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加工食品と添加物については、経過措置期間として2020年3月まで旧基準の表示が認められていますが、2020年4月からは新基準の食品表示としなければなりません。加工食品の製造・販売を手掛けている農家の皆さん、対応は済んでいますか?新しい食品表示法のポイントについて、おさらいしておきましょう。
なぜ食品表示法が制定されたのか?
食品の表示は、これまで食品衛生法、JAS法、健康増進法と3法に定められていて、非常に複雑になっていました。そこで消費者、事業者双方にとってわかりやすい表示を目指して、3法の食品表示に関する規定を一元化し、「食品表示法」に統合することにしたものです。食品表示法に違反するとどうなる?
食品表示法に違反した場合には罰則があり、第6章に規定されています。例えば、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をした者、虚偽の原産地表示をした食品の販売した者は、2年以下の懲役もしくは200万円(法人は1億円)以下の罰金に処されます。食品表示変更の主なポイント
それでは、食品表示法が制定されて、食品表示の方法がどのように変わったのか見ていきましょう。新たな制度|機能性表示制度
野菜や果物などの生鮮食品や加工食品、サプリメントなどに、健康の維持・増進効果等を具体的に表示できるようになります(機能性表示)。機能性表示をするためには、商品に表示する内容や食品関連事業者に関する基本情報(事業者名等)、安全性・機能性の根拠に関する情報などを、販売日の60日前までに消費者庁長官に届け出る必要があります。
消費者にとっては、機能性がわかりやすく表示されることによって、正しい情報をもとに商品を選択できるようになります。
詳しくは消費者庁ウェブサイト「機能性表示食品に関する情報」
変更点1. 原材料名の表示方法
原材料なのか、添加物なのかが明確にわかるように、項目名を分けて表示
例えば、旧基準に「原材料名/小麦粉、砂糖、食塩、膨張剤、香料」と表示していた食品については、原材料と添加物の区別がつきにくい状態でした。新基準においては、原材料と添加物を明確に区分して、下記のように表示します。■新基準の表示の一例
原材料名 | 小麦粉、砂糖、食塩 |
添加物 | 膨張剤、香料 |
パン類、食用植物油脂、ドレッシング及びドレッシングタイプ調味料、風味調味料の表示方法を変更
これまで、旧JAS法において、個別の品質表示基準が設けられていたパン類等の表示については、他の加工食品と同様に、原材料と添加物を区分し、それぞれに占める重量の割合の高いものから順に表示することになります。複合原材料について、原材料を分割して表示した方がわかりやすい場合には分割して表示することが可能に
例えば、砂糖と卵黄を混合した複合原材料「加糖卵黄」を仕入れ、製造したパウンドケーキの場合、加糖卵黄と表示せず、卵黄と砂糖を分割して表示することが可能になります。分割して表示するかどうかについては、下記の条件から総合的に判断します。
1. 中間加工原材料を使用した場合であって、消費者がその内容を理解できない複合原材料の名称の場合
2. 中間加工原材料を使用した場合であって、複数の原材料を単に混合(合成したものは除く)しただけなど、消費者に対して中間加工原材料に関する情報を提供するメリットが少ないと考えられる場合
■複合原材料表示による方法
原材料名 | 加糖卵黄(卵黄(卵を含む)、砂糖)、小麦粉、バター、レーズン、膨張剤 |
原材料名 | 小麦粉、バター、卵黄(卵を含む)、砂糖、レーズン、膨張剤 |
変更点2. アレルギー表示の方法
食品に含まれる特定原材料をすべて表示
アレルギーの原因となる物質をアレルゲンといいます。「特定原材料」とは、アレルゲン表示対象品目のうち、特に症状が重篤な、または症例数が多い品目のことで現在、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生の7品目が定められています。マヨネーズやうどんなど、特定原材料を含むと容易に判断できると考えられてきたものについても、今後は「マヨネーズ(卵を含む)」「焼きうどん(小麦を含む)」などと表示する必要があります。個別表示が原則
アレルゲンの表示方法は原則として、個々の原材料の直後に括弧書きする個別表示が原則です。ただし、表示面積に限りがある場合には、例外的に原材料の直後にまとめてかっこ書きする方法(一括表示)をしてもよいことになっています。なお、個別表示と一括表示を併用することはできません。■個別表示の例
