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ライター - AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む

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初心者さんにおすすめの果樹といえば、ベリー系!その中でもラズベリーはブルーベリー、ブラックベリーと共に紹介されることが多く、育てやすい果樹の筆頭です。病害虫に強く、暑さ・寒さへの耐性もあります。初めて果樹を育ててみたい人にもおすすめです。ラズベリーの育て方、おすすめの品種をご紹介します。赤だけでなく、黒や黄色のラズベリーもあるんですよ!
ブルーベリーやブラックベリーなどベリーの種類解説はこちらをチェック!
ラズベリーの特徴

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ラズベリーは樹高150cmくらいになる低木性果樹です。収穫時期は夏で、冬には葉を落とします。
基本データ
原産地
ヨーロッパ、北アメリカ
科目・属
バラ科 キイチゴ属
ラズベリーの栄養と効能

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ラズベリーは美容に効くといわれる栄養が豊富です。高い抗酸化作用を持っており、老化抑制効果が期待できます。また、果物の中でも食物繊維が豊富。ラズベリーケトンという脂肪燃焼効果のあるとされる成分も含まれています。
ラズベリーが好む気候
寒さに強く、北海道でも栽培が可能です。雨に当たらないところで育てると、病気が発生しにくくなります。
ブラックベリーとの違い

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ラズベリーと似た果樹に「ブラックベリー」があります。ラズベリーは完熟すると赤くなりますが、ブラックベリーは赤からさらに黒へと熟していきます。どちらも同じような環境を好み、収穫スケジュールもほぼ同じ。また、これらと同じくらい簡単に育てられるブルーベリーも、同時に栽培されることが多いですよ。
栽培カレンダー

イラスト:rie
種まき(育苗):6〜7月または10〜11月
※普通は品種苗を購入します
植え付け:3~4月
収穫:一季なりは6〜7月、二季なりは6〜7月と10〜11月
栽培適温
20℃
ラズベリーの育て方のポイント

画像提供:福田俊
- 地下茎で増え広がるため、植え場所には注意が必要
- 炎天下には弱い植物です。半日陰で栽培しましょう
- 過湿に弱いので、ジメジメしていない排水の良いところで育てます
- ラズベリーは1本で結実するため、受粉樹は必要ありません
ラズベリーの育て方 地植え編|支柱の立て方のコツは?

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ラズベリーは苗から2~3年で果実を収穫できます。また自家結実性なので、1本でたくさん実がなります。お庭で簡単に栽培できるので、初心者にもおすすめの果樹といえます。ここでは、福田先生に地植えの育て方のポイントについて教えてもらいました。
Step1. 苗木選び

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新しくラズベリーの栽培を始める時は、できるだけ良い苗木を選んで植え付けします。園芸店や通販で購入する苗木は、茎が太くてたくさん枝が伸びているものを選ぶと良いでしょう。長い根がしっかり付いていることもポイントですよ。
植え付けする苗木は、元気な枝が伸びているものを選びましょう!
Step2. 土づくり
過湿を嫌うため、土づくりは排水を良くするように注意します。排水改善のための「部分深耕天地返し」の手順は、福田先生のYoutubeでも紹介されているのでチェックしてみてくださいね。
スコップで深く掘った後、表層土を下に埋めて深層土を表面にならす「部分深耕天地返し」や、畝の周りに排水用の溝を掘ることでも排水が改善されます。
土は普通の黒ボク土なら特に何も入れなくてもOKですが、腐葉土を1平方メートルあたり2〜3kg程度、土に混ぜ込んでもよいでしょう。
Step3. 植え付け
植え付け適期は3~4月頃です。水が溜まるようなところは避けて、有機質に富んだ土に植え付けします。
30㎝程度の深さの植穴を掘って、苗木を植え付けます。土づくりの際に腐葉土を入れなかった場合は、植え付け後に腐葉土を与えてもOKです。植え付け後は土が乾いていれば水をやりましょう。同じタイミングで支柱を立てると良いですよ。
必要な栽培スペースと植え付け方
・A:畝幅/70cm
・B:畝の高さ/10cm
・C:株間/100~200cm
※1箇所に1本立ちで、1条植えにします。
Step4. 日当たり

