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米農家の貯蔵方法|お米の品質や食味を維持する米貯蔵庫と施設


米作りに興味のある方にお米の品質を維持する貯蔵方法について詳しく解説!稲刈りや籾すりが終わったお米をJAで低温管理する米貯蔵庫や米貯蔵施設について、米農家に勤務する筆者が一般的な農家さんで行う貯蔵方法について紹介します。

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yonewan

山形県在住です。知人の米農家で働きはじめて6年目。つや姫、雪若丸、コシヒカリ、はえぬきを栽培しています。農業の傍らライターとしても活動しています。農作業の様子はTwitterで発信中!…続きを読む

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米俵

出典:写真AC
稲刈りや籾すりが終わったお米は袋詰めして貯蔵しますが、じつは保管状態の良し悪しで食味が大きく変わります。誤った保管方法では、せっかく品質の良いお米でも劣化して味が落ちてしまいます。多くの日本人にとってお米は毎日食べるもの。できるだけ良い状態を保っておいしく頂きたいものですね。

そこで、お米の最適な貯蔵方法について、米農家に勤務する筆者が詳しく解説します。米作りに興味のある方は栽培方法だけでなく、品質を維持する貯蔵方法についても詳しくなってみませんか。

▼家庭での上手なお米の保存方法についてはこちらをご覧ください。

    米の貯蔵方法

    米蔵
    出典:写真AC
    一般的に収穫されたお米はJAなどの倉庫で低温貯蔵されますが、条件によっては常温貯蔵することも可能です。

    ▼お米の収穫・乾燥についてはこちらをご覧ください。

    低温貯蔵

    日本の気候は、冬が気温・湿度ともに低く、春以降から気温が上昇して、梅雨時期は湿度も高くなります。このように温度や湿度の変化によって、お米が劣化するのを防ぐために玄米を15℃以下で低温貯蔵します。
    温度を保つためにコストは掛かりますが、お米の品質を落とさないためには最適な貯蔵方法です。

    低温貯蔵3つの目的

    1. 古米化を防ぐ
    温度や湿度を下げることでお米の風味が保てます。
    2. カビや虫の発生を抑える
    春以降の気温の上昇や、湿度の高い梅雨時期など、カビや虫の発生要因となりやすい環境を低温管理することで防ぎます。
    3. 品質の低下を防ぐ
    お米は貯蔵中の呼吸によってデンプンやタンパク質、脂質などが分解されます。温度や湿度を下げることで、呼吸量を減少させて品質低下を抑えます。


    常温貯蔵

    玄米の水分を15.0%以下に保てる場合は常温貯蔵が可能です。

    常温貯蔵4つのポイント

    1. 換気と通風
    建物内に熱や湿気がこもらないよう換気扇を設置しましょう。
    2. 直置きしない
    お米の袋(紙・フレコンバッグ)を直接床においてしまうとカビが発生しやすくなります。パレットやスノコなどを使って、その上にお米を載せて通気性を確保します。
    3. 定期的な清掃
    カビの発生源となるホコリを溜めないようにします。
    4. 水濡れや袋の破損をチェック
    雨漏りで水濡れしていないか確認します。袋の破損はネズミの被害に遭う可能性があるため十分注意しましょう。

    以上を注意することで常温貯蔵は可能ですが、やはり気温や湿度が高くなる春以降は低温貯蔵の方が安心です。

    参考:農林水産省「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/pdf/120229_guide_linehp.pdf)(2020年5月27日に利用)

    農家のお米貯蔵方法

    玄米
    出典:写真AC
    JAなどと同様に、生産者が消費者に直接お米を販売する際も、保冷庫を使った低温貯蔵、または作業小屋で常温貯蔵します。保冷庫の種類によって貯蔵できる数は違いますが、30kgに袋詰めした玄米が108袋入る大型タイプもあります。
    生産者が常温保存する環境は、上記の4つのポイントに加えてさらに以下の点にも注意しましょう。