「A、B(卵・豚肉を含む)、C(大豆を含む)」
一括表示をする場合には、全ての特定原材料を原材料欄の最後(原材料と添加物を事項欄を設けて区分している場合は、それぞれの事項内の最後)に表示します。
■一括表示の例
「A、B、C(一部に卵・豚肉・大豆を含む)」
変更点3. 栄養成分表示の義務化・ナトリウムの表示方法
原則として、全ての消費者向けの加工食品および添加物への栄養成分表示が義務付けられます。必ず表示をしなくてはならない栄養成分は、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムです。このうちナトリウムの量は食塩相当量で表示します。消費税法第9条第1項において消費税を納める義務が免除されている事業者は、栄養成分表示の省略が認められます。また、当分の間、小規模事業者(概ね従業員が20人以下。商業、サービス業は5人以下)についても、栄養成分表示の省略が認められます。
変更点4. 栄養強調表示の方法
「塩分○%カット」のような低減された表示および「食物繊維○%アップ」などの強化された旨の表示には、他の同種の食品に比べて、基準値以上の絶対差に加え、新たに25%以上の相対差が必要となります(基準値については食品表示基準別表第12を参照)。ただし、ナトリウムを25%以上低減することにより保存性や品質を保つことが著しく困難な食品として、みそとしょうゆには特例があります。みそは15%以上、しょうゆは20%の相対差が認められています。また、糖類無添加、ナトリウム塩無添加に関する強調表示は、それぞれ一定の要件(食品表示基準第7条参照)を満たす必要があります。
変更点5. 栄養機能食品のルールの変更
栄養成分の機能が表示できるものとして、新たにn-3系脂肪酸、ビタミンKおよびカリウムが追加されます。また、鶏卵以外の生鮮食品についても栄養機能食品の基準の適用対象となります。また、表示事項が新たに追加、変更されました。新たに必要・変更となった表示事項
・栄養素等表示基準値の対象年齢(18歳以上)および基準熱量(2,200kcal)に関する文言を表示※表示例「栄養素等表示基準値(18歳以上、基準熱量2,200kcal)」
・特定の対象者(疾病に罹患している者、妊産婦等)に対し、定型文以外の注意を必要とするものは、当該注意事項を表示
※表示例「グレープフルーツ(ジュース)は、カルシウム拮抗薬の効果を増強する可能性がある」
・栄養成分の量および熱量を表示する際の食品単位は、1日当たりの摂取目安量とする
・生鮮食品に栄養成分の機能を表示する場合、保存の方法を表示
変更点6. 加工食品と生鮮食品の区分の統一
出典:写真AC
簡単な加工(生干し、湯通し、軽度の撒塩など)をしたもの、例えばドライマンゴーなどについては、「加工食品」として区分されることになりました。考え方としては、マンゴーは生のままでも流通可能ですが、ドライにしていることが加工とみなされるということです。これにより、新たにアレルゲンや製造所の所在地等の表示義務を表示することが必要になりました。
加工とは、調味や加熱等したものが該当し、具体的な品目は、食品表示基準別表第1に定められています。
注意したいのは、サラダミックスや炒め物ミックスなど、複数の野菜を切断したうえで混ぜ合わせたもの。複数の野菜を混ぜ合わせたものは、それ自体が調理されているとみなされ、加工食品となります。一方、大豆のように、流通のために乾燥だけしたものは生鮮食品となります。
変更点7. 製造所固有記号の使用方法
製造所の所在地・製造者を表示
原則として、製造所(または加工場)の所在地、製造者(または加工者)の氏名もしくは名称を表示します。ただし、原則として同一製品を2以上の製造所で製造する商品にのみ、例外的に製造所固有記号を使用できますが、その場合は次のいずれかの事項を商品に表示する必要があります。
・製造所所在地等の情報提供を求められたときに回答する者の連絡先
・製造所所在地等を表示したウェブサイトのアドレス等
・当該商品の製造を行っている全ての製造所所在地
製造と加工は、製造は「その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出すこと」、加工は「あるものを材料としてその本質は保持させつつ、新たな属性を付加すること」と定義されています。消費者庁のQ&Aでは、加工行為について列挙されていて、それ以外の行為をするものを製造者に該当するとしていますので、確認しておくとよいでしょう。
業務用食品は製造所固有番号を使用
業務用食品については、製造所固有番号を使用でき、上記の表示義務も課されません。屋号でも大丈夫?
