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京芋とは?
京芋は里芋の一種で、ねっとりとした独特の風味があります。長さは20~40cm程度で、里芋と同様に秋から冬にかけて旬を迎えます。その形状と芋の半分以上が地面から出ている様子がたけのこに似ていることから、別名「たけのこ芋」とも呼ばれています。子芋や孫芋を食用とすることが多い里芋のなかで、京芋は子芋ができにくく親芋を食べる品種であることも特徴のひとつです。京芋という名前から「京都で作られるのでは?」と思う方も多いかもしれませんが、もともとは宮崎県の特産品で現地で消費されていました。昭和30年代に当時の農協・市役所・青果会社が「県外にもこの芋を広めよう」と関西に売り込みに行った際に、京都で食べた里芋の精進料理の味が絶品だったことから、この名前が付けられたといわれています。(参考:独立行政法人 農畜産業振興機構)
同じく「京芋」と呼ばれる芋として「海老芋」があります。よく似ていますが、別の食材です。主に京都で生産される「京野菜」のひとつで、エビのように曲がった形をしています。ちなみに海老芋は、子芋と親芋の両方を食べる品種です。
京芋の栄養
京芋を含めて里芋には、カリウムや食物繊維が多く含まれています。また、独特のぬめりはガラクタンという成分によるものです。昔ながらの料理のひとつに「里芋の煮っころがし」がありますが、これは里芋のぬめりを上手に利用して仕上げる料理です。また薬膳では、里芋は「化痰(痰などを改善する)」「和胃(胃腸を整える)」などの働きがあるとされ、空気が乾燥する秋から冬の食養生にもよく使われます。
京芋の保存方法
ポイントは、乾燥と低温を避けて保存することです。冷蔵庫に入れると低温障害を起こし、早く傷んでしまう原因になります。新聞紙などで1本ずつ包んで、冷暗所に置いておきましょう。土がついているものは乾燥を防ぐためにそのままの状態で保存し、食べる直前に洗うようにします。冬場など寒い時期には、冷え過ぎないように段ボールに入れておくようにしてください。また、表面にキズが付いているものは傷みやすいので、できるだけ早めに使うようにします。
京芋の値段
京芋はネット通販などでも入手できます。500g前後のサイズが1本500円ほどで出品されていました(2020年11月現在)。京芋の食べ方と下ごしらえの方法
京芋はねっとりとした食感があり煮崩れしにくいため、煮物によく使われます。下ごしらえの方法は「京芋の煮物」のレシピで詳しくご紹介しますが、基本的には「皮をむいて下ゆでする」こと。こうすることでアクが抜けて、味が染み込みやすくなります。下ゆでをした後の京芋は、冷蔵庫で保管し数日以内に使用するようにします。もし食べきれない場合には冷凍保存をすれば、3~4週間程度の長期保存ができます。冷凍することで食感が変わってしまいますが、煮物などに使う場合は味が染み込みやすいというメリットもあります。
手のかゆみや口のイガイガの原因は?
