目次
今回は、京都府南丹市美山町に移住し、アロマテラピーのサロンを開業した林陽子さんにインタビュー。京都のイメージが変わるような「本当の田舎暮らし」のお話を伺うことができました。
京都府の特徴と魅力
京都府のすがた
京都府は日本列島のほぼ中央に位置し、北は日本海に面しています。丹波山地を境に、気候が日本海型と内陸型に分かれます。京都市は平安時代から明治維新まで都が置かれたため、多くの文化的遺産が遺り、国際的な観光都市となっています。丹後・中丹地域の海岸線には、天橋立のある丹後天橋立大江山国定公園などがあり美しい景色が見られ、天然の良港になっています。中丹地域から中部地域は、大部分が山地で、丹波山地を源に桂川水系、由良川水系に別れ、その流域には、亀岡、福知山盆地のなど盆地が点在します。
京都・乙訓、山城中部・相楽地域には、桂川、宇治川、木津川の三川が合流する山城盆地が広がっています。
京都府の気候
京都府の気候は、丹波山地を境に北部と南部に大きく分けられます。北部は冬は雪が多く、夏は晴天が多いという特徴、南部は1年を通じて晴天が多く、降水量が少ないという特徴をもちます。北部の中でも、丹後半島地域は日本海側の特性が顕著で冬に大雪が降ることがあります。福知山盆地から丹後山地一帯は内陸性、 舞鶴湾・宮津湾付近一帯は両者の中間の気候です。 南部では、亀岡盆地から南山城山間部にかけては内陸性の気候で気温の変動幅が大きいです。 また、京都市の市街地では、近年平均気温の上昇など、都市気候化の傾向がみられます。
どの地域に移住する?
京都府のエリアを見てみましょう。エリア | 市町村 | 特徴 |
丹後エリア | 宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町 | 京都府の北部に位置する。北は日本海、西は兵庫県に接している。海岸は美しいリアス式海岸で国定公園に指定されている。 伝統的な「丹後ちりめん」や機械金属工業も盛ん。 丹後コシヒカリ、京たんご梨、ブドウ、桃、メロン、さつまいも、加工用大根のほか、みず菜をはじめとする京野菜の生産も行われている。 |
中丹エリア | 福知山市・舞鶴市・綾部市 | 京都縦貫自動車道と舞鶴若狭自動車道のどちらも使いやすく、京都市や阪神地域、北陸地域へもアクセスが良い。長田野工業団地、綾部工業団地などの工業団地に多くの優良企業が存在。 |
京都市エリア | 京都市 | 1,000年以上にわたって都があった国際観光文化都市。1869年の東京遷都まで歴代天皇が住んでいた京都御所がある。 さまざまな産業が集う政令指定都市であり、西陣織、京友禅、清水焼など伝統工芸品も多い。賀茂ナス、鹿ケ谷カボチャ、堀川ゴボウなどの京野菜は有名。 |
南丹エリア | 亀岡市、南丹市、京丹波町 | 京都縦貫自動車道の全線開通や、JR山陰本線の複線化など、交通アクセスが向上し、多くの企業の進出やベッドタウン化が進んでいる地域。 また、稲作や野菜の栽培、畜産などが行われている。 |
山城エリア | 宇治市、城陽市、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、 木津川市、大山崎町、久御山町、井手町、宇治田原町、 笠置町、和束町、精華町、南山城村 | 京都市・大阪府・奈良県・滋賀県・三重県に接し、近隣の大都市とのアクセスが良好で、歴史文化的遺産も多い。宇治茶やタケノコの生産地としても有名。 |
移住者体験談|南丹市美山町に移住した林陽子さん
教えてくれたのは
26年前に大阪府高槻市から京都府美山町に移住した林陽子さん。現在は、美山町で「美山陽だまりアロマ亭野の花」を主宰しています。林陽子さんプロフィール
短大(英文学科)卒業後、商社へ就職。就職先では経理事務に従事する。就職して1年後に結婚。
1994年に京都府北桑田郡美山町(現・南丹市美山町)に移住。
美山陽だまりアロマ亭野の花 主宰
http://www.miyamanonohana.com/
・日本アロマコーディネーター協会(JAA) 認定アロマコーディネーター
・日本アロマコーディネーター協会(JAA) 認定アロマインストラクター
・日本エステティック協会認定フェイシャルエステティシャン
・日本ホリスティック ビューティ&ウェルネス協会(JHBWA)認定講師
(ドックアロマセラピスト、インストラクター)
・虹色の学校認定(虹のしずくⓇPCS)認定色彩心理アドバイザー
・カラフルアカデミー認定(虹のしずくⓇPCS)セルフカラーインストラクター
・一般社団法人日本アロマパルファンヌ協会認定アロマパルファンヌ
・あさいマッサージ教育研究所認定 介護アロマセラピスト
忙しく共働きをしていた大阪時代
