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海外におけるサツマイモと焼き芋の販売状況は?シンガポールとバンコクでの調査結果を報告

サツマイモの海外への輸出はここ数年で特にシンガポールとタイが急速に伸びています。現地のスーパーや百貨店などを訪問し、販売状況に関する調査を実施しました。生産国、販売価格、重量、肉色、品種などの商品に関する情報にもとづいたレポートを紹介します。


紅はるか

出典:PIXTA
海外で日本産サツマイモや、日本産サツマイモを加工した焼き芋の人気が急上昇しています。そこで、シンガポールとバンコクのスーパーなどで実施した販売状況に関する調査結果を報告します。

調査は、シンガポールでは2019年5月、タイ(バンコク)では2020年2月に現地で実施しました。現地のスーパーや百貨店などを訪問し、生産国、販売価格、重量、肉色、品種などの商品に関する情報を店頭表示やパッケージから収集。価格と換算レートは調査時点のものです。シンガポールは1シンガポールドル=80円(2019年5月)、タイは1バーツ=3.56円(2020年2月)です。

シンガポール、バンコクで焼き芋を食べる頻度や好まれる品種など、消費者調査についてのレポートはこちら。

シンガポールでは日本産の焼き芋が手ごろな価格で大人気

シンガポールでのサツマイモ販売
撮影:上西良廣(写真1 日本語で書かれたポップを活用して日本産であることをアピール)

サツマイモの販売状況

■表1 シンガポールにおけるサツマイモの販売状況
業態生産国換算価格(円/100g)品種または肉色
スーパーA日本(徳島県)111なると金時
日本(宮崎県)78
ベトナム85紫肉
オーストラリア72白皮
スーパーB日本79
ベトナム28紫肉
ベトナム28
台湾34
スーパーC日本(宮崎県)78
日本132
オーストラリア72白皮
スーパーDベトナム31紫肉
スーパーEオーストラリア28紫皮
日系スーパーF日本(茨城県)126紅まさり
日本(徳島県)126
日本(千葉県)(712円/パック)べにはるか
日本(徳島県)(712円/パック)なると金時
日本(宮崎県)(712円/パック)宮崎紅
日本(鹿児島県)(712円/パック)べにはるか
日本(鹿児島県)(712円/パック)安納芋
日系百貨店G日本200パープルスイートロード
注1)日本産を色付きで表示。
表1はサツマイモの販売状況の調査結果です。今回の調査では、日本、ベトナム、台湾、オーストラリア産のサツマイモを確認することができました。日本産に関しては、日本語のパッケージのままで販売されている商品や、日本語で品種や品種特性を説明するポップが置かれている場合が多く、日本産であることを積極的にアピールしていました(写真1)。

べにはるか、べにまさり、なると金時、安納芋、宮崎紅など種類も豊富

シンガポールでのサツマイモ販売
撮影:上西良廣(写真2 多種多様な品種が販売されている)
日本産に注目すると、茨城県、千葉県、徳島県、宮崎県、鹿児島県産が販売されており、品種(ブランド)もべにはるか、べにまさり、なると金時、安納芋、宮崎紅など多種多様な種類が販売されていました。価格帯は78~132円/100gとなっており、他国産(ベトナム、台湾、オーストラリア)と比較すると高い価格帯でした。なかでも、紫肉色のパープルスイートロードは200円/100gであり、日本産の中でも高い価格で販売。主に日本食材を販売する日系スーパーでは、日本の各産地のさまざまな品種のサツマイモが販売されていました(写真2)。

一方、ベトナム産は紫肉色のサツマイモが多く、100gあたりの価格は28~85円であり、安いものでは日本産の4分の1程度の価格でした。オーストラリア産は28~72円/100g、台湾産は34円/100gでした。

焼き芋の販売状況

シンガポールの焼き芋販売
撮影:上西良廣(写真3 焼き芋売り場の様子)
次に、焼き芋の販売状況について報告します。今回の調査では、日系ディスカウントストア(「DON DON DONKI」(以下、DONKI))と日系百貨店の2カ所での販売を確認。いずれも日本産べにはるかを原料として使用していました。
DONKIは、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営する株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが展開している店舗であり、日本産の農産物や食品、加工品が多数販売されていました。

シンガポールでは2017年12月に1号店がオープンした後、続々と新店がオープンしており、シンガポール国内で10店舗を展開しています(2021年10月時点)。
シンガポール1号店である「DON DON DONKI オーチャードセントラル」を2019年5月の平日昼前に訪れました。店舗に入るとすぐに焼き芋の良い香りが立ち込めてきました。その匂いにつられるようにエスカレーターで地階に降りるとすぐのところに日本語で大きく「焼き芋」と書かれた看板と焼き芋機がありました(写真3)。

シンガポールでの焼き芋の販売価格は日本と同等か少し安価

シンガポールでの焼き芋販売
撮影:上西良廣(写真4 シンガポールでの焼き芋の販売価格)
販売価格は1本あたり224円であり、日本のスーパーなどで販売されている価格とほぼ同じ、あるいは日本よりも安価でした(写真4)。人気のため1人あたり2本までしか購入できないという制限がありました。焼き芋ができる時刻を示したパネルが置かれていたため、その時刻が迫ってくると、徐々に客が集まってきて、できたての焼き芋を求めて列をなすようになりました。

