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貯蔵条件を変えた焼き芋の消費者調査の結果を解説

茨城県でサツマイモの収穫期初期にあたる9月は端境期に当たります。この時期に消費者においしい焼き芋を供給する選択肢としては、前年に収穫したベニアズマを翌年の9月まで長期貯蔵する方法や、早掘りしたべにはるかを低温貯蔵によって早期糖化させる方法などが考えられます。どちらの貯蔵方法による焼き芋が消費者により好まれるのか調査を実施しました。


ベニアズマの焼き芋

出典:PIXTA
近年、国内外で焼き芋の人気が急上昇しています。特に、アジアへのサツマイモの輸出量が上位を占め、ここ数年はシンガポール、タイへの輸出が急速に伸びていることから、前回はシンガポールとタイでの焼き芋の消費者調査についてレポートしました。

今回は国内の一般消費者を対象にした焼き芋調査について報告します。消費者に好まれる焼き芋には、どのような特徴があるのでしょうか。茨城県でサツマイモの端境期の9月に焼き芋の試食調査を2回実施しました。

長期貯蔵した「ベニアズマ」と早期糖化させた「べにはるか」の比較(2018年度)

焼き芋調査の準備
撮影:上西良廣
JAなめがたしおさい(茨城県)では、サツマイモの糖化が進む早さの違いなどの品種特性を考慮し、年間を通して消費者に焼き芋を供給できるように、べにはるか、べにまさり、ベニアズマの順番にリレー出荷体制を構築しています(森田・金田(2014))。
しかし、茨城県におけるサツマイモの収穫期初期にあたる9月は端境期であり、この時期に消費者においしい焼き芋を市場に供給することが課題となっています。9月に市場に焼き芋を供給する選択肢としては、前年に収穫したベニアズマを翌年の9月まで長期貯蔵する方法や、早掘りしたべにはるかを低温貯蔵によって早期糖化させる方法などが考えられます。
上記のどちらの貯蔵方法による焼き芋が、消費者により好まれるのかを明らかにするために調査を実施しました。

■表1 調査に用いた焼き芋(2018年度)
ABCD
品種ベニアズマべにはるかべにはるかべにはるか
貯蔵温度13℃13℃11℃ ー
貯蔵期間約1年間2週間2週間 ー
常温での貯蔵期間1週間1週間1週間3週間
調査に用いた焼き芋の糖度
(Brix〈%〉)の平均値
26.033.435.129.3
表1は調査に用いた焼き芋の特徴を整理したものです。品種と低温貯蔵温度、低温貯蔵期間を変えた4種類のサツマイモを用意し、焼き芋に加工して調査に使用しました。焼き芋への加工は、茨城県農業総合センターに委託しました。なお、実際に消費者が購入するまでの流通に要する期間を考慮し、低温貯蔵した後に一週間の常温貯蔵期間を設定しました。

調査に参加した人の概要は?

2018年9月初旬に、研究機関の一般職職員を対象として調査を実施しました。

■表2   回答者の基本属性(n=60)
20代30代40代50〜60代合計
男性8人6人7人9人30人
女性6人8人6人10人30人
回答者は60名で、年代(20~60代)と性別がほぼ均等になるように参加者を募集しました。

4種類の焼き芋
撮影:上西良廣
調査当日に焼き芋をカットし、一枚の皿に4種類をのせて、品種や貯蔵期間などの情報は伏せた状態で提供しました。焼き芋を試食してもらい、4種類それぞれについて、味、食感(舌触り)、総合評価の好き嫌いについて回答してもらいました。なお、調査に用いた焼き芋の糖度(Brix〈%〉)は、2週間低温貯蔵したべにはるか(BとC)が高い結果となりました(表1)。

低温貯蔵したべにはるかの評価が高い結果に

■表3   調査結果(2018年度)
ABCD
3.54.14.33.6
53%77%85%55%
食感3.63.94.13.3
45%73%78%55%
総合評価3.54.04.23.4
52%73%82%55%
注1:上段は各評価項目に対する5段階(好き5点、やや好き4点、どちらでもない3点、やや嫌い2点、嫌い1点)の回答結果の平均値、下段は「好き5点」または「やや好き4点」と回答した人の割合。
表3は、味、食感、総合評価に関する5段階の評価結果の平均値と、肯定的な評価(「好き」または「やや好き」と回答)をした人の割合を示しています。全ての評価項目に関して、低温貯蔵したべにはるか(BとC)はおおよそ4点以上であり、高い結果となりました。高い評価をした人の割合を見ると、いずれの項目においてもBとCは70%以上となっています。以上の結果から、長期間(約1年間)貯蔵したベニアズマよりも、低温で2週間貯蔵して早期糖化させたべにはるかを加工した焼き芋の方が、評価が高いことが明らかとなりました。

