目次
ディッキアについて教えてくれたのは
園芸研究家・山城智洋さん
園芸研究家として大阪府豊中市でサボテンと多肉植物の専門園「山城愛仙園」を経営。自社ネット通販サイト「aisenen e-shop」や楽天市場店「とげ家」、展示即売場にて苗の販売を手がける。豊富な知識を生かし、NHK出版「趣味の園芸」にてサボテン・多肉植物に関する本の執筆・監修も担当。直近の著書はサボテンの最新品種や栽培のコツをまとめた「多肉植物 サボテン」(2021年2月19日発売)。公式サイト:https://www.aisenen.com/shop.html
著書:『多肉植物 サボテン』(NHK出版)
ディッキアとは
ディッキアは南米の岩場や川岸などに自生している植物で、パイナップルやエアプランツと同じブロメリア科の多年草です。縁に鋭いトゲのある多肉質の葉を放射状に生やし、見た目はアロエによく似ています。ノコギリの刃を思わせるイカつい印象とは裏腹に、葉の色は繊細かつ多彩。トリコームに覆われた白銀のものや、緑、赤などバリエーションに富み、葉色も淡かったり濃かったりとさまざまです。原種以上に交配種が豊富で、園芸で流通しているの品種のほとんどが東南アジアやタイから輸入された交配種です。また、欧米では改良品種の流通も盛んに行われています。
日本のホームセンターではまだあまり見かけませんが、個性的な葉姿や色から、多肉ファンの中にはディッキアの収集家も少なくありません。葉の生え方や形、葉やノギの色合いといった微妙な個性の違いが株選びの選択肢を広げてくれます。
ディッキアは暑さや乾燥、寒さにも強く、非常に育てやすい植物です。あまり水やりをしなくても元気に育ちますが、株が小さいうちは水はけのよい土に植えて水やりの回数を増やすと発根しやすくなるでしょう。
トリコームとは
トリコームとは、葉の表面や裏側に生えている白色の細かい毛のことです。原産地では乾燥した岩場や山岳地帯などに自生しているため、夜露や霧から水分を集めやすくしたり、強い日差しから身を守ったりする役割があるのだとか。ディッキアの基本情報
基本情報
学名 | Dyckia |
科名 | ブロメリア科(パイナップル科) |
属名 | ディッキア属 |
原産地 | ブラジル |
園芸分類
熱帯植物耐寒性
普通耐暑性
強いディッキアの花
トゲトゲしたフォルムから想像しにくいかもしれませんが、ある程度生長したディッキアの株は適切な環境で育てれば、ほぼ毎年を花を咲かせます。開花時期は昼夜の気温差が大きい春と秋。環境によっては一年に何度も花を咲かせる場合もあるようです。花芽は脇芽のような形で伸びてくるため、出始めは花と葉の見分けが難しいかもしれません。通常の葉よりも細かいトゲを生やし、内側が赤っぽく染まってきたら花芽の可能性が高いでしょう。
花芽が生長してくると蕾の集合体ができ、次第に蕾同士の間隔を開けながら花茎が縦に伸びていきます。花茎は一つの株から枝分かれして数本生えることも。花の色や大きさは種類によって異なり、色はオレンジや黄色が多いようです。
ディッキアの種類・品種
ここからはおすすめのディッキアの品種を紹介していきます。それぞれの栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど育てやすい品種になります。
マルニエルラポストレイ
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
エステベシー
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
ゴエリンギー
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
グランマルニエ
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
ブラックアイス
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
ケスウィック