現地の人の話によると、シンガポールではDONKIの紙袋に入った焼き芋を持って食べ歩くことが一種のステータスとなっているそうです。一方、日系百貨店では、千葉県産のべにはるかを使用した焼き芋が1本あたり320円で販売されていました。


バンコクでは日本産サツマイモ・焼き芋がいたる所で販売

バンコクのサツマイモ販売
撮影:上西良廣(写真5 バンコクでのサツマイモ・焼き芋販売)

サツマイモの販売状況

■表2 タイ・バンコクにおけるサツマイモの販売状況
業態生産国店頭表示価格換算価格(円/100g)品種または肉色
高級スーパーA(タイ)日本3,168円/kg317
日本(茨城県)1,420円/kg142シルクスイート
ベトナム566円/kg57
高級スーパーB(タイ)タイ210円/パック
タイ174円/パック
日本281円/100g281
日系百貨店C(日本)日本(茨城県)1,420円/kg142シルクスイート
スーパーD(タイ)タイ125円/350g36
タイ424円/kg42黄、橙、紫
日本2,812円/kg281
日本2,488円/kg249
日本1,420円/700g203
スーパーE(タイ)ベトナム409円/kg41
スーパーF(タイ)日本(鹿屋市)1,207円/kg121べにはるか
オーストラリア1,157円/kg116
スーパーG(タイ)タイ231円/kg23
スーパーH(タイ)タイ388円/kg39黄、紫
日系スーパーI(日本)日本(茨城県)1,420円/kg142シルクスイート
日系スーパーJ(日本)日本388円/500g78
日系ディスカウントストアK(日本)日本1,420円/パックシルクスイート
日本1,420円/パックベニアズマ
日本1,064円/パックべにはるか
市場L日本(鹿屋市)1,246円/kg125べにはるか
大型量販店M(外資)日本352円/500g70べにはるか
注1)業態ごとに並べ替え。業態の( )は資本。日本産を色付きで表示。 注2)日本産に関しては産地や品種を特定できたものは記載。生産国が不明のものは省略。 注3)価格は1バーツ=3.56円(2020年2月20日時点)で換算。
表2はサツマイモの販売状況の調査結果です。今回の調査で訪問したスーパーや百貨店など18カ所のうち、日本産サツマイモが確認できたのは12カ所でした。サツマイモを合計40点確認することができ、生産国で分類すると日本産が18点、タイ産が7点、ベトナム産が3点、オーストラリア産が1点、生産国不明が11点であり、日本産が圧倒的に多かったです。

なお、今回の調査ではバンコク都心部の店を中心に調査しましたが、中〜高所得世帯が比較的多いと考えられるため、日本産が特に多い結果になったと考えられます。バンコク郊外や、バンコク以外の都市の店においても日本産が多く見られるかは不明であるため、注意が必要です。

茨城県産と鹿屋市産、品種はべにはるか、ベニアズマ、シルクスイートが並ぶ

日本産サツマイモは、日本語のパッケージで包装されている商品や、日本語のポップで説明が書かれている店もあったため、産地や品種の特定が可能である場合が多かったです(写真5)。現地在住の日本人の話では、多くのタイ人は日本語が読めるわけではありませんが、日本語で書かれていることによって安心して購入しているそうです。

日本産のサツマイモは、日系百貨店や日系スーパーのみならず、タイ資本の高級スーパーや地元のスーパー、外資の大型量販店などさまざまな業態で販売されていました。産地は茨城県産と鹿屋市産、品種はべにはるか、ベニアズマ、シルクスイートを確認できました。茨城県産のサツマイモは、確認できた3カ所とも品種はシルクスイート、価格は142円/100gでした。

スーパーや百貨店など業態によるサツマイモ販売の違いは?

生産国不明のサツマイモ
撮影:上西良廣(写真6 日本以外で生産されたサツマイモを販売する店も)
業態ごとに販売状況を見ていくと、高級スーパーA、Bでは日本産と、ベトナム産またはタイ産を販売しており、ベトナム産は57円/100gであったのに対し、日本産は142~317円/100gでした。日系百貨店Cでは茨城県産シルクスイートが142円/100gでした。地元のスーパーでは日本産を販売している店もありましたが、ベトナム産やタイ産、生産国不明のサツマイモを中心に販売している店もありました(スーパーE、G、H)(写真6)。

今回の調査で1点だけ確認できたオーストラリア産は116円/100gであり、日本産と近い価格帯でした。日系スーパーI、Jでは日本産と生産国不明(表2では省略)、日系ディスカウントストアKでは日本産のべにはるか、ベニアズマ、シルクスイート、地元の市場Lでは鹿屋市産べにはるか、大型量販店Mでは日本産べにはるかを販売していました。
中・高所得者層の利用が比較的多いと考えられる日系百貨店や現地の高級スーパーなどでは日本産を販売している場所が多かったですが、中・低所得者層の利用が多いと考えられる現地のスーパーでは、価格が安いタイ産やベトナム産のみを販売しているという傾向が見られました。

