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- YasuhiroOgawa
植物園に勤務していた経験を活かして、正確でわかりやすい記事を書いていきたいです。好きな花はハイビスカス。現在は、トロピカルフルーツの新しい栽培に取り組んでます!…続きを読む
今話題の青パパイヤの栽培方法を、通常の育て方やさまざまな関連情報と合わせて紹介します。
パパイヤの概要
トロピカルフルーツとしてよく知られるパパイヤは、熱帯では重要な果樹です。生長が早く、一定の大きさ以上に育てば年中収穫できます。通常は分枝せずに幹の先端部に葉と実を付けるので、初心者はヤシ類と見間違う株姿です。幹は比較的柔らかく先端部に重心がかかるので、台風などの強風が当たると簡単に折れてしまいます。先端部が欠けると分枝しますが、そのまま伸びるとさらにバランスが悪くなって折れやすくなります。
雌雄異株の系統と一本で実がなる両性株の系統がありますが、近年は矮性で両性株の品種の栽培が一般的です。従来は人の背丈くらい以上に生育すると結実するのが一般的で、家庭で結実させるのはスペース上の都合で難しいです。一方、矮性種なら1mくらいの高さから実がなるので、家庭でも結実させることは十分可能です。
寒さには弱く、関東では戸外での越冬はほぼ無理でしょう。ただし鉢植えにして冬は室内で管理すれば、比較的容易に越冬します。
基本情報
学名:Carica papaya科名:パパイヤ科
属名:パパイヤ(カリカ)属
原産:熱帯アメリカ
形態:低木
生育適温:25℃〜30℃
越冬温度:5℃
パパイヤの栄養
パパイヤは肉を柔らかくしたり、消化を助けたりするパパインというタンバク質分解酵素を含むことで知られています。さらに「メディカルフルーツ」ともいわれるほど、すばらしい健康食品として注目されています。レモンと同等のビタミンCや各種ミネラル、食物繊維を豊富に含みます。またがん予防や解毒作用強化、殺菌、血栓予防などに効果があるといわれるイソチオシアネートも、多く含んでいます。最も栄養価の高いフルーツのひとつである一方、低脂肪でダイエット効果も期待できます。近年はこのような豊富で優れた栄養を摂取できるパパイヤ茶も人気があるようです。
サラダやチャンプルーに!青パパイヤの野菜としての食べ方
沖縄などでは、野菜としてもよく利用されます。タンパク質分解酵素のパパインは、未熟な青パパイヤに特に多く含まれます。千切りやピーラーなどで薄く切ってサラダやチャンプルーなどの炒め物にしたり、ぬか漬けにしたりもできます。皮をむいて種を取り除き、塩水につけてあくを抜くと、初めての人でもおいしく食べることができるでしょう。果実が黄色く熟してくると、特有の臭みが強くなって食べにくくなるので、果実が青いうちに食べるようにしてください。
鉢植えでの栽培
矮性種なら、家庭でも鉢植えで果実の収穫が可能です。水はけのよい土を使い、旺盛に生育している時期は多くの水を与えるようするのが大切なポイントです。置き場所
日当たりのよい場所を好みます。ただし30℃以上の高温下では株が弱ってくるため、風通しのよい涼しい戸外に置いてください。猛暑が続くときは、西日の当たらない場所に置いた方がよいでしょう。冬越し
寒さには弱いので、11月から4月までは室内の日当たりのよい場所で管理してください。また葉を美しく保つには、最低温度を10℃以上保つこと。乾かし気味に管理すれば、落葉しますが0℃近くまで耐えます。水やり
鉢土の表面が乾いたら、水を与えるのが基本です。土壌の過湿には弱く、水分が多過ぎると根が傷んで枯死しやすいです。春に小さな株を入手した場合は特に過湿で失敗しやすく、水が多過ぎると生育も遅くなるので注意してください。一方、夏に生育が旺盛な充実した株は、水分を多く必要とします。あまり乾燥させないよう、晴れた日は毎日水やりします。ただし夏の猛暑で生育が衰えたら、やや乾かし気味に管理してください。弱っているときに多く水やりすると、根腐れして枯れる可能性が高いです。
冬に最低温度が14℃以下になるようでしたら生育が停止していますので、乾かし気味に管理してください。
肥料
窒素とカリの要求量が高いです。生長期の5〜10月は、窒素がやや多めか、3要素が等量の有機肥料などを規定量与えます。ただし夏に暑さなどで生育が停滞している時は、肥料を控えるようにしてください。またポット苗を鉢替えする時に肥料入りの培養土を使った場合は、作業後1カ月くらいは肥料を与えないでよいでしょう。鉢替え
旺盛に生育するので、定期的な鉢替えが欠かせません。鉢替えを怠ると、開花結実はまず見込めませんので十分注意してください。まずポット鉢を購入したら5〜6号鉢に植え替えてください。順調に生育すれば数か月で10号鉢以上に植え替えることができます。また、ポット苗をいきなり10号鉢に植えるのも避けてください。過湿で失敗しやすく、生育も遅くなる場合が多いです。5〜6号鉢に植え替える場合の用土は、通常の培養土などが使えます。10号以上の鉢に植え替える場合は、通常の培養土と鹿沼土、くん炭を5:5:1で配合したような排水のよい用土が適します。
株が大きくなり過ぎたら?