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
ジョーズ
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
マーキュリー
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
アリゾナ
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
コリスタミネア
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
ダウソニー
栽培難易度 | ☆☆☆☆ |
ディッキアの希少種を手に入れるなら通販がおすすめ
残念ながらディッキアはホームセンターではなかなかお目にかかれません。サボテンや多肉植物の専門店であれば取り扱っている可能性もありますが、特にジョーズやマーキュリーなどの希少種は市場では出回らないため、通販で探すとよいでしょう。ディッキア初心者であれば、手に入りやすい無名の交配種から育てるのがおすすめ。交配種は環境変化に強く栽培難易度も易し目です。ディッキアの育て方
栽培カレンダー
水やり
ディッキアは乾燥地帯に生育する植物ですが水を好みます。一方で土が乾いていないのに水やりをすると根腐れを起こすので、指で土が乾いていることを確認してから鉢底から水が流れるまでたっぷり水をあげましょう。春〜秋の生育期は土が乾いたら水を与えるようにし、夏場など土が乾燥していれば毎日水やりしてもOKです。休眠期に入る冬場は乾かし気味にして月2回程度の水やりで育てます。また、葉に勢いよく水をかけてしまうとトリコームが水圧で剥げてしまうので注意が必要です。なお、しっかりと日に当てて管理をしている株はトリコームが取れにくくなります。
日当たり
ディッキアは強い日光を好みます。品種によっては真夏の直射日光にも耐えられるほど。マンションのベランダなど直射日光が当たる場所は一般的な観葉植物にとっては過酷な環境ですが、ディッキアの栽培には向いています。戸外に置いて雨ざらしにしていてもしっかり育ちますが、直接雨が降り注がない軒下などのほうがおすすめです。ディッキアは日光に当てると株が色付いて本来の色味が出てきます。ただ、日差しが強過ぎると葉焼けを起こすこともあるため、葉の色が黒に近いような品種は特に必要に応じて遮光してあげてください。日当たりの悪い部屋にしか置けない場合、春から秋までの期間は戸外で育てる方法もアリです。
用土
夏場は毎日のように水やりすることもあるため、水はけのよい土を用いて土の中に水が溜まりすぎないようにします。おすすめは市販のサボテンや多肉植物用の土。自分で配合する場合、赤玉土や鹿沼土をベースに粒小の培養土や軽石を合わせると水はけがよくなります。肥料
ディッキアは本来、栄養分の少ない岩場などに育成している植物なので基本的に肥料は不要です。与えるとすれば生育期の3~8月ごろ、緩効性の固形肥料を置き肥するか、もしくは約1,000倍に希釈した液体肥料を2週間に1回の頻度で与えるくらいで十分でしょう。温度
ディッキアは暑さにも寒さにも強く、冬は0℃くらいまで耐えられます。生長した大型の株の場合、霜や雪、寒風に当たらないようにすれば戸外で越冬させることも可能です。屋根がない場所に置くのであれば、園芸用のカバーなどを被せて防寒対策をしてあげましょう。小型の株や植え替え直後の株は、気温を5℃以上に保つようにして室内で冬越しさせるのがおすすめです。ディッキアの植え替え
ディッキアは順調にいけば数年から数十年は生長するため、生長スピードに合わせて1~2年に1回の頻度でひと回り大きな鉢に植え替えます。鉢底から根が飛び出していたら植え替えのタイミングです。暖かくなってから梅雨に入る前の4~6月、もしくは9~10月に行います。トゲで手を痛めないよう滑り止め付きの軍手を着用して作業しましょう。用意するもの
苗
葉が肉厚なもの、トゲが高い密度で生えている美しい株姿のものがおすすめです。土