林さんは、大阪市内の老舗商社で会社員として経理事務の仕事をしていました。夫の誠さんは神戸市内でファイナンスリース会社に勤務。人生の転機が訪れたのは、結婚3年目の夏休み。誠さんから、京都府の美山町に旅行に行こうと誘われました。美山町の名前すら知らなかった林さんですが、今年の夏休みは山でもいいか、と軽い気持ちで現地を訪れました。夫が脱サラと移住を「報告」
旅館で、誠さんが「ここに住もうと思っている」といきなり切り出しました。差し出したのが、Iターン特集が掲載された関西版の就職情報誌。当時から第一次産業従事者の高齢化や人口の減少は予測されていて、移住して第一次産業に就くことについて取り上げられていました。その中にあったのが、京都府美山町で林業に携わるというもの。誠さんはその記事に触発されて、美山町に移住して林業をすると林さんに告げたのでした。突然の話に普通は反対すると思うのですが…。
移住先の決め手はインスピレーションと実家からの距離
就職情報誌には、美山町のほかにも奈良や和歌山の移住候補地が掲載されていました。その中で林夫妻が美山町を選んだのは、林さんのインスピレーションだったのだとか。人とのつながりが解決してくれた住まい探し
林さんは仕事をすぐに辞めることができず、最初は誠さんだけが美山町に移住しました。一人暮らしをしていた誠さんに、行政の担当者が家族を連れて完全に移住してほしいと、熱心に住居探しを後押ししてくれたといいます。このとき入居した家は賃貸でしたが、その後、林さん夫妻は美山町に家を買いたいと考えるようになります。しかし、地元の人たちには先祖代々受け継いできた土地や家を、よそから来た知らない人には譲りたくないという意識がありました。それは、土地を売って終わりではなく、そのあとの近所の人たちのことも考えているからこその行動なのだと林さんは気づきました。
母の死、友人の闘病を経て
新居に落ち着いた後、林さんは母親の死に直面します。末期のがんで余命3カ月と宣告され、その9カ月後に旅立たれたそうです。その後、娘として後悔が残ったといいます。美山町に来てからずっとお世話になっていた大切な友人が、自分の体を二の次にして小学校教師の仕事に打ち込んだ結果、倒れてしまう。そして、元気をなくし痛みに苦しんでいるという事実が、生きがいになる仕事を求めていた林さんを動かしました。
アロマががん患者の痛みと苦しみを和らげると知り、3つの学校に同時に通い、本気で勉強を開始。学びながら、京都市内のアロマサロンに働きに行って技術を磨き、友人の体のマッサージも続けました。
「美山町でアロマサロンをやってね。私のお友達をたくさん連れてくるから」と言っていたその友人は、4年後に亡くなりました。
友達の家のような「美山陽だまりアロマ亭 野の花」
アロマサロンの開業にあたって、銀行からの融資は受けられなかった林さん。悩んでいると、亡くなった友人がつないでくれた別の友人から「自宅でサロンを開業してみては?」と声をかけられたそう。そこで、古民家の自宅を装飾し、アロマサロンとして開業することにしました。2020年現在、サロンの開業から10年が経ちました。友達や亡くなった友人の仲間の学校の先生方も来てくれて、顔がわかる人がどんどんつながっていき、多くの人が訪れる場所になっているそうです。自宅をサロンにしたことについて、夫の誠さんは協力的だといいます。
移住した南丹市美山町で生きがいになる仕事を得た林さん。お客様に喜んでもらえるとき、一度来店したお客様がリピーターとなって足を運んでくれるとき、お客様が自分の大切な人を「林さんの店だから」と紹介してくれるときに、特にやりがいと喜びを感じているそうです。
移住して得られたもの
移住してすべてのことについてよかった、と話す林さん。都会暮らしのギャップに驚きと戸惑いを感じることがあっても、それを楽しむことができたといいます。困ったこともそれほどなく、むしろ困ったときに、助けてくれる人が周りにたくさんいることに感動したそうです。美山町の豊かな自然の中での生活を、林さんは「本来の日本人の田舎暮らし」と呼びます。それは、人としての本当の暮らし。移住後の生活は、都会で暮らしていたときの体調不良を薬を使わずに完治させ、林さんの人生観にも大きな影響を与えました。
郷に入っては郷に従え
これから移住を希望する人に対してアドバイスを求めると「郷に入っては郷に従え」という言葉を使って、次のように教えてくれました。実際に林さんご夫婦も、誠さんが消防団に入ったり、夫婦でイベントに顔を出したりと地域の活動には積極的に参加をしました。そこに見えるのは先人からもらったバトンを継ぐように、その土地を継いでいくという覚悟。その覚悟があるからこそ、林さんの移住が成功したのでしょう。
現在、林さんは「美山陽だまりアロマ亭 野の花」を軸として、新しい事業も模索中。きっと美山町にまた新しい風をもたらすことでしょう。
美山陽だまりアロマ亭 野の花
京都に移住したいと思ったら|まずはウェブサイトで情報収集!
