会いは財産だと感じます。
佐渡のミカンを全国に広めたい
森利口さんの今後の目標は佐渡のミカンを全国に広めること。森利口陸人さん
佐渡のミカンは極早生のミカンを木の上で完熟させて、その後予措(果皮の呼吸を抑えるため、あらかじめ果皮を少し乾燥させる措置)してから出荷するのですが、味が凝縮され、酸味も残って、ほかにないミカンなのです。今は島外で販売されていないので、全国の人に知ってもらえたらと思っています。
また、農業大学校と農業インターンシップでの経験を経て、佐渡は幅広い果樹が栽培できる場所だと気づいたといいます。
森利口陸人さん
今、インターンシップで学んでいるパフェづくりは佐渡でもできるのではないかと考えるようになりました。いずれは佐渡で体験型観光農園を開きたいと思っています。もちろん自分一人では難しいから、一緒にやってくれる仲間を探して。ミカンを作っている農家で力を合わせて、佐渡全体でできたらいいですね。
迷わずに挑戦することが大切
これから農業インターンシップに挑戦する人へのアドバイスを伺うと、次のように教えてくれました。森利口陸人さん
学びたいと思ったら、直感を信じて、迷わず行動に移すのがいいと思います。ここだと思ったら迷わない方がいいのかなと。そうすれば何かしらの成功が得られるのではないでしょうか。もう一つは、インターンシップや研修制度の話は条件をよく聞いて、先方とすり合わせを行っておくことが大切だと思います。
とても前向きで行動力のある森利口さん。農業インターンシップをしながら、自分の夢を形にする方法を一つずつ見つけているような印象を受けました。
農業インターンシップの体験先を探そう!
森利口さんは、農業大学校の就職ガイダンスで出会った観音山フルーツガーデンで農業インターンシップを始めることができました。今、農業とは関係ない勉強をしている大学生や社会人など、特に農業との接点がない人は、どのように農業インターンシップの体験先を探せばよいのでしょうか?3つの方法をご紹介します。日本農業法人協会の農業インターンシップに申し込む
公益社団法人日本農業法人協会が運営している農業インターンシップは農林水産省の補助事業。2日以上から6週間までで通年で受け入れています。農業に関心のある高校生以上の学生および社会人が対象で、参加費は無料です。申し込みをすると、事務局が申込者の希望をもとに体験受け入れ法人等を選定してくれます。体験先は協会のウェブサイトに北海道から鹿児島まで幅広く掲載されています。体験終了後には、農業インターンシップ体験報告書を事務局に提出する必要があります。
農業求人サイトで体験先を探す
農業求人サイトには、農業インターンシップの募集を掲載しているものがあります。農業求人サイトにもいろいろなものがありますが、例えば、「あぐりナビ」では、求人検索をする際に「雇用形態を選択」という項目でインターンシップを選ぶことができます。「農家のおしごとナビ」では、キーワード検索の項目に「インターンシップ」と入力して検索すると、検索結果にインターンシップの受け入れを行っている農業法人が出てきます。就農フェアで体験先を探す
さまざまな農業法人や農家が出展する就農フェア。農業を仕事にしようと考えている人が、気軽に情報を得られるイベントです。ここでもインターンシップに関する情報を得ることができます。足を運んでみて、気になった法人にはインターンシップを受け入れていないか聞いてみましょう。直接担当者と話をすることができるので、雰囲気を感じてから体験先を決めることができます。
農業インターンシップの条件はよく確認しよう!
農業インターンシップの募集には特徴があります。それは、どの受入先も「農業に関心があり、仕事として農業を真剣に考えている人」を対象にしているのです。遊び半分の気持ちで行くのは望ましくありません。また、プログラムの内容をよく確認しましょう。栽培作物によっても異なりますが、作業は早朝から始まることがほとんどです。夜に懇親会などのプログラムが用意されていることもあります。自分の体力や希望に合わせて、体験先や期間を選びましょう。
参加費用や保険料についても確認しましょう。日本農業法人協会が運営している農業インターンシップは無料で、保険料についても負担してもらえますが、ほかのインターンシップについては、参加費が必要なものもあります。費用がかかるプログラムは、費用を負担しても参加したいと思っている真剣な人が多く、貴重な仲間と出会えるという可能性もあります。
農業インターンシップに参加する準備
農業インターンシップをすることが決まったら準備ですね。持ち物などは、体験先によく聞いて準備をしましょう。農業をするのが初めての場合、服装に悩むかもしれません。農作業着には、押さえておくとよいポイントがあります。・腕や足を覆い、動きやすいもの
・汚れが目立ちにくく、汚れても落ちやすいもの
・濡れてもすぐ乾くもの
・ポケットが充実しているもの
枝や葉、虫などで体を傷つけないためにも、長袖、長ズボンが安心です。また、土汚れがついても落としやすい素材で、作業で濡れたり、汗をかいたりしてもすぐ乾くものがよいでしょう。また、作業時には荷物が持てないので、ポケットが充実していることも欠かせないポイントです。帽子や手袋も用意しておきましょう。
このような条件を考えると、アウトドア用品を持っている場合には使うことができそうですね。インターンシップの時期や期間に合わせて、必要なものをそろえましょう。
体験が夢への道筋をつける
農業インターンシップでは、仕事としての農業を体験することができます。知らなかった農業の一面を知ったり、面白さに気づいたりすることで、自分の将来の夢が固まってくるかもしれませんね。森利口さんは、学びたいという直感を信じて、チャンスを逃さずに行動することが大事だとアドバイスしてくれました。農業インターンシップで得られる体験と学びは、夢と現実の隙間を埋める原動力になるものなのでしょう。森利口さんには、夢が形になることが見えてきている力強さがありました。佐渡のミカンが多くの人に知られる日も近いかもしれません。