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畑に現れたコロコロの正体とは?農村で循環する資源|脱・東京!北海道でメロン農家になりたい夫婦の農業研修記 No.3

コロナ禍をきっかけに東京を離れ、メロン農家になるべく北海道安平町へ移住した夫婦の農業研修日記。第三回は「畑に現れたコロコロの正体とは?農村で循環する資源」。北海道の麦畑で目にする巨大なかたまりは、酪農家だけでなくメロン農家にとっても大切な資材になる?!


麦稈ロール1

撮影:小林麻衣子
新規就農をめざして東京から北海道にIターンした夫婦が、農業経験なし、土地なし、人脈なしの状態から研修をスタートし独立するまでの道のりをつづります。はたして2人は無事に新規就農できるのでしょうか?

想像以上に過酷だった夏の農作業のお話はこちら。

夏になると現れる「コロコロ」

麦稈ロール2
撮影:小林麻衣子
毎年7月ごろになると、黄金色に染まった畑の中にある「モノ」が現れます。夏に北海道を訪れたことがある人なら一度は目にする風景かもしれません。円柱形でゆうに人の背丈を超える大きさ。押せば転がっていきそうな「コロコロ」の正体がわかりますか…?

答えは「麦稈(ばっかん)ロール」です。麦稈とは麦わらのこと。ちなみに私が住んでいる地域ではなぜか「麦から」と呼んでいます。麦稈ロールは麦を刈り取ったあとに畑に残された麦わらをロールベーラーと呼ばれる大きな機械で丸めたもの。その重さはなんと300kgにもなるといいます。麦稈ロールは牧場などで保管され、牛舎の敷きわらに使われます。

酪農だけじゃない!麦稈ロールの使い道

麦稈3
撮影:小林麻衣子
麦稈ロールは麦の収穫時期の7〜8月に麦畑で見られる光景です。この時期になると牧場へ運ぶため、麦稈ロールを載せたトラックが道路を頻繁に行き来します。巨大かつ転がりやすい形をしているので、トラックから道路にロールが転がり落ちる事件が1年に1度くらいはあり、地域のお茶の間をちょっとだけ騒がせたりもします。

麦稈を活用しているのは、酪農家だけではありません。わたしたちメロン農家も、土づくりのために麦稈を畑にすき込んでいるのです。ただし、使う麦稈はロール状になったものではなく、機械で長方形にまとめられたもの。人が抱えられるくらいの大きさで、麦を栽培している農家から毎年購入しています。

ロールほどではないにせよ、長方形の麦稈を最低でも数百個は使うので、麦稈を運ぶのは一大イベントです。そのため生産組合の若手など十数人が集まる「麦からの日」が毎年あり、協力して各地域の組合員の畑に麦稈を届けています。

似ているけれど、ちょっと見た目が違うこれは?

牧草ロール
出典:写真AC
ちなみに見た目が似ていて、よく間違えられやすいのが「牧草ロール」です。こちらは刈り取った牧草を白や黒などのラップに包んだもの。牛の飼料として保管されます。

巨大な麦わらのベッドが完成

麦稈2
撮影:小林麻衣子
麦稈を運ぶのは7月下旬〜8月。作業の前後に雨が降ると麦がぬれて驚くほど重たくなるので、晴れた日を選びます。作業内容はいたってシンプルで、麦畑に残された無数の麦稈を人力でダンプカーに載せて、ひたすら畑へ運ぶだけ。屈強な男たちが軽々と麦稈を乗せていく様子は見ていて頼もしい限りです。

機械を駆使して麦稈を積み上げる

集めた麦稈は、そのまま野ざらしで保管するわけにもいかないので、倉庫に入れるか畑にタワー状に積み重ねてビニールシートなどをかけます。麦稈の積み方にもちょっとしたコツがあり、きれいに積み上げないとタワーが倒れてしまうので注意が必要です。ダンプカーやトラクターなど機械を駆使して、ビニールハウスよりも大きな麦稈のタワーが完成します。タワーの上に登ると足元はふわふわとした感触で、ハイジもびっくりの巨大な麦わらのベットのよう。ただし麦は触るとチクチクして、あまり寝心地のいいものではありませんが(笑)。

親から子へ進む世代交代

麦稈
撮影:小林麻衣子
「麦からの日」に集まるのは若い世代と書きましたが、とにかくこの地域には若い農家が多いことに驚きました。農業界の平均年齢は67.8歳、65歳以上は全体の約7割農林水産省「農業労働力に関する統計」)といわれ、担い手の高齢化が進んでいます。

ところが地域の生産部会では20代の息子が親と一緒に働く家が3つあるほか、30代の若手農家が親と世代交代し経営者として活躍している家も数多くあります。私たちのような新規就農者が増えているのはもちろん、親元就農をする家でも、現役で活躍しているお父さん世代の姿を見て、その息子たちも後を継ぐ覚悟で働き始めるのだとか。若い世代の仲間が増えている様子を見ると、北海道の農業のこれからに希望が持てそうです。

収穫が終わったらすぐに始まる土づくり

麦畑
撮影:小林麻衣子
「麦からの日」がある夏場はちょうどメロンの収穫ピークと重なる時期です。収穫をして、摘芯をして、片付けをして…とやることがいっぱいです。「いい農作物を作るには、まず土づくりから」とよく言いますが、収穫が終わったメロンのハウスは後片付けをして8月中には翌年に向けての土づくりに入ります。

一口に後片付けといっても、これが大変な作業なのです。収穫が終わったメロンの株を折り、一度ハウスを閉め切って、葉やつるを乾かします。締め切ったハウスの中は50度以上にもなり、誤ってハウスの中に迷いこんでしまったカエルがあとから黒こげに干からびて出てくることも…恐ろしいですね。

ハウスの中を片付けたら準備完了

1週間ほどかけて水分がなくなったら、つるをきれいに畳んで、ひとかたまりに丸めます。丸めたメロンのつるをトラクターで引きずり出して、残さとして処分。このときパリパリに乾燥した葉が粉のように舞い、片付けを終えると体じゅうがメロンの残さまみれになります。こうしてきれいにしたハウスの中を一度締め切って太陽熱で土壌消毒をし、マルチやビニールなどをはずしてハウスを骨組みだけにしてようやく準備完了です。

ここでやっと麦稈の登場。トラクターでおこした土の中にロータリーで麦稈すき込み、その上から緑肥をまきます。有機質資材をすき込むことで、排水性がよく地力のある土になるというわけです。

地域の中で循環する資源

循環_枯れ葉と緑
撮影:小林麻衣子
農村では畑作農家は麦稈などを畜産農家やほかの農家に供給し、畜産農家は堆肥を畑作農家に渡すという域の中の資源循環ができています。忙しい夏の終わりになると、畑からはカカオのような堆肥の匂いがただよってきます。堆肥をまいて、次の農作物の準備をしているのです。畑に転がる「コロコロ」は農村ならではの地域の資源循環を表しているともいえるでしょう。北海道を訪れるさいは、ぜひその様子をよく見てみてくださいね。

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脱・東京!北海道でメロン農家になりたい夫婦の農業研修記

小林麻衣子プロフィール
神奈川県出身、北海道在住。大学卒業後、農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して夫婦で北海道安平町に移住。2021年4月からメロン農家見習いとして農業研修に励むかたわら、ライターとしても活動中。

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小林麻衣子

北海道在住のライター。農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して移住。現在は農家見習い兼ライターとして活動中。

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