東京から北海道に移住した際のギャップや暮らしぶりを紹介した連載第一回はこちら。
エアコンの普及率は4割?本州と同じくらい暑い北海道の夏
「冬は寒く、夏は涼しい北海道」。そんなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、今年の北海道はとんでもなく暑かったのです。2021年7月の札幌市では統計開始以来、最も高い月間平均気温と最も少ない降水量を記録。札幌市や旭川市など、道内の各地で30度を超える真夏日が続きました。
しかし、エアコンがないのです。北海道のクーラー普及率は約4割。我が家で部屋を涼しくできるものといえば、東京から持ってきた扇風機が2台と、窓を全開にして入ってくる夜風のみ。「北海道の夏は短いからエアコンがなくても大丈夫」と移住前に地元の人に言われたような気がするけど、どうやら違うみたいです。
どこへ行ってしまったの?北国の夏。
東京ドーム1個分!灼熱の農作業バイト
みなさんは「ビート」という野菜を知っていますか?赤い小さなカブみたいなやつ…ではありません。それは「ビーツ」です。ビートとは、甜菜(てんさい)のこと。砂糖の原料となる作物で、国産の砂糖の約8割はビートから、残りはサトウキビから作られています。北海道はビートの一大産地。国内で生産されるビートのほとんどが北海道産です。田園地帯に行けばそこらじゅうビートが植えられた畑が広がります。ちなみに私は北海道に来て初めてビート畑を見ました。
ビート畑で草刈り
北海道の農業といえば、大規模な畑を大きな農機具を使って作業するイメージですが、畑の中の雑草とりは手作業なのです。見渡す限りビートだらけの畑をのしのしと歩いて、雑草と出会ったら鎌で刈り取る。これをひたすら繰り返します。この日の気温は30度越え。差し入れでもらった大量のスポーツドリンクも、あっという間に飲み干してしまいました。
「このままだと干からびるのでは…」
と思わずつぶやいてしまうような天気。1日半かけてやっとの思いで全ての雑草を取り切りましたが、人間もぐったりです。暑さのせいで、なんだかビートも萎れているような気がします。
記録的な干ばつの中でのメロン収穫
農作物だけでなく、むしろ人間が暑さに負けてしまいそうです。気温が30度ある昼間のビニールハウスの中は40度近い気温に。息をしているだけで汗が滴り落ち、心拍数がだんだんと早まっていくのが自分でもわかるほど。熱中症の危険がある日中の時間帯を避けて、早朝や夕方に作業をすることがほとんどですが、どうしても作業をしなければならないときはハウスの中に入るしかありません。まさに命を削りながら作業をしていると言っても過言ではありません。
雪が多過ぎた冬、暑過ぎる夏
冬には記録的な大雪による被害も
8月初旬には、こんなニュースが話題になりました。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、人間が地球の気候を温暖化させてきたことに「疑う余地がない」とする報告(環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル」)を公表したというものです。
雪が多過ぎる冬、暑過ぎる夏。
涼しいはずの北海道の夏が、本州と変わらない暑さになってしまう日も近いかもしれません。農業をするには農作物にとっても人間にとっても過酷な環境です。こうした気候変動になるべく影響されないような、農業経営のあり方を考えていかなければなりません。
それから、まずは我が家にエアコンの導入も検討しないといけないようですね(笑)。
小林麻衣子プロフィール
神奈川県出身、北海道在住。大学卒業後、農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して夫婦で北海道安平町に移住。2021年4月からメロン農家見習いとして農業研修に励むかたわら、ライターとしても活動中。