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今回は、兵庫県内から神戸市北区淡河町に移住して、かやぶき屋根の古民家で「はなとね」というベーグル店を営む村上敦隆さん、妻・のりこさんにインタビュー。神戸での暮らしについて伺いました。
神戸の特徴と魅力
神戸のすがた
神戸は兵庫県の南東部にあり、南は大阪湾、北には六甲山系がそびえる兵庫県の県庁所在地です。阪神工業地帯の一角であり、食品、機械、化学、造船などの各種工業がさかんです。三宮や元町には、旧外国人居留地や南京町(中華街)など外国の雰囲気を感じさせるエリアがあり、観光地としても有名です。北部の六甲山地周辺にはゆったりとした里山の風景が広がります。北区や西区の田園地帯では農業もさかんです。六甲山の北側には、古くから日本人に親しまれている有馬温泉があります。神戸の気象
神戸は瀬戸内海性気候で、年間を通じて温暖・少雨で過ごしやすいという特徴があります。特に冬は雨が少なく、日照時間も多いので快適に過ごせます。地域によって差はありますが、積もるほどの雪が降ることは多くありません。三大都市圏へのアクセスが良い
三大都市圏へのアクセスが良いのも神戸の魅力のひとつ。また、神戸港から発着する船で九州や四国、中国などへ行くことも可能です。アクセスの目安 | ||
大阪へ | JR三ノ宮駅から新快速で21分 | |
名古屋へ | JR新神戸駅から新幹線で1時間4分 | |
東京へ | JR新神戸駅から新幹線で2時間44分 | 神戸空港から飛行機で約1時間5分 |
どのエリアに移住する?
神戸は一つの市とは思えないほど、エリアごとに個性があります。それぞれの良さがあるので、希望するライフスタイルに合わせて住む場所を決めるといいですね。エリア | 主な場所 | 特徴 |
都心エリア | 三宮、北野、元町など | 神戸の中心地である三宮、元町を中心としたエリア。 官公庁や企業が立ち並び、ショッピングセンターも多い。 新幹線や飛行機へのアクセスも良好。都会の暮らしを楽しめる。 |
閑静な住宅エリア | 岡本、六甲アイランド、灘、王子公園など | 関西の中でも人気のある「神戸の山の手」。 神戸中心部や大阪へのアクセスが良く、大学や美術館、博物館なども多い。 人工島の六甲アイランドは都市機能がコンパクトに集約されている。 |
下町情緒エリア | 湊川、新開地、新長田など | 大きな商店街や昭和レトロな街並みがあるエリア。 寄席や大衆劇場、スタジアムなど娯楽施設が豊富で、銭湯も多い。 |
海辺のエリア | 須磨海浜公園、塩屋、舞子など | 神戸西部の瀬戸内海に面したエリア。 海にも山にも近く、レジャーを楽しめる。 最近は若いクリエーターの移住が増えている。 |
ニュータウンエリア | 西神中央、名谷、鈴蘭台、岡場など | 街全体が計画的に開発された鉄道沿線のエリア。 駅の近くには商業施設や公的機関があり、利便性が高い。 里山にも近く、自然に親しみやすい。 |
里山エリア | 淡河 | かやぶき屋根の民家など昔ながらの田園風景が残るエリア。 野菜の直売所や観光農園、農業体験施設などがみられる。 |
神戸市北区淡河町に移住|「はなとね」経営の村上さんに聞く
教えてくれたのは
2014年に里山エリアの北区淡河町に移住し、パンの店「はなとね」を経営している村上敦隆さん、妻・のりこさん。「はなとね」の名前の由来は花と根から。村上敦隆さん
食というのは体を作っていく栄養素。体を作っていく根っこという意味と、外で買うからこその華やかさのイイトコどりができるようなパンやお菓子を作りたいという思いを込めています。
パン職人として独立を決める
村上さんは兵庫県内の大手ベーカリーでパン職人としてのキャリアをスタートしました。その後、パン製造の一連の流れを身につけたいと個人経営のベーカリーで経験を積みます。そして、2013年、35歳になるタイミングで独立し、ベーグルに特化した店を開くことを決意しました。ベーグルに特化したのは、人の役に立つものを販売したいという気持ちからでした。
村上敦隆さん
普通のパン屋さんが町に1軒増えたところで、どうなるだろうという思いがありました。それなら、人の役に立つものを、と考えアレルギーに配慮したパンを焼こうと思いついたのです。最初は小麦アレルギーの人にも配慮した米粉の蒸しパン(スチームベーグル)を始めました。
アレルギー対応の商品はバリエーションが少なく、割高なことが多いもの。そこで、村上さんは手ごろな値段でアレルギーのある人もない人も一緒においしく食べてもらいたいという思いを抱き、試行錯誤しながら商品を開発しました。開発の過程では、子どもの友達のお母さんたちにも喜んでもらえたことが原動力になったといいます。
村上敦隆さん
食物アレルギーは増えていて、子どもたちが一緒に同じものを食べられないことがあります。スチームベーグルのほかにも、ベーグルならたまごや牛乳を使わないので、ほかのアレルギーを持っている人でも食べられます。ベーグルもスチームベーグルも、同じ形をしたもので同じ店で買えるようにできればいいなと思いました。
