- AGRI PICK 編集部
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そんな芝生ですが、実は種類がたくさんあるのを知っていますか?芝生もほかの植物のように、種類によって適した気候や育ち方が違うのです。そこでこの記事では、芝生の種類や選び方を詳しく紹介!管理が楽なおすすめの芝生もピックアップしました。
芝生のメリット
芝生を敷くことで、実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、芝生がもたらす主な効果を紹介します!景観が美しくなる
緑の芝生で覆われた庭は美しく、眺めるだけで目を癒してくれます。花壇の花や樹木とのコントラストも美しく、自宅にいながら自然の中にいるようなリラックスした雰囲気に。密度のある芝生を選べば、雑草対策にもなります。安全性が高まる
きれいに刈り込んだ芝生はフワフワとした弾力があり、まるで天然のじゅうたんのよう。子どもが走り回って万が一転んでも、芝生がクッションの役割を果たし、衝撃をやわらげてくれます。庭が遊び場に
芝生の庭は、子どもやペットの遊び場にぴったり!わざわざ公園に行かなくても、ピクニック気分が味わえます。また、土がむき出しの庭は、雨が降ったあとはぬかるんでしまいますが、芝生の庭ならその心配がありません。土埃やヒートアイランドの防止
芝生を張ることで地面がむきだしにならず、乾燥した季節でも土埃を防げます。また、芝生には地面の温度上昇をやわらげる効果も。近年都市部で問題になっているヒートアイランド現象は、緑地の減少も大きな要因となっています。アスファルトやコンクリートの地面は熱をため込んでしまいますが、芝生は太陽の光を遮り、さらに水分を蒸散することで温度の上昇を抑えてくれます。芝生の基本的な分類
芝生は、耐暑性や耐寒性の強さから「暖地型」と「寒地型」に分類されます。日本芝は暖地型で、西洋芝には寒地型と暖地型があります。暖地型(夏芝)
暑さに強い一方、寒さには弱いのが特徴で、「夏芝」とも呼ばれます。20℃以上で生育が旺盛になり、気温が低くなると地上部は枯れてしまいますが、これは休眠状態であり、春になって気温が上がると再び緑の姿に。日本に元々自生していた「日本芝(和芝)」はすべてこの暖地型で、いくつかの「西洋芝(洋芝)」も含まれます。暖地型の芝は生長スピードがゆっくりなので、比較的管理が楽なのもメリット。寒地型(冬芝)
寒さに強い一方、暑さには弱いのが特徴で、「冬芝」とも呼ばれます。耐寒性が非常に高く、0℃以下でも枯れずに青々とした葉を保ちますが、25℃以上になると生育が止まります。特に高温多湿の環境が苦手で、病害虫にかかりやすくなるため注意が必要。西洋芝(洋芝)の大半がこの寒地型で、日本芝(和芝)で該当するものはありません。寒地型の芝は生長が早い種類が多く、こまめな刈り込みや散水などが必要になります。暖地型の芝生の種類
暖地型芝生の代表的な種類を紹介します。暖地型は気温が12℃を下回ると地上部が枯れてしまいますが、高温多湿に強いため、日本の気候によく合います。特に日本でも自生している「ノシバ」や「コウライシバ」は、育てやすい種類です。ノシバ(野芝)
山などに自生している日本芝で、公園やゴルフ場、道路脇などによく使われます。日本芝の中では最も寒さに強く、乾燥や病害虫に対する耐性も強いのが特徴。また葉は硬く、踏まれてもへこたれないタフさも兼ね備えています。生長が遅く手入れも楽ですが、その分葉は荒く密度が低いため、美観はやや劣ります。バミューダグラス
「バミューダグラス」は暖地型の西洋芝の総称で、代表的な品種に「ティフトン」や「リビエラ」などがあります。濃く鮮やかな緑色の葉が特徴。踏みつけに強く、クッション性もあることから、競技場やゴルフコースなどでよく使われます。西洋芝の中では、比較的暑さや乾燥に強いため、日本でも育てやすい芝です。美しい見た目を保つためには、水はけと日当たりの良い環境、定期的な刈り込みが必要。コウライシバ(高麗芝)
日本芝の一種で、庭やゴルフ場のグリーンにも使用されるポピュラーな芝生です。葉の幅は細めで密度も高く、美しい芝生に仕上がります。耐暑性と耐乾性に優れるほか、病害虫にも強いのも魅力。茎葉の伸びるスピードが遅めの芝なので、比較的管理も楽です。センチピードグラス
