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「SMART AGRI」はスマート農業に関する情報をお届けするウェブメディアです。 スマート農業の技術や事例を中心に、いま日本の農業関係者、農家が必要としている情報をわかりやすくお伝えしていきます。…続きを読む
ICTやロボット、AIなどを活用した次世代型の農業などの幅広い情報を紹介している「SMART AGRI」。先進的な情報や専門的なコラムなど、豊富なコンテンツが魅力的なサイトです。
今回は「SMART AGRI」との連携企画第7弾として、「10代から農業を学ぶ方法」について教えていただきました!
SMART AGRI(スマートアグリ):農業とITの未来メディア
しかし10代の若者の中にも、農業に魅力を感じ、将来農業に従事するために日々努力する人も増えてきています。実家が農家であるという人だけでなく、自然や環境の話題を見聞きする中で、自然とふれあう仕事に魅力を感じている若者もいるのです。
そこで、農業人材の育成について学んでいる現役大学院生ライターの私、あゆみおんが、10代のうちから農業を学べるさまざまな方法についてまとめてみました。これから農業に携わりたいと考えている若い方はもちろん、我が子の進路を考えているその親世代にも、参考にしていただければ幸いです。
農業を学べる場所はさまざま
農業を学ぶためには、農業高校、農業系大学、農業大学校などで教育カリキュラムに沿って学ぶ方法、農業法人、個人農家などで仕事として体験しながら学ぶ方法、そしてセミナーなどの座学で学ぶ方法などがあります。まずは、学ぶ環境ごとの特徴と、そこで学べる内容を比較して、それぞれ魅力的な点に言及していきましょう。
農業高校 〜若くして農業のプロになれる
農業高校は、中学卒業時点で入学できる、農業に特化した専門高校のひとつです。全国に約300校があり、約8万人が学んでいます。一般の高校と同様に3年間のカリキュラムが組まれており、植物、動物、食品、地球環境などについて、基礎的な知識や技術、農業実習などの実践的・体験的な学習、プロジェクト学習などにも取り組んでいます。学科も、農業、造園・園芸、林業、畜産といった業種別の学科や、農業経済、食品科学、生物工学、農業経営といった分野まで幅広くあります。
学校ごとの特色も強く、「ホームページコンテスト」や「農業推進コンクール」、「和牛甲子園」といった大会やイベントで、全国の農業高校同士が切磋琢磨する環境も整えられています。
また、農業高校の多くが1年次は全寮制で、朝晩の実習があります。寮生活や実習を通して、学生間の絆を深め、卒業後も就農者として切磋琢磨できる仲間づくりができます。普通の高校にはない実習の多さが特徴なので、若いうちから体を使って農業を習得したい方にぜひおすすめしたいです。
費用は、授業料のほか、国から農業経営者育成高等学校として指定を受けている学校については、全寮制につき寮費などが別途必要となります。初年度に必要な費用の一例をあげると、以下のようになっています。
通学制農業高校の予算例<東京都立農業高等学校 全日制過程>(平成30年度)
入学金:5,650円
年間授業料:118,800円
年間納入金:124,450円
全寮制農業高校の予算例<茨城県立水戸農業高等学校 全日制過程>(平成31年度)
入学金:5,650円
年間授業料:118,800円
年間寮費:289,000円(入学初月諸経費19,000円含む)
年間納入金:413,450円(ほか、教材費等の学校徴収金あり)
※ただし、1年次は全寮制、2年次以降は希望制
農作物に関する専門性が身についているため、仕事への理解が早く、スムーズに仕事に取り組めるなど、企業からの評価も高いです。
農業系大学 〜教員免許や資格の取得も可能
農業系大学は、高校卒業、高等専門学校3年次修了、高等学校卒業程度認定試験に合格した18歳以上の人が受験可能な大学で、主に農学部がある4年制の大学を指します。学部1~2年で一般教養および農業の基礎知識を、学部3年で専門知識を学び、学部4年で知識を生かした卒業研究を行うのが一般的です。農業系大学の一番の特徴は、農業の知識を幅広く学び、実践演習で体感できるほか、さらに学びたい人には、大学院で研究する場が設けられているということです。
初年度に必要な費用の一例を挙げてみます。
国立大学の予算例<北海道大学 農学部 農学科>(令和2年度)
入学料:282,000円
授業料:535,800円
年間納付金:817,800円
私立大学の予算例<東京農業大学 農学部 農学科>(令和2年度)
入学料:270,000円
授業料:760,000円
年間納付金:1,523,400円(実験実習演習日、整備拡充費、学生厚生費、その他諸会費含む)
※1年次納付金を参照
農業系大学の特徴として、在学中にさまざまな農業関連の資格を取得できることも挙げられます。学部の特色によって学べるものは異なりますが、自由な時間が多い大学生活では自分が欲しい資格を探し、勉強する時間も十分にあります。
特に、大学生でなければ取得することが難しいのが教員免許です。農業系の大学で教員免許を取得すると、中学校・高校の理科や高校の農業の教員免許を取得できる学科があります。資格を有効活用して働きたい人には有利な選択肢だといえるでしょう。
農業大学校 〜社会人も入れる地域の教育機関
農業大学校は、大学とほぼ同様の基準で受験可能な2年制の農業を学ぶ研修教育機関を指します。一般的な「専門学校」と同等の位置づけです。
農業大学校は、農業への就職を目指す人や、スキルアップを目指す農業者を対象として、公立では全国42道府県に設置されています。農業の技術や経営に関するカリキュラムが組まれ、各分野に応じた専門課程を主に演習形式で学ぶことができるのが特徴です。
