そのため、トマトを栽培していて悩むことの1つが「誘引をどうするか」だと思います。誘引の種類とその方法について、現役のトマト農家が解説します。
トマトは本来ほふく性の植物
トマトは本来、ほふく性の植物であることをご存じですか?トマトを放任して栽培すると、地面を這いながら茎を伸ばして着果し続け、地上から立ち上がることはありません。
しかし、地面を這ったまま栽培しては管理作業が大変になるばかりか、病害虫の発生も増えるでしょう。トマトの茎を立ち上げて誘引することによって、圃場の空間が有効活用できますし、生育環境も良くなります。
トマトの栽培が始まって以来、作柄や地域によってさまざまな工夫が施されながら今日に至っています。
誘引の種類は多種多様
家庭菜園などで短期間だけでも収穫できれば良いなら、誘引方法はそこまで難しくはありません。支柱を立てて麻ひもなどで垂直に誘引すれば、7段程度までは十分に管理できます。それ以上の段数を採ろうと思えば、長期間管理するための工夫が必要です。
ただ、一口で誘引と言ってもその方法は地域や人によってさまざま。茎とひもを挟むクリップや、トマトの茎を直立させる際に用いるワイヤーやフックなど、誘引の方法によって必要な資材も異なります。
誘引方法を細かく分けるとキリがないので、代表的なものについて解説します。
吊り下げ誘引
トマトの樹の上からひもを垂らして、茎に引っかけて誘引する方法です。トマトを収穫し終わったら茎を下ろして、次の段を収穫したらまた下ろしてを繰り返します。ひもに沿って生長していくので生長点が立ち、受光性が良くなり、収量アップが期待できるというメリットがあります。
その反面、吊り下げ用の資材が必要なのでコストがかかることや、茎をおろす際に葉かき作業が必要になるデメリットも。
特に6カ月以上長期収穫する圃場でみられる誘引方法です。
Uターン誘引
茎を真上に伸ばしてから、支柱の頂点から逆U字の形になり下ろしていく方法です。頂点付近に達した生長点を、ひもやテープなどで下方に誘引していくと、果実の自重で徐々に下がっていきます。前半は垂直に誘引するので、特に上段は採光・通風が良くなり、果実の肥大、品質アップが期待できます。吊り下げ誘引に比べ樹への負担が少ないです。
真夏だとUターン付近が高温にさらされるので花落ちしやすいのはデメリットですが、管理のしやすさが利点だと思います。
斜め誘引
トマトの主枝を斜めに誘引していく方法です。私はこの方法を採用しています。吊り下げ誘引ほどの労力は要らず、簡易な資材で長期間の収穫が可能というメリットがあります。
ただし、生長点が斜めになるためあまり傾けすぎると樹勢が落ちやすいことと、垂直に誘引するのに比べ葉が重なりやすく採光性が劣るというデメリットがあります。
私の場合は、あらかじめ支柱間に斜めに誘引用テープを張っておき、このテープに沿ってトマトの主枝を誘引していきます。摘心する頃にはちょうど支柱の頂点に達するように、テープの角度を調節しています。
斜め誘引に利用する主な資材とその方法
さまざまなパターンの中から、ここでは私が実際にやっている斜め誘引に必要な資材について解説します。支柱
地面に20cmほど埋めることを考慮して長さ210cmのものを使用しています。太さは16mmあれば十分でしょう。誘引用のテープを支柱に巻くことを考えると、イボ竹タイプのものがテープがずれずおすすめです。誘引用テープ
ポリエチレン製のテープで、荷物の結束用などほかの用途にも使えます。私のやり方だと、トマトの苗を定植する前に、誘引に必要なテープをすべて張っておきます。トマトの生長に合わせて段階的に張っていく方法もあるのですが、茎の生長が早くなってくるとテープ張りの作業に追われて、ほかの管理作業が疎かになってしまいがちだからです。
最初から斜めにテープを張っておけば、トマトの茎が伸びてきてもテープに沿って誘引すれば良いので、ほかの作業に時間を割くことができます。
トマトが生長してくるとテープにはかなりの重量がかかってきますが、重みで切れることはありません。
誘引用結束機(テープナー)
トマトの茎を誘引用テープに結束する際に使用します。専用のテープを補充しつつワンタッチで結束できるので、誘引作業にはなくてはならない道具です。テープナー専用テープ
テープナーに使う結束用テープも必要です。日光で分解されるタイプなら、収穫後の後処理の段階にはテープが劣化して簡単にひび割れるので、片付けが非常にラクです。トマトを長期収穫するために誘引は大事な作業
誘引は収穫量を左右する大事な作業の1つ。誘引にもさまざまな方法が存在しますが、収穫期間や資材コストなどを考慮して、ご自分の栽培スタイルに合った方法を見つけてください。