焼き芋の販売状況

サツマイモ甘太くん
撮影:上西良廣(写真7 品種や産地をていねいに案内してくれる販売員も常駐)
■表3 タイ・バンコクにおける焼き芋の販売状況
業態生産国店頭表示価格換算価格
(円/100g)
品種または肉色
高級スーパーA店舗1日本(茨城県)196円/100g196シルクスイート
店舗2日本3,880円/kg 388
ベトナム673円/kg67.3
日系百貨店C日本(茨城県)196円/100g196シルクスイート
スーパーD店舗1日本281円/100g281
店舗2日本(JA全農おおいた)246円/100g246べにはるか
(甘太くん)
日系スーパーI日本(茨城県)196円/100g196シルクスイート
日系スーパーJ日本210円/本べにはるか
日系ディスカウントストアK日本285円/本べにはるか
日本285円/本シルクスイート
市場Lベトナム64円/100g64
注1)日本産を色付きで表示。
表3は焼き芋の販売状況の調査結果です。今回の調査で訪問した18カ所のうち、焼き芋を販売していたのは9カ所であり、さまざまな業態の店で販売していました。
サツマイモの生産国に注目すると、日本産サツマイモを加工して販売していたのは8カ所、ベトナム産は2カ所であり、日本産サツマイモを加工して販売している店が多かったです。日本産は日本語で書かれたポップなどで、日本産であることを積極的にアピールしていました。産地と品種を確認できたのは、茨城県産シルクスイートとJA全農おおいたの「甘太くん」でした。茨城県産の焼き芋は3カ所ともシルクスイートの焼き芋が販売されており、価格は196円/100gでした。

スーパーや百貨店など業態による焼き芋販売の違いは?

業態に注目すると、高級スーパーAの店舗1、日系百貨店C、日系スーパーIでは茨城県産シルクスイートを加工した焼き芋を196円/100gで販売していました。高級スーパーAの店舗2では日本産は388円/100g、ベトナム産は67.3円/100gで販売しており、ベトナム産は日本産よりもかなり安かったです。スーパーDの店舗1では日本産は281円/100g、店舗2では「甘太くん」の焼き芋を246円/100gで販売していました。店舗2の焼き芋売り場にはJA全農おおいたの法被(はっぴ)を着た販売員が常駐しており、「甘太くん」や産地などに関して親切に説明してくれました(写真7)。

日系スーパーJでは日本産べにはるかの焼き芋が1本210円でした。日系スーパーでは、日本人女性が焼き芋を買い求める姿を確認できました。現地在住の日本人の話では、バンコク市内には日本人駐在員も多く、その家族にも人気があるのではないかということでした。

サツマイモ加工品販売
撮影:上西良廣(写真8 日系ディスカウントストアでのサツマイモ加工品販売の様子)
日系ディスカウントストアKでは、店の入り口付近に「Sweet potato factory」というサツマイモの加工品に特化した販売ブースがあり、日本語も書かれたポスターで、焼き芋などのサツマイモ加工品を大々的に宣伝し販売していました(写真8)。焼き芋の品種はべにはるかとシルクスイートがあり、1本285円で販売されていました。なお、店内のレジの近くにも焼き芋機があり、店内には焼き芋の匂いが充満していたため、匂いにつられてついつい購入してしまう人も多いのではないかと感じました。

バンコクでの焼き芋販売
撮影:上西良廣(写真9 バンコクの市場での焼き芋販売の様子)
市場Lでは、ベトナム産のサツマイモを加工した焼き芋を64円/100gで販売していました。焼き芋はバナナと並べて網の上で焼かれており、購入して食べてみると紛質系の食味で、糖化が進んでいて甘くておいしかったです(写真9)。

高価格でも人気|日本産サツマイモ・焼き芋の今後に期待

紅はるかの焼き芋
出典:PIXTA
今回は、シンガポールとタイ・バンコクにおけるサツマイモと焼き芋の店頭販売状況調査の結果を報告しました。日本産のサツマイモおよび焼き芋は、現地で流通する他国産(タイ産やベトナム産、台湾産など)と比較すると、高い価格で販売されていました。しかし、日本産は価格が高くても現地では受け入れられていることが明らかとなりました。今後海外での日本産サツマイモの消費をさらに増やすためには、現地人の嗜好性(しこうせい)や受容される価格帯などの市場調査を継続する必要があります。

より詳しい内容が気になる人は、上西良廣(2021)「海外におけるサツマイモと焼き芋の販売状況-タイ・バンコクにおける店頭販売状況に関する調査報告-」『いも類振興情報』、145、p.48-54と、上西良廣(2020)「海外における日本産焼き芋に対する消費者評価(シンガポール)」『いも類振興情報』、144、p.39-45をご覧ください。

貯蔵条件を変えた焼き芋の国内消費者調査の結果はこちらをチェック


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上西良廣

九州大学農学部の教員。京都大学で博士(農学)を取得。地域のシンボルとなる生物と関連付けた栽培技術(兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む農法」等)に関する調査や、新品種などを対象としたマーケティング調査を行っている。

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