費用は、初年度納入金で以下の通りです。
農業大学校の予算例 <埼玉県立農業大学校>(平成29年度)
入学金:不要
授業料:118,800円
年間納入金:361,000円程度(その他教科書・実習服代、諸経費・給食費含む)
※1年次納付金を参照。
学校によって取得できる資格の幅は異なりますが、農業簿記や各分野で必要な基礎的な資格の取得を目指す人が多く学んでいます。
なかでも、文部科学大臣が指定した課程を修了した者には「専門士」という学位が授与されます。資格を活用して実家で営農するほか、さらに研究を進めるために他大学への編入や、農業大学校の研究課程に進学する道もあります。自分のビジョンに合った次の進路が選べるのも、農業大学校の大きな特徴といえるでしょう
農業法人 〜現場で働きながら知識と技術を習得
ここからは、学びの場ではなく、働きながら学んでいく方法を紹介していきます。まず、農業法人は、農業を業務とする民間企業全般を指します。就職活動を行い入社して、農業のエキスパートとして働くのが一般的です。
農業法人への就職は、社会人として給与をもらいながら農業を学ぶことができるのが最大の特徴です。それだけに、そもそも入社前に農業高校などで勉強しておいた方が有利なことは間違いありません。ただ、普通科高校卒業生や農学部以外の学部出身学生を受け入れている農業法人もあります。
学ぶための費用はもちろんかからず、平均年収は約200~300万円といわれています。法人や役職によっても大きく異なりますが、年2回、月給4カ月程度分の賞与が支払われる企業もあります。また、近年は農業法人の大規模化も進んでおり、家族手当のような福利厚生が整っている法人も増えてきています。
農業法人では農業を学ぶこと自体も仕事であり、働きながら最前線の農業現場で必要な知識やスキルを見極め、実用的な資格を得ることが可能です。さらに、農業法人勤務を経て、独立して農業を始める人が多いのも特徴です。
なんといっても、農業現場の最新情報が入手できるので、独立に向けた一番の近道といえるかもしれません。
個人農家 〜専門家の深い知見を学べる
ここでいう個人農家とは、個別に農業の担い手を受け入れている農家全般を指します。個人で小規模に運営している農家のほか、規模が大きくない家族経営の農家などもここに含みます。受け入れといっても、見習いとして無給で現場実習に入ったり、アルバイトとして農作業を手伝いながら学んだり、農業法人と同様に就職したりと、農家によって働き方は異なります。学ぶための費用は基本的にはかからず、アルバイトの場合は時給として、就職の場合は農業法人と同程度の給料ももらえます。
農家でのアルバイト経験がある私がお伝えしたいのは、この方法であれば多くの農家の作業を比較できるというメリットがあるということです。さらに、収穫時期等の季節労働的なアルバイトが多いため、経験などがなくても働けます。農家と直接コミュニケーションをとれる時間が長く、仲良くなれれば農業のあらゆる知識を丁寧に教えてもらうこともできます。
ゆっくりと確実に農業を知っていきたい人には、非常に良い方法だといえます。
セミナー 〜最も気軽に参加でき、仲間探しにも最適
最後に紹介するセミナーは、農業の知識を取得するための講演会などを指します。現場の農家や農業ビジネスへの参入を考えている企業の担当者など、農業関連の人とのつながりを増やしたりすることもできます。セミナーは幅広い分野で開催されており、具体的な栽培のノウハウから、スマート農業の導入方法、有機農法などを互いに学び合うコミュニティのようなものなど、自分の知識レベルや身に付けたい知識・技術を学べるものを受講することで、無駄なく確実に農業を学ぶことができます。
費用は、農業関連団体やメディアなどが主催する無料のものから、1回数千円程度の専門家によるものまで、内容によってさまざまです。
セミナーは誰でも気軽に参加できるので、新規就農とまではいかないまでも、具体的に自分に農業という仕事が務まるかどうかを確認する意味で、農業に興味を持ったらまずは参加してみるといいでしょう。
将来なりたい姿をイメージして学ぶ場を選ぼう
ここまで述べてきたように、10代から農業を学ぶ方法は意外とたくさんあります。重要なのは、自分が学んだ先に得たいものを意識して、農業を学ぶ方法を探すことです。私自身も、農業の大学院に進学しながら、セミナーへの参加や個人農家のアルバイトを今でも行っています。
それぞれの学びの場によって得られるものは違いますし、得た知識を別の現場で活用することも可能となり、非常に幅広い知識と専門的な技術を身に付けることができている実感があります。
いずれの方法にしても、農業は人のつながりが広がるほど、新たな学びがあります。そして、いくら学んでも終わりということはありません。
学校、就職、セミナーなどどんなものでも最初はいいと思います。10代の若いうちから、まずは自分にないものを持っているいろいろな人と、積極的に交流してみることが大切です。
執筆:あゆみおん(SMART AGRI)
参考サイト
キャリアガーデン「農家になるための学校と学費(大学・専門学校・高校)」
農林水産省「農業を学ぶための研修教育機関のご案内」
東京都「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について」
茨城県立水戸農業高等学校
茨城県立水戸農業高等学校「平成31年度学校徴収金について」
北海道大学「入学料・授業料」
東京農業大学「令和2年度在学生の授業料等納付金明細表[PDF]」
埼玉県「農業大学校の必要経費について」
文部科学省「専門士の称号を付与する専修学校」