    作業小屋での常温貯蔵5つの注意点

    1. 風通しが良い
    2. 温度変化が少ない
    3. 直射日光を避ける
    4. 湿度が低い
    5. ほかの匂いが移らない

    やはり気温が上昇する時期以降は、大型の保冷庫を使って貯蔵したほうが良いでしょう。

    玄米保冷庫 LHR-21

    30kgの米袋が21袋入る保冷庫です。見やすい大型パネルが採用されています。

    ・サイズ:外形寸法/幅1500×奥行800×高さ1878〜1918mm
    ・サイズ:内形寸法/幅1398×奥行650×高さ1428mm
    ・製品質量:127kg
    ・庫内温度範囲:7〜15℃(調整可能/玄米専用)
    ・標準装備:スノコ3枚

    筆者の勤務先での貯蔵方法

    気温が低くなる秋から冬にかけては、作業小屋での常温貯蔵と保冷庫での低温貯蔵を併用しています。常温貯蔵の際はお米の袋(30kg)をパレットに積んで、直接日光が当たらないようにブルーシートを掛けるなどの対応をしています。また、作業小屋にはネズミが入る可能性もあるので、毒餌を仕掛けてネズミ対策もしています。
    春になると気温が上がるので、在庫として残っているすべてのお米を保冷庫に移動させて低温貯蔵に切り替えます。

    ▼ネズミの駆除のことならこちらをご覧ください。



      そのほかの貯蔵方法

      里山の冬
      出典:PAKUTASO
      貯蔵方法の種類は倉庫での低温貯蔵や作業小屋での常温貯蔵だけではありません。雪を利用したり、大型施設を使用したりするなどの方法もあります。

      雪室

      雪の降る地域では倉庫内に雪を敷き詰めて作った雪室で低温貯蔵します。ほかのお米とは異なる貯蔵方法なので「雪室米」とブランド化して販売しています。
      豪雪地帯に住む多くの人にとって雪は厄介な存在ですが、雪室という方法で活用すれば雪に新たな価値が生まれます。

      雪室の効果

      1. 1. 食味の向上
        温度5℃、湿度75%の環境を保つ雪室では、デンプンが糖化されるので食味が良くなります。
        2. コスト削減
        電気を使わないのでコストが抑えられ、環境にもやさしい貯蔵方法です。
        3. 品質維持
        雪のおかげで保たれた適度な湿度によって、新米と同じような味と香りが維持できます。
      参考:農林水産省「利雪貯蔵によるブランド米『雪室米』」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/santi/s_zirei_h1605/naiyo_a/pdf/p012a.pdf)(2020年5月27日に利用)

      カントリーエレベーター

      お米の乾燥調整や貯蔵、出荷までの一連の作業を一箇所でできる施設を「カントリーエレベーター」といいます。ちなみに、似たような施設に「ライスセンター」がありますが、カントリーエレベーターと違い貯蔵はできません。

      一連の流れ

      1. 乾燥
      各農家さんから稲刈りで収穫した籾が運ばれ、乾燥機で乾燥作業を行います。
      2. 貯蔵
      乾燥作業の終わった籾は、温度や湿度を一定に保てる「サイロ」と呼ばれる低温貯蔵庫に運ばれます。
      3. 出荷
      注文がきた時点で籾すり作業が行われて出荷されます。

      カントリーエレベーターの魅力

      1. 1. 鮮度・品質維持
        籾の状態で貯蔵、出荷の段階で籾すりが行われるため、お米の鮮度を非常に高く保てます。
        2. 労働力の削減
        籾を搬入すればあとの作業はすべてJAに任せられるので、生産者側の労働力の削減につながります。
      現在、農業従事者の高齢化や人手不足は課題となっているため、カントリーエレベーターは米栽培を支えてくれる存在ともいえるでしょう。

      参考:農林水産省「消費者の部屋『カントリーエレベーターについて知りたい。』」(https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0205/06.html)(2020年5月27日に利用)

      貯蔵方法に注意しておいしいお米を届けよう

      白米
      出典:PAKUTASO
      米作りと聞くと田んぼでの作業ばかりイメージするかもしれませんが、お米の品質を保つ貯蔵方法にも目を向ける必要があります。なぜならば、せっかくおいしいお米を収穫できたとしても、その後の管理方法次第では日に日に味が落ちてしまうからです。生産者が貯蔵方法に気を配ることで、消費者は新米に近い状態のお米を収穫直後以降も食べ続けられます。
      春は苗の準備など米作りがスタートしますが、作業小屋で常温貯蔵しているお米があれば、忘れずに低温貯蔵に切り替えてお米の品質を保ちましょう。

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