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ラズベリーは日光不足では元気に育ちませんが、炎天下はだめなので、適度に日当たりの良い所で育てます。
冷涼な気候を好み、木漏れ日が差すくらいの半日影でよく育ちます。強い炎天下は嫌うため避けてください。ジメジメと湿気のある場所も向いていません。
Step5. 水やり
水やりは地植えの場合は必要ありません。ただ、苗の植え付け後しっかり根付くまでは、鉢植えと同じように水やりした方が失敗せずに育てられます。また収穫後、乾燥が続く時は水やりします。土が乾いたらたっぷりと与えましょう。
水やりは土が乾かない程度に。地植えの場合は、植え付け後は水やりしますが、根付いたらやらなくてOKです。特に梅雨時は、果実が腐るので水やりはしません。水のやりすぎは根腐れを起こすので、注意してください。
Step6. 肥料
土づくりまたは植え付けのときに腐葉土を元肥として施すほか、油かすと骨粉を適宜与えます。液肥で与えたい場合は、ボカシ液肥やハイポネックスなどをやりましょう。
植え付け時と春に、油かすと骨粉をそれぞれ一握り、地表に振ります。また枝の伸びが悪いときは、適宜追肥してください。新しい枝がぐんぐん伸びるようになります。油かすや骨粉などの有機質肥料は、ラズベリーの果実を甘くしてくれますよ。
Step7. 支柱の立て方

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植え付けと同じタイミングで支柱を立てます。垣根仕立てにすれば、収穫時の作業が楽だといわれています。
一列に植えたラズベリーに、垣根状に支柱と直管を組み立てましょう。地上の高さ1mぐらいに縦に支柱を立てます。そこに横渡しに列の長さの分直管を繋いで、フックバンドで直交部分を固定します。横渡し直管は1本でも良いですが、物足りなければ50cmぐらいにもう一本渡してもよいでしょう。
Step8. 収穫

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果実が全部色づいた時が収穫のタイミングです。へたのような花托(かたく)は残して、果実のところだけ収穫します。
朝採りが一番ですが、夕方に採るのもOK。ラズベリーは収穫後に日持ちしないので、完熟前ではなくしっかり完熟した果実を収穫しましょう。採りたてをそのまま生で食べるのがおすすめですよ。
Step9. 夏越しと冬越し
一般的なラズベリーの特性は、冬に強く夏は冷涼な気候を好みます。夏の強い日差しは避けて、こまめに除草して風通しを良くし、病虫害を予防しながら夏を過ごしましょう。
ラズベリーは強い炎天下を嫌い、半日影の環境が適している植物です。鉢植えにしている場合、夏は炎天下には置かないようにして、乾燥しているようであれば半日陰に移動させましょう。一方、寒さには強い性質なので、冬は特に注意しなくても大丈夫です。
ラズベリーの育て方 鉢植え編|ベランダで気軽に挑戦

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ラズベリーは庭での栽培だけでなく、ベランダなどで鉢やプランターでも育てられます。鉢植えの魅力は、栽培スペースがないとろでコンパクトにまとまってくれること。小さな株でもたくさん収穫したいなら、二季なりのラズベリーもいいかもしれません。苗木の選び方、収穫の仕方は地植えの場合と同じなので、そちらをチェックしてくださいね。
Step1. 土づくり
鉢植えの場合も、排水を良くすることがポイントです。土は一般のプランター用培土か、腐葉土と赤玉土を1:1で混ぜるとよいでしょう。
ホームセンターなどに売られている「ブルーベリーの土」は酸性に調合してあるので、ラズベリーでは使えないので注意してください。ブルーベリーはツツジ科で酸性ですが、ラズベリーはバラ科ですから普通の培養土を使います。
Step2. 植え付け

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ポットから苗を取り出し、根を傷めないように気を付けながら軽く根鉢をほぐして、鉢やプランターに植え付けます。
10号鉢以上のサイズの鉢に1本を植え付けします。プランターなら15cm×60cmのプランターに1本が目安。腐葉土と赤玉土が半々の土やプランター用培土なら、堆肥はなくてもOK。植え付け後は、鉢底から水が出るくらいにたっぷり水をやりましょう。
Step3. 鉢植えの置き場所
風通しが良く、適度に日当りの良いところに置きます。雨の日はベランダや軒下に入れてあげると病気防止になりますが、戻し忘れて日光不足にならないよう注意してください。室内に置くのは日照不足になり弱るので、やめた方が良いでしょう。
木漏れ日が当たるくらいの半日影に、鉢を置きましょう。夏の強い日差しには当てないないようにしてください。乾燥でしおれる原因になります。
置き場所がジメジメしていないことも大事なポイントです。
Step4. 水やり

