今回は国内の一般消費者を対象にした焼き芋調査について報告します。消費者に好まれる焼き芋には、どのような特徴があるのでしょうか。茨城県でサツマイモの端境期の9月に焼き芋の試食調査を2回実施しました。
長期貯蔵した「ベニアズマ」と早期糖化させた「べにはるか」の比較(2018年度)
JAなめがたしおさい(茨城県)では、サツマイモの糖化が進む早さの違いなどの品種特性を考慮し、年間を通して消費者に焼き芋を供給できるように、べにはるか、べにまさり、ベニアズマの順番にリレー出荷体制を構築しています(森田・金田(2014))。しかし、茨城県におけるサツマイモの収穫期初期にあたる9月は端境期であり、この時期に消費者においしい焼き芋を市場に供給することが課題となっています。9月に市場に焼き芋を供給する選択肢としては、前年に収穫したベニアズマを翌年の9月まで長期貯蔵する方法や、早掘りしたべにはるかを低温貯蔵によって早期糖化させる方法などが考えられます。
上記のどちらの貯蔵方法による焼き芋が、消費者により好まれるのかを明らかにするために調査を実施しました。
■表1 調査に用いた焼き芋(2018年度)
A | B | C | D | |
品種 | ベニアズマ | べにはるか | べにはるか | べにはるか |
貯蔵温度 | 13℃ | 13℃ | 11℃ | ー |
貯蔵期間 | 約1年間 | 2週間 | 2週間 | ー |
常温での貯蔵期間 | 1週間 | 1週間 | 1週間 | 3週間 |
調査に用いた焼き芋の糖度 (Brix〈%〉)の平均値 | 26.0 | 33.4 | 35.1 | 29.3 |
調査に参加した人の概要は?
2018年9月初旬に、研究機関の一般職職員を対象として調査を実施しました。■表2 回答者の基本属性(n=60)
20代 | 30代 | 40代 | 50〜60代 | 合計 | |
男性 | 8人 | 6人 | 7人 | 9人 | 30人 |
女性 | 6人 | 8人 | 6人 | 10人 | 30人 |
調査当日に焼き芋をカットし、一枚の皿に4種類をのせて、品種や貯蔵期間などの情報は伏せた状態で提供しました。焼き芋を試食してもらい、4種類それぞれについて、味、食感(舌触り)、総合評価の好き嫌いについて回答してもらいました。なお、調査に用いた焼き芋の糖度(Brix〈%〉)は、2週間低温貯蔵したべにはるか(BとC)が高い結果となりました(表1)。
低温貯蔵したべにはるかの評価が高い結果に
■表3 調査結果(2018年度)A | B | C | D | |
味 | 3.5 | 4.1 | 4.3 | 3.6 |
53% | 77% | 85% | 55% | |
食感 | 3.6 | 3.9 | 4.1 | 3.3 |
45% | 73% | 78% | 55% | |
総合評価 | 3.5 | 4.0 | 4.2 | 3.4 |
52% | 73% | 82% | 55% |
「べにはるか」の低温貯蔵期間による比較(2019年度)
2018年度に実施した上記の調査結果を踏まえて、2019年度は低温貯蔵したべにはるかに焦点を当て、貯蔵期間を変えて調査を実施しました。■表4 調査に用いた焼き芋(2019年度)
A | B | C | D | |
品種 | べにはるか | べにはるか | べにはるか | べにはるか |
貯蔵温度 | 11℃ | 11℃ | 11℃ | ー |
貯蔵期間 | 14日間 | 10日間 | 7日間 | ー |
常温での貯蔵期間 | 1週間 | 1週間 | 1週間 | 1週間 |
調査に用いた焼き芋の糖度 (Brix〈%〉)の平均値 | 30.1 | 27.7 | 26.8 | 22.9 |
調査に参加した人の概要は?
2019年9月初旬に、研究機関の一般職職員を対象として調査を実施しました。■表5 回答者の基本属性(n=60)
20代 | 30代 | 40代 | 50〜60代 | 合計 | |
男性 | 6人 | 7人 | 9人 | 7人 | 29人 |
女性 | 10人 | 8人 | 9人 | 10人 | 37人 |
低温貯蔵期間が長い方が評価が高い結果に
■表6 調査結果(2019年度)A | B | C | D | |
味 | 4.3 | 4.0 | 3.7 | 3.2 |
89% | 78% | 59% | 41% | |
食感 | 4.1 | 4.0 | 3.5 | 3.1 |
77% | 73% | 50% | 36% | |
総合評価 | 4.2 | 4.0 | 3.6 | 3.2 |
83% | 80% | 53% | 35% |
■表7 総合評価の順位に関する回答結果
1位 | 2位 | 2位までの合計 | |
A | 44.6% | 32.3% | 76.9% |
B | 27.7% | 41.5% | 69.2% |
C | 18.5% | 13.8% | 32.3% |
D | 9.2% | 12.3% | 21.5% |
合計 | 100% | 100% | ー |
以上の結果から、低温貯蔵期間が長いほど評価が高くなること、また低温貯蔵期間が10日間と14日間ではほぼ同等の高い評価が得られることが明らかとなりました。
低温貯蔵し早期糖化させた「べにはるか」が高評価
2カ年の消費者を対象とした調査の結果、茨城県におけるサツマイモの端境期である9月に消費者により好まれるサツマイモまたは焼き芋の特徴として、次のことが明らかになりました。(1)長期貯蔵したベニアズマよりも低温貯蔵し早期糖化させたべにはるかを加工した焼き芋が好まれる。
(2)べにはるかの低温貯蔵期間に関しては、長い(14日間と10日間)ほど評価が高い。
より詳しい内容が気になる方は、上西良廣(2021)「貯蔵条件を変えたサツマイモの高付加価値化の検討」『いも類振興情報』、145、p.11-14をご覧ください。なお、本研究は農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の支援を受けて実施したものです。
参考:
1)森田有紀・金田富夫(2014)「JAなめがたの大産地形成 茨城県行方市」『焼き芋辞典』一般社団法人いも類振興会:128-132.