目次
ローズマリーが春に花芽を増やす仕組み
ローズマリーは、切り戻しの時期によって花のつき方が変化します。
まずは、花芽が形成される流れを解説します。
ローズマリーのタイプと枝の伸び方|立性・ほふく性
ローズマリーには、次の2タイプがあります。立性
上へまっすぐ伸びるほふく性
横に広がりながら育つ生長する向きは違っても、どちらも新しく伸びた枝先や葉の付け根に花がつきます。
この「新枝」がどれだけ作れるかが、翌春の花数を決めるポイントです。
花は前年に伸びた枝の先に咲く
ローズマリーの花がつくのは、前年に伸びてしなやかに育った新しい枝の先です。緑色で柔らかいこの枝は、芽の動きが良く、花芽がつきやすいです。
そのため、株の中に若い枝がどれだけあるかが、翌春の花数を左右します。
なお、切り戻しの時期については、後ほどの項目で解説します。
頂芽優勢を断ち切ると脇芽が増える
ローズマリーの枝先には、いちばん成長する「頂芽(ちょうが)」があります。この頂芽が伸び続けているあいだは、横にある脇芽の成長が抑えられます。
これが「頂芽優勢」と呼ばれる現象です。
頂芽優勢の仕組み
頂芽優勢の仕組みは、次のように整理できます。- 頂芽=枝先のいちばん強い芽
- 頂芽が伸び続けると、脇芽が止まる
- 脇芽が増えない → 花芽のつく枝が増えない
そのため、伸びた枝を途中で切って頂芽を取り除くと、抑えられていた脇芽が成長しやすくなります。
切り戻し後に株がふんわりと茂るように見えるのは、この脇芽の反応によるものです。
木質化した古枝が増えると花付きが落ちる
切り戻しが重要な理由は、もう一つあります。ローズマリーは年数が経つと枝が木質化し、新しい芽が出にくくなるためです。
古枝が増えるほど、新枝が伸びる場所が減り、花数も少なくなりがちです。
そのため、毎年の切り戻しで若い枝に更新していくことが、花を安定して咲かせるコツになります。
春の花芽を増やす切り戻しの適期
ローズマリーは、いつ切り戻すかによって、その後の枝の伸び方に差が出ます。花芽を多くつけるためにも、切り戻しに適した時期と避けたい時期をしっかり把握しておきましょう。
基本は「花が終わった直後」から「梅雨入り前」
切り戻しに最も向いているのは5〜6月です。ローズマリーの花期は11月〜翌年5月ごろなので、花後〜梅雨入り前が切り戻しの適期です。
この時期が向いている理由
- 開花が終わった直後に切ると、株の負担が少ない
- 梅雨入り前は気温が安定し、切り口の回復も早い
- そのあとの成長期に新枝がよく伸びる
春〜初夏に伸びた新枝は秋ごろに花芽をつけやすくなるため、花後すぐの切り戻しが翌春の花数アップに効果的です。
避けたい時期|真夏・真冬・開花直前
切り戻しはいつでもできるわけではなく、株を弱らせやすい時期があります。次の3つのタイミングは避けるのが無難です。
| 避けたい時期 | 理由 |
| 真夏 | 高温で株が弱り、切り口から枯れ込みやすい |
| 真冬 | 回復力が低く、切り口がそのまま残りやすい |
| 開花直前 | 蕾のついた枝を切り落としてしまう |
無理にこの時期に切ると回復が遅れ、翌春の花数にも影響します。
花芽を増やす切り戻し(剪定)のやり方
ローズマリーの切り戻しは、枝を整えるだけでなく、株を若返らせて花芽をつくりやすくするための作業です。ここでは、基本の切り方から間引き剪定、タイプ別のポイントまで見ていきます。
基本の切る位置と深さ|葉と芽を必ず残す
切り戻しは、緑色の部分(葉や芽がある部分)で切ることが重要です。木質化した部分で切ると、新しい芽が出にくくなります。
ポイント
- 緑の部分(葉がある部分)で切る
- 切る深さの目安は株全体の1/3程度まで
葉と芽を残して切ることで、新しい枝が動きやすくなり、花芽の土台も育ちます。
切り戻しと併用「間引き剪定」で風通しを良くする
