目次
養鶏とは
鶏卵や鶏肉などを生産するために、ニワトリを飼育する仕事です。卵を採るために採卵鶏を飼う養鶏と、肉を生産するために食用鶏を飼う養鶏があります。養鶏の飼養戸数や飼養羽数は?
畜産統計調査によると、2018年の全国の採卵鶏の飼養戸数は2,200戸で、前年に比べ廃業等により150戸(6.4%)減少しています。また1戸あたりの成鶏めす(6カ月以上)の飼養羽数は、6万3,200羽です。一方、ブロイラー(短い期間で出荷できるように改良された肉用若鶏)の飼養戸数は2,260戸で前年に比べ50戸減少しています。1戸あたりの飼養羽数は6万1,400羽となっています。いずれも大規模化の傾向がみられます。地域別では、採卵鶏は関東・九州・東海地方が盛んですが、全国的に分布があります。一方、ブロイラーについては、九州が全国の約5割を占めており、地域差があります。
鶏卵と鶏肉の生産量
2018年の鶏卵の消費量は274万tで安定的に推移しており、生産量は263万tで最近は増加傾向にあります。日本の鶏卵の自給率は96%です。一方、鶏肉は消費量は251万t、生産量は160万tでいずれも増加傾向で推移しており、最近は毎年過去最高を更新している状況です。自給率は64%です。養鶏の仕事の所得をチェック!
採卵養鶏経営の所得
2017年の採卵養鶏経営(全国平均)の1経営体当たり農業粗収益は5,550万円で、農業経営費は4,531万円でした。この結果、農業所得は1,019万円となり前年に比べ 14.0%増加しました。鶏卵の価格は、2019年7月現在10kgあたり1,635円です。価格は年末の需要期にかけて上昇する傾向にあります。ブロイラー養鶏経営の所得
2017年のブロイラー養鶏経営(全国平均)の1経営体当たり農業粗収益は1億1,598万円で、農業経営費は1億524万円でした。この結果、農業所得は1,074万円となり前年に比べ29.5%減少しました。ブロイラーの価格は2019年7月現在、生体10kgあたり1,762円です。参考:営農類型別経営統計
養鶏場の仕事の内容
採卵養鶏経営の仕事
朝一番で鶏の健康状態の確認をします。エサや飲み水を与える作業をしながら、鶏の様子や食欲、フンの状態を注意深く観察します。よく産む鶏ほど早い時間に集中して卵を産む傾向があるので、卵同士がぶつかったり、鶏が卵を傷つけないよう、すばやく卵を集めます。機械化が進んだ施設では、鶏はケージに入れられ、自動的にエサや水が与えられるので、各機械の点検を常にしておく必要があります。一方、平飼い経営といわれる、屋外や鶏舎内の地面の上で鶏を育てる方法もあります。平飼いの方が鶏が自由に動き回ることができるため、アニマルウェルフェアの観点からは望ましいと言えますが、衛生管理や飼養管理に手間がかかるため、コストが高くなりがちです。
集卵した後、洗卵、選別を行います。産卵を開始したばかりの鶏が産むことが多い黄身が2つある二黄卵や、殻が十分にできていない軟卵、また、採卵期間の後期にあたる鶏が産むことが多い殻の表面がざらざらしたりひび割れた卵などは出荷前に取り除きます。
ブロイラー養鶏経営の仕事
ブロイラーは成長速度が速く、飼料効率にも優れ、通常ふ化してから50~56日で出荷されます。ヒナがまだ小さいときには、ヒナの状態をよく観察するとともに、室内を適温に保ちます。寒いとヒナが部屋の隅にギュッと集まりすぎて圧死したりすることがあり、逆に暑くてもヒナが蒸れてしまう場合があります。鶏舎の多くが平飼いで多羽数を高密度に飼育しています。衛生管理のためにも、ワクチン接種と清掃をきちんと行うことが重要です。ブロイラー用のエサには、抗菌剤や抗生物質が添加されているため、出荷前1週間はブロイラー用のエサをやめて、薬を含まない休薬飼料を与えることが法律で義務付けられています。出荷後は次のヒナを導入するため、鶏舎を掃除し、水洗や消毒を徹底的に行います。
地鶏養鶏経営の仕事
地鶏とは日本の在来種の血を半分以上継いでいる鶏と定義されています。代表的なものに、赤身の割合が多く卵までブランド化されている名古屋コーチンや、秋田県で飼育されていて味が濃いことで有名な比内地鶏などが挙げられます。ほかにも地鶏には多様な品種があり、ブロイラーよりもじっくりと飼育され、一般的にふ化してから110日~150日で出荷されます。飼養方法はブロイラーと同じ平飼いがほとんどですが、まれに放牧地を設け、日中放し飼いにしている生産者もいます。地鶏の飼育はコストが高い分、出荷価格も高くなります。専門店やレストランなどの販売先を確保することが重要になります。
養鶏の仕事はどんな人が向いている?
ひよこや鶏を育てる仕事であるため、動物と接することが好きな人には向いている仕事といえるでしょう。養鶏については、大規模化と機械化が進んできており、農業法人に就職することでも企業型の養鶏の仕事に就くことができます。また、野菜の生産や他の畜産業に比べて、極端に体力が必要というわけではありません。また、機械化が進んでいるという点では、データ管理などの数字や機械の扱いに苦手意識を持たない人の方が好ましいといえます。養鶏で循環型農業を目指すケースも
米や野菜などの農産物を収穫した後の収穫くずが家畜のえさとなり、その家畜のふんから堆肥を作って農産物を育てることを循環型農業といいます。循環型農業を目指して、養鶏をするケースもあるでしょう。鶏のふんが農作物を作る堆肥となり、堆肥から育った野菜が鶏のえさとなる、自然の営みに近い形で有機物が循環します。鶏糞(けいふん)の堆肥化には、しっかりとした知識が必要になります。福島県で循環型農業を営む大野村農園
自分の子どもに卵を食べさせたい!と養鶏を始めた菊地さん。平飼い・自然卵「相馬ミルキーエッグ」は1パック800円以上と高価ですが、その育て方や菊地さんの考えを知る根強いファンがついています。養鶏場の仕事はきつい?
養鶏の仕事で気になるのは臭いですが、鶏がフンをしたり死んだりすることは当然のことなので、現実として認識しておく必要があります。しかし、機械化が進み作業環境が向上している面もあるので、実際に就職する前に、現場を見学するなどして自分が携わるイメージを持てるか確認しましょう。また、養鶏の仕事は衛生管理がとても大切です。2004年に国内で高病原性鳥インフルエンザが発生しました。それ以降、1羽の鶏に鳥インフルエンザが発症しただけで、鶏舎にいる多数の鶏を処分しなくてはならなくなりました。水際で発生を食い止めるために、出入りする車輌、作業服、帽子、靴などの消毒など、さまざまな防疫対策が実施されています。