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園芸家
Shabomaniac!幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。 Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com Instagram:@shabomaniac 著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)、『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)…続きを読む
コノフィツムは脱皮する冬型の多肉植物
コノフィツムは、多肉植物では珍しく冬に生育期を迎え、夏に休眠するという普通と逆のサイクルで生長します。春に表皮が黄色っぽく変色してきたら休眠に入るサイン。やがて古い葉が枯れて表面が茶色くしわしわになりますが、萎れているわけではありません。最低気温が20℃を下回る秋ごろから生育期を迎え、古い皮を破って新しい葉が顔を出します。この脱皮が行われるのは1年に1回、生育期に入る9~11月ごろ。単幹の葉は脱皮によって分頭しながら毎年2倍のペースで増えていき、皮がむけるとサイズも一回り大きくなって鉢いっぱいに群生します。
女仙(メセン)類とも呼ばれる
ハマミズナ科の多肉植物は「メセン類」とも呼ばれています。同じ多肉植物の中でもサボテンがごつごつとして男性的な見た目なのに対し、表面がつるっとして丸みを帯びた女性的な見た目であることがその由来です。コノフィツムの園芸種は約400種
メセン類には2,000種以上の原種があり、冬型と夏型の2種類に分かれています。コノフィツムは冬型に属し、原種は170種ほど。愛好家らによってさまざまな品種が生み出され、400種くらいの園芸種が流通しています。コノフィツムとリトープスの違い
同じくメセン類の多肉植物にリトープスがあります。コノフィツムとリトープスは、どちらもアフリカ原産で脱皮で生長するという共通点をもち、形もよく似ているので混同してしまう人がいるかもしれません。判断に迷ったときには色と形に注目してみましょう。コノフィツムは緑色が多く、葉の形も足袋型やくら型、丸型などさまざまです。それに対し、リトープスは茶色や灰色で表面に模様が入るものが多く、頂部が平べったい形をしています。
脱皮の仕方も少し違います。コノフィツムは全体が枯れたようにしわしわになり、皮を破るようにして新芽が出てきます。一方のリトープスは、古い葉の真ん中からぱかっと二つに割れてくるので、脱皮の時期は要注目です!
コノフィツムはどこで買える?
ホームセンターなどではサボテンや多肉植物のコーナーに置かれているコノフィツム。Yahoo!オークションなどネット通販でもいろいろな種類が販売されており、1株あたり約数百~数千円程度で購入できますよ。コノフィツムの基本情報
コノフィツムの原産地アフリカでは、常に日の当たる環境で自生しています。日本では夏と冬で日差しの強さが大きく異なるため、春までの穏やかな光に慣れていた状態から急に初夏の強い光に当ててしまうと、表皮が焼けてしまうことも。悪い場合では株全体が溶けてしまいます。また、一つひとつの株が小さく、高温多湿に弱いことから、地植えには適しておらず鉢植えが基本です。基本情報
学名 | Conophytum |
科名 | ハマミズナ科 |
属名 | コノフィツム属 |
原産地 | 南アフリカ、ナミビア南部 |
園芸分類 | 多肉植物、観葉植物 |
形態 | 多年草 |
特徴
草丈
2~10cm耐寒性
普通~やや弱い ※種類による耐暑性
やや弱い~弱い ※種類による栽培難易度
普通生育型
冬型コノフィツムの花は昼咲き種と夜咲き種の2種類
脱皮をして株が大きくなってくると花芽が付いて花を咲かせます。種類によって赤、白、黄色、紫、ピンク、オレンジ、茶などさまざまな色があり、さらに日中に花を咲かせる「昼咲き種」と夜に咲かせる「夜咲き種」があります。開花時期は種類にもよりますが大体10~3月ごろ。巻き花や縮れ花など、変わった咲き方をする種類もあるようです。花言葉
同じような葉姿の株がいくつも並んで群生することから「似たもの同士」という花言葉が付けられています。コノフィツムの品種・種類
コノフィツムの葉姿は非常に個性豊か。足袋型(ハート型)、くら型、丸型(コマ型)、有窓型など、いくつかに分類されています。それぞれ大型・中型・小型に分かれ、表面の模様も異なるなどまさに千差万別!頂部が2つに割れた「足袋型」
フィシフォルメ
茶色の模様が入る足袋型。芳香を放つ白やピンクの花を咲かせます。花園
日本で作られた園芸種の中でも最古の種のひとつ。オレンジ色の花を咲かせる昼咲き種の中型足袋型で、3~4cmまで生長します。桜貝
赤い縁取りが印象的な中型の足袋型です。オペラローズ
鮮やかな赤紫の花を咲かせます。白秋
白い花を咲かせ、草丈5cm程度まで育ちます。星姫
青緑色の肌をもち、かわいらしいピンクの花を咲かせる昼咲き種。日本で作り出された園芸種です。歌姫
紫の花を咲かせる小型の昼咲き種です。オーロラ
ハート型のふっくらした葉姿のオーロラ。中型の昼咲き種で、薄紫の美しい花が咲きます。頂部が平べったい「くら型」
雨月
平べったい小石のような雨月。薄いピンクや紫の花が咲きます。ペアルソニー
真上から見た姿はまるで空豆。花はピンク色です。宝殿(宝殿玉)
