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今回は「SMART AGRI」との連携企画第6弾として、「AIを活用した未来の農業像」について教えていただきました!
SMART AGRI(スマートアグリ):農業とITの未来メディア
確かに、機械を使うことで、労力を減らすことができ、時間短縮にもなる。大規模農家ともなればなおさらだ。しかし、機械を購入するためには費用がかかってしまう。
そんな今、強く求められているのは、農作物の収穫時期の判断、病害虫の診断、品質の向上といった、従来経験やカンを持ったベテランでなければできなかった部分。それを誰でも活用できるようにするために研究が進められているのが、人工知能、いわゆる「AI」だ。
今回は、こうしたAI技術にフォーカスして、AIを活用した未来の農業を予想してみよう。
キュウリのサイズ仕分けを行うAI
AIというとごく限られた研究者しか開発できないイメージがあるが、実はGoogleが無料で利用できる汎用的なAIの頭脳(エンジンと呼ばれる)「Tensor Flow」を公開している。いわゆる「ディープラーニング」というもので、人間が行う正誤判定をAIに覚えさせることで、判別の正解率を高める、という仕組みだ。これをいち早く活用したのが、静岡県でキュウリ農家を営む小池誠さん。それまでは母親しかできなかった選別が、AIにより誰もが利用できるようになるという。しかもそれが、大企業の研究開発チームではなく、元エンジニアの小池さんが自作したというのだから驚きだ。
この方法自体は、なにもキュウリに限ったことではない。トマトやピーマン、さらにリンゴやモモなどの果樹に関しても、比較してより良いものを選別できる仕組みさえあれば活用できる。
将来的には、農協などにあるような大規模な選別機ではなく、小さなカメラとパソコンさえあれば、どんな農家でも自動的に選別できるようになっていくだろう。
「SMART AGRI」の記事はこちらから
農家がグーグルのAIエンジン「Tensor Flow」でキュウリの自動選果を実現
果物に触れずに“おいしさ”を判別するAI
果物の甘さなどを判別するには、当然のことながら、果実を実際に食べたり、計測器で測って糖度などを導き出したりする必要がある。しかし、計測のために果汁を搾ったり切り取ったりしてしまった果物は、当然売り物にならない。似た傾向が知りたければ、同じ農家、同じ品種のものを比べるしかない。その点、マクタアメニティが開発した「おいしさの見える化」というアプリなら、撮影した果物の種類ごとの画像を解析し、味覚の数値化ができる。画像解析とRGBヒストグラムといった方法を使って、「おいしさ」を数値化しているのだ。
これがさらに発展すれば、収穫前の野菜を撮影したウェブカメラの映像をAIが判別し、収穫に最適な最もおいしいタイミングを教える、といった使い方も可能になるだろう。
ほかにも、スーパーなどの小売店側であれば、売り場を撮影して鮮度が落ちた野菜を取り除く判断をしたり、消費者自身がおいしい野菜を選ぶために参考にしたりすることもできそうだ。
参考:マクタアメニティ株式会社
作物の生育状況や病害虫をチェックするAI
AIの強みは、人間でなければできなかったことの代替はもちろん、そもそも人間にはできないような分析作業が可能となるといった点にもある。その最たるものが、人間の目ではとらえられない光の情報や、細かすぎて見つけられないような微細な情報だ。ドローンを飛ばして圃場の農作物の状態を撮影し、その画像の中からわずかな病害虫の兆候を探し出すような作業は、まさにAIならではの作業といえる。
オプティムが取り組む「ピンポイント農薬散布テクノロジー」はこの代表格だ。まず、ドローンを飛ばして圃場全体を撮影。そのデータを1枚の巨大なデータにつなぎ合わせて、AIが病害虫の兆候を検知する。検知したポイントはGPSデータなどと連携しており、必要なところにだけドローンが自動的に飛行して農薬をまく、というものだ。
この病害虫検知の仕組みは、実際の虫がいる場所や虫食いの場所、病気が発生した場所をチェックするだけではない。過去の膨大なデータから、AIが、病害虫が発生しそうな兆候がある場所を見つけ出している。実際、このAIによる判別で2018年は「農薬散布の必要なし」という結論が出され、まったくまかなかったケースもあった。
将来的には、ドローンの飛行&撮影を自動で行ったり、より多くの農作物に対応したりするようになるだろう。
参考:株式会社オプティム
人間には困難な作業をAIが行う時代の到来
農業におけるAIには、膨大な知識や技術を記録して活用するもの、人間の目には見えないさまざまな情報を活用するものなど、そのアプローチの方法もいろいろだ。今回の例でいえば、人間には到底できないような面倒な作業、時間がかかる作業、人間の限界を超えた世界を見る作業といったまったく異なった作業が行われているということ。
ただし、現時点ではまだまだ人間の作業が必要な面もある。本当の意味で農業AIが普及するのは、もう少し先のことになりそうだ。