西洋芝の一種で、ほふく茎を旺盛に伸ばして繁殖することから「ムカデシバ」とも呼ばれます。踏みつけにはやや弱いため、運動場には向きませんが、水路の脇や道路の法面、公園の緑地などに雑草抑制の目的でよく利用されます。また、根が地中でしっかり張ることから、あぜ道などがくずれるのを防ぐ効果も。バヒアグラス
草丈が30~70cmほどになる西洋芝の一種です。主に牧草や緑化用に使われますが、芝生としても利用できます。暑さ・乾燥に極めて強く、砂地でも深く根を張る生育旺盛な芝です。寒地型の芝生の種類
寒地型芝生の代表的な種類を紹介します。寒地型は冷涼な気候を好むため、日本では関東以北の地域に適した芝生です。冬の間も美しい緑を楽しめますが、こまめな刈り込みが必要になるなど、暖地型よりも手間がかかります。ベントグラス類
寒地型芝生の中で最もよく知られているのが、ベントグラス類です。やわらかな細葉が特徴で、ゴルフ場のグリーンによく使われる芝生です。寒さには強いものの、乾燥や病害虫に弱い面もあります。また、根が浅いことから乾燥には弱く、水切れには注意が必要。ケンタッキーブルーグラス
病害虫に強く生育も遅いため、西洋芝の中ではメンテナンスが楽な芝生です。ベントグラス類よりもさらに暑さに弱く、日本では北海道でよく使われています。踏みつけに強いので、ゴルフ場や庭用に最適。ライグラス類
種をまいてからの生長が早く、寿命が短いことから、主に牧草として利用されます。濃い緑の葉が美しい芝生ですが、踏みつけには弱いので運動場などには向いていません。また、翌年の夏には枯れてしまうライグラス類の特徴を活かし、暖地型の芝生と組み合わせることで、一年中緑の庭を楽しむオーバーシ―ディングに利用されることも。ファインフェスク
フェスク類の一品種で、葉が細いのが特徴。フェスク類は寒冷地芝生に分類されますが、比較的暑さに強く、根を深く張ることから乾燥にも強い芝生として知られます。日本では北海道や東北地方で育てることが可能です。トールフェスク
こちらもフェスク類の一品種で、葉幅が広めという特徴があります。ファインフェスクよりも耐暑性と耐乾性が強く、草丈が高くなるため、かつては牧草や緑化用として使われていました。現在では品種改良が進み、芝生としても多く利用されています。芝生の選び方
芝生には多くの種類があり、その特徴もさまざま。どれを選べば良いか迷ってしまいますよね。そこで、ここでは芝生を選ぶ際にチェックしたいポイントを紹介します。まずは気候を確認!
芝生には、暖地型と寒地型があるように、それぞれ生育に適した温度があります。そのため、芝生の種類は育てる地域の気候に合うものを選ぶことが重要です。日本国土は南北に長いことから、南端と北端では大きな温度差がありますが、自分が住んでいる地域がどのような気候なのか、明確に判断するのは難しいですよね。そこで、指標になるのが「温量指数(暖かさの指数)」です。温量指数とは、1年間の月平均気温が5℃以上となる月につき、5℃を引き、引き算後の数値を合計したものです。その数値をもとに、日本全国の地域をⅠ~Ⅵの6つのエリアに区分することができます。
今回紹介した芝生の種類がどのエリアに適しているか、表にまとめました。選ぶ際の参考にしてみてくださいね。
温暖指数による地域区分
・Ⅰ/~65℃
・Ⅱ/65~85℃
・Ⅲ/85~100℃
・Ⅳ/100~120℃
・Ⅴ/120~140℃
・Ⅵ/140℃~
型 | 種類・品種名 | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ |
暖地型 | ノシバ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
バミューダグラス | △ | ◎ | ◎ | ◎ | |||
コウライシバ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |||
センチピードグラス | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||
バヒアグラス | ○ | ◎ | ◎ | ||||
寒地型 | ベントグラス類 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ |
ケンタッキーブルーグラス | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | ||