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土が乾いたらたっぷりと水やりします。収穫時期の夏は乾燥しやすいので、毎日しっかりと与えてください。ただ梅雨時など雨の多い時期は、過湿にならないように気を付けましょう。
鉢栽培では水を切らさないことが大切です。土の表面が乾いたら、鉢底から水が出るぐらいにたっぷりやりましょう。
Step5. 肥料
春頃、油かすと骨粉の入った市販の肥料か、ボカシ液肥やハイポネックスを与えると良いでしょう。自分で作ったペレット肥料を置いてもOKです!
春、油かすと骨粉を混ぜて作ったペレット肥料を地表に数個置きます。ペレット肥料の作り方は、油かすと骨粉(1:1)に水を少しずつ加え、握って団子ができるぐらいにして、完成です。
Step6. 支柱の立て方
ホームセンターなどで販売している行燈(あんどん)支柱を使って、円形に仕立てます。その年に実を付けた枝が冬までに枯れるので、冬の休眠期に支柱を外して仕立て直しをすると良いでしょう。
市販の行燈支柱を土に差し込み、組み立てるだけでOKです。
ラズベリー栽培で注意する病害虫

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実を収穫して食べるラズベリー栽培では、殺虫剤など薬剤は使いたくないもの。ラズベリーは病害虫に強いといわれていますが、どのような病気や虫がつく恐れがあるのでしょうか。ラズベリーのかかりやすい病気や付きやすい虫について、福田先生にお聞きしました。
病気
ラズベリーの病気はほとんどありませんが、ジメジメした環境で育てていると、果実に淡い褐色のしみができる灰色かび病が出ることがあります。適度に日当りの良いところで、風通しを良くして育てることで、病気を予防できます。こまめに株の周りの草を取るなどして、病気が発生しにくい環境にしましょう。なお、病気になった果実はすぐに取り除いてください。
害虫
1年中カイガラムシがつくので、よく幹を見張っておき、見つけたらこさぎ落とします。カイガラムシはどこにでも発生し、茎葉に付着して吸汁します。虫や病気を予防するためには、毎日よく観察して、見つけ次第除去することが大切ですよ。
ラズベリーの剪定方法

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ラズベリーの剪定の目的は、株を若返らせ新しい枝を出やすくするためで、植え付けから2年目の冬くらいから行います。剪定時期は、落葉時から芽吹きまでの間で関東では12~3月。ただし一季なり品種は、6〜7月の果実収穫後に剪定します。剪定は乾燥が続く日にすると良いでしょう。トゲのある品種は素手で触るとけがをする恐れがあるので、手袋で作業してくださいね。
- 垣根仕立ての場合は、横4カ所くらいに番線を張り、根元から伸びてくる枝を倒れないように誘引すると、剪定作業がしやすくなります
- 伸びすぎている枝を間引きます
- その年に実がなった枝、枯れた枝を枝元から切ります
- その年に伸びて果実を付けなかった枝は、来年果実を付けるため残します。その年に実がなった枝でも、元気なら残すこともあります。元気な若い枝を残すようにしましょう
ラズベリーの植え替え方法

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ラズベリーはずっと同じ鉢で育てていると根詰まりを起して、株の成長が弱くなってしまいます。鉢の大きさにもよりますが、植え付けから2〜3年を目安に植え替えをしましょう。春に芽が出る前のタイミングで行うと良いですよ。最終的に直径50cmくらいの大きな鉢に植えると、地植えに近いボリュームのある木が楽しめます。鉢植えから地植えへと移行させて育てるのもおすすめですよ。
- 市販のプランター用培土や、赤玉土と腐葉土が半々の土など、排水の良い用土を準備します
- 鉢から株を取り出します
- 傷んでいたり、伸びすぎた根を切ります
- 植え替え前と同じ鉢か、それよりも大きな鉢に準備した用土を入れて、植え替えます
- 植え替え後、土の表面に油かすと骨粉で作ったペレット肥料(市販の肥料でOK)を置きます
- たっぷりと水やりします
ラズベリーを育てる前にチェック!おすすめ品種