それでは、京都への移住について、具体的なステップを考えていきましょう。まずはインターネットでの情報収集。二つのウェブサイトをご紹介します。京都府移住情報サイト「This is Kyoto,too」
「今まで知らなかった京都に暮らす」をキャッチフレーズとした京都府農林水産部が運営しているウェブサイト。京都移住に関する基本的な情報を得ることができます。おもしろいのは、移住におすすめの地域をはっきりと打ち出していること。そしてそれぞれの地域の特色をわかりやすく表示しています。地域の紹介動画や先輩移住者の体験談もたくさん掲載されています。京都府移住情報サイト「This is Kyoto,too」
京都移住計画
2011年から活動を開始している京都で暮らしたい人の想いを形にする任意団体。ウェブサイトで「居・職・住」に関する情報を伝えています。京都に移住した人がどんなふうに働いたり、楽しんだりしているのか数多くのインタビューで知ることができます。ネットワークが広がりそうな雰囲気が魅力。
京都移住計画
仕事を探そう!就職支援機関も要チェック
移住するにあたって、多くの人がまず探さなくてはならないのが仕事。移住者が仕事を見つけるためのサポートはいろいろあります。京都府UIJターンナビ
京都の企業やセミナー情報は、「京都府UIJターンナビ」で見ることができます。会員登録をすれば、新着求人情報の定期配信や登録企業によるリクエスト求人の提供、そして各種就職イべントへの参加予約をすることができます。京都府UIJターンナビ
京都ジョブパーク
京都ジョブパークは、京都府が設置している総合就業支援拠点です。ハローワークと緊密に連携し、相談から就職、職場への定着まで、ワンストップで支援してくれます。相談に訪れると、キャリアカウンセラーのマンツーマンでのサポートが受けられます。また、就職に役立つセミナーや企業の説明会が開催されることもあります。京都府「ジョブパーク」
農林水産業ジョブカフェ
農業を仕事にしたいと考えているなら、農林水産業ジョブカフェへ。京都ジョブパーク内にあり、就農についての幅広い相談をすることができます。ウェブカウンセリングも行っているので、遠方からの相談も可能。農林水産業ジョブカフェ
地域おこし協力隊に参加
「地域おこし協力隊」とは、都市住民が高齢化や人口減少が著しい地域に移住して、一定期間以上、農業や漁業、地域振興、地域住民の方の生活サポートなど、地域協力活動に従事しながらその地域への定住を図る国の制度です。京都府移住情報サイト「This is Kyoto,too」には、地域おこし協力隊の募集情報も掲載されています。移住・交流推進機構「地域おこし協力隊」
住まいを探そう!移住後の後悔を避けるためお試し住宅を使う
住まい探しにも、京都府移住情報サイト「This is Kyoto,too」が役に立ちます。「市町村窓口・空家情報」というページに、市町村ごとの空き家バンクやお試し住宅の情報が掲載されています。お試し住宅は、本格的な移住前に短期間暮らすことができるので、移住の失敗や後悔を回避するのに有効です。This is Kyoto,too「市町村相談窓口・空家情報」
京都市内の物件については、ウェブサイト「京都移住計画」を見るとよいでしょう。
京都移住計画「京都に住む」
移住のための補助金をチェック
京都府では、東京23区に在住または近隣の地域に居住し23区内に通勤している人で、京都府の対象地域への移住・就業する人を対象に移住支援金を支給します。支給金額は、2人以上の世帯の場合は100万円以内、単身の場合は60万円以内の額とされています。支給には条件があるので、よく確認しておきましょう。京都府ウェブサイト
京都で叶えられる本当の田舎暮らし
歴史的遺産が豊富にあり、世界に名だたる観光地、京都。あまりにも有名で、おなじみの観光地がクローズアップされることが多いため、京都に美しい海岸線や山深い土地があること、また、そこでの暮らしは意外と知られていないかもしれません。夫の提案を受け入れて南丹市美山町に移住した林さんは、柔軟に地域社会に溶け込んだように見えます。しかしその陰には、地域に関わる努力や周囲の人の役に立ちたいという気持ちがありました。移住して本当によかったと言い、後輩移住者へのアドバイスを語る林さんはすでに「美山町の人」でした。
田舎暮らしをしたいと考えているなら、京都でその夢を叶えてみてはいかがですか?