製造者、あるいは製造した法人名とは別に、屋号を持っている場合はどうでしょう。屋号が登記された正式な法人名ではない場合、屋号だけでは表示として不十分となります。個人で製造している場合には「屋号(代表者○○○○)」、法人の場合には「株式会社○○○○(屋号)」のように表記する必要があります。変更点8. 表示可能面積が小さい食品の表示方法
表示可能面積が30平方センチメートル以下の場合、これまで省略可能だった保存方法、消費期限または賞味期限、アレルゲン、L-フェニルアラニン化合物を含む旨については、新基準では省略することができなくなります。そのため、表示可能面積が30平方センチメートル以下の場合であっても、以下の項目は必ず記載することになります。
・名称
・保存方法
・消費期限または賞味期限
・アレルゲン
・L-フェニルアラニン化合物を含む旨
・食品関連事業者の氏名または名称および住所
変更点9. 販売される添加物の表示方法
一般用と業務用の添加物の販売については、それぞれ新たに表示の義務が生じます。一般用(消費者向け)添加物 | ・内容量 ・食品関連事業者の氏名または名称及び住所 |
業務用添加物 | 食品関連事業者の氏名または名称及び住所 |
変更点10. 通知等に規定されている表示ルールの一部を表示基準に規定
通知等に規定されている以下の表示ルールが、新たに食品表示基準に規定されました。・安全性確保の観点から表示義務を課すべきもの(フグ食中毒対策の表示、ボツリヌス食中毒対策の表示)
・わかりやすさの観点から食品表示基準と通知等にまたがっているもの(栄養素等表示基準値、栄養機能食品である旨および当該栄養成分の名称の表示方法等)
参考:東京都「食品表示法ができました!」
猶予期間は2020年3月まで
旧基準の表示方法が認められる経過措置期間が定められています。生鮮食品については、既に経過措置期間が過ぎており、新基準に基づく表示が必要になっています。加工食品と添加物については、2020年3月31日までが経過措置期間となっているため、2020年4月1日からは、新基準の表示にしなくてはなりません。また、経過期間中も、旧基準と新基準の表示方法が混在するような表示は認められないため、注意が必要です。わからないことがあったら|都道府県別問い合わせ先一覧
食品表示法は消費者庁のウェブサイトに掲載されています。また、東京都のウェブサイト「食品衛生の窓」も情報がわかりやすく掲載されています。都道府県別問い合わせ先一覧
食品表示についてわからないことがある場合には、自治体の食品表示法の担当課や保健所等に問い合わせてみましょう。食品表示専門の相談ダイヤルもあります。消費者庁ウェブサイトでQ&Aをチェック!
具体的な表示については、食品表示基準が重要になります。食品表示基準の解釈に迷ったときなどに役に立つのが、消費者庁ウェブサイトに掲載されている「食品表示基準Q&A」。保存方法や賞味期限の記載方法など、具体的な質問と答えが書かれているので参考になります。消費者庁ウェブサイト「食品表示法等(法令及び一元化情報)」