「べにはるか」の低温貯蔵期間による比較(2019年度)

焼き芋調査の様子
撮影:上西良廣
2018年度に実施した上記の調査結果を踏まえて、2019年度は低温貯蔵したべにはるかに焦点を当て、貯蔵期間を変えて調査を実施しました。



■表4   調査に用いた焼き芋(2019年度)
ABCD
品種べにはるかべにはるかべにはるかべにはるか
貯蔵温度11℃11℃11℃ ー
貯蔵期間14日間10日間7日間 ー
常温での貯蔵期間1週間1週間1週間1週間
調査に用いた焼き芋の糖度
(Brix〈%〉)の平均値
30.127.726.822.9
表4は調査に用いた焼き芋の特徴を整理したものです。品種はべにはるか、貯蔵温度は11℃に統一し、低温での貯蔵期間を7日、10日、14日と変えたサツマイモを用意しました。

調査に参加した人の概要は?

2019年9月初旬に、研究機関の一般職職員を対象として調査を実施しました。
■表5   回答者の基本属性(n=60)
20代30代40代50〜60代合計
男性6人7人9人7人29人
女性10人8人9人10人37人
回答者は66名で、2018年の調査と同様に、年代と性別がほぼ均等になるように参加者を募集しました。味、食感、総合評価の好き嫌いに加え、総合評価の順位についても尋ねました。なお、調査に用いた焼き芋の糖度は、低温貯蔵期間が長くなるほど高い結果が得られました(表4)。

低温貯蔵期間が長い方が評価が高い結果に

■表6   調査結果(2019年度)
ABCD
4.34.03.73.2
89%78%59%41%
食感4.14.03.53.1
77%73%50%36%
総合評価4.24.03.63.2
83%80%53%35%
注1:上段は各評価項目に対する5段階(好き5点、やや好き4点、どちらでもない3点、やや嫌い2点、嫌い1点)の回答結果の平均値、下段は「好き5点」または「やや好き4点」と回答した人の割合。
表6は、味、食感、総合評価に関する5段階の評価結果の平均値と、肯定的な評価(「好き」または「やや好き」と回答)をした人の割合を示しています。低温貯蔵期間が14日間と10日間(AとB)では、各項目に対する平均値は4.0以上であり、CやDと比較して高い結果となりました。また、総合評価に対して肯定的な評価をした人の割合は、AとBでは80%以上となっている一方で、Cは53%、Dは35%にとどまっています。

■表7   総合評価の順位に関する回答結果
1位2位2位までの合計
A44.6%32.3%76.9%
B27.7%41.5%69.2%
C18.5%13.8%32.3%
D9.2%12.3%21.5%
合計100%100%
表7は総合評価について、A~Dを順位付けしてもらった結果です。Aを1位と回答した人は約45%、Bは約28%となっています。また、Aを1位または2位と回答した人の割合は約77%、Bは約69%となっており、CやDよりも高い結果となりました。
以上の結果から、低温貯蔵期間が長いほど評価が高くなること、また低温貯蔵期間が10日間と14日間ではほぼ同等の高い評価が得られることが明らかとなりました。

低温貯蔵し早期糖化させた「べにはるか」が高評価

べにはるかの焼き芋
出典:PIXTA
2カ年の消費者を対象とした調査の結果、茨城県におけるサツマイモの端境期である9月に消費者により好まれるサツマイモまたは焼き芋の特徴として、次のことが明らかになりました。

(1)長期貯蔵したベニアズマよりも低温貯蔵し早期糖化させたべにはるかを加工した焼き芋が好まれる。
(2)べにはるかの低温貯蔵期間に関しては、長い(14日間と10日間)ほど評価が高い。

これらの結果は、農業者が作付けする品種を決定する際や、産地で作付計画や販売戦略を検討する際の一助になるのではないかと期待されます。また、消費者ニーズに即したサツマイモを生産することで、より高価格での販売が可能になるのではないでしょうか。

より詳しい内容が気になる方は、上西良廣(2021)「貯蔵条件を変えたサツマイモの高付加価値化の検討」『いも類振興情報』、145、p.11-14をご覧ください。なお、本研究は農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の支援を受けて実施したものです。

参考:
1)森田有紀・金田富夫(2014)「JAなめがたの大産地形成 茨城県行方市」『焼き芋辞典』一般社団法人いも類振興会:128-132.

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上西良廣

九州大学農学部の教員。京都大学で博士(農学)を取得。地域のシンボルとなる生物と関連付けた栽培技術(兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む農法」等)に関する調査や、新品種などを対象としたマーケティング調査を行っている。

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