ライグラス類 | ○ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | |
ファインフェスク | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | ||
トールフェスク | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ |
日陰に強い品種
芝生を美しく保つためには、日当たりの良い環境が望ましいですが、比較的耐陰性のある種類もあります。中でも特に日陰に強いものとしては、暖地型ならノシバやコウライシバ、寒地型ではトールフェスクやケンタッキーブルーグラスがあります。これらの種類は日陰でも育てることができますが、日ごろの管理に少々気をつけなければなりません。光合成の効率を上げるために、通常よりも葉は長めに保ちましょう。また、日陰では水が乾きにくいため、散水のし過ぎは避けてください。
乾燥に強い品種
ノシバやコウライシバなどの日本芝は乾燥に強く、夏の高温期以外は基本的に水やりは必要ありません。西洋芝は乾燥に弱いものが多いですが、バミューダグラスやファインフェスク、トールフェスクなどは、比較的耐乾性が強い種類になります。ただ、いくら乾燥に強い種類でも、水切れの状態が続くとと枯れてしまいます。ノシバなどの日本芝は、葉が黒ずんだり葉先が丸まったりしたとき、西洋芝は踏み跡が残るようになったときが水切れのサインです。
湿気に強い品種
日本の夏はどうしても湿度が高くなりがち。湿気を嫌う種類は根腐れしたり、病気にかかったりしやすくなります。心配な人は、湿気に強い芝生を選ぶと良いでしょう。暖地型ではノシバやコウライシバ、バミューダグラス、寒地型ではケンタッキーブルーグラスやトールフェスクが耐乾性のある種類になります。グラウンドは踏みつけや擦り切れに強い品種を!
運動場や人の往来が多い場所では、できれば踏みつけや擦り切れに強い芝生を選びたいところです。種類としては、ノシバ、バミューダグラス、ケンタッキーブルーグラスなどがこれに当たります。ただし、基本的に芝生は日ごろの管理を怠ると、どうしても薄くなってしまいます。庭であれば、通り道に飛び石を置くなどの対処をしておくと安心です。手入れが楽!初心者におすすめの芝生
ここからは、初心者でも管理しやすい芝生の種類を暖地型と寒地型に分けて紹介します。芝生は種でも購入できますが、マット状に切り取った切り芝(ソッド)やロール芝のほうが手軽で設置も簡単です。暖地型のおすすめ芝生
TM9(ティーエムナイン)
トヨタ自動車が開発した、コウライシバの改良品種。葉の色が濃く、きめが細かいのが特徴です。生長スピードが遅いので、芝刈りの頻度が少なくて済みます。葉がソフトでチクチクしないのも魅力。こまめな刈り込みが面倒という人や、忙しくて手入れの時間があまりないという人におすすめです。つくばグリーン
ノシバの品種改良種であるつくばグリーン。ノシバと比べ、葉丈は約6割と非常に短く、芝刈りの回数も半分ほどで済むことから人気があります。生育が旺盛で活着しやすく、耐陰性もあるので管理しやすい芝生です。ティフトン
バミューダグラスの代表的な品種です。暑さ・乾燥に強く、踏みつけ耐性も高いため、スポーツグラウンドのカバーに最適。お日様が大好きなので、最低でも1日5時間程度の日当たりがある場所が適しています。寒地型のおすすめ芝生
シャーク
寒地型芝生の定番、ベントグラスを改良して生まれた品種です。 シャークはベントグラス類の中でも、特に耐暑性に優れ、比較的手間がかかりにくい芝生です。葉は繊細で美しく、年間を通して高密度の芝生を楽しむことができます。ケンタッキーブルーグラス
美しい葉色とやわらかな質感で、西洋芝の中でも特に人気の高い品種です。病害虫に強く、踏みつけなどで葉が擦り切れても回復が早いため、管理しやすい芝といえます。芝生の手入れ方法や張り方などは、こちらの記事で紹介しています!
芝生の見分け方は?
すでにある芝生と同じものを張りたいけれど、種類がわからない…そんなときには、こちらの芝生の見分け方が参考になります。あげられているポイントは、「冬の葉の色」「葉の幅」「ほふく茎」「葉の配列」「葉耳」「葉舌」「カラー」「葉の先端の形」「葉の表面の形」など。細かくポイントが解説されていて、ばっちり芝の種類を見分けられそうです。
株式会社 共栄社「なんでも鑑定!芝生の草種の見分けかた」