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ラズベリーは一季なりだけでなく、収穫時期の長い二季なりの品種もあります。果実は赤、黒、黄の3色があるので、好きな色で品種を選ぶのも楽しいですよ。ここでは、福田先生おすすめのラズベリーの品種をピックアップしました。自宅で育てる苗を選ぶときの参考にしてくださいね。
赤系:ヘリテージ

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二季なりで、晩秋まで果実を収穫できます。ラズベリーの栽培は寒冷地が向いていますが、ヘリテージは暑さに強いため、温暖地でもおすすめです。果実の大きさは中粒で、しっかりひきしまっておいしいです。収穫期間が長く、収量が多いのが特徴です。
赤系:インディアンサマー
ポピュラーな品種です。ヘリテージと同じく二季なりで、7月上旬~8月上旬、9月中旬~10月上旬に収穫できます。トゲは少ないので、収穫作業もかんたんです。果実の大きさは中粒でとてもおいしく、たくさん収穫できます。
ラズベリー インディアンサマー 4~5号ポット
・高さ:0.4~0.6m
赤系:ファンタジーレッド
特徴はなんといっても極大粒の果実!食べ応えのある大きな実で、甘く収量も多いので大満足できそう。一季なり性で6~8月に収穫します。成育中は細かいトゲが出ますが、だんだんトゲなしになって栽培しやすいです。垣根仕立てに向いています。
黒(紫)系:ブラックキャップ
一季なり性で6月下旬頃に収穫でき、赤色からブラックベリーのように黒く熟します。ブラックラズベリーとも呼ばれます。果実はとても甘いです。食べるときは、赤い品種と一緒にトッピングするとおしゃれ!耐寒性、耐暑性がともにあり、育てやすい品種です。
ブラックキャップ (一季成り)1年生 ポット苗
・高さ:0.1m
黄色系:ファールゴールド
一季なり性で、黄色い実が付きイエローラズベリーとも呼ばれます。実の大きさは中粒で赤系品のラズベリーと組み合わせてもキレイです!病害虫に強いので栽培しやすく、初心者にもおすすめ。さわやかな甘みのある果実が、夏にたくさん収穫できます。
ファールゴールド ポット苗
・高さ:0.3〜0.5m位(ポット含む)
ラズベリー栽培に関するQ&A

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ここでは、ラズベリーを植え付ける場所や株の増やし方など、気になる疑問に福田先生が答えていただきました。栽培に適した環境や育て方をチェックして栽培を始めるのはもちろんですが、ほかの人がよく困る点を確認しておきましょう!
ラズベリーの実がなりません。何が原因ですか?
実がならないラズベリーなんて聞いたことがありません。必ず花が咲いて実がなりますが、極端な日照不足であれば花も咲かないでしょう。適度に肥料を効かせることも、実付きには大切です。ここで紹介したような方法で順調に生育していれば、問題なく実がつくので試してみてください。
ラズベリーの増やし方を知りたいです
ラズベリーは地下茎でどんどん伸びるため、それを切り分ければいくらでも増えます。春か秋に、できるだけ根を傷つけないように注意しながら株分けをします。株分けをすると、収穫量も増えますよ。しかし「ビンテージレッド」や「ナンタヘーラ」のような米国特許品種などは、増殖不可なので増やしてはいけません。
ラズベリーの木をほかの果樹の近くで栽培しても大丈夫ですか?
大丈夫ですが、地下茎でどんどん広がるので、侵入されないよう地中に畦畔(けいはん)板などで仕切って、株の広がりを抑えると良いでしょう。地下茎はすぐ伸びるため、植え付け時に畦畔板を入れておくのがベストです。畦畔板は30cm以上の深さまで入れておきます。
夏の爽やかな果実、ラズベリーを育てよう

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ラズベリーはお店ではなかなか販売されておらず、たまに売っていても高価です。家庭菜園なら簡単に育てられ、採れたての味を楽しめて、実のなる木の姿も可愛らしいです。夏に水や炭酸水の中にミントと一緒に入れると、おしゃれで爽やかな飲み物になりますし、タルトの上に並べると、思わずインスタグラムにアップしたくなる華やかさ。ブルーベリーやブラックベリーと一緒に育てるのもおすすめですよ!