切り戻しに加えて、不要な枝を抜く「間引き剪定」を行うと、株の風通しと日当たりがぐっと良くなります。間引くべき枝
- 株の内側で込み合っている枝
- 細く弱い枝
- 交差して擦れそうな枝
光と風がしっかり入ることで、枝が充実し、花芽のつき方も良くなります。
タイプ別の切り戻しポイント
ローズマリーは、立性とほふく性で生長の向きが異なるため、切り戻しのポイントも少し変わります。ほふく性ローズマリーの切り戻しのコツ
- 地面に近い枝を優先して間引く
- 蒸れやすい下側の枝を整理する
- 長い枝は短めに切って脇芽の動きを促す
立性ローズマリーの切り戻しのコツ
立性は上へ伸びるので、高さが出すぎると倒れやすいです。- 伸びすぎた枝先をそろえて樹形を整える
- 混み合う部分を適度に間引く
- 光がよく当たるように枝を調整する
切り戻し後の管理で花芽を育てる
切り戻しのあとは、株が新しい枝を伸ばす大切な時期です。
ここでの管理次第で、秋以降に育つ花芽の充実度も変わります。
肥料・水分・日当たりの3つを整えて、花芽が育ちやすい環境をつくりましょう。
お礼肥と年間の施肥の考え方
切り戻し後に少量の肥料を与えると、新しい枝が動きやすくなります。施肥のポイント
- 緩効性肥料を与える
- 追肥は3月に少量
- 窒素の多い肥料は花付きが悪くなるので控えめにする
必要な場面だけ適量を与えることが、花芽をしっかり育てるコツです。
水の管理
ローズマリーは、過湿を嫌いやや乾燥気味の方が元気に育ちます。水やりは、土がしっかり乾いてから与えるのが基本。
湿りっぱなしの状態が続くと根腐れや新芽の不調の原因になります。
日当たりの管理
日当たりがよい環境では枝がよく育ち、花付きも安定します。光をしっかり浴びた枝は太くなり、花芽をつける準備が整っていきます。
一方で光が足りないと、枝が細くなり翌春の花付きが不安定になりがちです。
ローズマリー年間お世話カレンダー

| 時期 | お世話のポイント |
| 3月 | 春の追肥(控えめ)/日当たりを確保 |
| 5〜6月 | 花後の切り戻しが最適期/間引き剪定で風通し改善 |
| 7〜8月 | 強剪定は避ける/乾かし気味に水管理 |
| 10〜11月 | 必要に応じて軽く整える |
| 冬(12〜2月) | 水やりは控えめ/強剪定は避ける |
よくある失敗とその回避法

切りすぎて枯れてしまうケース
ローズマリーは、枝が木質化すると新しい芽が出にくくなります。木質部分まで深く切ってしまうと再生できず、その枝が枯れ込むことがあります。
切り戻しは枝の1/3以内とし、枝が緑の部分で切るのが基本です。
何年も剪定せず老化させてしまうケース
長く剪定をしないままにすると古枝ばかりが増え、花がつく若い枝がほとんどなくなることがあります。その結果、花付きが悪くなることも。
5〜6月の花の後に切り戻して若い枝を更新していくと、花の量は徐々に戻っていきます。
花付きが良い人気のローズマリー
ローズマリー ・マリンブルー|立性
香りが良く、丈夫で育てやすい品種です。青紫の花が長く楽しめ、耐寒性も高め。剪定にも強いため、低めの生垣に利用できます。ローズマリー ・プロストラタス|ほふく性
地を這うように広がる匍匐性の代表品種。枝は100cmほど伸びて垂れ下がり、シルエットも美しいです。料理用としても人気があります。ローズマリー ・マジョルカピンク|立性
小さな葉と淡いピンクの花が可愛らしい品種です。立性でよく茂り、グランドカバーとしても使いやすいです。まとめ
花を増やすためには、5〜6月の花後に切り戻すことが大切。
枝を軽く整えることで、翌年に花芽をつける脇芽が伸びやすくなります。
切り戻しは必ず緑の部分で行い、毎年少しずつ若い枝へ更新していくことが、安定した花付きにつながります。
作業のあとは、少量の肥料、乾かし気味の水管理、十分な日当たりをすることで、翌春の花がより豊かになります。
