京芋や里芋を扱う際に、手がかゆくなったり、口のなかがイガイガしたりした経験のある方もいるかもしれません。これは、芋のなかに含まれる「シュウ酸カルシウム」という針状の結晶をした成分によるものとされ、エグミの原因にもなっているといわれています。この成分は京芋や里芋だけでなく、たけのこやほうれん草などにも含まれていますが、「下ゆでする(ゆでこぼす)」ことによって取り除くことができます。調理する際の手のかゆみ対策としては、ゴム手袋をするなどの方法もあります。また、手がかゆくなってしまった時は手をしっかりと洗うようにしてください。シュウ酸カルシウムは酸に溶けやすいという性質があるため、酢水(酢に水を加えて薄めたもの)で洗うようにするのもおすすめです。
定番!京芋の煮物を作ってみよう
京芋が手に入ったら、定番の煮物を作ってみましょう。今回は京芋だけで作るシンプルなレシピをご紹介します。京芋の煮物のレシピ
〈材料〉作りやすい分量
・京芋 大1本(600g程度)
・出汁 150~200㏄
・しょうゆ・みりん 各大さじ1
・柚子など柑橘類の皮(お好みで) 少々
作り方
1.京芋は皮をむいて、一口サイズに切る。2.鍋に1の京芋を入れて、ひたひたになるくらいの水を加えて加熱する。沸騰したら弱火にして、アクが出てきたら取りながら約10分煮る(下ゆで)。この時点では、固めにゆで上がっていればOK。
3.2のゆで汁をいったん捨てて、出汁(京芋がひたひたに浸かる量)・しょうゆ・みりんを加えて、もう一度弱火で約5分煮る。煮汁が少なくなれば、できあがり。盛り付ける際に、柚子などの柑橘類の皮を刻んだものを、お好みで添える。
ポイント
調味料を入れて煮詰める時に、落し蓋などを使うと味が染み込みやすいです。落し蓋がない場合には、キッチンペーパーなどを円形に切ったものを具材の上にのせてください。下ゆで後の京芋でつくる、和風アレンジ料理
下ゆでした京芋があれば、ちょっとしたアレンジを加えることで「もう一品」が簡単に作れます。独特の風味がある京芋を使うと、どこかホッとする味わいの料理に仕上がります。冷凍保存をした京芋を使用する場合には、解凍せずに凍ったままの状態で調理するようにしてください。京芋のごま和え
ねっとりとした食感が特徴の京芋は、ごまやナッツ類との相性も抜群です。下ゆでをした京芋をごま和えにすると、コクのある味わいになります。香ばしく煎ったごまを上から振りかけるだけでも、一味違った味わいが楽しめます。柔らかめの食感が好きな方は、下ゆでする時間を少し長めにしてください。京芋とにんじんの煮物
にんじん・油揚げなどの具材と下ゆでした京芋を組み合わせた煮物です。ねっとりとした食感の京芋が入ることで、食べ応えのある一品に仕上がります。おせち料理などでは、京芋やにんじん・干し椎茸・れんこんなどを素材ごとに別々に煮て、最後の仕上げで一緒に盛り付けることもあります。京芋の味噌汁
下ゆでした京芋は、味噌汁や豚汁などに加えるのもおすすめです。根菜類やきのこ類、ねぎ類、青菜と組み合わせるのもよく合います。旬の食材をたっぷり使って、具だくさんの汁物にしてみてはいかがでしょうか。子どもにも人気!京芋を使った、洋風の養生ごはん
京芋は和食によく使われる食材ですが、実は洋風のメニューに使うのもおすすめです。今回は、子どもにも人気がある洋風の料理をご紹介しますね。京芋の揚げ焼き(京芋フライ)
京芋を揚げ焼きにして、自然塩をパラりと振った一品。子どものおやつにも、大人のおつまみにもぴったりです。生のまま揚げると時間がかかるため、一口サイズに切って下ゆでした京芋を使って、少なめの油で揚げ焼きにすると作りやすいです。京芋のコロッケ
子どもが大好きなコロッケも、京芋を使うとねっとりとした食感が楽しい一品になります。我が家では、柔らかく煮た京芋をマッシャーなどでつぶして、塩や味噌などで味を付けた後、衣をつけて揚げ焼きにしています。京芋のグラタン
柔らかく煮た京芋に、豆乳(牛乳でもOK)・塩・味噌を加えてペースト状にして「ホワイトソース」の代わりにします。具材は、鶏肉やきのこ類・玉ねぎなど好みのものを使います。小麦粉やバターなどを使う一般的なグラタンとはまた違った、ヘルシーな一品ができあがります。独特の風味がある京芋、ぜひ味わってみよう
秋から冬にかけて旬を迎え、ねっとりとしていて独特の風味が楽しめる京芋。定番の煮物だけでなく、子どもにも人気のある洋風料理にも幅広く使うことができます。下ごしらえをしておけば、いろいろな料理にアレンジできるのも忙しい時には嬉しいですね。今年はぜひ、いろんな食べ方で京芋を味わってみませんか。