コノフィツムの中でも大型の品種。紫の花を咲かせます。ウィッテベルゲンセ
窓の紋様が特徴的なくら型のウィッテベルゲンセ。個体によって紋様の入り方が異なり、線が太くはっきりした株ほど高い価値が付くようです。夜咲き種で、白い花を咲かせます。ころんと丸い「丸型(コマ型)」
カルキュルス(翡翠玉/ひすいだま)
つるんとした質感と玉のようなまん丸フォルムが特徴。葉の真ん中に一本の筋が入り、夜咲き種で黄色い花を咲かせます。水滴玉
豆のような小さな球体。花は薄紫色です。ウィルヘルミー
丸くころんとした葉姿がキュート。黄色い花を咲かせる昼咲き種です。清姫
葉の上下で色が異なる清姫。頂部は薄い緑色、根本の方は褐色というツートンカラー。窓には不規則な線紋様が入ります。濃紫
小型の丸型コノフィツム。昼咲き種で、名前の通り濃い紫色の花を咲かせます。ステファニー
葉全体にふわふわとした産毛を生やす珍しい品種です。こちらは夜咲き種。淡い黄色の花を咲かせます。有窓型
ブルゲリ
透き通ったドーム状の株姿が魅力。ゼリーのようなふるふるとした質感で非常に人気が高い品種です。生育がゆっくりなので栽培は少し難しめ。マウガニー
緑色のコノフィツムが多数を占める中、珍しい褐色の肌をもつマウガニー。寒さが増すにつれて赤く色付いた姿はグミそっくり。ペルシダム
ペルシダムは同じ種類でも頂部の模様や形、色、質感のバリエーションが豊富です。肌の色は黒、灰色、茶色、赤などがあり、色の濃いものから透き通ったものまで多種多様。葉の表面に斑点が入り、株よりも大きな白い花を咲かせます。コノフィツムの育て方
コノフィツムは種類によって少しずつ性質が異なります。それに合わせて管理方法も調整してあげることが元気に育てるポイントです。栽培カレンダー
・植え付け・植え替え:10〜12月・開花期:9〜1月
・肥料:10〜2月
・株分け:10〜12月
・種まき:10〜11月
日当たり・置き場所
コノフィツムは全体的に日差しを好む多肉植物です。長い間日陰で管理するなどで生育期の光量が足りないと、初夏に溶けるように腐ってしまうことがあります。明るい室内で育てることも不可能ではありませんが、戸外に出してあげたほうが色鮮やかに育ちます。ただし、直射日光は苦手なので適度に遮光してあげましょう。有窓型
有窓型は日陰のない開けた場所で自生している種類がほとんどです。一日中日光に当たっているので光を好み、光量不足だと株が弱ってしまいます。冬は日のよく当たる場所に置き、休眠する夏は直射日光の当たらない明るく風通しの良い場所に移しましょう。足袋型
足袋型は比較的丈夫です。一年を通じて直射日光の当たらない明るい場所で管理します。丸型
小さめの丸型などは岩の隙間や木陰などに生息しているので、やわらかい光を好みます。それでも年間を通じた日照が必要。休眠期の夏でも、遮光しながら風通しが良く涼しい場所で管理しましょう。水やり
6〜8月ごろの夏場は休眠期に入るので水やりを控えましょう。完全に断水したほうが夏越ししやすいともいわれていますが、あまり乾燥に強くない種類の場合、冬になってから腐って溶けてしまうことがあります。乾燥に強い有窓型や大型の足袋型などは断水してもすぐ枯れることはありませんが、それでも適度な水やりは必要です。土が乾き切らないよう、朝か夕方に軽く水やりしたり葉水をしたりして、株がカラカラにならないように注意しましょう。頻度は1カ月に1回くらいが目安です。一度にたくさん水を与えてしまうと鉢内が過湿状態になるので、土の表面が湿るくらいにとどめます。
秋からは徐々に水やりの頻度を増やします。9〜12月は1~2週間に1回くらいのペースで、土が完全に乾き切る前にたっぷりとあげましょう。厳寒期の1〜2月は気温の低い時間帯に水やりすると凍ってしまうことがあるので、晴れた日の午前中に行います。夏に比べて土の乾きが遅いので、鉢底から流れ出ない程度に抑えましょう。
晩春の3月ごろから初夏の5月ごろにかけては休眠に備えて徐々に水やりを減らしていきます。
地域によって気候差があるので、日頃から株の状態をよく観察し、温度計で気温をチェックしながら頻度や量を調整することも大切です。
温度
栽培適温は8~25℃夏越し
暑さには弱いので夏は涼しく風通しのよいところで管理します。ただし乾燥させ過ぎると休眠期が明けても水を吸わなくなってしまいます。夏場でも土を適度に湿らせておいたほうが株が痛みにくく、秋からの生育もよくなります。また、コノフィツムは高温多湿な環境が苦手です。戸外で育てる場合は梅雨の長雨に当てないよう雨避けをしてあげましょう。冬越し
耐寒性があるので冬は-2度くらいまでは耐えるとされていますが、できれば0~3度に保つのがベスト。暖かい昼間であれば戸外に出してもかまいませんが、夜は霜が当たらないよう室内に取り込みましょう。あまり室温が高過ぎると生育が止まることがあるので注意が必要です。肥料
植え替えのタイミングで土に元肥を混ぜておきます。生長を促したい場合は生育期に追肥してもよいでしょう。緩効性の置き肥を少量か、液体肥料であれば2週間に1回くらいが目安です。あげ過ぎは根腐れの原因になるので要注意。用土
コノフィツムに適しているのは水はけのよい土です。市販のサボテン・多肉植物用の土を使うと便利ですが、コノフィツム用に配合したほうが生育がよくなります。おすすめの配合①
- 鹿沼土(小粒):2
- 赤玉土(小粒):2
- ピートモス:2
- 川砂:2
- くん炭:2
おすすめの配合②
- 赤玉土(小粒):4
- ピートモス:3
- 川砂:3