市販のサボテン・多肉植物用の土もしくは赤玉土や鹿沼土などをベースに水はけをよくした自作の配合土を使います。水はけが良過ぎる場合は培養土に赤玉土や軽石を混ぜて水持ちを調整してください。鉢
ひと回り大きな鉢を用意します。乾燥しやすい素焼きの鉢がおすすめです。鉢底石
排水性がよく、溶けて土壌改良に使えるものがおすすめです。手順
- 鉢に鉢底石を敷き詰める
- 鉢の1/3まで土を入れる
- 苗をポットから取り出して根鉢を崩す
- 傷んでいたり枯れていたりする根を取り除く
- 鉢の中心に苗を入れ、根が見えなくなるまで土を入れる
- 植え替えから1週間は水やりをせずに管理
ディッキアの殖やし方|株分け
ディッキアは品種によって一年で多くの子株を付けるため、親株から取り外して株分けで増やします。株分けは植え替えと同様、成長期の春と秋に行います。株分けの手順
- 鉢を叩いて株を引き抜く。抜けにくいときは割り箸などを鉢と土の間に差し込んで土を崩す
- 土と絡まった根をほぐし、根本に付いている子株の株元を持って根がちぎれないように慎重に取り外す。根がちぎれると子株の生長に時間がかかるので注意する
- 根にくっついている枯れた葉や、傷んでいたり枯れていたりする根を取り除く
- 植え替えと同じ手順で鉢に植え付ける
ディッキアの殖やし方|実生
ディッキアは花が咲いた後に種を採取し、実生で栽培することも可能です。種は時々オークションでも販売されています。ただし、実生よりも子株を株分けして増やす方法が一般的です。手順
- 微粒の赤玉土や鹿沼土、もしくは種まき用の土を鉢(ポット)の半分くらいまで入れる。発芽後に根が張りやすいよう、土の表面に微粒のバーミキュライトで0.5~1cm程度の層を作る
- 沸騰させたお湯を流し込むか電子レンジで土が熱くなるまで加熱して土を殺菌する。 ベンレート水和剤を水に溶かしたものなどで殺菌剤を作り、鉢底から流れ出るまでスプレーで吹きかけてもよい
- 加熱した場合は土が冷めるのを待つ。土の用意ができたら種が重ならないように並べる。土は被せない
- 霧吹きで全体を湿らせて鉢にラップやガラス板などでふたをする
- 受け皿に水を溜めて1cm程度の腰水で管理する
ポイント:強い日差しに当てないこと、温度は20℃以上に保つことで発芽しやすくなります。
ディッキアの病気・害虫
sディッキアはカイガラムシやハダニの被害に遭いやすい植物です。
カイガラムシ
カイガラムシは白い綿毛のような見た目をした全長3mmほどの小さな虫です。葉の付け根などにくっついて養分を吸汁し、株を弱らせます。カイガラムシは成虫になると体からワックスのようなものを分泌して体を硬いからで覆うようになり、殺虫剤が効かなくなるため、見つけたらピンセットや歯ブラシで擦り落としましょう。ハダニ
ハダニは黄色や赤色をした0.5mmほどの小さな虫で、葉の裏側に寄生して吸汁します。ハダニの被害に遭った部分は白い斑点が残るのですぐに分かります。白くなると葉緑体が抜けて光合成が上手くできなくなり、枯れてしまうことも。見つけたら早めに殺虫剤で駆除してください。普段の水やりとは別に霧吹きで葉水を与えるとハダニを予防できます。ディッキアQ&A
徒長や葉先が枯れる原因は?
山城さん
室内で管理する場合、日光が足りないとトゲの密度が低くなり、葉が細くなるなど徒長の原因になります。風通しと日当たりのよい窓辺に置き、エアコンの風が直接当たらないよう配慮してあげましょう。
ディッキアが水不足のときのサインは?
山城さん
葉が丸まったり、薄くなったりしていれば水不足のサインです。
ディッキアの冬越し方法は?
山城さん
寒さに強いとはいえ気温が3℃以下になると枯れてしまう恐れがあり、さすがに霜や雪には耐えられません。気温が氷点下になる前に屋内に取り込み、温室か明るい室内で管理しましょう。
ディッキアに子株がついたらどうすればいい?
山城さん
そのままにしていても構いませんが、親株から取り外し、鉢に植えて殖やしてもよいでしょう。
ディッキアを発根させるには?
山城さん
ディッキアを発根させるには、適度な温度と灌水がポイントです。