独立当初は店舗を持たなかったので、インターネットによる通信販売とイベントに出店しての販売が中心でした。
豊かな自然に惹かれて淡河町に
当時、兵庫県西宮市に住んでいた村上さん一家。しかし、自然の中でのびのびと遊ばせたいと思いから、子どもを神戸市北区大沢町にある幼稚園に通わせていました。幼稚園には同じような考えを持つ保護者が多く、知り合った友人の一人が淡河町在住でとてもすてきな暮らしをしていたこともあり、淡河町に惹かれていったといいます。村上のりこさん
神戸市内でありながら、豊かな自然が残り、徒歩では難しいけれど、車さえあればスーパーも遠くないし生活するのに困らない。こんな魅力的なところに住めたらいいなと考えるようになりました。
物件を見つけるために、地域の住人に声をかけておく
はなとねの物件は神戸市指定有形文化財に指定された築260年以上の古民家。この物件はどのように見つけたのでしょうか。村上のりこさん
物件の情報はなかなか外には出てこないものです。地域の中で、情報に詳しい人が何人かいらっしゃることがわかり、幼稚園の友人を通して情報が入ったら教えてもらうことにしていました。
住みたい町があれば、その地域の住民に声をかけておくのがいいと村上さんはいいます。淡河町内に家を購入しようと思ってから1年くらい経ったころ、今の家となる物件が空くという情報が入りました。前の持ち主がとてもていねいな暮らしをされて、ずっと大切に住んでいた家でした。
村上のりこさん
前の持ち主はすてきな方で、今でも交流があります。淡河町のことでわからないことは何でも教えていただきました。この地域に溶け込めたのも、その方が近隣の人に話を通してくれたからなのです。
村上さんは、前の持ち主の方が近隣の方に話をしてくれたおかげで、必要なところにしっかりとあいさつ回りをすることができました。
古民家には農地がついていた!
村上さんが購入を決めた古民家には、農地がついていました。耕作目的で農地を売買する場合には、農地法に基づき、農業委員会または都道府県知事の許可を受ける必要があります。その許可を受けるため、のりこさんは近隣の農家に1年ほど通い勉強をさせてもらいました。その後、作物の栽培も手掛けてみましたが、「はなとね」が忙しくなり手が回らなくなって、今は村上さんのお父さんと畑をやりたいという友人が、きれいに維持してくれています。村上敦隆さん
農地を自分たちで維持管理することは難しかったですが、農作業をしたいという人たちに助けてもらっています。収穫したものをもらったときには、カフェで付け合わせとして出しています。
古民家は次世代につないでいく財産
かやぶき屋根の古民家は、維持管理が大変。30年に一度は屋根の吹き替え作業が必要になります。作業には一千万円以上の費用がかかりますが、村上さんの家は神戸市の指定有形文化財(前田家住宅)になっているので、神戸市が費用の一部を助成してくれます。村上敦隆さん
神戸市がこの地域の環境保全に熱心なので助かっています。この古民家のあるがままの姿を維持しながら住んで、次の世代に残していくことが使命だと思っています。
子育てがしやすい
淡河町は立地的には神戸市北区ですが、三木市にも三田市にも近い町。最寄り駅は神戸電鉄岡場駅で、三宮まで40分ぐらいで行けます。駅までは距離がありバスの本数は多くないので、村上さんは子どもの習い事などのときは車で送迎をしています。それでもこの町で暮らすことがしっくりきているといいます。村上のりこさん
地域の人の目が届くし、子育てがしやすいです。お客様も遠足感覚でドライブがてら遊びに来ていただけてありがたいです。
感謝の気持ちで満たされる自然の中の暮らし
コロナウイルス禍の中で緊急事態宣言が発令されているとき、「はなとね」ではお客様に一人ずつ入店してもらうなどの対策を行いました。落ち着いた営業を続けることができ、お客様や地域住民の皆さんから、「大変な時期だけど頑張ってね」というあたたかい言葉をかけてもらったそうです。テイクアウトとインターネット販売があることが功を奏し、売り上げは伸びています。村上さんは思い描いていたような暮らしをすることができ、人に喜んでもらえていることに幸せを感じています。
村上のりこさん
自然の中にいると、自然からいただくものが多いので、感謝の気持ちがわいてきます。うまくいかなくても「この道じゃなかったのかな」と前向きに考えることができる。自然に教えてもらうことは多いです。
村上さんの移住は、遠い場所に住居を移したわけではありませんが、豊かな自然のある地域に移り住むことで、生活やビジネスに大きな変化がありました。今後もお客様に100%のおもてなしをするとともに、自分たちも消耗しないようにしながら「はなとね」の営業を続けていくそうです。
はなとね
まずは情報収集!「KOBE address」をチェック!