切り戻すことで数年は栽培が可能です。大きくなり過ぎたら、地際から30〜50cmほどの高さでバッサリと切ってください。新しく芽が出てくるまでは水を切り、新芽が出てきたら水やりを徐々に再開します。地植えによる青パパイヤの栽培
関東でも畑や花壇などに春に地植えして、冬前に野菜として青パパイヤを収穫することができます。ただし小さなポット苗からだと、フルーツとして完熟の果実を収穫するのは難しいでしょう。苗の用意
土壌や環境が合えば、3号ポット程度の大きさの株からでも、冬前に青パパイヤの収穫が期待できます。さらに高さが30cmほどに生育した株を植えれば、収穫できる可能性はより高くなります。適した場所
日当たりがよく、風当たりが弱い場所を選ぶことが大切です。また排水のよい土壌を好み、過湿には弱いので注意してください。連作すると土壌センチュウが発生し、生育が著しく阻害されます。「センチュウ」についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
植え付け
暖地では4月下旬ごろから5月が植え付けの適期です。植え付け2〜3カ月前に直径80cm、深さ50cmほどの植え穴を掘り、掘り上げた用土に腐葉土を入れてよく混ぜ、再度埋めて準備をしておきます。排水がよくない場所は、幅1.5mほどの高うねを作り、乾燥時は灌水するとよいでしょう。植え付ける際、株間は2.5mほど空けるようにします。小さな苗は低温や強風に弱いので、植え付け後しばらくは、ホットキャップなどをかぶせて保護してください。植え付け後の管理
脇芽が伸びてきたら、早めに摘み取るようにしてください。最低温度が15℃以上になったら、枝葉が徐々に生長してきます。肥料切れのないよう、追肥は適宜与えるようにしてください。肥料を与えないと開花結実が遅れる原因になります。種からの育て方
購入したフルーツの種からも苗として育てることができます。ただし雄株の可能性や背が高くなるなど、形質が不明で家庭では結実が見込めない可能性が高いです。沖縄のホームセンターや種苗店、通販などで購入できる、矮性品種の種を育てるほうが確実でしょう。5〜8月にバーミキュライトや川砂、種まき用の土などにまきます。播種前に種子を5時間ほどぬるま湯に浸しておき、種が1センチ程度隠れる程度に覆土します。その後は室内などの明るい場所で用土を乾かさないように管理してください。発芽したら用土の表面が乾き始めたら水やりし、株が間延びしないようにしてください。本葉が2枚程度展開したら、3号ポット鉢に鉢上げします。
甘い果実を収穫するには
品種により差がありますが、おおよそでは23℃〜28℃が甘い果実を収穫できる適温です。15度以下に下がると生育が止まり、花も咲かなくなります。また28℃以上では奇形花が多くなり、30℃以上の高温下では生育が鈍ります。果実が肥大する時期が高温期だと甘くなるので、春ごろに開花したものは甘い果実が期待できます。一方初夏ごろに開花して冬前に収穫すると、甘くならない可能性が高いでしょう。
パパイヤの品種
品種によって果実の大きさや形はさまざまで、小型で丸型のものから大型で細長いものなどがあります。自然交雑によって品種ができやすく、果実が甘くないものも多いです。台農2号
1本で実がなる矮性の品種で、主にフルーツ向き。果実は中玉で収穫量が多いです。似た特徴を持つ品種として、ベニテング(フルーツ、野菜兼用)、オキテング25号(野菜用)などがあります。ソロ系
ハワイで作出、生産されており、果実は比較的小ぶりですが甘味が強いです。日本に輸入されるパパイヤのほとんどを占めます。ハワイのパパイヤについては以下のサイトを参考にしてください。栄養や利用法まで詳しく解説されています。
http://www.hawaiipapaya.com/japanese/