それでは、神戸移住までのプロセスを見ていきましょう。まず必要なのが情報収集ですね。「KOBE address」は神戸市が運営する神戸市公式移住ポータルサイト。移住に関する情報をまとめて知ることができます。エリア紹介では、各地域の特色を感じることができる動画を掲載しています。また子育て支援制度についても一括して紹介されているので、とても便利です。
出典:神戸市ウェブサイト 「KOBE address」(https://kobeaddress.city.kobe.lg.jp/)
仕事を探そう!
どのような仕事を探すかによって、仕事の探し方も異なってきます。以下のウェブサイトをチェックしてみましょう。KOBE JOBPORT
職探しもまずはウェブサイトで情報をチェックできます。「KOBE JOBPORT」は神戸市役所のウェブサイトの中にある神戸で働きたい人のためのページ。仕事に関するあらゆる情報が掲載されているので、最初にチェックしましょう。合同説明会やインターンシップの情報も得られるほか、求人情報には神戸市の職員の採用情報も掲載されています。KOBE JOBPORT「神戸市内の求人情報を調べる」
無料職業紹介所「はたらこうべ」
神戸市産業振興財団が運営している無料職業紹介事業です。「人手不足に悩む神戸の中小企業」と「神戸地域で働きたい方」をマッチングします。利用するには、原則として来所しての個別面談と求職登録の手続きをすることが必要。個別面談は完全予約制なので、予約してから訪れましょう。
農業を始めたいときは|兵庫楽農生活センター
公益社団法人兵庫みどり公社が運営する「農」を学び、体験し、実践できる拠点。作物栽培の基礎や、就農に必要な農業技術、農産加工技術などそれぞれの目的に合わせて知識や技術を学ぶ「楽農学校」を開講しています。神戸市の新規就農希望者向け情報もチェックしておきましょう。兵庫楽農生活センター
出典:神戸市ウェブサイト 「新規就農希望者向け情報」https://www.city.kobe.lg.jp/a99375/business/sangyoshinko/industry/sinkisyuunousya/index.html
住まいを探そう!
住まい探しに役立つウェブサイトがあります。ハトらぶ
一般社団法人兵庫県宅地建物取引業協会の公式物件検索サイトです。賃貸と購入の両方に対応しています。登録件数が多いので、気に入る物件があるかもしれません。「住まい探しの知識・情報」は不動産の契約をする際に役立つ情報が掲載されているページ。目を通しておくと安心です。ハトらぶ
神戸公社賃貸
一般財団法人神戸すまいまちづくり公社が管理・運営する賃貸住宅に関するウェブサイト。神戸市内に全29団地、2,522戸あり、仲介手数料・契約更新料がかからないことや敷金が1カ月分など、経済的なメリットがあります。また、市外からの転入者や新婚、子育て世帯などには家賃支援制度も。賃貸物件を考えているなら、チェックしておくとよいでしょう。神戸公社賃貸
神戸・里山暮らしのすすめ
神戸市経済観光局農政計画課が開設しているウェブサイトです。里山暮らしに特化した情報が提供されていて、空き家バンクと農地バンクのページがあります。里山暮らしのコーディネーターの連絡先も掲載されているので、いろいろと相談できそうです。移住のための支援・補助金をチェック!
東京圏からの移住|神戸市移住支援金制度
5年以上東京23区に住んでいたり、通勤していたりする人が神戸市に移住する場合には、神戸市移住支援金制度に基づき支援金を支給されます。支給金額は、世帯の場合1世帯につき100万円、単身の場合1人につき50万円です。支給には条件があるので、よく確認しておきましょう。出典:神戸市ウェブサイト 「神戸市移住支援金制度」(東京圏からの移住)
https://www.city.kobe.lg.jp/a05822/iju/ijushienkin.html
子育て世帯が親と近居・同居|親・子世帯の近居・同居住み替え助成事業
子育て世帯とその親世帯の3世代が近くに住むことになった場合に引っ越し代金などが助成されます。支給金額は、市内の移住の場合は最大10万円、市外からの移住の場合は最大20万円です。出典:神戸市ウェブサイト 「親・子世帯の近居・同居住み替え助成事業」
https://www.city.kobe.lg.jp/a01110/kurashi/sumai/jutaku/information/shinkonportal/oyako/index.html
新婚・子育て世帯にはシティハイツの家賃を減免
シティハイツとは、神戸市が供給・管理する中堅所得者向け市営住宅。新婚、6歳未満の子どもがいる世帯、18歳未満の子どもが3人以上いる世帯には、シティハイツの月額家賃が2割減免されます。出典:神戸市ウェブサイト 「シティハイツ減免制度」
https://www.city.kobe.lg.jp/a28775/kurashi/sumai/jutaku/information/cityheights/cityheightsgenmen.html
都会と里山が身近にある神戸での暮らし
子どもを自然の中でのびのびと育てたいと思う人は多いのではないでしょうか。でも通勤のことを考えるとちょっと…というのが都会の事情。自然と都会がほどよい距離で存在する神戸では、それぞれが思い描く暮らしを無理なく実現できる条件が整っている印象を受けました。「はなとね」の村上さんは、子育てを通した出会いが神戸への移住につながりました。移住によって子育て、仕事、暮らしのすべてが変化し、充実した日々が続いています。
神戸への移住で新しい暮らしをはじめてみませんか?